クーリーローチは東南アジアが原産のドジョウの仲間で、水質の変化に強く丈夫で飼育しやすいために初心者にもおすすめの熱帯魚です。水槽の下層で生活する臆病な性格の魚で、何でも食べる雑食性であることから、クリーナー生体としてよく導入されています。
クリーナー生体と聞くと脇役のように感じますが、クーリーローチはオレンジ色の派手な体色をしており、個体ごとに異なる模様が十分に目を楽しませてくれます。ここでは、クーリーローチの飼育法や近縁種、混泳などについてご紹介します。
目次
クーリーローチとはどのような熱帯魚か?
特徴
クーリーローチはコイ目ドジョウ科に属するローチの1種です。タイやインドネシアなどの東南アジアに分布しており、流れの穏やかな河川や池沼に生息しています。ドジョウ科に分類されているだけあって体形は日本産のドジョウとよく似ており、細長い円筒状の体で口先には数本のヒゲを持ちます。
体長は最大で10cm前後で、体色はオレンジ色を基調に黒色の模様が入ることが特徴です。性格は臆病で夜行性ということもあり、日中は砂の中や物陰に身を隠しています。
食性は何でも食べる雑食性で、生活圏が下層であることからクリーナー生体として導入されることが多い魚種です。寿命は5~10年ほどと長めなので、最後まで面倒を見られるかどうか、よく検討したうえで飼育してください。
近縁種
クーリーローチには近縁種がいくつか確認されており、ショップによっては区別されずに販売されています。ここでは、国内でクーリーローチとして扱われていることがある主な近縁種をご紹介します。
ブラッククーリー・ローチ
東南アジアに広く分布しているローチの1種です。体長は最大で8cmほどとクーリーローチと比較するとやや小型で、全身が黒一色に染まります。
ジャイアントクーリー・ローチ
タイからカンボジアにかけて分布しているローチの仲間です。クーリーローチと比較すると体高が高いことが特徴で、「ジャイアント」と名付けられていますが、体長自体はクーリーローチと同等です。
パンギオ・シェルフォルディ
近年になって輸入され始めた品種で、クーリーローチよりも細かな模様が入ることが特徴です。輸入量自体が少なく、あまり流通していないのでショップなどで見かけることは希です。
クーリーローチの飼育法
水温・水質
クーリーローチを飼育できる水温は20~28℃ですが、低温では白点病が出やすいので、25℃前後に保った方が良いでしょう。夏と冬はそれぞれ温調機器を用いて保温してください。
水質に関しては適応できる範囲が広く、pH6.0~7.0程度までの弱酸性から中性で飼育が可能です。特に弱酸性の軟水を好み、適した水質で飼育すると発色が良くなることが知られています。
しかし、pH5.0を下回ると他の大部分の熱帯魚にとって不適切な水質となるので、混泳させる場合は注意してください。
水槽・フィルター
クーリーローチは底棲魚ゆえに、床面積がそのまま飼育スペースになるので、適した水槽のサイズは幅が60cm以上のものです。他の生体との混泳を考えないのであれば、高さが低い水槽でも問題ありません。
フィルターに関しては、60cmクラスの水槽ならば、上部式や外部式をおすすめします。底面フィルターを推奨する資料も散見されますが、クーリーローチが潜れるような細かな砂を底床材に導入する場合は砂がフィルター内部に侵入し、ろ過能力が低下してしまうので不向きです。
底砂
クーリーローチは砂に潜る性質を持つので、底砂は導入してあげた方がストレスの少ない飼育環境を作れます。砂に潜る様子を観察したいのであれば、砂粒が小さくて軽い「田砂」などを少し厚めに敷くと良いでしょう。
砂が尖ったり角ばっていると、クーリーローチが怪我をしてしまうので注意してください。熱帯魚用に販売されている砂製品ならば、角が取れたものが選別されているので安心して使用できます。
メンテナンス性を考慮して底砂を厚く敷きたくない場合は、粒が大きい「大磯砂」などの砂利でも問題ありませんが、その時はシェルターや石組みなどで隠れられる場所を作ってあげてください。
一方で、水の硬度を上昇させてアルカリ性に傾けるサンゴ砂や、物理的な力で崩れやすいソイルは、クーリーローチの飼育においては不向きなので留意してください。
エサ
クーリーローチは雑食性なので、エサは何でもよく食べてくれます。人工飼料を中心に、たまにブラインシュリンプや冷凍アカムシなどの生餌を与えると、栄養バランスも良くなり健康的な成育が望めます。
人工飼料はコリドラスなどの底棲魚用に配合された沈下性のものを選択してください。与え方は1日に1~2回、食べ残さない量を与えます。生餌を与えるときはピペットで吸い込んで底砂に撒くか、底棲魚用のエサ入れを用いると便利です。
また、クーリーローチは夜行性なので、消灯時間の前にエサを水槽に入れておくと良いでしょう。食べ残したエサは水を汚す原因になるので、可能な限り取り除いてください。
混泳について
熱帯魚との混泳
クーリーローチは臆病な性格をしているので、クーリーローチを攻撃してこない魚種であれば、様々な魚と混泳が可能です。
まず、同種や近縁種との混泳ですが、その性格から数匹のグループで飼育した方が、落ち着く傾向にあるので混泳は問題ありません。ただし、「クラウン・ローチ」などローチの仲間で大きくなる品種は気性が荒くなるものがいるので、近縁種との混泳は相手を選ぶ必要があります。
他種に関しては、上層を遊泳する魚種とはお互い無関心なことが多いので、混泳相性は良好です。遊泳層が重なるプレコに関しても、大きくなる品種は気性が荒くなる傾向にあります。混泳させたい場合は、小型の品種に限定した方が良いでしょう。
以上のことから混泳相性が良い魚種の例としては、プラティやメダカ、カラシンやアカヒレに加え、オトシンやコリドラス、小型のプレコや同ローチなどが挙げられます。
水草との混泳
クーリーローチは底砂を掘る性質があるので、根張りが弱い水草は引っこ抜かれてしまうことがあります。また、底砂に直接水草を植えてしまうと、底砂のメンテナンス性が低下してしまうデメリットも生じます。
そのため、水草と混泳させたい場合は流木などに活着させたものや、鉢などに植えた状態で導入すると良いでしょう。特に流木に活着させたものを組み合わせると隠れ家にもなり、流木の効果で水質も自然と弱酸性になるのでおすすめです。
活着させやすい種類としては、アヌビアスナナやウィローモス、ミクロソリウムなどが挙げられます。
レイアウトとメンテナンスについて
クーリーローチは臆病な魚種なので、隠れられる場所がないとストレスを受けてしまいます。砂に潜れる状態であっても、シェルターや石組み、水草などで身を隠せる場所は豊富に作ってあげてください。
また、クーリーローチは日本産のドジョウと同様に、時々水面に呼吸をしに来ます。その際に、水槽から飛び出す事故が起こり得るのでフタはしっかりとしてください。そして、クーリーローチの飼育において底砂のメンテナンスは大変に重要です。
同種は比較的に丈夫な魚種ですが、汚れた底砂で飼育していると白点病などの病気にかかりやすくなります。底砂の掃除には市販の底砂クリーナーを用いると手間が省けるので、定期的に底砂の掃除を行い、適した飼育環境を保つようにしてください。
まとめ・クーリーローチの飼育方法について
クーリーローチは丈夫で飼育しやすいため、アクアリウムの入門種としても適しています。その性質からクリーナー生体として導入されることが多い魚種ですが、派手な色合いと個体ごとに異なる模様から、自身が持つ鑑賞性も高いです。
砂に潜る様子などは可愛らしく、水槽の下層を彩ってくれます。これからアクアリウムを始めようとしている方や、下層を彩るタンクメイトをお探しの方は、クーリーローチを飼育してはいかがでしょうか。

水槽のプロ トロピカライターの上原巧です。
魚介類は観賞するのも食べることも好きです。
情報を発信する立場として、正確な情報を分かりやすい文章でお伝えすることを心がけています。
私の記事が皆様のお役に立てれば幸いです。