観賞魚を川や池に放流してはいけない理由をご存知ですか?
日本の環境に合わず死んでしまったり本来その場所にいた生き物を食べてしまったりと、さまざまな問題が考えられますが、実はもっと深刻な問題につながる可能性があります。ひどい場合は、河川の生態系を変え、放流した本人は法律で罰せられることも。
ここでは、飼いきれないからと観賞魚を川や池に放流するリスクについて解説していきます。
観賞魚は絶対に放流禁止!
観賞魚を飼いきれなくなって、「自然の河川に逃がす」という選択をする人がいます。
特に大型魚の場合が多く、予想以上に成長してしまって飼育設備が用意できないから身近な水辺は放流してしまうケースは珍しくありません。しかし、この「放流」という行為は絶対にやってはいけないことです。
放流するリスクはとても大きく場合によっては、
- 法律違反として罰せられる
- 改良品種は自然で生きていけないものもいる
- 日本の自然破壊につながる
といったように、ときには取り返しのつかない事態になってしまうこともあります。リスクを避けるためにも、どのような問題につながるのか把握しておくことが大切です。
特定外来種の放流は法律違反!
「特定外来種」の放流は「外来生物法」という法律で禁止されています。
特定外来種がどのようなものかというと、海外から輸入された生き物(外来種)のなかで、日本の生態系や農林水産業に悪影響を与える可能性が高いと判断された種類を指します。
魚類では、
- オオクチバス
- コクチバス
- ブルーギル
- チャネルキャットフィッシュ
- ガー科全種
このあたりが有名です。もしこれらを、輸入や飼育、放流したりなどすると、個人の場合は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」、法人の場合は「1億円以下の罰金」という重い罰則があります。ただ、実際のところ、海外の観賞魚の多くは特定外来種に指定されていません。
「それなら逃がしても問題ないのでは?」と思うかもしれませんが、大問題なので詳しく解説してきます。
改良品種は自然で生きていけないものもいる
金魚や改良メダカなどの改良品種は、観賞目的でとても派手な色合いや泳ぎにくいヒレをしています。
華やかな外見は自然界では即ターゲットにされる要素です。良心から「川に放してあげる」という方も稀にいますが、魚のことを思うなら絶対にやめましょう。
日本の自然破壊につながる
観賞魚を日本の河川に放流すると、自然破壊につながります。
特定外来種に指定されていなくても、外来種は本来日本に生息していない生き物です。放流すると、その場所にいた日本の魚(在来種)を食べてしまったり餌の奪い合いになったりなど、悪影響がおよぶことも考えられます。
次第に、水辺だけでなく周りの環境(鳥類、昆虫、植物など)にも連鎖的に被害が出てしまうことも。それだけではなく、放流した魚が日本の魚と繁殖してしまうと、交雑種が増え本来の種に多大な影響を与えてしまう可能性もあります。
たとえば、「タイリクバラタナゴ」は外来種ですが、放流されて広まり、日本の在来種である「ニッポンバラタナゴ」と交雑することで、純血のニッポンバラタナゴを絶滅に追いやっています。
また、品種改良されたメダカも、在来種である「クロメダカ」と交雑する可能性があるので、放流はとても危険です。一度交雑種が増えてしまうと、元の生態系に戻すのは困難なので、取り返しのつかないことにもなりかねません。
放流のリスク!規制が生まれることも
特定外来種ではないからといって放流すると、その種が規制されるリスクが高まります。
結果的に、許可がないと飼育できくなるケースも考えられるので、無暗に放流すべきではありません。
グッピーも危険視されている!?
現在、「グッピー」は特定外来種ではありませんが、放流によって日本に定着して問題になっています。
低温に弱い種類ですが、沖縄や温泉地が近い、もしくは工場の温排水が流れる場所は水温が高く、定着してしまっています。他の魚を食べることはありませんが、繁殖力が強いため、大繁殖すると小さな生き物を食べ尽くしたり他の魚の縄張りを奪ったりと、生態系に悪影響がおよんでもおかしくありません。
その結果、特定外来種に指定されて許可なしに飼育ができなくなることも考えられます。最近では、放流された「アリゲーターガー」を屋外で見ることが増え問題視された結果、特定外来種に指定されて無許可での飼育ができなくなりました。
このように、外来種を放流することで、飼育できない種類が増えることにもなりかねませんので、アクアリウム業界の未来のためにも放流してはいけません。
水草も危険種とされてしまう可能性がある
魚だけではなく、水草(カボンバなど)も危険種と呼ばれてしまうことがあります。
一見、無害に見えますが、日本の河川に定着してしまうと、在来種の水草を追いやって生息地を拡大してしまいます。水草は、水生生物にとって住処になったり餌になったりと、とても大きな存在なので、外来種の水草が増えると生態系が崩れても不思議ではありません。
トリミングした水草を自然の河川に捨てると、種類によっては定着してしまう可能性があるため、燃えるゴミで捨てるなど、扱いには注意しましょう。
飼育しきれなくなったら引き取り先を探そう!
飼育しきれなくなったら放流するのではなく、引き取り先を探すことが大切です。
知人に相談するのも良いですし、アクアリウムショップなどが引き取ってくれる場合もあります。ただし、あくまで最後の手段です。
終生飼育を前提として、どうしても手放さなければならなくなったら、責任もって引き取り先を探しましょう。
まとめ:観賞魚を川や池に放流するリスク!自然の河川へ放してはいけない理由!
今回は、観賞魚を川や池に放流するリスクについて解説しました。
- 法律違反として罰せられる
- 放流しても死んでしまう可能性が高い
- 定着すれば生態系に悪影響がおよぶ
といったように、思ったよりも影響が大きいということが伝わりましたら幸いです。
どれだけ愛情を込めて育てても、最後まで飼育できないこともあります。その場合は、連れ添った魚のためにも全力を尽くして引き取り先を探してあげましょう。
トロピカライターの高橋風帆です。
アクアリウム歴20年以上。飼育しているアーモンドスネークヘッドは10年来の相棒です。
魚類の生息環境調査をしておりまして、仕事で魚類調査、プライべートでアクアリウム&生き物探しと生き物中心の毎日を送っています。
コメント
よくわかりました!!