海水魚のなかでも、アイドルのような位置付けとされている小型ヤッコという種類がいます。
目がくりくりしており愛嬌があり、さらにカラーバリエーションも豊富で大変人気があります。
コンスタントに入荷する種から年に数回しか入荷しない種、そして、もう二度と入荷が見込めないレアフィッシュなど存在し、そのような理由から小型ヤッコは、初心者からマニアに至るまで幅広い海水魚ユーザーから高い支持を得ています。
しかし、小型ヤッコの種によっては飼育が簡単な種類から、ややコツが必要な種類もいるため購入時は正しい知識を持っていなければなかなかうまく飼育ができません。
ここでは、筆者が経験し学んだ小型ヤッコを上手に飼育するためのテクニックを魚種の紹介とともに解説していきます。
目次
小型ヤッコの種類
小型ヤッコは別名ケントロピーゲとも呼ばれており、観賞魚ルートで入ってくる種類は20種類前後です。
ここでは、そのなかでもコンスタントに入荷があり、筆者のおすすめする代表的な小型ヤッコをいくつかご紹介していきます。
フレームエンゼル
代表的な小型ヤッコと言えば、フレームエンゼルが挙げられます。
海水魚では珍しい、真っ赤な体に黒い縦線が入っている模様が美しいこの種は、はじめて海水魚を飼育する人から、ベテラン飼育者に至るまで大変人気のある小型ヤッコです。
一言で言えば、かっこいい魚と言えます。
人工の乾燥餌にも慣れやすいため、飼育も比較的簡単な種類です。
フレームエンゼルを購入する場合は元気に泳いでいるかの他に、口先が白く変色していないか注意して購入しましょう。
フレームエンゼルの異常は、経験上口先に出やすいと感じています。
最近では入荷が稀になりましたが、ハワイから入荷する便でとくに真っ赤なフレームエンゼルを、ハワイアンフレームエンゼルという呼び方をしており、一般のフレームエンゼルよりさらに高価な値段で取引されています。
実物を何回も見たことがありますが、別格に赤く光っており非常に美しい色彩です。
もし、次に手に入る機会があったら購入したいですね。
レモンピール
フレームエンゼル同様、代表的な小型ヤッコの1種です。
美しい原色の黄色い色彩に、目の周りにブルーのアイシャドウがあるこの個体は非常に可愛らしく男性だけでなく女性からも高い人気があります。
レモンピールのような黄色い個体は、メタハラなどの強光照明を当てても、日焼けを引き起こす心配がないため、長年飼育していても綺麗な体色を維持しやすいところも大変魅力的です。
飼育難易度についても、フレームエンゼル同様人工の乾燥餌に慣れやすく飼育しやすい種です。
レモンピールを購入する際は、体色が鮮やかに発色している個体を選びましょう。
わたしの経験では、レモンピールは調子を崩していると肌が白っぽくなっている個体が多いです。
また、レモンピールはナメラヤッコと自然界で交雑することがあり、ナメラピールという名前で入荷することがあります。
そのなかでも稀に、レモンピールの体色に蛍光ブルーのスポットが散りばめられて入っている個体おり、レアフィッシュとして非常に美しく価値のある個体もいます。
他にもココスピグミーエンゼルとの交雑で、ココスレモンという種類もいますが、レモンピールのアイシャドウが消失してしまう個体が多いことから、レアではありますが美しさではやや見劣りしてしまうことがあります。
ソメワケヤッコ
体色を紺色と黄色で半々に切り分けた色彩を持った非常に美しい小型ヤッコです。
小型ヤッコのなかでも、美しい色彩を持っているにも関わらず価格も安価なためコストパフォーマンスがとても高い種類と言えます。
正直、入荷状況が良くコストが抑えられているのを分かってはいますが、ここまで美しい種類が1,500円前後で手に入ることが未だに不思議で仕方ありません。
飼育は、やや神経質なことがあり導入当初は人工の乾燥餌を食べない場合もあります。
自分で餌付けをすることに不安がある方は、購入時に乾燥餌を食べている個体を選ぶことをおすすめします。
ルリヤッコ
淡い瑠璃色の体色を持った小型ヤッコです。
決して派手な種類ではありませんが、瑠璃色がとても美しく品があり渋いヤッコです。
飼育は小型ヤッコのなかでも最も簡単な部類で、人工の乾燥餌に餌付くのも早い個体がほとんどです。
また、カラーバリエーションも豊富です。そのなかでとくに美しいカラーバリエーションを持つのが、オレンジ色が多く入り込むインドルリヤッコという地域変異個体です。鮮やかなルリヤッコを狙うかたはインドルリヤッコを購入することをおすすめします。
シマヤッコ
シマヤッコはシンプルな白黒の縦縞の色彩を持った個体です。
小型ヤッコのなかでも体高のある種類で、以前はパラケントロピーゲと呼ばれ別種とされていましたが、今はケントロピーゲと同属にされていることが多くなりました。
シマヤッコは、国内のベテランアクアリストから大変人気のある種類で、人気の理由は飼育が難しいというのも面白いところです。難しいシマヤッコを飼育しているというステータスがそうさせているのですね。
なぜ、飼育が難しいのかという理由は、神経質で臆病なため人工の乾燥餌を食べにくいからです。
購入前の個体で人工餌を食べていても、自宅に持ち帰り水槽に放せば環境の変化を敏感に感じて餌を食べなくなることもよくあるケースです。
また、経験上神経質によるものか、他の小型ヤッコと比較し白点病にかかりやすい気もします。
白点病にかからないよう、水槽の水質を万全に整えてから迎えるようにしましょう。
シマヤッコもカラーバリエーションがあり、白と黒の縦縞の間に黄色い線が入るバヌアツ産のシマヤッコはとくに人気があります。
スミレヤッコ
シマヤッコ同様、パラケントロピーゲに属しており、神経質で人工の乾燥餌を食べにくい種です。
黄色と紺色のツートンカラーが斜めに入っていることが基本ですが、色合いに個体差があるため購入する際は、色合いを見て決めるのも醍醐味でしょう。
飼育方法はシマヤッコと同等と考えていただければ問題ないです。
小型ヤッコの飼育ポイント
小型ヤッコの飼育ポイントとして大きく3つあります。
それぞれ、細かく解説していきます。
小型ヤッコの餌
小型ヤッコに与える餌は、人工の海水魚用乾燥餌を与えるようにしましょう。
乾燥餌は栄養バランスが取れているため、健康で長生きさせることに優れています。
ただし、シマヤッコやスミレヤッコ、また、購入後すぐの小型ヤッコは乾燥餌を食べない種もいます。
そんなときは、冷凍のアルテミアまたは、冷凍ブレインシュリンプを与えて痩せないように気を配りましょう。
しかし、冷凍餌だけでは、栄養バランスが不足するため長期的には維持することは困難です。
冷凍餌を食べるようになったら、少しずつ乾燥餌を混ぜ合わせながら慣れさせていき、最終的には人工餌のみで飼育できるようにすることを目指しましょう。
小型ヤッコのレイアウト
小型ヤッコのレイアウトは、ライブロックやサンゴで複雑にレイアウトされた隠れ家の多いレイアウト水槽を心がけましょう。
小型ヤッコは全体的に少し神経質な面があるため、隠れ家が多くあるレイアウトを非常に好みます。
とくにライブロックをつつくと、摂餌だけでなくストレス解消行動となるため、ライブロックで複雑に入り組んだレイアウトを作ると良いです。
小型ヤッコはサンゴとの共生もしやすい種ですし、スミレヤッコやシマヤッコなどの神経質な種にはサンゴ水槽で管理するとスムーズに飼育維持できることが多いです。
※ゴールデンエンゼルは除く。
小型ヤッコの混泳
小型ヤッコは他の魚と混泳をさせても問題ない種類が多いですが、小型ヤッコ同士の混泳には注意が必要です。
とくに、同種間ではうまくペアにならない限り激しい喧嘩をするので混泳はほぼ不可能です。
それ以外にも、色やサイズが似たもの同士だと喧嘩の原因となります。
もし混泳をさせるなら、先に小さい個体を入れて餌を食べるようになるまで水槽に慣らします。その後、色彩が異なるやや大きい個体を入れると混泳できる確率は上がります。
ただ、スミレヤッコやシマヤッコはやや例外で、ほかの魚と混泳させる確率を少しでも上げたい場合、先にシマヤッコ、スミレヤッコを入れて、その後からその他の魚を入れことをおすすめします。
まとめ: 海水魚で人気のある小型ヤッコ! 種類と飼育方法まで徹底解説します
いかがでしたか。
小型ヤッコについて、わたしの経験を多く取り入れたオリジナル飼育方法を解説しましたが、参考になりましたでしょうか。
海水魚水槽を設置し、専門店や他のアクアリストの水槽をご覧になる機会があるとおもいますが、そこでこの魚かわいい、かっこいいとおもう種類に小型ヤッコが多いことかとおもいます。
とても魅力のある美しくかっこいい種類ではありますが、一歩飼育方法を誤れば飼育がうまくいかないことも多いはずです。
小型ヤッコを飼育しようと考えた時や、なかなか飼育がうまくいかず悩んでいる時に、本記事が参考となり解決されることを祈っています。

熱帯魚業界歴もうすぐ20年!
海水やアクアテラリウムなど、さまざまな水槽を担当してるアクアリストです。
アクアリウム専門のYouTubeチャンネル『アクアリウム大学』も配信中!
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