熱帯魚がかかる病気はいくつかありますが、こちらのページではエロモナス菌が原因となる病気について情報をまとめます。
エロモナス菌とはどんな菌なのか、かかったらどんな症状が出るか、どんな薬を使うべきなのか、具体的な治療法、どうしたらかからないで済むかなど、エロモナス菌について細かく説明していきます。
大切な熱帯魚をエロモナス菌から守れるように、病気になる前から一読しておくと良いかもしれません。
目次
エロモナス菌とはどんな菌か
敵を倒すにはまず敵を知ることからはじめましょう。
エロモナス菌とは淡水ならどこでもいる細菌です。
2つの種類があり、鞭毛(移動するためのしっぽのような毛)を持ち、動くことが出来る運動性エロモナスと、鞭毛がないため自力では動かない非運動性エロモナスに分けられます。
運動性エロモナスは25~30℃の水温でよく繁殖しますが、非運動性エロモナスは20℃でよく繁殖します。
熱帯魚たちが健康であればエロモナス菌に冒されることはないのですが、何らかの悪条件下では感染し、その結果病気になります。
感染したらこんな症状が出ます
ではそんなエロモナス菌に熱帯魚が感染したら、どうなってしまうのでしょうか。
赤い斑点が出たら:赤斑病
運動性エロモナス菌に感染した場合、次のような症状が現れます。
動画のように、体の一部が赤くなります。ですが初期症状としては全体が白っぽくなりますので、よく観察してあげてください。肛門が充血し、赤くなることもあります。
重症になるとウロコがはがれてしまいます。
ウロコが逆立つ:松かさ病
動画の金魚は明らかにウロコが逆立っている様子がわかりますね。こちらも運動性エロモナス菌によるものです。
エロモナス菌の感染症状では充血が見られるため、体表に赤い斑点が出ることもあります。食欲をなくしておとなしくなってしまう場合が多いです。酷くなると眼球が飛び出るケースも見られます。(ポップアイと呼ばれます)
体表に穴があく:穴あき病
体表に穴があいてしまう病気です。これは非運動性エロモナス菌に感染した場合に見られる症状です。
初期症状では穴はあいておらず、充血(赤斑病のような)から始まります。
そこからウロコがはがれ、穴があいたような状態になってしまいます。
エロモナス菌に感染したときの治療法
運動性エロモナス菌か非運動性エロモナス菌かで違う
運動性と非運動性の一番の違いは、好む水温です。
前述の通り、運動性は25~30℃を好みますので、運動性に感染したと思われる場合は水温を少しずつ下げ、22℃くらいにしてやるのが良いでしょう。
非運動性は逆に20℃くらいを好みますので、少しずつ水温を上げ、25℃くらいを保つのが良いでしょう。
塩水浴・薬浴を行う
原因が細菌なので、細菌に効果のある薬を使うと効果的です。
パラザンDやグリーンFゴールドが良いでしょう。
薬剤が手元にない場合は、塩水浴も効果があるとされています。ただし初期症状のときにしてください。
塩水浴の場合は、塩分濃度を0.3~0.5%の濃度に調整します。(食塩3~5グラムに水を加えて1リットルにする割合です。ちなみに小さじ一杯の食塩が6グラムです)
一週間くらい薬浴もしくは塩水浴をさせて様子を見ましょう。
殺菌灯を用いる
海水水槽に良く用いられる殺菌灯ですが、淡水水槽にも使用できます。
少々高価ですが、効き目はありますのでいざという時のために1つ用意しておくと安心ですね。
殺菌灯のせいで、有用なバクテリアまで死滅してしまうか心配になるかもしれませんが、有用なバクテリアのほとんどはろ過フィルター内に住んでいます。フィルター内にまでは光は届きませんので、殺菌灯の影響は受けずに済むでしょう。
ただ、上で説明したとおり、エロモナス菌は普通に水中にいる細菌です。根絶やしにするという意識ではなく、あくまでも病気の魚がいるときに、病気の魚の体表のエロモナス菌を死滅させるというイメージで使いましょう。
エロモナス菌に感染させないために
せっかく飼育している熱帯魚たちをエロモナス菌から守るためにできることをあげておきます。
定期的に水換えを
エロモナス菌は通常水の中にいる細菌ですが、水換えをしないとどんどん増殖する恐れがあります。定期的に水換えを行い、エロモナス菌の増殖を防ぎましょう。
熱帯魚にストレスをかけない工夫を
熱帯魚にも私たち人間と同じ「免疫」システムがあります。体外に侵入する細菌やウイルスを殺す仕組みですね。
ですがストレスがたまると免疫がうまくはたらいてくれません。熱帯魚にストレスをかけないような飼育環境を作ってあげましょう。
気をつけるべきは以下のような点です。
過密飼育をしない
熱帯魚を過密飼育すると、よくないことがたくさん起こります。
- 水が汚れやすい
- 魚どうしでケンカをしやすい
- 弱い魚が餌を食べられないような状況になる
魚同士のケンカが起これば、傷ついたヒレや体表からエロモナス菌が侵入する恐れが高まります。
ストレスがかかっても、病気になりやすくなります。一匹病気になればそれが他の魚に感染するケースもありますので、健康を保てるような密度で飼育しましょう。
隠れ場所を作ってやる
熱帯魚を複数飼育すると、どうしても力の強弱が生まれ、弱い魚はいつもつつかれたり、追い回されたりといったことが起こりがちです。
それを少しでも緩和するために、魚が隠れられる場所を作ってやりましょう。
流木や水草、アクセサリーがあればそれの影に隠れることができます。
水草はうまく育てる自信がない、ケアが負担だという場合は人工水草もオススメです。今は自然の水草かと見間違うような精巧なものも多数販売されていますので、検討してみてはいかがでしょうか。
静かな時間を作る
熱帯魚も「眠る」時間が必要です。
静かで暗くなる時間を設定してあげると熱帯魚はゆっくりと身体を休めることが出来ます。
まとめ:エロモナス菌にかからないように対策しよう
一番いいのはエロモナス菌に感染しないことですね。
そのためには熱帯魚の健康を保つ必要があります。しっかり水槽を管理し、よい環境で飼育してやりましょう。
また、万が一病気にかかってしまったときのために、毎日魚の様子をよく観察し、いざとなったら対応してやれるように器具や薬剤を準備しておいてください。
大切な熱帯魚たちを病気から守ってあげましょう。

水槽のプロ トロピカライターの高井です。
遺伝子学が専門分野で、高校の理科教師として、日々、生徒たちに自然の偉大さを教えています。
アクアリウム全般が好きで、現在はアベニーパファーのトリコ。
ピンセットでアベニーにアカムシを食べさせるのが日々の癒しです。