今から15年ほど前は、使用している人はごくごく一部であった水槽用クーラー。
しかし、海水魚ブームの影響で水槽用クーラーの必要性が高まり、今日では水槽用クーラーを設置することが一般的な時代となりました。
各メーカーから水槽用クーラーは販売されていますが、はじめて水槽用クーラーを設置するには正しい知識が必要です。
誤った設置方法をすれば、正常に機能しないこと、または最悪漏水の可能性もあるからです。
でも、安心してください!
はじめての方でも正しい知識を持てば簡単に設置できます。
そのような失敗に陥らないためにも、ここでは人気が高くはじめての方でも扱いやすいゼンスイZCシリーズを用いて、正しいクーラーの設置方法と水温設定方法について解説していきたいとおもいます。
はじめにクーラーの設置場所を決めましょう!
水槽用クーラーを水槽台内へ収納して、スッキリ見せたい方が多いとおもいます。
しかし、それには条件があります。
水槽用クーラーを正しく使用する大前提条件として、吸排気が満足に確保されている必要があります。
吸排気の重要性について詳しく解説していきます。
吸排気とは
一般家庭に置く水槽用クーラーは、空冷式チラーと呼ばれる仕組みで冷却しています。
水槽用クーラーを設置する理想の場所は、風通しが良く、クーラー回り20センチ以上は何もない吸排気が満足にできる場所へ設置することが望ましいです。
なぜなら、冷却式チラーの特徴として、空気を取り込み冷却作動する際に必ず放熱します。
例を出すと、注射をする前にアルコール綿で皮膚を消毒する時、スーとする経験ありますよね。まさにこの原理です。
水槽用クーラーでは、これがアルコールでなくフロンガスを利用するのです。
そして、このスーというのは気化して放出してしまうため長続きしませんね。そこで、気化しても放出させないために密閉された管状の回路内にフロンガスを詰め、回路内で気化して冷えた管に風を当てて(吸気)冷却するのです。
この一連の仕組みを作動させるのにコンプレッサーが必要となります。
コンプレッサーが作動するとクーラー内で熱が発生するため、排気する必要があるのです。
もし、吸排気が満足にできなければ正常に作動しないどころか、逆に水温が上がってしまう可能性も考えられます。
水槽用クーラーは室内の熱を吸い込むため、もし、水槽台内の吸排気が不十分な場所へ設置すれば、排熱で発生した暖かい空気を取り込んでしまうため冷却能力が著しく低下します。
そうなれば、いつまでも設定水温まで下がらずコンプレッサーが回り続けるため、水槽台内の温度が上昇していき、近くにある濾過槽なども暖められてしまうため水温が上昇してしまうのです。
水槽台内に収納する場合について
水槽台内に収める場合は、必ず水槽台内に吸排気の開口を設けましょう。
吸排気の開口幅は、あらかじめ設置するクーラーの吸排気サイズを調べ、設置する場所に合わせて加工しましょう。
また、ただの開口だと中が丸見えとなりダクトやルーバーと呼ばれる加工を施す場合もあるでしょう。
その場合は、なるべく隙間のある風通しの良いものを選定してください。
実際設置して水槽台内に熱がこもる場合は、扇風機やファンを設置し強制的に換気しましょう。
水槽台外に設置する場合について
吸排気スペース周りは十分にスペースを取りましょう。
とくに、クーラーを設置する背面の壁には熱風が当たるため、背面との距離は20センチ前後開けることをおススメします。
クーラーに使用するポンプを選びましょう!
多くの水槽用クーラーは、クーラー内に通水するポンプが必要です。
ポンプを選定方法は、それぞれのクーラー仕様書の記載されているポンプ流量という項目を参考にしましょう。
例を挙げて説明してみましょう。
ゼンスイZC-100αの仕様書を見てみると、ポンプ流量(L/min)で5~15と記載があります。
これは、1分間に5リットル~15リットルということです。
それに適合するポンプとして、エーハイムコンパクトポンプとカミハタの水中ポンプでリオプラスの仕様書を確認して探してみたとこといくつか適合するポンプを見つけました。
- エーハイムコンパクトポンプ600: 3,66ℓ~10ℓ
- Rio400: 5,6ℓ
- Rio600: 6,8ℓ
- Rio800: 8,0ℓ
※1分あたりの流出量
適合ポンプの中でしたら、どれを選んでいただいてもか構いません。
エーハイム製品は1製品のみですが、複数あるリオ製品の中から選定する場合、
わたしは迷わず中間のRio600を選定します。
その理由は、下記2点です。
- Rio400は劣化し流量が少しでも落ちればクーラー推奨流量に届かなくなる可能性が考えられること
- Rio600と800を比較した際にRio600は価格が安いこと
以上を参考にしていただき、クーラー専用のポンプを選定してみましょう。
クーラーへホースを接続しましょう!
クーラーを所定の場所に設置したら、配管を接続していきましょう。
ここでは、実践例としてゼンスイZC-200αにエーハイムコンパクト600のポンプを使い解説していきます。
まず、クーラー上部に付属されているユニオンとガスケットを半時計回りに回して外していきます。
つぎに、用意していたホース内系12mm/外径16mmのホースにユニオンとガスケットを差し込んでから、クーラー本体のチラーネジに奥まで差し込みます。
ガスケットを被せたら、ユニオンを時計周りに回ししっかり締めます。
ホースを濾過槽まで伸ばしてクーラーIN口に差し込んだホースを適当な長さでカットしポンプを接続します。
接続後外れないよう、タイラップ(結束バンド)で締めましょう。
OUT口のホースも濾過槽まで伸ばし、希望の場所でカットします。
クーラー本体に水温検知器があるため、クーラーポンプやヒーターのサーモセンサーからはなるべく離して設置すると効率が良いです。
クーラーへ通水しましょう!
水槽クーラーとポンプの電源を入れて通水開始です。
クーラー本体の接続場所から水が漏れていないか確認しましょう。
以上で、クーラー接続は完成です。
オーバーフロー接続のように、塩ビ配管や塩ビボンドを使わないでもできるため、はじめての方でも簡単だとおもいます。
クーラー温度を設定しましょう!
温度設定ですがとくに高温に弱い飼育生物がいなければ、26度設定をおススメします。
本来25度設定が一般的ですが、水槽クーラーの稼働時間を抑えなるべく長期的に使用するためです。
もちろん、ほとんどの熱帯魚には問題ありません。
それで温度設定方法をご説明いたします。
ZC-シリーズの場合UPボタンを5秒間押し、数字が点滅したらUPかDOWNボタンを押し設定温度に合わせます。合わせたら、指を離せば10秒ほどで自然に戻ります。
また、クーラー本体に水を保温するヒーターを接続しないで、別売りのヒーター専用サーモスタットを使用する場合は、ヒーター用サーモスタットの設定温度をクーラー設定温度から1度下げて設定しましょう。
クーラー設定温度が26度の場合は、ヒーターサーモスタット設定温度は25度にするということです。
メーカーにより水温検知に多少の誤差が出ますので、クーラーとヒーターが同時作動するトラブルを防ぐためにも注意しましょう。
念のため、日々のメンテナンス管理でも、同時作動していないか注意して確認しましょう。
万が一、同時作動があった場合、1度の差幅でなく2度に広げて様子を見ましょう。
まとめ
※水槽用クーラーの普及で高水温に弱いサンゴも家庭で飼育できるようになりました。
いかがでしたか。
クーラー接続から温度設定の方法まで解説しましたが、はじめての方でも簡単に使用できることがお分かりいただけたのではないかとおもいます。
海水魚ブーム、とくに高水温にシビアなサンゴ飼育が一般家庭でも可能になったのはクーラーメーカーの陰ながらの努力があったからだとおもいます。
とくに、ゼンスイのZCシリーズははじめての方でも非常に扱いやすくおススメです。
大切な飼育生物が快適に長生きするために、まだ設置を悩んでいる方は是非この機会に設置をしてみてはいかがでしょうか。
みなさまの、素敵なアクアライフがより一層素敵になるよう応援してます!!
熱帯魚業界歴もうすぐ20年!
海水やアクアテラリウムなど、さまざまな水槽を担当してるアクアリストです。
アクアリウム専門のYouTubeチャンネル『アクアリウム大学』も配信中!
よろしくお願いいたします!
コメント
テトラクーラーターワ冷えないの?
コメントありがとうございます。
クールタワーでもきちんと冷えますが、ペルチェ式であるため、チラー式よりも冷却機能が控えめ・熱い排気が思いのほか多い、という2点により、お好みがわかれるかと思います。ただ、価格が手頃なので、導入しやすいクーラーではあります。
初めまして 私東大阪市在住の川中と申します。
現在90センチ水槽にエーハイム2075を使用しています ゼンスイのZR180を友達に貰いました
友達の話だと外部フィルターの後ろに繋いで使用すれば良いと聞きましたが、エーハイムのサブフィルター接続方法を見ると外部フィルターの前に繋げないと(後ろに繋ぐとサブフィルターから)水漏れを起こすとあります。その理論から言うとZR180も外部フィルターの前に繋げないといけない事になります。
しかし濾過される前の飼育水が直接クーラーに吸い込む事を避けたいのでクーラーの前にサブフィルター2217を付けようと思います。でもそうなるとそもそもZR180の水量も多い上に更に抵抗が増えるので2075に備わるポンプ能力が足りないのではないかと思いポンプを追加しようと思います。
その場合ポンプは2075の後ろに繋ぐのかなと思いますが、その場合エーハイムポンプ1260だと流量(2400ℓ/h)が多過ぎて水槽の中が洗濯機状態に成ってしまうので1250(1200ℓ/h)にしようかなと考えています。
でも各メーカーの説明やYouTubeのアクアリウムの動画を見て参考にしようと色々検索してみるのですが、その様な使い方(水槽→2217→ZR180→2075→1250)を見掛けませんし、私自身も経験がありません。
それと2075→1250はポンプ+ポンプという事になるので、そういう使い方は問題ないのだろうか?とか
それならいっそ(水槽→2217→2217→ZR180→1260)の方が良いのかな?とか、でもその場合は1260→水槽のところで流量が多過ぎて洗濯機になるのかなとか、色々考えて眠れませんでした。苦笑
で今朝の木下さんのトロピカに辿り着きました。 何とか御教授頂けないでしょうか?
コメントありがとうございます。
ご質問の件ですが、下記アドバイスいたします。
私なら、サブフィルターを諦めて、給水→EHEIM2075→ZR180E→排水と設定します。
仰る通り、水槽用クーラーへ先に通すと、クーラー配管内に汚れが蓄積し冷却能力の低下タイミングが早く訪れることが予想されます。
もし、サブフィルターを撤去するにあたり、ろ過能力低下を懸念するのでしたら、別途EHIM2213、2215あたりを増設すると良いとおもいます。
ちなみにクーラーの適正流量ですが、下記メーカー推奨値を照らし合わせるとZR180Eの適正推奨値はEHEIM2075のMAX値が適正範囲でした。
・EHEIM2075: 流量1150~1250L
・ZR180E: 流量1200~3000
サブフィルターをかましてしまうことで、流量が低下しクーラー適正水量に満たないため、やはり冒頭でお伝えした様に2075とクーラーのワンセットがベストですね。
お役に立てれば幸いです。
これからもトロピカをよろしくお願いいたします!
感動しました 僕が一晩中悩んで 此処に辿り着き 朝8時45分に投稿し
2〜3日で返信貰えたら有り難いなと考えていたところ
9時53分にアドバイスを頂けるとは夢にも思いませんでした
本当に涙が出て来ました。
東京アクアガーデン アクアリスト木下さん
一生忘れません 本当に有難うございます
こちらこそ、トロピカを読んでくださり、本当にありがとうございます!これからもサポートしていけるように頑張ります!
はじめましていつも楽しく拝見しております。当方40×40×50の水槽を使用しておりますが今まで使ってたクーラーニッソーNC-180のフィルターが手に入らずになったため買い換えを考えているのですがゼンスイかGEXと迷っております。お薦めと容量を聞かせて頂きたいのでよろしくお願いいたします
おすすめはゼンスイのzc100αです。
理由は、修理ができないことが多いのと、修理費用が高額となることがあるからです。
その点、ゼンスイ社は、アフターフォローがしっかりしており安心です。