最近、通販サイトなどでよく見かけるようになった『アクアポニックス水槽』をご存知でしょうか? 熱帯魚の飼育と植物や農作物の育成を両方こなすことができる、一石二鳥の水槽が、アクアポニックス水槽です。
アクアポニックス水槽を設置すると、水換えの頻度を減らすことができます。熱帯魚水槽の水換えの回数を減らすことができるアクアポニックス水槽の仕組みと、育成に向いている植物や飼育に向いている熱帯魚をご紹介させていただきます。
目次
水換え不要のアクアポニックスを紹介!飼える魚や育てる植物は何がある?
徐々に気温が上がり始め、水槽の温度管理や水質管理に気をつかう時期になってきました。
水温が上がれば上がるほど、アクアリウム水槽内の飼育水の水質は悪化しやすくなります。
初夏から真夏の高温期においては、水換えの頻度が多くなりやすい時期とも言えますよね。
水槽の水換えの回数を少なくできる! アクアポニックスのススメ
『水換えの頻度が増える』=『アクアリストにとっては悩みの種』でもあります。
水槽の水換えの頻度を減らすためには、水槽の水を悪化させない工夫が必要です。
そこで、今回おススメするのは、アクアポニックスと呼ばれている、水槽で行う植物の水耕栽培方法です。
最近話題のアクアポニックスとは?
アクアポニックスは、一般的には、『お魚畑』(おさかなばたけ)として知られています。
野菜などの農作物を栽培する際に、水槽やため池などで魚を飼育し、魚の飼育水を養分として
農作物を水耕栽培するという有機農法の総称が『アクアポニックス』です。
☆最近では、アクアポニックスの方法を応用した、小型水槽などが販売されています。
水槽の水換えが不要になる? アクアポニックスがおススメな理由
通常、水槽内で熱帯魚や淡水魚を飼育していると、魚の排泄物や、餌の食べ残し、枯れた水草などからアンモニアなどの有害物質が発生します。
魚の排泄物などから発生する有害物質は、水槽内の有機系のバクテリアが分解してくれますが、最終的に亜硝酸塩や硝酸塩などの分解された物質が水槽内に残ります。
これらの有害物質が分解された後の成分は、分解される前よりは有毒性は低くなっているものの、水槽内に残しておくと、熱帯魚に悪影響を及ぼすことがあります。
アクアポニックス水槽で水換えの回数をへらそう!
汚れた水を取り除くために、水槽の定期的な水換えは必要不可欠な作業です。
しかし、水槽内の水質の悪化のサイクルが早い場合は、水換えの頻度が増えることになります。
アクアポニックスのように、水槽で植物や野菜を水耕栽培することで、水槽内の有害物質や分解されたあとの有害物質の成分を養分として、植物に吸収してもらい、水質のレベルをある程度の期間は一定に保つことが可能になります。
アクアポニックス水槽で、完全に水換えは必要なくなるのか?
水槽にアクアポニックス(植物や野菜の水耕栽培)を設置することで、完全に水換えが必要なくなるということは、理論上あり得ませんが、飼育する熱帯魚の数と水耕栽培する植物や野菜の種類によっては、2週間~2か月以上、差し水だけでよく、水槽の水換えが不要ということは、現実的に可能です。
水槽内の有害物質とされる、アンモニア、硝酸塩、亜硝酸、窒素… よく見れば、野菜や植物の肥料の成分表記とかぶってはいませんか?
アクアポニックス水槽を使うことによって、魚にとっては不要な水槽内の有害物質は、植物にとっては養分になり、結果的に水槽内の水質が改善するというサイクルを実現することが可能です。
アクアポニックス水槽で水耕栽培しやすい植物や野菜について
☆アクアポニックスとは、魚の飼育水の養分を使った有機農法を指しますが、アクアリウムにおいては、野菜以外の植物の水耕栽培もアクアポニックスに含まれるようになりました。
アクアポニックス水槽には、ハイドロカルチャーによる栽培や、水耕栽培できるタイプのものであれば、ほとんどの種類の野菜や植物を使用することができます。
アクアポニックス水槽におススメな植物 3つ
☆基本的に、水耕栽培に向いてる植物であれば、アクアポニックスに使用することが可能です。
アイビー・ハートリーフ
アイビー・ハートリーフは、通常のアイビーに比べ、丈夫で育てやすい観葉植物で、葉の形がハート型をしているのが特徴的です。
通常のアイビーが鉢植えから直接の水耕栽培には向かないのに対して、葉がハート型のアイビーは丈夫なため、土植えの状態からすぐに水耕栽培に移行しても、枯れにくいというメリットがあります。
☆一般的な葉の形のアイビーをアクアポニックスに使う時の注意点
※一般的な葉の形のアイビーは、水耕栽培を始める前に、切り枝を水に差し込み、水中で根が出てから水耕栽培する必要があります。
丈夫なアイビー・ハートリーフに比べ、通常のアイビーを鉢植からそのまま水耕栽培に移行すると、上の写真のように、根腐れや水分過多が原因で枯れてしまう場合があるので注意してくださいね。
ガジュマル
ガジュマルは熱帯域に分布している植物です。日本では、沖縄や屋久島のガジュマルが有名ですよね。ガジュマルは、生命力が強く、塩害の影響を受けにくいという性質を持っています。
ガジュマルの花言葉は「健康」を示す通り、切り枝を水に挿しておくだけで根が伸びます。元々ガジュマルは熱帯域で育つ植物でもあるので、水温の上がりやすい熱帯魚水槽のアクアポニックスにも向いています。
クワズイモ
クワズイモは、里芋科の常緑植物です。『クワズイモ』という名前が示す通り、食べられない芋ではありますが、鑑賞用の植物として人気があります。
ガジュマル同様、熱帯魚水槽などの温度の高い水でもよく育ち、水槽に直接植えつけてアクアポニックス用の水耕栽培を行うことができます。
特に、クワズイモは、冬季間は温かい水の方が向いており、主にヒーターを使用する水槽内での越冬が容易です。水槽内の養分の吸い上げ力も群を抜いており、調子のよい時は葉に大きな水の玉が浮くほどです。
鑑賞用の植物としてはクワズイモは高価な部類に入りますが、100均やホームセンターで安価で販売されていることがあるので、安く購入したいという方は是非チェックしてみてくださいね。
アクアポニックスにおススメな野菜 7つ
一般的な、水耕栽培に向く野菜であれば、アクアポニックス水槽に使用できます。
ハーブ系、スプラウト系の野菜などがアクアポニックスに取り入れやすい種類の野菜です。
クレソン
サニーレタス
パセリ
ミニトマト
ブロッコリースプラウト
カイワレ大根
セロリ
※アクアポニックスに使える野菜や植物の注意点
低水温で育つ野菜や植物は、ヒーターを使用する熱帯魚水槽のアクアポニックスには向いていません。(※例:ワサビなど)
アクアポニックス水槽で野菜を育てる場合は、アクアポニックス専用の水槽やハイドロカルチャー用の土を用意してくださいね。
アクアポニックス水槽で飼育しやすい熱帯魚 10選
(画像:東京アクアガーデンHPより掲載)
☆アクアポニックス水槽で飼育する熱帯魚は基本的に温和な性格の魚を選ぶと、混泳がうまくいきます。主にアクアリウム初心者向けの熱帯魚を選ぶのがおススメです。
アカヒレ
アカヒレはヒーターなしの水槽でも飼育することが可能です。水質の変化にも強く、飼育しやすい種類の熱帯魚です。
グッピー
グッピーには、国産と外国産の2種類があります。繁殖が容易で育てやすいことから、アクアリウム入門の熱帯魚として有名です。日本の水で飼育された国産グッピーの方が飼育しやすいです。
ラスボラ
ラスボラはコイ科の小型の熱帯魚です。ラスボラは水質の変化に強く丈夫な魚で、水槽立ち上げ時のパイロットフィッシュとして飼育されることが多い熱帯魚です。一見地味な体色に見えますが、華やかな熱帯魚の多い水槽では、暗めの差し色的な存在としても重宝されています。
プラティー
色鮮やかな体色を持つプラティーは、『ミッキーマウス・プラティー』が人気種です。
温和で混泳向きで、複数で飼育すると群れを作って泳ぎ回る傾向があります。
エンゼルフィッシュ
エンゼルフィッシュは、比較的大きくなるタイプの熱帯魚なので、小型の熱帯魚との混泳には向きませんが、同じエンゼルフィッシュやその他の中型サイズの熱帯魚との混泳に向いています。
エンゼルフィッシュを飼う時は、同時に奇数で飼育するようにしてください。なるべく同じ大きさのエンゼルフィッシュを購入し、奇数で飼育することで、エンゼルフィッシュから他の小さな魚への集中的な攻撃を避けることができます。また、エンゼルフィッシュとスマトラは喧嘩をしやすいので、スマトラとの混泳には向いていません。
ベタ
ベタは一般的に、エアレーションなどの設備がなくても飼育できると思われがちです。
実際は、ベタ1匹で飼育していても水を汚しやすいので、適度なエアレーション、ヒーターによる水温管理、ろ過器などの水槽管理用の機材が必要です。
ベタ水槽にろ過機を設置したくない、もしくは設置できないという場合には、アクアポニックスで、植物の力を借りて水中の有害物質を養分として吸い上げてもらう方法がおススメです。
コリドラス
コリドラスは『水槽の掃除屋さん』として有名な、ナマズ科の小型の熱帯魚です。
温和で群れを好むので、複数でコリドラスを飼育すると、一緒に泳ぎ回る姿を見ることができます。底砂が汚れすぎていると、コリドラスのチャームポイントのひげが溶けてしまうので、アクアポニックスで水質浄化を促してあげるのがおススメです。
ネオンテトラ
ネオンテトラや仲間のカラシン系の熱帯魚は、その体色の美しさから人気があります。
中でもネオンテトラは、アクアリウムショップなどで、求めやすい値段設定がされています。
水槽の華やかさの底上げのために、大量のネオンテトラを飼育する水槽では、その分、水質が悪化しやすい傾向にあります。
アクアポニックス水槽であれば、大量の小型熱帯魚がいる水槽の水質悪化を防ぐことができます。
ハチェット
ハチェットは、カラシン系の中でも温和な性格の熱帯魚です。体色が暗めなハチェット類は、ラスボラと同じく、水槽の引き立て役になることができます。
ハチェットの流通数はそれほど多くはないのですが、その一風変わった体形や、引き締まった色味にハマる人が多い熱帯魚でもあります。
チェリーレッドシュリンプ
「熱帯魚水槽のエビと言ったら、紅白のビーシュリンプでしょ?」と思い浮かべる方が多いのではないでしょうか? しかし、紅白や白黒縞模様のビーシュリンプは、他の熱帯魚に捕食されやすく、繁殖がやや難しい種類のエビで、価格帯も比較的高価な部類に入ります。
熱帯魚と色のついたエビを混泳させるのであれば、最初はチェリーレッドシュリンプをおススメします。
チェリーレッドシュリンプ自体が安価であること、繁殖しやすいことなどが理由にあげられます。
エビ自体が、水質の変化には非常に敏感なので、アクアポニックスで水質を改善させることで、エビの健康管理に役立てることができます。
その他にも、ミナミヌマエビや、ヤマトヌマエビなども、根についたコケをよく食べてくれるため、アクアポニックス水槽に向いています。
まとめ・水換え不要のアクアポニックスのご紹介! アクアポニックス水槽で飼える魚や育てられる植物について
元々は、農作物の水耕栽培を効果的に行うために、魚の飼育水を養分として使用する有機農法から始まった『アクアポニックス』ですが、現在では、アクアリウム水槽のラインナップのひとつとして定着してきています。
アクアポニックス水槽に使用できる植物や野菜は、通常の水耕栽培に使える種類とほぼ差はありません。アクアポニックス水槽で飼育できる熱帯魚についても、淡水魚であれば、特に制限なく、飼育することが可能です。
また、大量のフンで水を汚しやすい、金魚などの飼育にも、アクアポニックスは向いています。お好みの植物や野菜、そして熱帯魚の組み合わせで、癒しとオリジナリティーあふれるアクアポニックス水槽を作ってみてはいかがでしょうか?
アクアポニックスによる、植物の水耕栽培で得られる水槽の水質浄化作用と、水槽の養分によって育つ植物や野菜の相乗効果は、まさしく一石二鳥の水槽といえますね。
☆手間のかかる水槽の管理については、水槽設置メンテナンスの専門業者に相談してみるのもおススメです。
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水槽のプロ トロピカライターの山田です。
金魚飼育を経てから熱帯魚を飼うようになりました。
趣味は水族館とアクアリウムショップ巡りです。
長年の飼育経験を活かしつつ、アクアリウムに関する様々な情報をお届けさせていただきます。