岩石はアクアリウムにおいて重要な役割を果たしています。石組みレイアウトが一つあるだけで水槽内の情景がぐっと引き締まり、非常に見栄えの良いものに変化するからです。
しかし、天然の岩石を導入することは、メンテナンスの煩雑化や有害生物の侵入を心配して、敷居が高く感じている方もいるのではないでしょうか。
そんな方たちにおすすめしたいのが擬岩です。擬岩と聞くと「安っぽい」・「不自然」など、ネガティブな印象を抱くかもしれませんが、導入するメリットは大きく、現在では本物と見分けがつかないほど精巧な商品も市販されています。
現に、水族館などで水槽のレイアウトとして使用されている岩石は、大部分が擬岩に置き換えられています。ここでは、擬岩を使用した水槽レイアウトの例や、擬岩のメリット・デメリット、擬岩の自作法などをご紹介します。
目次
擬岩を使用した水槽レイアウト
百聞は一見に如かずということで、まずは擬岩を用いた水槽レイアウトをご覧ください。上の写真は石組みレイアウトがアクセントになっている奇麗な淡水魚水槽ですが、この水槽で用いられている岩石は擬岩です。
擬岩とは読んで字のごとく、天然の岩石を模して人工的に作成された構造物ですが、擬岩と聞くと「安っぽい」だとか「不自然になりそう」など、ネガティブな印象を抱く方もいるかもしれません。
しかし、最近では実物と見分けがつかないほどの質感を表現した商品も数多く市販されており、質が良いものだと本物のライブロックなどよりも高額で販売されています。
詳しくは後述しますが擬岩は管理が楽なことから、現在では水族館などの施設でも普通に導入されており、レイアウトの要として利用されています。
擬岩のメリット
水質悪化の心配がない
これは海水水槽に導入するライブロックについて言えることですが、ライブロックは購入後に「キュアリング」と呼ばれる作業を行う必要があります。さもないと、微生物の死骸などが飼育水の水質を急速に悪化させてしまうからで、その作業は結構な手間がかかります。
その点、擬岩であれば表面に付いているゴミや、残存している化学物質を洗って落とすだけで良く、水槽への導入時にあまり手間をかけずに水質の悪化を防止することが可能です。
半永久的に使用が可能
これもライブロックに関係が深い事柄ですが、ライブロックは一定の期間使用すると交換が必要になります。なぜなら、ライブロックを取り巻く生物相が変わり、飼育環境が崩壊するほどのバランスの変化が生じる可能性があるからです。
水槽という狭い生態系下では、海とは異なる環境での生存に適さなかったデリケートなものや、生存競争に負けた微生物から死滅していき、それらの死骸やデトリタスはライブロックの微細な穴に詰まってしまいます。
自然下であれば、無尽蔵とも言える量の海水で満たされているので、一塊のライブロックの生物相が変化したところで水質に与える影響は微々たるものです。
やがて死骸やデトリタスは分解されて新たな生物相ができ上がりますが、水槽での飼育ではその前に環境が崩壊してしまう危険があるのです。
その点、擬岩は微生物が付着しておらず、水槽での生存に適合した生物相が最初から形成されるので、適切なメンテナンスを行えば半永久的に使用可能です。
汚れたら洗って再利用ができる
淡水水槽に入れる普通の岩石、海水水槽でも微生物が付着していないデスロック、それから擬岩については汚れが目立ってきたら洗剤などで洗浄して再利用が可能です。
しかし、ライブロックの場合は汚れたからと言って同じことをしては、水質の浄化に貢献していた微生物まで死滅させてしまいます。よって、過度に汚れたライブロックは基本的には交換しなければなりません。
一応、汚れたライブロックも洗浄すれば再利用が可能ですが、その場合はデスロックの状態になってしまうので、擬岩を入れる時と同様に一から微生物を定着させることになります。
有害生物の侵入を防げる
ライブロックの場合は言うまでもなく、淡水水槽でも導入するための岩石をご自身で採取してきた時は、有害生物の侵入に注意しなければなりません。
ライブロックだと「セイタカイソギンチャク(カーリー)」や「ウミケムシ」などが代表的で、淡水用の岩石では「スネール」や「プラナリア」などが有名です。
これらの生物は鑑賞性を損ねるだけでなく、中には飼育している生体に害をなす種類もいるので、天然の岩石類を導入する際は必ず前処理が必要です。
大型水槽では実物で組むよりも軽くて一般的に安価
海水・淡水問わず、水族館などの大型水槽で天然の岩石を用いてレイアウトを組むとなると、重量が無視できなくなり、床を補強する必要性が生じたりメンテナンス性が悪化してしまいます。
また、ライブロックは結構高価なので、ライブロックのみを用いてレイアウトを組もうとすると、コストが膨れ上がります。
一方、擬岩ならば天然の岩石よりも軽量で一般的には安価なので、メンテナンス性やコスト面での問題を解消できます。
擬岩のデメリット
本物よりも高価な商品もある
擬岩と一口に言っても商品なので質に関しては千差万別です。中には天然岩石と見分けがつかないほどの精巧なものもありますが、当然ながら質の良いものほど高価です。商品によっては天然岩石よりも高額の商品もあるので注意してください。
形が決まっている
擬岩はメーカーから発売されていますが、一つ一つ手作りしているわけではなく、プロダクトとしてある程度まとまった数量を作成しているので、同じ商品であれば形が決まっています。ご自身のイメージに合う擬岩が、必ず入手できるとは限らない点にも留意してください。
軽くて滑りやすいので組みにくい
先にも述べましたが、擬岩は天然岩石よりも軽く、材質も樹脂などで作られている商品が多いです。そのため、天然岩石よりも滑りやすくて座りが悪いのでイメージ通りに組めなかったり、組めたとしても運用しているとすぐに崩れてしまう場合があります。
擬岩を自作しよう
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ここまでで説明した通り、擬岩にはメリットも多いですが、イメージに合うものが入手できないと利用する気になれない方もいるのではないでしょうか。実は、アクアリストの中には自分のイメージに合うような擬岩を自作している方もいます。
擬岩の作り方としては主に、モルタルを使用する方法とシリコンを用いる方法があります。ここでは、モルタルを用いた擬岩の作り方について簡単にご紹介します。
材料
- スタイロフォーム(発泡スチロール)
- 下地用モルタル
- 造形モルタル
- 水系塗料
作り方
- スタイロフォームを削り出す
- イメージに合うように削り出したスタイロフォームを組んで固定する
- 下地用モルタルを2で組んだものに塗る
- 造形用モルタルを塗る
- モルタルのアク抜きを行う
- 水系塗料で着色する
スタイロフォームは発泡スチロールでも代用できます。スタイロフォームを固定するものは接着剤でも良いですし、竹串のようなものでも大丈夫です。下地用モルタルと造形用モルタルを塗る工程では、それぞれ完全に乾燥させるように最低でも1日は天日干しなどをして間を置いてください。
モルタルのアク抜きは専用のアク抜き剤を用いても良いですが、数日間空気に触れさせておくことでも可能です。水系塗料で着色した際は、塗膜が形成されるまでしっかりと乾燥させてください。塗膜の形成が不十分だと耐久性が下がります。
また、着色する時は単色で塗るよりも、白色などの明るい色も取り入れると、より自然な仕上がりになります。
その他にも、風化を表現する「エイジング」を造形と着色の工程で行うと、天然岩石の質感に近づきます。エイジング次第で出来栄えがかなり異なるので、色々試して理想の擬岩作りに挑戦してみてください。
まとめ・擬岩を用いた水槽レイアウトとメリット・デメリットについて
岩石がアクアリウムにおいて果たす役割は大きく、石組みレイアウトが一つあるだけでも、ずっと見栄えが良くなります。メンテナンスの煩雑化や有害生物の侵入を恐れて、天然岩石の導入にしり込みをしている方でも擬岩であれば安心して導入できます。
市販されている擬岩がイメージに合わないようであれば自作することも可能です。ぜひ、擬岩を導入して凝ったレイアウトに挑戦し、より深くアクアリウムを楽しんでみてください。

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