大切に飼育している魚でも、病気にかかってしまうことはありますね。
そういった場合、家で薬を使って治療する方法があります。でも病気の原因によってつかう薬は異なります。
「この薬はどの病気に効果があるのか」「そもそもどうして薬で病気が治るのか」という部分に焦点を当て、薬剤に期待される効果について解説します。
可愛い魚の病気を早く治してあげましょう!
魚の治療薬が効く仕組み
病気だ!寄生虫だ!薬を使わなきゃ!と急ぐ前に、「魚の治療薬にはどういった効果があるか」「その病気の原因は何か」を知っておく必要があります。
魚の病気の原因には以下のようなタイプがあります。
- 細菌(バクテリア)が原因
- ウイルスが原因
- 寄生虫が原因
病気の原因ごとに効果のある薬剤が異なりますので、まずは病気の原因を知ることから始めましょう。
細菌(バクテリア)の体は細胞壁と細胞膜、遺伝子を含む細胞でできている生物の1つです。ですから細菌を殺すためには、細胞壁か細胞膜を壊すこと、もしくは遺伝子の動きを阻害することが有効です。有名なのは「抗生物質」で、主に細胞壁を壊すはたらきをもっています。
ウイルスは細菌と似たようなものだと考える方も多いのですが、ウイルスは細胞壁をもっていません。ウイルスのからだを包んでいるものはタンパク質でできているため、抗生物質の効果がありません。ヨウ素を含む薬剤はウイルスを抑える効果があります。
寄生虫は小さな生物です。甲殻類(エビやカニの仲間)が原因になることが多いので、甲殻類を駆除できる薬剤を使うと効果が期待できます。
また、本来であれば「薬剤がないと治癒しないような重病」にする前に気づいて手当できることが望ましいです。症状が軽ければ薬剤ナシで治療できますので、下のリンクを参考になさってください。まずはこちらの手法を試してみるのがおすすめです。
体表の症状には薬浴が良い理由
魚の体表に症状が出ているということは、体表に原因生物が付着しているということなので、体表に薬剤を散布する必要があります。よって、薬剤を含む飼育水で泳がせることで効果が見込めるというわけです。
体内の症状には薬餌がおすすめな理由
消化器官などに症状がある場合、魚の体内へ薬を届ける必要があります。ですから、餌に薬をまぶして食べさせることで効果が表れます。
薬餌の作成は家庭でもできますので、興味のある方は下のリンクを参考になさってください。
治療薬ごとの主成分・効果の違い
こちらの項では、市販されている治療薬の主成分と期待できる効果についてご説明します。
まずは下の表にざっくりと薬剤名と効果をまとめました。
白 点 病 | カ ラ ム ナ リ ス | エ ロ モ ナ ス | 水 カ ビ | ツ リ ガ ネ ム シ | 松 か さ 病 | イ カ リ ム シ |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
グリーンFゴールド顆粒 | ◎ | 〇 | ◎ | ||||
エルバージュエース | ◎ | ◎ | |||||
観パラD グリーンFゴールドリキッド | 〇 | 〇 | |||||
ヒコサン | ◎ | 〇 | 〇 | ||||
グリーンFリキッド | ◎ | 〇 | 〇 | ||||
リフィッシュ | ◎ |
各薬剤に含まれる成分と効果については下の項をご覧ください。
グリーンFゴールド顆粒の主成分と効果
成分は以下の通りです。
- ニトロフラゾン:5g
- スルファメラジンナトリウム:5g
ニトロフラゾンとは
ニトロフラゾンはフラン剤とも呼ばれる薬剤で、細菌の生命活動を阻害するはたらきがあります。
注意事項としては、濃度をきちんと調整する必要があることです。魚の体内への吸収が良いため、濃すぎると魚にダメージを与える可能性があります。
少量の薬剤の濃度調整は難しいので、10倍程度の濃度の水溶液を作る→その水溶液をさらに薄めて使う といった方法がおすすめです。
エルバージュエースの主成分と効果
主成分は
- ニフルスチレン酸ナトリウム です。
ニフルスチレン酸ナトリウムとは
すぐ上で解説した「ニトロフラゾン」と同じ、フラン剤と呼ばれる薬剤です。効果も同じで、細菌の生命活動を阻害することで病気の原因細菌を死滅させます。
観パラD、グリーンFゴールドリキッドの主成分と効果
主成分は
- オキソリン酸 です。
オキソリン酸とは
オキソリン酸は抗生物質として知られ、農薬としても使われる成分です。
オキソリン酸は細菌のDNAの増殖を阻害するはたらきがあるので、細菌の増殖を抑えます。
pH6.0以下だと効果が出にくいとされているので、pHを意識して使ってください。
ヒコサンの主成分と効果
主成分は
- マラカイトグリーンシュウ酸塩 です。
マラカイトグリーンとは
マラカイトグリーンは還元作用という効果をもっています。還元というのは酸素を奪う化学反応なので、細菌が生存に必要とする酸素を奪い、殺す作用があります。また、白点病にも効果があります。
抗生物質とは別の方法で細菌を攻撃することが可能ですが、毒性が強い成分なので使用には細心の注意が必要です。
光で分解されるので、光を避けた場所で保存しましょう。
染色作用が強いので、皮膚や衣服に付着しないように気を付けてください。
グリーンFリキッドの主成分と効果
主成分は
- メチレンブルー
- アクリノール
- 塩化ナトリウム です。
メチレンブルーとは
メチレンブルーは上記のマラカイトグリーンと性質が似ており、還元作用で細菌から酸素を奪い、死滅させる薬剤です。
染色作用が強いので、皮膚や衣服に付着しないように気を付けてください。
リフィッシュの主成分と効果
リフィッシュの主成分は
- トリクロルホン です。
トリクロルホンとは
トリクロルホンは殺虫剤として使われる薬剤です。よって、魚に寄生する虫を駆除するのに効果がありますので、イカリムシ、ウオジラミの被害に効果があります。
28℃以上で使用すると毒性が高まるので、28℃未満の温度で使用してください。
使用上の注意としては、カニ、エビに対しても駆除力があるため、エビなどと混泳している魚に使用する際は、必ず別の容器で薬浴させ、薬を完全に洗い流してから元の水槽に戻してください。
まとめ:魚の治療薬はどうして効くの?治療薬ごとの有効成分・効果の違いまとめ
今回は、魚の病気に対する治療薬が、どうして病気を治癒できるかそのはたらきについて解説しました。
一番いいのは「魚を病気にさせない」ことです。そのためには日ごろから水槽を定期的に管理し、毎日魚の様子をよく観察してあげましょう。

水槽のプロ トロピカライターの高井です。
遺伝子学が専門分野で、高校の理科教師として、日々、生徒たちに自然の偉大さを教えています。
アクアリウム全般が好きで、現在はアベニーパファーのトリコ。
ピンセットでアベニーにアカムシを食べさせるのが日々の癒しです。