金魚水槽やメダカ水槽など、アクアリウムではコケ対策として水槽に入れられることの多いエビですが、鑑賞用の種類はカラフルでエビだけの水槽を作っている人は多いです。
エビと水草だけの水槽も美しいものがありますが、水槽の立ち上げ方から飼育繁殖までとなると難しいと感じる人が多いようです。特に産卵まではうまくいったものの、稚エビを上手く育てられないという人も多いのではないでしょうか?
今回はエビ水槽を作るうえで知っておくべきエビの飼育や繁殖のコツについてお話していきます。
エビ水槽を動画で知る!
エビの飼育方法は、YouTube動画でもご覧いただけます!
繁殖に関する疑問などをわかりやすく解説しています。
トロピカでは人気の記事やレイアウト法などを随時まとめ、YouTubeチャンネル「トロピカチャンネル」でご紹介しています。
水草水槽のレイアウト方法や熱帯魚飼育の疑問まで、続々アップしていきますので、ぜひご覧ください!
繁殖可能な小型エビの種類
初心者でも飼育が簡単で淡水で繁殖可能なエビには、次のような種類がいます。
ミナミヌマエビ
もはや説明すら不要なくらい、水槽の掃除やコケ取り役として知られているミナミヌマエビは、熱帯魚と同じ水槽で飼育していても繁殖しやすい種類です。アクアリウム初心者でも簡単に飼育することができます。
ビーシュリンプなどの小型シュリンプ
ビーシュリンプやレッドチェリーシュリンプ、ルリーシュリンプなど、観賞目的で品種改良された小型エビも単独で飼育すると比較的繁殖しやすいです。
しかし、ミナミヌマエビやヤマトヌマエビと比べるとコケ処理能力は落ち、低温に弱いという特徴があります。お掃除生体として淡水魚水槽への導入はあまり効果がなく向いていないですが、エビだけの『エビ水槽』で楽しむことができます。脚で餌をツマツマする様子はとても可愛らしいです。
エビの種類や育て方を詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
ヤマトヌマエビは繁殖できるのか?
コケ取り生体の代名詞で人気の高いヤマトヌマエビですが、基本的に飼育下で繁殖させることは難しいです。
なぜなら、ヤマトヌマエビの幼生は汽水で育つからです。抱卵するものの稚エビにならなかった…、全滅した…という体験談をよく聞きますし、東京アクアガーデンの水槽でも残念ながら繁殖例はありません。
もしもヤマトヌマエビの繁殖を考えているのであれば、メスが抱卵してから約2週間を目安に、産卵ケースに移します。
メスが卵を放出した後は、メスを元の水槽に戻します。
卵だけになったら卵にカビが生えないよう、エアレーションを強めにして水流を作り、水槽内の水も毎日全部換えましょう。
孵化した後は?汽水にバクテリアを増やして生存率アップ!
ヤマトヌマエビが孵化して幼生が動き出したら、約70%程度の濃度の汽水で幼生を育てていきます。
幼生はとても小さくただ漂っている状態です。はじめは水中にいるバクテリアを餌にしているので、特別な餌を与える必要はありません。
孵化後、約1ヵ月で稚エビになります。
そう、ここが一番むずかしいポイントです。即席で準備した汽水では満足にバクテリアがいないのです。つまり幼生の餓死がヤマトヌマエビ繁殖、最大の壁なのです。
餓死させない方法は確立されていませんが、汽水にあらかじめ水草などの養分を入れプランクトンを発生させておくなど手段はあるようです。しかし、立派に成長させるのは非常に難しいです。
もし稚エビまで育つことに成功したら、少しずつ塩分濃度を下げて、約20日で淡水になるように調整していくことで、淡水飼育に切り替え親と一緒に飼育することが可能になります。
エビの育て方のコツとは?
エビ類は初心者でも飼育が容易な生き物です。
エビ水槽の場合は生物はエビだけのことが多いため、ここではエビのみで飼育するときのコツについて説明していきます。
エビ水槽に最適な水槽サイズは?
エビの数が少ないのであれば、30cm以下のキューブ水槽でも十分です。しかし繁殖を考えている場合はペアを作る必要があるため、10~20匹程度の数を水槽内に入れなければなりません。
そのためウィローモスなどの水草やシェルター(隠れ家)を入れることも考える必要があるため、45cm以上の水槽での飼育が望ましいといえます。
水質を安定させるためにフィルターを使おう!
エビの飼育には水質を安定させる必要があります。そのためにはしっかりと水中にある不要な栄養分や、ごみ・有害な物質を除去する必要があります。
しかし水槽掃除だけでは水質を維持するのが難しい場合が多いです。
ろ過フィルターを使用すれば、水質悪化のペースが遅くなるので、水換えの頻度を減らすことができます。
おすすめは底面式フィルター+スポンジフィルター
エビ飼育の基本フィルターとしてよく上げられるのが、底面式フィルターと外部式フィルターです。迷ったらおすすめなのが底面式です。
底面式フィルターは生まれた稚エビを吸い込む心配が無いです。
また、底面全体に水流ができるため、嫌気層が生まれにくいという特性があります。嫌気性バクテリアは、エビのようにそこにいる生き物には脅威になりえるので嬉しいポイントです。
底面フィルターに加えて、小型のスポンジフィルターをサブフィルターとして使用することで酸素の供給とバクテリアの住処を増やせます。
エビ飼育は基本的にソイルを使用するのですが、ソイルは一定の期間で型崩れし、入換えなくてはなりません。そのため、ソイルに棲みついたバクテリアもそのときにいなくなってしまいます。
サブフィルターがあれば、交換時でも水質を不安定にさせにくいため、併用すると良いです。
エビ水槽に最適な水質・水温は?
比較的淡水エビは丈夫な生き物で、よほど水質が悪くならない限りは元気に泳いでいます。
エビ類の飼育に適している水質・水温は次のとおりです。
- 水質:中性(pH6.0~7.5前後)を目安にしましょう。
- 水温:20℃~25℃
繁殖を考えているのであれば、水質・水温を安定させておく必要があります。
水槽用ヒーターや水槽用クーラーなどの保温機器を活用しましょう。
エビ水槽の水換えの頻度は?
エビ水槽では、ろ過フィルターのあり・なしで水換えの頻度が変わってきます。
- フィルターあり:1~2週間に1回
- フィルターなし:3~5日程度に1回
このペースはあくまでも目安なので、汚れ具合がひどい場合には都度水換えを行いましょう。
水換えの量はどちらも水槽の3分の1程度の量を交換します。
エビ水槽に底砂は必要?
底砂を敷くことで生物ろ過に必要なバクテリアが繁殖し、水質を安定させやすくなります。
根のある水草の場合は、砂利だけでなくソイルも使用しましょう。
ソイルは水質をエビ飼育に最適なpHにしてくれますし、水草がしっかりと根を張ることができます。ビーシュリンプなどを育てる場合はソイルは必須アイテムです。
エビ水槽に水草は必須!
エビ水槽では水草は欠かせない存在でしょう。水中にエビが必要とする酸素を供給してくれますし、二酸化炭素や水中の栄養を吸収するので、水質が安定しやすくなります。
水槽レイアウトでも必需品ですし、エビは種類によっては神経質な種類もあるので、隠れ家としても最適です。
エビ水槽でおすすめな水草には次のようなものがあります。
- マツモ
- カボンバ
- アナカリス
- ウィローモス
- グロッソスティグマ
もちろん、このほかの水草でもエビ水槽を作ることはできます。アクアリウム初心者は、育てるのが簡単な水草から初めて、水草飼育にも慣れてきてから飼育の難しい水草にチャレンジしてみましょう。
ちなみに、エビのみの飼育を考えている場合はウィローモスが特におすすめです。
エビの餌は何がいい?
エビは雑食性ですが、ミナミヌマエビやヤマトヌマエビはコケも食べてくれます。
水槽内にコケがあるときは、特別餌を与える必要はありませんが、水槽の景観を損ねてしまうので、人工飼料を与えている人が多いです。
オトシンやコリドラス用の沈下性の餌や、エビ専用の餌、また生餌や冷凍アカムシなども食べてくれます。しかし生餌や冷凍アカムシは人工飼料よりも水を汚しやすい点に注意しましょう。
人工飼料や生餌などを与える場合は、1日に1~2回、少量を与えるようにします。
エビの餌についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
脱走に気を付けよう!
エビは大人しそうに見えますが、意外に飛び跳ね事故が多い生き物です。しばらく姿を見ないと思ったら、水槽を飛び出して水槽台の影で死んでいた、なんてこともあるんです。
またヒーターなどの配線を登って脱走することもあるので、エビ水槽では必ず水槽のフタをして飛び出し事故や脱走できいないようにしておきましょう。
エビを繁殖させるコツとは?
ここからはエビの繁殖のコツについてお話していきます。
前述のとおり、ヤマトヌマエビ以外の小型エビは自宅でも繁殖させることができます!
繁殖を考えているのであれば、まずペアを作らなければなりません。
しかしエビにも1匹1匹性格や相性があるため、オス・メス1匹ずつ入れても必ずペアになるとは限りません。またショップの店員さんがオス・メスの区別がつかないことが多いため、一般的に水槽に10~20匹入れて抱卵まで様子を見ることが多いです。
繁殖を考えるなら他の生き物とは一緒にしない!
熱帯魚などと一緒の水槽に入れられることの多いエビですが、幼生や稚エビだけでなく親が魚に食べられてしまうことが多いです。特にエンゼルフィッシュや金魚などは口に入ると食べてしまう傾向があります。注意しましょう。
またエビ類は神経質な一面もあるので、魚がいる状態だとペアができてもなかなか抱卵できない、抱卵しても食べられてしまう可能性が高いです。
繁殖を考えているのであれば、エビだけの水槽を用意して、そこでペアを作るほうが安全安心です。
エビの産卵から孵化まで
エビの繁殖には、水温を最低でも20℃以上は維持する必要があるので、水槽用ヒーターを使用して水温を一定に保ちましょう。
後は水質を一定に保ち、エビが落ち着いて過ごせる環境を保って抱卵するのを待つだけです。餌は様子を見ながら少し足りないかも?と思う程度の量で与えましょう。
メスが抱卵したら別に用意しておいた産卵用の水槽やケースにメスを移動させましょう。産卵用のケースにも隠れ家となる水草を多めに入れておきます。大きな水槽の場合は隔離ケースを使うのもおすすめです。
お腹から落ちた卵は死んでいるので、見つけ次第スポイトなどで取り除きましょう。
稚エビが孵化した後は?
卵から孵化した稚エビはとても小さく、親が食べてしまうことが多いです。そのため卵が孵化したのを確認でき次第、メスは元の水槽に戻します。
親と同じ姿形をしているので水槽内のコケや餌の食べ残し、微生物などを自分で探して勝手に食べはじめます。
この時水槽内に餌が少ないと、当然餓死してしまうので、心配ならプランクトンを発生させる餌やパウダー状の餌を与えましょう。
エビ飼育にはフルボ酸が良いと言われる理由
エビ飼育で最近よく目にするのが『フルボ酸』という栄養素です。ミネラルを吸収しやすくするもので、脱皮をしなければいけないエビたちにはうってつけの成分です。
フルボ酸は腐植土壌などにしか存在しない成分で、アクアリウム用品ではエビ用ソイルやマジックリーフ、ヤシャブシの実などに添加されています。
マジックリーフの養分といえば、飼育水をブラックウォーター状態にするフミン酸が有名ですが、フルボ酸はフミン酸をより使いやすく抽出したようなものです。色素も黄色程度で濃くありません。
フミン酸は弱酸性の水でやや沈殿するのにたいし、フルボ酸はどんなpHの水とも親和性が高く溶けます。そのため、近年のエビ飼育ではフミン酸よりフルボ酸の人気が高まっています。
しかし注意点もあります。フルボ酸は水を酸性傾向にします。
エビはミナミヌマエビ以外ならpH5.5や6.0でも適応できる種類が多いです。しかしpH急変にはとても弱いため、添加する際は濃度の調整がポイントとなります。水槽のpHに注意しながら使用しましょう。
ちょうど良い濃度におさまれば、繁殖や成長をアシストしてくれます!
まとめ:エビはコツを抑えれば飼育・繁殖が簡単!エビ水槽を作ってみよう!
エビ水槽を作るために必要な、エビ飼育やエビの繁殖のコツについて解説しました。
エビは水質・水温を一定に保ち落ち着いた環境を作ることができれば、比較的簡単に抱卵します。孵化してから稚魚になるまでの幼生時代の飼育に成功すれば、比較的簡単に成長させることができます。
エビ水槽には水草が必須なので、アクアリウム初心者は水草・エビともに飼育しやすい種類を選ぶことで、綺麗なエビ水槽を作ることができます。
エビだけの幻想的な水槽を作りにチャレンジしてみませんか?
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コメント
はじめまして。記事、大変参考になります。
30㎝の小型の水槽に、初めてアクアリウムを作ることになりました。ウィローモスを入れ、鑑賞用の草をいくつか入れて、そしてミナミヌマエビを二匹、入れました。
一匹はすぐに死んでしまったのですが、もう一匹は元気で、買い始めて一週間で脱皮をしました。そしてまた一週間後に、二度目の脱皮をしました。 その時は、抜け殻をみて、まさかそんなに短時間に何度も脱皮すると思わなかったし、姿も見当たらなかったので死んでしまったと諦めていました。姿を現したときは、驚いて、また笑ってしまいました。そんなにすぐに脱皮をするものなのですね。
呼ぶと近くによって来るので、大変可愛いです。ごん太と名付けています。大事に育てます。
水質があうと、エビはどんどん脱皮をします。
呼ぶと来てくれるなんて、とても信頼されていますね。
そして可愛らしです!大切に育ててあげてくださいね。
はじめまして
失敗続きの初心者です。
水換えは水槽の下部水を交換しないと駄目ですよね!?槽を上部・中部・下部と捉えて下部水に汚れが溜まるので、吸い出しするんですよね?
後は、河川水や池水で餌の確保は難しいですか?
河川や池などで採取した水やエサ(生き物)は、飼育環境にはない菌を持ち込む恐れがあります。
持ち込みに関しては、こちらの記事のご参考になってみてください。
https://tropica.jp/2019/08/22/post-30115/
水換え(メンテナンス)は、底砂にたまった汚れを排出するのがメインになります。底砂にプロホースなどを差し込んで汚れを吸い出します。
その過程で水も同時に抜かれるので、その分を補充する感じです。
はじめまして。30cm以下の水槽に入れるフィルターは、小型のが良いですか?
30cm以下の水槽には小型がいいです!
水流が強すぎて魚が流されてしまうこともありますので、水量にあったフィルターをおすすめします。
こんにちは。
ミナミヌマエビと黒メダカを飼おうとしていますが、メダカの水換えは2週間に1回ほどなのに、エビの水換えは3から5日に1回ほどでずれています。どちらにそろえた方が良いですか?
飼育している水槽ごとに最適なメンテナンスの頻度はかわります。
ミナミヌマエビと黒メダカなら、広めの水槽なのかな?と想像しております。
ある程度水の量がたくさん入る水槽ならば、メダカに合わせても平気ですよ。
ただ、水質の急変に弱いので、水質が不安定な飼い始めは3日に一回程度、こまめに少なめの換水をおすすめします。
安定してきたら水換え頻度は延ばしても大丈夫です。
ありがとうございます わかりやすいです
コメントありがとうございます!
これからもより良い情報を発信していけるように頑張ります。
ちえびはなんかげつくらいでこえびになりますか
コメントありがとうございます。
稚エビは、だいたい1ヶ月ぐらいで立派になってきますね!