水槽の設計、というとなんだか大げさに聞こえます。
設計とは言っても、建築士や設計士のような図面を引いて、むずかしい記号だらけの設計図を作るという意味ではありません。
セットで販売している水槽キットに頼らず、自分だけのオリジナル水槽セットを作る、ぐらいのニュアンスで記事を読んでいただければ幸いです。
水槽の設計は、コツさえ掴めば誰でも挑戦することができます。
しかし、気をつけなければならないポイントがあることも事実です。
今回は、アクアリウムのプロ、東京アクアガーデンの営業マンが実際に水槽の設計を行う手順と要所のポイント、そして一番気をつけたい機器類の選定方法にフォーカスしてお話してまいります!
水槽を設計する前の準備
設計に入る前に、まずは大まかな完成形をイメージする必要があります。
一つずつ考えてみましょう!
水槽本体の大きさを決める
これから水槽を設計していくにあたり、一番大事なのが水槽本体の大きさです。
水槽本体の大きさによって、その他のすべての機器の仕様が決まってきます。
水槽の大きさが少し変わるだけで、適合する水槽台のサイズがまず変わりますよね。
総水量も変わるのでろ過装置、ヒーター、クーラーなども合わせて変わってきて…というように、機器選定は水槽サイズをベースに決定していきますので、まずは水槽サイズをじっくり考えましょう!
設置予定場所、予算、中に入れたい生体、作ろうとするレイアウトなど、様々な視点から水槽本体の大きさは考えましょう!
ご希望の水槽サイズが規格外でも、比較的リーズナブルにオーダーメイドもできます!
東京アクアガーデンでは、こちらのサイトからオーダーメイド水槽のご依頼を承っております↓
ろ過方式を決める
水槽本体の大きさが決まれば、次はろ過方式を決めましょう。
理由は、ろ過方式によって水槽本体の設計に影響があるためです。
詳細は後述しますが、オーバーフロー方式だと水槽にOF管を付ける加工をしたり、水槽台の設計にも影響してくることがあるためです。
多くの場合、淡水水槽では外部式フィルターや上部式フィルター、海水水槽の場合はオーバーフロー式を選定します。
他のろ過方式に比べ、オーバーフロー式が一番選定機器が多くなります。
水槽の設計方法
上記の2点が決まりましたら、いよいよ水槽の設計に挑戦です。
細かいところまでじっくり解説してまいりますので、じっくり読んでみてくださいね!
水槽本体の設計
水槽本体の大きさが決まったら、次は細かい仕様を決めていきましょう。
決めなくてはいけないのは以下の点です。
- ガラス製orアクリル製
- ろ過方式による配管加工(配管の大きさ、位置)
- 板厚
ガラス製orアクリル製
水槽はガラス製とアクリル製の二種類がります。
それぞれ一長一短ありますが、最終的にはお好みによって決めればよいでしょう。
ガラス製とアクリル製のそれぞれのメリット・デメリットは下記記事からご確認ください。
上記記事より抜粋すると、
飼育する熱帯魚で選ぶのなら、アロワナなど大型で力の強い熱帯魚を飼育する場合には、割れにくいアクリル水槽を選ぶのが無難でしょう。小型~中型の熱帯魚を飼育、また水草水槽やテラリウムなどに使いたいと言いう場合には、透明度の高いガラス水槽を選ぶといった感じです。
水槽の価格で選ぶのなら、90センチくらいまでならガラス水槽、120センチ以上はアクリル水槽を選ぶことになります。ただし、一体型の水槽の場合、アクリルを使っていることが多い傾向にあります。
このような基準で選ぶこともできます。
じっくり考えて選んでみてくださいね!
水槽の配管加工
オーバーフロー方式にする場合、水槽に配管加工を施す必要があります。
水槽の水を下の濾過槽に落とす為のオーバーフロー管、ろ過された水がポンプの力で水槽に戻るための吐出し管が最低でも必要です。
それに魚や餌が濾過槽に落下するのを防ぐコーナーカバーやOFカバーが必要ですね。
だいたいの目安として、下記の大きさを参考にして配管サイズ(OF管/吐出し管)を考えてみてください。
- 60~90cm・・・40A/13A
- 90~150cm・・・50A/16A
- 150cm~・・・65A/16A
しかしこのオーバーフロー水槽、ものすごく奥が深いです。
こちらの記事でOF水槽の仕組みや設計について、日本一詳しく記述しておりますので、ご確認ください↓
また、アクリル水槽で外部フィルターを使用する場合、フランジ(リブ)と呼ばれる水槽の補強が邪魔して、配管が水槽にかけられないことがあります。
そんな時は、制作の段階でフランジに穴をあけるよう依頼をしましょう!
←こんな感じに穴を開けることができます!
ここに配管やコードを通しましょう。
水槽の設計上、穴を開けられるのは下図の赤い位置だけですので、お気をつけくださいね。
水槽台の設計
水槽の準備ができましたら、次は水槽台の設計です。
水槽と同じくらい目立つ存在である水槽台。
これも、なんでもいいというわけではないのです!
水槽台は、有効内寸に気をつけよう
水槽台は、水槽を置くためのデザイン性だけではなく、中に様々な装置類を収める収納性が求められます。
購入する前に、有効内寸をよく調べましょう。
特にオーバーフロー水槽の場合、濾過槽を収納しなければならないため、有効内寸が非常に重要になります。
水槽サイズによって水槽台の大きさが決まる=有効内寸もこの時点でほぼ決まるので、調整できる部分は少ないですが、設計の時点で水槽台を高く作ると水槽台内部も高さ方向に空間を確保できます。
既製品の水槽台を購入する場合
各メーカーから水槽台が販売されていますが、それらを使用することももちろんOKです!
しかし、OF水槽の場合は天板に穴をあける加工をしなくてはいけない場合があります。
OF管の大きさ、位置をしっかり確認し、OF管より大きめの穴をあけましょう。
穴をあける際は、このような道具が必要です。
自分で穴をあけるのは大変!という方は、最初から空いている商品を選ぶとよいでしょう↓
特注で水槽台を設計する場合
幅、奥行き、高さの指定だけでなく、お好みの材質や色で作ることができ、OFの穴開け加工などもやってもらえる為、おすすめです。
軽微な地震などで水槽がずれ落ちてしまうことを防ぐ落とし込み加工や、キャビネットの扉の方式(蝶番、ボールキャッチ式など)も細かく指定して作ることができます。
世界に一つだけのあなただけの水槽台を作ることができます!
こちらの記事で、特注水槽台の魅力を余すところなく紹介しております。
合わせてご覧ください↓
濾過槽の設計
ちょっとコツがいるのが、濾過槽の設計です。
他の機器類ならまだしも、濾過槽は必ず水槽の真下、つまり水槽台の中に収めなければなりません。
詳細は、やはりこちらの記事からご確認ください。
特に、下記の点に気をつけて設計してみましょう。
- 水槽台の有効内寸を調べ、余裕をもったサイズにする
- 水槽台に収めるその他の機材の大きさも加味する
- 水槽本体の水量の1/4~1/3程度の容量になるよう設計する
1と2については、私も特に注意を払って設計しております。
注文して、届いた濾過槽をいざ収納しようとしたら入らない、なんてことも。。。
有効内寸が何mm、濾過槽とクーラーの幅が何mm、ポンプがあって殺菌灯もあって…。
慎重に設計しましょう!
もしくは、水槽台の有効内寸、クーラー等の機材が既に決まっていたら、業者に依頼するのも一つの手段です。
当然、アクアガーデンもオーダーメイドで濾過槽の設計ができますので、一度お問い合わせください!
水槽機器の選定方法
さぁ、ここまでで設計が必要な準備は完了しました。
水槽、濾過槽、水槽台が決まりましたら、次はいよいよ機器類の選定です。
アクアリウムは様々な機器の働きによって支えられています。
しかし、水槽の水量や大きさによって機器を選定しなければならず、場合によっては計算が必要なこともあります。
今回は、すべての機器の選定方法を徹底定期に解説いたします!
照明の選定方法
照明は、選び方一つで水槽の印象をグンと変える重要なアイテムです。
照明は、下記3点に気をつけながら選定してみましょう!
- 照明サイズ
- 色
- 波長
照明サイズ
すなわち、60cm水槽には60cm水槽用の照明を、90cm水槽には90cm水槽用の照明を使いましょう、ということです。
各社、様々な照明を販売していますが、どの照明も様々なサイズバリエーションがあるはずです↓
ご自身の水槽に合った照明サイズを選びましょう。
また、規格外の水槽サイズであったり、キャノピー(水槽上部かぶせ)を乗せる場合は、少し小さめの照明を選びましょう。
小さめの照明一つで十分な光量を確保できる場合はそれでOK、少し暗いかな?と感じる場合は2つ設置するなど工夫してみましょう!
照明の色
お好みによって決めてもよいのですが、アクアガーデンでは基本的に下記のような色を選定します。
淡水・水草水槽:白系
淡水魚や水草の本来の色を美しく見せます。また白は他の色に比べ、比較的水草の成長を促進させやすい色です。
海水・シクリッド水槽:青、青白系
白い底砂に青白い光が反射し、海の中を演出します。さらに、原色系が多い海水魚の体色を鮮やかに見せます。
その他に、紫系、赤系などいろいろな色がありますが、基本的には上記のような色が多いのではないでしょうか。
外国製の変わったLED照明だと、リモコンで様々な色に変えられる照明もあり、その時の気分次第で色を変えたりしてちょっと面白いかも…?
照明の波長
水草水槽に挑戦する方は、照明の波長に気をつけてください。
具体的には、「水草用」とか「水草水槽専用」とか書かれている照明を購入しましょう。
これらの照明は、水草の成長を促す波長の光を発します。
水草用の照明無しに本格的な水草水槽は不可能だと言ってもいいくらい、水草用照明は重要です。
下記商品は、我々プロも愛用する水草用照明です↓
ろ過装置の選定
ろ過装置は水槽の心臓と言っても過言ではありません。
最悪、照明やヒーター、クーラーは無しでも水槽は機能しますが、ろ過装置がなければ水槽は機能しません。
ろ過装置も様々な種類がありますので、種類ごとに選定方法をお教えいたします!
オーバーフロー式
海水魚、サンゴ、大型淡水魚を飼育する際はオーバーフロー式にしましょう。
最強のろ過能力があるろ過方式です。
設計や配管にややコツがいりますが、ろ過能力もメンテナンスのしやすさもピカイチです。
ただし、水草水槽には向きません。
水草の成長に必要な二酸化炭素はろ過の過程で散ってしまうためです。
オーバーフローの配管接続についてはこちら↓
外部フィルター
ろ過装置界のスーパースターとも言える外部フィルターは、ほとんどの水槽に適しています。
特に淡水水槽を立ち上げるときは、外部フィルターを選択しておけばほぼ間違いはないでしょう。
〜60cm水槽:エーハイム2213
60〜90cm水槽:エーハイム2215
90〜120cm水槽:エーハイム2217
一般的な規格の水槽だと、このような選定が目安になります。
ただし、強力なろ過能力を必要とする海水魚水槽に使用する場合は、通常通りの選定だとろ過能力が劣ってしまう可能性がありますので、あえてワンランク上の機種を選定したり、複数台設置したり等の工夫が必要となってきます。
上部フィルター
上部フィルターは、文字通り水槽上部に設置するろ過装置です。
ウールマット面が非常に広く、物理ろ過能力に特化したろ過装置です。
糞が多い大型魚の飼育におすすめです!
選定は、基本的に水槽の幅に合った物を選びましょう。
上部フィルターについてはこちらの記事で特集しておりますので、合わせてご確認ください。
ポンプの選定
オーバーフロー水槽の場合、ポンプを使い濾過槽の水を水槽に戻し、循環させなければなりません。
しかし、どれくらいのパワーのポンプを選定すればいいのでしょうか?
アクアガーデンでのポンプ選定の基準をご紹介いたしますので、参考にしてみてください!
ポンプの流量計算
水槽の総水量とポンプの流量をきちんと計算し、適したポンプを選定しましょう。
どれくらいのパワーのポンプがいいかというと、5回転/時間となるパワーのポンプを選ぶと良いでしょう。
つまり、濾過槽も含めた総水量が、1時間に5回循環するくらいのパワーのポンプを選ぶという意味です。
例えば、総水量が100Lだとすると、1時間に5回転なので、1時間に500L(1分間に8.3L)の水を吐き出すパワーのポンプを推奨いたします。
ただし、注意点があります。
ポンプは、水を吐き出す高さが高くなるほどパワーが落ちます。
高さとパワーの相関表が説明書に必ず記載されていますので、よく確認しましょう!
ポンプの選定について、こちらの記事でさらに詳しく解説しているので、じっくり読んで選定の参考にしてください↓
ヒーターの選定
ヒーターは、水槽の温度を一定に保つための重要なアイテムです。
しかし、水量に適したワット数のヒーターを使わないと劣化が早くなったり、誤作動を起こしたり、故障してしまったりと思わぬトラブルの原因となります。
水量によって推奨のワット数が決まっていますので、下記一覧を参考に選定してみましょう!
- 水量150〜200L/500W
- 水量100〜150L/300W
- 水量60〜100L/200W
- 水量40〜60L/150W
また、ヒーターには必ずサーモスタットを付けるか、サーモスタット付きヒーターを選びましょう!
サーモスタットは水温が設定の温度になったら自動的にヒーターの電源をOFFにする装置です。
これがなければ、際限なく加温を続け水槽が茹だってしまうことになるのでご注意を!
クーラーの選定
クーラーの選定も、ややコツがいりますので、気をつけながら選定しましょう!
気をつけないといけないのは、以下の3点です!
- 水槽の総水量
- 外気温
- 損失熱量
メーカーの推奨どおりに機器選定ができていなかった場合、故障をしたときのメーカー保証を受けられない可能性もありますので、手を抜かずにチェックしましょう!
水槽の総水量
クーラーは、機種ごとに冷却水量目安が決まっています。
メーカーHPや説明書をしっかり読んで、ご自身の水槽の水量に適したクーラーを選定しましょう。
その際考えなくてはいけない水量というのは、総水量です。
水槽本体、濾過槽やろ過装置に入る水の量まできちんと加味して計算しましょう。
外気温
クーラーは外気を吸い込み、水が循環している管に風を当てて水を冷やします。
そのため、吸い込む空気の温度=外気温によって冷却能力が左右されます。
クーラーは外気温ごとの冷却能力の目安がありますので、水槽を設置する場所の気温を考慮して選定しましょう。
これも、メーカーHPに記載があります。
外気温が高すぎる場所に水槽設置をする場合、ワンランク上のクーラーを選定しなければならない、ということがあるかもしれませんね。
損失熱量
うっかり忘れがちですが、非常に重要なのがこの損失熱量という考え方です。
電気で動く水槽設備は、全て稼働の際に熱を発します。
すなわち、稼働させるだけで水温を上げてしまうということです。
この発熱を損失熱量といいます。
クーラーメーカーのゼンスイでは、HPから損失熱量を簡単に計算できるようになっていますので、忘れずに計算しましょう!
水槽設置時の注意点
さぁここまでできたらあと一息です!
道具は揃いました。
あとは、水槽を設置する際の注意点を確認しましょう。
細かいところまで気にし始めたらキリがないのですが、まずは下記3点に気をつけましょう!
- 水槽一式の総重量
- 壁からの距離
- 直射日光
水槽一式の総重量
水は想像以上に重いです。
小型水槽ならほとんど問題はないと思いますが、120cmを超える大型水槽の場合、総重量が300kg近くなるものもあります。
大型水槽を置く場合、設置予定場所の耐荷重を確認しましょう。
オフィス等ならほぼ問題はないかと思いますが、木造の住宅などの場合は、念の為確認したほうが良いでしょう。
状況に応じ、床の補強が必要な場合もあります。
トロピカでは、水槽本体の重量の自動計算ができますので、こちらの記事も是非お使いください↓
壁からの距離
壁にベタ付きにはしないようにしましょう!
水槽から発生する湿気が直接壁に当たり、壁紙がふやけてしまったり、カビが生えてしまったりすることがあります。
また、壁に密着させて配置するとクーラーの排熱が抜けずに溜まってしまい、クーラーの故障の原因になってしまうこともあります。
最低でも7cm以上は離して設置するようにしましょう!
直射日光
直射日光にも気をつけましょう!
直接日光が水槽に当たると、水温が一気に上昇してしまったり、コケが大発生してしまったり、いいこと無しです。
窓際を避けるだけでなく、時間の経過や季節の変化によって変わる日光の入り具合も見極めて設置しましょう。
水槽の設計方法 まとめ
いかがでしょうか?
水槽の設計、と聞くと難しく思えますが、一つ一つ考えていくと、すべての設計や選定には根拠があることがわかります。
つまり、「こんな水槽にしてみたい」と思った時点でもう設計はほとんど完了しているようなものです。
あとはそれを一つずつ形にしていくだけなのです!
自分で作り上げた水槽は、他の誰も持っていない世界にひとつだけの水槽になります。
出来上がったときの感動もまた大きいですよね。
当記事を参考に、オリジナル水槽の設計に挑戦してみてください!
また、不明点があったり、設計を依頼したいときは東京アクアガーデンにお問い合わせください!
全力でサポートいたします!
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トロピカプレゼンテーターのぶっちーです(。-`ω-)
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