シクリッドという熱帯魚をご存知でしょうか?世界中でその種類は約1,300以上もあると言われており、大型のものから小型のものまでさまざまな種類が存在します。
独特な方法で子育てをしている様子を見ることのできる種類もあり、アクアリストの中でも人気のある熱帯魚ですが、初心者だと飼育が難しいのかと悩む人もいることでしょう。
今回はシクリッドとはどんな熱帯魚なのか、またシクリッドの飼育方法や餌、他の熱帯魚との混泳は可能なのかについてお話していきます。
目次
シクリッドはこんな熱帯魚
シクリッドは中央アメリカ~南アメリカにかけて、そしてマダガスカルを含んだアフリカ~中東・南アジアと広く分布している熱帯魚です。淡水魚だけでなく、汽水魚も確認されていて、その種類は少なく見ても約1,300種類以上ともいわれています。
観賞魚として知られているエンゼルフィッシュやディスカスもシクリッドの仲間なのですが、アクアリウム初心者では意外と知っている人は少ないようです。また食用として有名なティラピアという魚もシクリッドの仲間なんです。
シクリッドの仲間は独特の子育て方法で稚魚を育てることが知られていますが、その子育ても3種類あるということは意外に知られていません。
- オスかメスどちらかが産卵した卵を口の中で孵化するまで守る
- メスが水中に産卵し、親が卵を守る
- メスが水中に産卵するが、孵化した稚魚を親が口の中で育てる
シクリッドのように親が口の中で卵や稚魚を守り育てる育児方法を「マウスブルーディング(口内保育)」といい、このような習性を持っている魚のことを「マウスブルーダー」と呼んでいます。
シグリットの代表的な種類をご紹介
さすがに1,300種類以上もあるシクリッドを全てご紹介することはできないので、今回はアクアリウムで代表的なシクリッドの種類を5種類ご紹介していきます。またそれぞれの餌や育て方などについても記載していきます。
パロットファイヤー・シクリッド
パロットファイヤーは天然の品種ではなく、人工的に作られた品種です。この品種が作られたときは赤色しか存在しませんでしたが、最近は科学技術の発達でさまざまな色のパロットファイヤーが存在しています。
パロットファイヤーはゆったりとした泳ぎ方をするシクリッドで、カラーバリエーションも豊富なので癒し効果もバツグンです。
パロットファイヤー・シクリッドの育て方
人工的に作られた品種なので、飼育は他のシクリッドと比較すると簡単ですが、成長すると約20cmになるので水槽は90cm以上のものが望ましいです。水質は幅広く対応でき、カルキ抜きしただけの水道水でも飼育することができます。
パロットファイヤー・シクリッドの餌
パロットファイヤーは1日1回の餌やりで問題ありません。ただ、口が小さく改良されているため、餌を食べこぼしやすいのでちゃんと食べているか確認しましょう。
餌は冷凍アカムシやクリルといったものや、人工飼料など何でもよく食べますが、栄養バランスに気を付けてあげましょう。口に入るサイズのメダカも食べるので、人工飼料を中心におやつ程度に冷凍アカムシやクリル、メダカなどの生餌を与えるようにします。
パロットファイヤー・シクリッドの混泳
性格が荒いと言われているシクリッドの中では、比較的温厚な性格なので、同じサイズの熱帯魚や大型の熱帯魚と混泳は可能です。しかし口に入るサイズの熱帯魚は食べてしまいます。
オスカー
オスカーはアメリカン・シクリッドの仲間で、「アストロノータス」という学名があります。オスカーはさらに細かな種類に分かれますが、どの種類も体はずんぐりしていて、色鮮やかな模様があるので人気がある熱帯魚です。
オスカーの飼育方法
大型の熱帯魚なので飼育が難しそうだと思う人が多いですが、一般的な熱帯魚の機材で飼育できますし、アクアリウムではメジャーな種類なので、ネットなどで飼育に関しての情報が得やすいです。
ただ成長すると体長が45cmにもなり、平均寿命は10年といわれているので90cm以上の大型水槽で最後まできちんと飼育する覚悟がないと、飼育は難しいといえるでしょう。
オスカーは底砂を荒らし水草を抜くことが多いため、水槽には底砂を入れずベアタンクで飼育することをおすすめします。人に慣れやすい熱帯魚ですが、気性が荒いのでアクアリウム初心者には飼育が難しいかもしれません。
オスカーの餌
オスカーは肉食性の強い熱帯魚なので、生餌を好みアカヒレやメダカ、小型の金魚を与える人が多いです。人工飼料も食べてくれますが大ぐらいなので、栄養バランスを考えると人工飼料を中心に、おやつに生餌を与えるとよいでしょう。
餌やりの頻度は1日2回程度にしたほうが、餌やフンで水が汚れるのを防ぐことができます。
オスカーの混泳
オスカーは同種・他の種類ともに混泳向きではない熱帯魚です。シクリッド特有の縄張り意識や気象の荒さがあるため、同種同士でも混泳させると弱い魚がいじめられ弱ってしまいます。
他の種類との混泳はアロワナなどの大型熱帯魚と混泳させることが多いですが、常に喧嘩や縄張り争いなどがないか気にしておく必要がります。
フラワーホーン
フラワーホーンは「トリマクラートゥス」と「フラミンゴシクリッド」を掛け合わせて作られた、比較的新しい品種のシクリッドです。成長するに従い大きくなる頭部のこぶと体の横に並んでいる黒い斑点が独特の雰囲気を出す熱帯魚です。
知能が高いといわれており、人に慣れやすいので人気があるシクリッドです。
フラワーホーンの飼育方法
フラワーホーンはシクリッドの中でも縄張り意識の強い熱帯魚で、観賞魚用ではあるものの同種同士でも混泳は難しいです。
フラワーホーンの一般的な寿命は10~20年とされていますが、日本に輸入されはじめたのが2001年頃からなので、具体的な統計を取れていないという状況なので正確にはどれくらいなのかを断言しにくいです。
丈夫な熱帯魚で初心者向けともいわれていますが、消化器系が弱いために「消化不良」が原因となって、2年くらいで死なせてしまうことも多いようです。
最終的に30cmにもなる大型魚のため、飼育水槽は90cm以上、なるべくなら120cm水槽を用意しましょう。とても丈夫な熱帯魚なので、水質調整はカルキ抜きだけでも大丈夫です。
フラワーホーンの餌
フラワーホーンは大型魚なだけあって、大食いで人工飼料や冷凍アカムシ、メダカなどの生餌など何でもよく食べてくれます。しかしその体色を鮮やかな状態で維持するためには、餌に注意しましょう。栄養分の偏りが激しいと、体色が薄くなってくる場合が多いです。
人工飼料を中心に次のような餌をおやつ程度に与えましょう。
- 冷凍アカムシ
- ピンクマウス(冷凍もの)
- メダカ(生餌)
- 金魚(生餌)
- コオロギなどの餌用の昆虫
特に生餌はフラワーホーンが興奮し追いかけるので、頭のこぶや体の発色がよくなります。動くことで体の厚みも増し見た目もしっかりとしてきます。
フラワーホーンの混泳
フラワーホーンは性格がきつく、同種同士でもどちらかがボロボロになるまで喧嘩するため、単独飼育向きです。大型水槽でセパレーターを使って飼育する場合も、きちんと固定していないと、フラワーホーンの力で外れてしまい喧嘩が始まることがあります。
アピストグラマ
シクリッドの1種であるアピストグラマは「アガシジィ」や「パンドゥロ」といった種類が有名です。アガシジィは古くから存在している種類で、販売価格も1,000円~3,000円と比較的安めになっています。
模様やカラーが豊富でコレクション性があるので、アクアリストの中ではアピスト専門で飼育を行っている人もいます。
アピストグラマの飼育方法
寿命は平均2~3年と、小型~中型の熱帯魚の平均ほどと考えて良いでしょう。大きさはアピストグラマの種類にもよりますが5cm~8cmほどになるので、30cm~45cmの小型水槽で飼育されることが多いです。
繁殖は簡単で素焼きのシェルターや流木などに産卵し、親がこまめに世話をしている様子を見ることができますが、白点病にかかりやすく低温に弱いという特徴があります。
水質がアルカリ性に偏ってくると体調を崩すことが多く、色も褪せてくるので、底材に水質をアルカリ性にしてしまう「サンゴ砂」を使用するのはやめましょう。
アピストグラマの餌
アピストグラマは何でもよく食べるので、アクアリウム初心者でも餌で困ることはありません。成長段階では冷凍アカムシや生餌を与えることで体力がつき健康で体が大きくなりやすいです。
さらにブラインシュリンプは、体色をきれいにしてくれる効果が期待できます。
人工飼料は栄養バランスの良いものが販売されていますし、色揚げ専用のものもあるので、それぞれの長所を考え人工飼料と生餌や冷凍餌を併用して与えましょう。
アピストグラマの混泳
アピストグラマも縄張り意識の強い熱帯魚なので、自分の縄張りに近づく熱帯魚に攻撃したり、追いかけまわして追い払おうとします。
特に同種同士だと攻撃性が高くなるため、基本的に単独飼育推奨となっています。
エビも脱皮直後の柔らかい状態のときや、口に入るほどの小さなサイズだと食べられてしまうので、混泳には向きません。
しかし繁殖させる場合はペアで育てなければならないため、流木や岩・水草などでメスの隠れ場所を作ってあげる必要があります。
ラミレジィ
アピストグラマ同様にラミレジィも体色がカラフルで、コレクション性のある熱帯魚です。そしてラミレジィはブリードが頻繁に行われており、改良品種が多いという特徴があります。
小さいながらもシックリッドの特徴である「縄張り意識」が強く、気性も荒いので混泳に苦労するアクアリウム初心者が多いようです。
成長すると体長は5cm前後、寿命は平均すると2~5年で、水質や水温が急に変わると「エロモナス病」や「白点病」にかかりやすいという特徴があります。
ラミレジィの育て方
ラミレジィは弱酸性の水質で育てると、体の色が鮮やかになりますが、アルカリ性に傾くと弱ったり、体の色が褪せていくので底砂はソイルがおすすめです。また体の色を鮮やかにしたいのであれば、水質だけでなく落ち着いてストレスを感じない環境を作ることが大切です。
ラミレジィの餌
ラミレジィは人工飼料や冷凍アカムシなど何でもよく食べてくれます。鮮やかな体色を維持したいのであれば、冷凍アカムシを与えたり、色揚げ効果が期待できる人工飼料がおすすめです。
ただ冷凍アカムシはラミレジィが消化不良を起こしてしまうことがあるので、たまにおやつ程度に与えてあげるようにしましょう。
ラミレジィの混泳
やはりラミレジィも、シクリッドの気性の荒さや縄張り意識がよく出ている熱帯魚で、同種のオス同士だと喧嘩が多いです。しかしサイズが大きめのネオンテトラや、他の種類でラミレジィと同じ大きさの熱帯魚とは比較的混泳がうまくいくことが多い傾向にあります。
そのため他の種類と混泳させたいときは、混泳させる相手が温和で縄張り意識のないものを選ぶのがポイントです。また遊泳層がかぶってしまうコリドラスなどの底層を泳ぐ熱帯魚とは、縄張りの関係から相性が悪いので混泳は避けましょう。
シクリッドとは!種類・タイプごとの飼育方法や餌・混泳を考えますまとめ
今回はシクリッドについて、種類やその餌・飼育方法から混泳についてお話しました。
気性の荒い熱帯魚ですが、とても色鮮やかで大型のものは人に慣れやすい種類も多いです。アクアリウム初心者には難しい部分もあるかもしれませんが、次のレベルへのワンステップとして飼育を検討してみてはいかがでしょうか。

水槽のプロ トロピカライターの杠葉 狼です。
アベニー・パファーやバジスバジスなど小さくて綺麗な熱帯魚やベタ、ブラックゴーストなどちょっと変わった熱帯魚が好きです。
熱帯魚飼育初心者さんにお役に立つ記事を書いていきます。