海水魚の病気の治療法として「淡水浴」を知っていますか?
「なんとなくは知っているけれど、具体的な方法がわからない」「普通の淡水でいいのか不安だ」など、疑問を抱えている方も多いかと思います。
また、新規で購入した海水魚に寄生虫がついていたらイヤだな…という場合にも淡水浴は有効です。
こちらのページでは海水魚の寄生虫排除・病気の治療に効果的な「淡水浴」について、効果のある病気や寄生虫、具体的な手法、注意点などについて詳しくご説明していきます。
目次
淡水浴で期待できる効果は?
では、淡水浴を行なうとどんな効果があるのかを見ていきましょう。
寄生虫を駆除できる
海水魚には寄生虫がつくことがあります。そういった寄生虫は薬浴よりも淡水浴のほうが効果があるケースもあるので、病気の疑われるときは淡水浴を検討しましょう。
この淡水浴は寄生虫を水槽に持ちこまないための予防策として、購入してきたばかりの海水魚や、海で採取した魚にも使えます。
トリコディナ
クマノミによくつく寄生虫で体表を食べてしまいます。症状としては、体表面に薄い膜が張ったように見える、体色がこれまでと違うなどが挙げられます。
比較的病状が早く進行してしまうので、トリコディナであるとわかったらすぐに淡水浴を行ないましょう。
白点病
白点寄生虫による病気です。体表に白い点々が出てきます。(ヒレから出ることが多いです)放っておくと魚の栄養分を吸われ、魚はやがて死に至るという怖い病気です。
ハダムシ
魚の目が白く濁ったようになっていたら、ハダムシがついた可能性があります。
寄生虫そのものは透明なので肉眼で確認することはできません。
ウーディニウム病
白点病よりもちいさな点々がエラや体表に現れます。粉を振ったように見えるのが特徴です。
体がかゆいのか、ウーディニウム病の魚は岩などに身体をこすりつけるしぐさをします。
病状の進行が早いので、発見したら出来るだけ早く淡水浴を行ないましょう。
病気の治療・病気の元になるウイルスなどを死滅させる
寄生虫だけではなく、病気や、病気の元になる菌を死滅させることもできます。
リムフォシスティス
ウイルスの感染によってかかる病気です。
傷口からかさぶたのような、白いもこもこしたものができて、放っておくとどんどん広がります。白点病の場合は白い点が出たり消えたりするのですが、このリムフォシスティスは白いもこもこがどんどん大きくなっていくのが特徴です。
淡水浴の具体的なやり方
淡水浴がさまざまな病気の治療に有効であることがわかっていただけたかと思います。
こちらの項では具体的に、淡水浴を行なう方法・注意点についてご説明します。
準備するもの
以下の品を用意して淡水浴を行ないます。
- カルキ抜き剤
- 淡水浴を行なう容器:清潔なバケツなどでもOKですが透明な水槽のほうが魚の様子をよく観察できます
- ヒーター:淡水を温めるために
- 水温計
- pHメーター
- pH調整剤:淡水のpH調整はとても大切です
- エアレーションの装置
- 海水魚をすくう容器:網は体表を傷つけやすいので、プラケースなどの容器ですくいましょう
いよいよ淡水浴の実践
ではこちらで具体的な手順をご説明します。
0:海水魚に餌をあげる
これは淡水浴の準備にあたります。
淡水浴は海水魚にダメージを与えますので、淡水浴の後は餌を食べてくれなくなる場合があります。淡水浴を行なう2時間ほど前には餌を与えておきましょう。
1:容器に淡水を用意する
淡水浴させる容器に、カルキ抜きをした水を入れ、ヒーターで水温を調節します。
水温は元の水槽と同じにしましょう。
2:pHを調整する
淡水のpHを調整します。
こちらも元の水槽と同じpHにするのが望ましいです。そうしないと魚にとってショックが大きいですからね。
一般的にはpH8.1~8.3くらいの場合が多いでしょう。
こうして調整した淡水はエアレーションで酸素を多く含ませます。エアレーションは15分程度で大丈夫です。
3:魚を淡水槽に入れる
容器でそっと魚をすくいます。ヒレや体表に傷をつけないように十分注意しましょう。
そして魚を淡水槽にいれて泳がせます。時間は小型の海水魚で1~3分、大き目のものであっても7分以内で終わりにしましょう。
淡水浴中は魚の様子をよく観察し、著しく魚の元気が無くなったり、様子がおかしいとなったときは淡水浴は中止しましょう。
淡水浴中に白いものがポロポロと落ちた場合はそれが寄生虫です。寄生虫の卵などが海水水槽内にある可能性が高いので、魚がいた水槽の水換えも行なってください。
一度の淡水浴ですべての寄生虫・ウイルスが死滅するわけではないため、5日ほど続けて行なうことが望ましいです。ただし魚の元気がなくなっていたら様子をみて調整してください。
4:魚の淡水槽に海水を入れていく
淡水浴が終わったらすぐに海水槽に戻す人もいますが、急激な濃度変化は魚にとってストレスになりますので、慎重に行ないたい場合、水合わせを行ないます。
淡水浴を行なっていた容器に少しずつ海水を加えていきます。そして元の海水槽と同じ濃度になったら元の水槽に戻してあげましょう。
まとめ:淡水浴で海水魚の病気を治そう
海水魚の病気を治す淡水浴について説明させていただきました。
海水魚は淡水魚にくらべて病気になりやすいので、毎日病気でないかチェックしてあげ、早期発見・早期淡水浴で健康に飼育してあげましょう。
また、今後は病気にさせないよう、様々な点に注意して飼育しましょう。

水槽のプロ トロピカライターの高井です。
遺伝子学が専門分野で、高校の理科教師として、日々、生徒たちに自然の偉大さを教えています。
アクアリウム全般が好きで、現在はアベニーパファーのトリコ。
ピンセットでアベニーにアカムシを食べさせるのが日々の癒しです。