メダカが観賞魚として脚光を浴び始めたのは2000年代に入ってからのことで、それまでは大型魚などの餌として流通しているケースがほとんどでした。
ブームのきっかけとしては、「楊貴妃メダカ」や「ダルマメダカ」などの新しい改良品種の登場が挙げられ、現在も盛んに品種改良が行われています。
メダカは水槽内で繁殖ができるため、交配による品種改良は個人宅でも可能です。品種改良に当たっての大前提となる知識には「メンデルの法則」があり、実際に交配を行う場合はメダカ同士の相性にも気を使う必要があります。
ここでは、メダカの品種改良の歴史や、入門者向けの簡易的な改良法をご紹介します。
メダカ改良の歴史
メダカ観賞は18世紀ごろに始まった!
(めだか)生餌 エサ用メダカ/えさ用めだか(50匹) 本州・四国限定[生体]
メダカは日本の他には朝鮮半島から中国、ベトナムにかけて分布している小型の淡水魚です。田んぼや小川などの流れが穏やかな場所を好んで生息しており、昔は天然魚の中でもごく身近な存在でした。
そんなメダカですが、観賞魚として扱われ始めたのは18世紀ごろと考えられており、同時期の文献にその名が登場しています。この頃、主に飼育されていたのは、野生個体が突然変異して誕生した「ヒメダカ」でした。
しかし、同時期の日本では金魚の方が観賞魚としては人気があり、観賞魚としてのメダカは廃れ、その後しばらくの間はもっぱら餌として流通していました。
21世紀で空前のブームに!
(めだか)楊貴妃メダカ/楊貴妃めだか(12匹) 本州・四国限定[生体]
観賞魚としてのメダカ人気に火が付いたのは、21世紀になってからのことです。
2000年代に入ると、愛好家たちのこれまでの努力が実を結び、「楊貴妃メダカ」などの色鮮やかな品種や、メダカのショートボディタイプである「ダルマメダカ」といった、様々な改良品種が登場したのです。
これらの改良品種が注目を集めた結果としてメダカがブームになり、現在では金魚と同等かそれ以上の人気を博しています。
自宅でも可能!メダカを品種改良する方法!
メンデルの法則で改良する
品種改良を行うための基本となる知識は、中学校の理科で習う「メンデルの法則」です。メンデルの法則とは遺伝における法則性をまとめたもので、メンデルはエンドウ豆の栽培で同法則を発見しましたが、植物以外の生物についても法則性は共通しています。
メンデルの法則は1.「優性の法則」、2.「分離の法則」、3.「独立の法則」の3つから成り立っています。
1の概要としては、色の違いなどの対になる形質は、第一世代では片方の形質しか現れない現象を指し、現れる方を「顕性(優性)」、表出しない方を「潜性(劣勢)」と言います。
2は、顕性と潜性の遺伝形質を持った第一世代同士を掛け合わせた場合、第2世代では顕性と潜性の割合が、3:1の比率で分離して現れる現象を指します。
3に関しては、異なる形質(例えば、色と大きさなど)については、それぞれ独立して分離の法則に従って遺伝することを指します。
『改良』とは遺伝を固定化すること
品種改良を行う時は、望む形質が顕性であるか潜性であるかを把握することが重要です。なぜなら、遺伝する形質はメンデルの法則に従うので、望む形質が潜性であった場合は、子の世代である第1世代では現れないからです。
そのため、潜性の形質を持ったメダカを生み出したい場合は、その形質を持った第1世代同士を交配して第2世代での発現を目指します。また、品種改良においては「突然変異」も見逃せない要素です。
親の世代に見られなかった形質が不意に現れることがあり、現在流通している品種の中にも、突然変異体の「固定」に成功したものが含まれています。
品種改良は望む形質を持つ個体が誕生したら、その時点で成功とはなりません。その遺伝形質を持つ個体を継続して得られるように、その後何世代にも渡って繁殖と選別を繰り返し、「固定」に成功して初めて新しい品種として認められるのです。
品種改良にはメダカ同士の相性が大切!
メスを多めに導入しよう
品種改良を行うためには、まずは繁殖させる必要があります。オスとメスの相性が悪いと、産卵できなかったメスが卵詰まりを起こして死亡したり、無精卵ばかりでふ化しなかったりと、繁殖そのものが上手くいかないことが考えられます。
そのため、オス1匹に対して、メス2匹を同一の容器に入れると良いでしょう。ただし、この方法では繁殖自体は成功しやすいですが、望んだ形質を持った子や孫が生まれても親が分からなくなり、その後の交配が滞ることに留意してください。
新しい品種を作出しようとしているプロや愛好家たちは、親が持っている遺伝形質を正確に把握するために、原則として1対1でのペアによる交配をしています。
産卵時期を逃さないようにしよう
メダカの産卵には水温と日照時間が密接に関係しています。メダカが産卵を行う条件としては、水温が約18℃以上で、日照時間が12時間程度です。そのため、屋外飼育などで機材を使用せずに飼育している場合は、4~10月頃が産卵に適した時期となります。
この時期を逃してしまうと、繁殖活動自体をしなくなるので注意してください。ただし、ヒーターや照明器具などを用いて、水温と照明時間をコントロールしてあげれば、通年で産卵させることが可能です。
屋外飼育と室内飼育、どちらのほうが品種改良しやすい?
これはご自身の住環境や飼育スタイルによりけりです。屋外飼育のメリット・デメリットについては以下のことが挙げられます。
メリット
- 丈夫な個体に育ちやすい
- グリーンウォーターでの管理がしやすい
デメリット
- 肉食性水生昆虫など外敵の危険がある
- 台風や猛暑など自然現象による脅威
屋外飼育では、季節による水温の変化を経験させることで、より丈夫な個体へと育ちやすい利点があります。また、メダカはその小ささから稚魚期の育成が意外と難しいため、グリーンウォーターで管理がしやすい点も見逃せません。
その一方で、屋外での飼育は外敵に晒される危険をはらんでおり、水生昆虫の他にも野鳥や野良猫などにも注意が必要です。また、自然現象による脅威にも対応しなければなりません。
台風はもちろんのこと、近年問題になっている豪雨や猛暑など、メダカの命を脅かす可能性があるものは様々です。
屋内飼育の場合のメリット・デメリットは、正に屋外飼育のそれと対照です。メリットとしては、外敵や自然現象からメダカを保護しやすく、安定して育成できることが主に挙げられます。それに加えて、機材による環境のコントロールが容易になるので、通年で繁殖を行うことが可能です。
デメリットとしては、成長が遅くなる傾向にあることや、グリーンウォーターでの管理が煩雑になることが挙げられます。
以上のことから、ご自身の住環境や飼育スタイルと相談し、より管理しやすい方を選ぶと良いでしょう。郊外に広い敷地を持っている愛好家の中には、両者の利点を得るためにビニールハウスで品種改良に取り組んでいる方も多く居ます。
まとめ:メダカの品種改良を楽しもう!改良の歴史や自宅でもできる改良方法とは!
品種改良の入門者であるうちは、まずは安定してメダカを繁殖できるようになることが先決です。そのため、1匹のオスに対して複数のメスを用意して、卵の受精率を上げると良いでしょう。また、メダカは成魚の飼育しやすさとは裏腹に、稚魚は主に餌の面で意外と育成が難しい魚種です。
グリーンウォーターで管理できない場合は、稚魚用にゾウリムシやインフゾリア、微生物の素といったプランクトン類の餌を用意しておきましょう。微細に粉砕された稚魚用人工飼料もありますが、プランクトンを与えた方が成長が早く丈夫に育ちます。
メンデルの法則を理解したうえで交配を重ね、ある程度狙った遺伝形質を発現できるようになると、また違った世界が見えてくるので、ぜひ品種改良に挑戦してみてください。

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