海水魚水槽にライブロックは必要なのでしょうか。
海水魚水槽を楽しんでいる多くの方がライブロックを使い水槽を立ち上げて管理しているため、「海水魚水槽にはライブロックはセット」は当たり前という風潮を感じます。
しかし、はじめて海水魚を飼育する方からすれば、ただの岩に1キロ数千円??と驚いてしまう方が多いのも事実です。
海水魚水槽にライブロックは必要ですと言われても、なかなか金額が高価なこともあり、理解しにくいことです。
そこでここでは、ライブロックの特徴と効果を理解し安心して取り扱うことができるよう、ライブロックの特徴から選び方、レイアウトまで、徹底解説いたします!
目次
魔法の岩と呼ばれるライブロックの特徴
ライブロック(Live rock)とは、名前の通り生きた岩を指します。
死んでしまったサンゴの骨格表層に様々な種類の生物が繁殖した状態のものを言います。
ゴカイなど多くの生物が、細かい無数の穴を開けて多孔質にして住みます。そして、その穴に海水が通過することで水を浄化する働きがあるのです。
ライブロックに生息するバクテリアなどの生物群集がろ過器の役目となり、海水魚水槽管理の水質維持に貢献します。
では、ここからさらに掘り下げて、ライブロックのメリット・デメリットを解説していきます。
ライブロックを入れるメリットとは
ライブロックを使うことで大きく3つのメリットが生まれます。
- ライブロックの付着生物による水質向上効果
- 拒食防止効果
- 水槽レイアウト効果
バクテリアによる水質向上
ライブロックに付着するバクテリアがろ過フィルターの役割をすることで、水槽内の有害な栄養塩を除去します。
とくに、バクテリアの数が少ない水槽立ち上げ時には、ライブロックを導入することは非常に意味があります。
ライブロックを入れると強制的に水槽内にバクテリアが広がるため、水槽の立ち上げ完了期間を短縮できます。
また、長年管理していると砂が岩が汚くなることがあります。
そんな時は、ライブロックを交換することで、新しいバクテリアが水槽内に広がり水槽がフレッシュされますので、色々な場面で有益な効果を持たらしてくれます。
ライブロックによる拒食防止効果
ライブロックには魚の餌となるゴカイを含めた様々な生物が付着しています。
購入してきたばかりの海水魚は人工餌を食べないこともありますが、ライブロックを入れておくことで、人工餌に慣れるまでの期間、補助食としての拒食防止効果があります。
とくに、人工餌に慣れにくいヤッコ類・チョウチョウウオ類はライブロックをつつく習性があるためおすすめです。
水槽レイアウト効果
ライブロックを組み合わせてレイアウトすることで、サンゴを置くスペースと、魚の隠れ家を作ることでできます。
サンゴを置くスペース
ライブロックの上にサンゴを置くことができるため、サンゴを管理できる数を増やすことができます。
とくにサンゴを数多く管理するレイアウト技法で有名なのは、ライブロックをひな壇状にレイアウトする方法です。
ひな壇状にライブロックをレイアウトすることで、より多くのサンゴを並べることが出来るだけでなく、水槽レイアウトとして美しく見せる技法でもあります。
また、サンゴは砂の上に置くと差中に住む微生物の悪影響を受けにるため、ライブロックの上に置くとより安心してサンゴを管理できます。
魚の隠れ家
ライブロックで入り組んだレイアウトを作ることで、魚のストレスを軽減させることができます。
人間の監視下に置かれた水槽は少なからずストレスがかかり、ストレスが原因で餌を食べずに最悪餓死してしまう個体もいます。
ライブロックで隠れ家を作り安心させてあげることで、次第に環境に順応し、餌を食べるようになります。
ライブロックを入れるデメリットとは
ライブロックを入れるデメリットですが、グレードの悪いライブロックを入れることで水質が悪化し水槽に悪影響をもたらす場合があります。
ライブロックは生き物です。
状態が良い物と悪い物があるため、しっかり見極めて購入しなければなりません。
ちなみに、ライブロックの状態の良し悪しは付着する生物の生存率が影響します。
つまり、ライブロックに付着する生物が元気なら良質なライブロック、反対に付着する多くの生物が死んでいたら悪いライブロックとなります。
悪いライブロックとなってしまう理由
ライブロックに付着している生物が死んでしまう多くの理由は、3つあります。
運送問題
ライブロックを運ぶ場合は、ライブロックに付着する生物が乾かないようにして慎重に梱包して運びます。
乾かないようにするために、海水魚同様でビニール袋でパッキングするか、新聞紙を海水で湿らせた新聞紙に包む方法をとります。
このように梱包してから発送をし、翌日午前中に届き開梱すれば大抵問題ありません。しかし運送上のトラブルが発生し予定時間から大幅に遅れるとライブロックの状態がどんどん悪くなっていきます。
もし、購入したライブロックが遅延した場合は、手元に届いたライブロックをご自身でキュアリングしてから使用することを強くおすすめします。
キュアリング問題
専門店では、ライブロックが届いたらすぐにキュアリングという作業をしなければなりません。
仕入先から届いたライブロックには、有害な生物も混在している可能性があるからです。
キュアリングとは、ピンセットを使い不要な物を取り除いたり、強力なエアレーションを施し無数の穴の中を綺麗にしていく作業です。
しかし、入荷したばかりのライブロックはキュアリングが不完全な場合もあります。
それを知らずに購入して使用すれば、水槽内に悪影響をもたらす場合もありますため注意が必要です。
長期在庫品
入荷してから数年経過した在庫商品は、ライブロック自体の色も悪くなっている場合があります。
また、ライブロック内の付着生物も減っている場合があるため、水質浄化としての効果も薄れている場合もあります。
長期在庫品は価格が安くなっている場合もあるため、購入する場合はデメリットを理解してから購入しましょう。
長期在庫ライブロックは土台として購入するのをおすすめします。
良質なライブロックを選ぶポイント
ライブロックを選ぶポイントは下記3点です。確実に押さえましょう。
- 異臭の無いキュアリング済みなもの
- 石灰藻の付着した表面の色合いが赤みががっているもの
- 入荷してから1週間以上6カ月未満なもの
異臭の無いキュアリング済みなもの
必ずキュアリングが済んでいるかを確認しましょう。
お店でできる確認方法は2つあります。
臭いをかぐ
購入希望のライブロックを鼻に近づけ臭いを嗅ぎます。
良質なライブロックの場合は、ほんのり磯の香りがする程度です。
しかし、状態が悪いライブロックの場合、鼻に近づて臭いを嗅ぐと硫黄臭やツーンとした強い磯の香りがします。
異臭がするライブロックは絶対に避けましょう。
色合いを確認
石灰藻が付着する赤みが多いライブロックを選びましょう。
石灰層が多く付着しているライブロックは入荷から日の浅い、新鮮なライブロックです。
表面が綺麗だと水槽にレイアウトすると、ライブロックだけでも綺麗です。
ライブロック販売水槽を確認
ライブロック販売水槽を間近で確認し、エアレーションやプロテインスキマーを使い透明度の高い綺麗な飼育水で管理されているライブロックを選びましょう。
海水魚飼育やサンゴ飼育に精通している専門店では、ライブロックの質によってその後の水槽管理に起こる影響を熟知しています。
そのため、ライブロック専用の水槽を作り、キュアリングを十分に施したライブロックをしっかりしたろ過装置で丁寧に管理しています。
このような専門店で購入するのも、良質なライブロックを選ぶポイントです。
ライブロックに済む危険な生物とは
ライブロックには、水槽にとって悪影響ある生物だけでなく、人間が取り扱う場合に触れたら危険な生物も存在します。
ここでは、代表的な危険生物を解説していきます。
カニ
海水魚水槽を観察していると、たまに姿を現すことが多いカニ。
カニは大きく成長すると魚を襲う場合があるので、心配であれば取り除くことを推奨します。
良く観察種類の中で、毛がふさふさしているカニと、表面がつるっとしているカニがいます。
また、毛がふさふさしているカニはサンゴ水槽やっている場合要注意です。
サンゴをかじる場合があり、見つけたら速やかに取り除くようにしましょう。
シャコ
水槽から、パチンパチンという音が聞こえたらシャコがいる可能性が高いです。
シャコは見つけ次第、速やかに取り除くことを推奨します。
その理由は大きく3つ。
- ガラス水槽の場合割れる可能性がある
- 魚を襲う事もある
- メンテナンス時に人の手をパンチすることがある
ガラス水槽の場合、通称シャコパンチにより水槽が割れる可能性があります。
また、魚を襲う事もあるほか、水槽のコケ取りやレイアウト変更時に運悪くシャコの近くに手を入れることでシャコパンチを受けて流血することもあります。
シャコがいたら、水槽メンテナンス時は注意しましょう。
ウミケムシ
ウミケムシは、人間が触れると透明な棘が刺さったりして痛痒い症状が現れます。
ただし、なかなか防ぐのが難しいのがウミケムシ。
一見見えないようでもじつは付着しており、時間差で違和感を覚えることもあります。
どうしても不安なかたは、厚手の軍手などをしてライブロックを取り扱うようにしましょう。
ウニ
ウニは、強く触れたり握ったりしなければ人間には害はないことがほとんどです。
ウニの存在がデメリットとなるのは、ライブロックを崩してしまう点にあります。
ライブロックの隙間にウニが入り込むことで、ライブロックを持ちあげて崩してしまいます。
ライブロックが崩れると、魚やサンゴがライブロックの下敷きになるなどして悪影響を与えてしまいます。
ウニは取りだすのことも簡単ですので、見つけ次第取り除きましょう。
ライブロックを使用したレイアウト事例
ライブロックを主体としたレイアウト
サンゴを主体としてライブロックを用いたレイアウト事例
まとめ: ライブロックで水槽立ち上げよう! 危険生物やレイアウト方法・取り扱い方とは
ライブロックの特徴から選び方、ライブロックレイアウトと説明してきましたが、肝心の結論である必要なのか不要なのか。
私は必要だと思います‼︎
私の飼育に関する考え方の基本として飼育する魚が本来生息している場所を再現してあげることが大切だという考えが根底にあるからです。
なぜなら、その個体が持つ最大限に美しい体色や泳ぎを鑑賞するのにベストな方法がそれだとおもうからです。
最後になりますが、ライブロックは日本での採取は禁止されており現在流通しているものは輸入または養殖個体です。サンゴ同様に国際保護条約であるワシントン条約の付属書2にも登録されており年間の輸入量も決められている大変貴重な生物です。
貴重なライブロック。そんな貴重なライブロックを使えることに日々感謝をして大切に管理をしていきたいとおもいます。

熱帯魚業界歴もうすぐ20年!
海水やアクアテラリウムなど、さまざまな水槽を担当してるアクアリストです。
アクアリウム専門のYouTubeチャンネル『アクアリウム大学』も配信中!
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