繁殖しやすい熱帯魚と聞いて、あなたはどんな熱帯魚をイメージしますか?
グッピー、ネオンテトラ、エンゼルフィッシュ、コリドラスetc…色々な魚をイメージされた方や「いやいやネオンテトラの繁殖は難しいよ」と思った方もいるかもしれません。
そこで今回の記事では、初心者から中級者の方が「熱帯魚を繁殖させたい!」と思った時に、最初にチャレンジするのにお勧めできる、『繁殖しやすい熱帯魚ベスト3』を選んでみました。
また、熱帯魚が妊娠したとき、卵や稚魚をうまく隔離飼育する方法や、その後の稚魚の育て方についても合わせてご紹介していきましょう。
熱帯魚の繁殖という奥深い世界の入り口を、少しだけ覗いてみませんか?
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繁殖しやすい熱帯魚ベスト3
【1位】卵胎生メダカの「プラティー」
熱帯魚の仲間には、グッピーやプラティーなど“卵胎生メダカ”と呼ばれる魚達がいます。
メダカというのは日本でもおなじみのあのメダカのことですが、卵胎生という言葉に馴染みのある方は少ないと思います。卵胎生というのは、簡単に説明するなら「卵ではなく稚魚(子ども)を産む魚」のことです。
前置きが長くなりましたが……この「卵ではなく最初から魚の形をした子どもを産む」ということのアドバンテージは、とても高いのです。卵胎生メダカの仲間は、水草などを植えている水槽では無制限に殖えてしまうこともあるくらい、繁殖しやすい熱帯魚になります。
そして、卵胎生メダカの中でも「プラティー」は生まれてくる稚魚がグッピーなどに比べて大きいので、繁殖しやすい熱帯魚の1位にあげさせてもらいました。
なお、ソードテールやバリアタス、そしてモーリーの仲間もプラティーと同様に殖やしやすい熱帯魚になります。沖縄県や温泉地などで野生化したプラティーやソードテールが環境問題になっているくらい、卵胎生メダカの仲間には繁殖力があります。
【2位】熱帯魚と言えば「グッピー」
熱帯魚を飼育していない人でも名前を知っているくらい、グッピーは有名な熱帯魚です。
品種ごとに管理することで綺麗な個体を累代飼育することが可能であり、自分のオリジナルの品種を生み出すことも可能なため、グッピーだけを飼育する愛好家も多いです。
グッピーは卵胎生メダカの仲間なので繁殖しやすいのですが……稚魚がプラティーよりも小さいので、今回は繁殖しやすい熱帯魚の2位にあげさせてもらいました。
グッピーの繁殖については、専門書などで触れられているのでここでは割愛させていただきますが、生まれたばかりの稚魚にブラインシュリンプ(生餌)を与えることで、成長の早さや生存率が大きく違うと私は感じています。
なお、グッピーと先に挙げた卵胎生メダカの仲間達は、一緒に飼育していると雑種が生まれることがあります。それを利用して、卵胎生メダカの仲間の品種改良をしてきた歴史があるのですが――ちょっとマニアックな内容ですので、興味が湧いた方のみ調べてみて下さい♪
【3位】安くて綺麗で丈夫な「ゴールデン・アカヒレ」
アカヒレという魚を知っていますか? 夏場の高水温にも、真冬の低水温にも、コップなどの狭い容器の低酸素状態にも耐えられる、とても強健な魚です。元々は中国に生息する魚なのですが、観賞用や肉食魚の餌用として大量に養殖されて流通しています。
そして、そのアカヒレを品種改良した種類が「ゴールデン・アカヒレ」です。
普通のアカヒレが「茶色の体と赤いヒレ」なのに対して、ゴールデン・アカヒレは「黄色の体に赤いヒレ」なので、より観賞価値が高くなっています。飼育難易度や繁殖難易度はどちらもさほど変わらないのですが、繁殖させるモチベーション的にはゴールデンの方が高い&楽しいと思い、今回は繁殖しやすい熱帯魚の3位に取り上げさせてもらいました。
なお、アカヒレにはロングフィン(ヒレが長い種類)がいます。ロングフィンは繁殖力が低いため殖やすことが難しいのですが、ゴールデンとロングフィンの個体を交配させて、ゴールデン・ロングフィン・アカヒレを作ることも理論上は可能です。
そんなアカヒレの繁殖は、小さな卵を産むことで行われます。
水草の密集した場所やウイローモスの中に卵を産み付けたり、水底にバラ撒くように卵を産んだりします。そして仔魚(自由に泳ぐことが出来ない、身体が未発達な子どもの魚)が生まれて、より大きな稚魚(子どもの魚)に成長し、最終的には成魚へと成長します。
この成長段階に合わせた餌を用意することが、成長の早さや生存率に大きく関係してきます。そういう意味でも、アカヒレの繁殖は他の熱帯魚の繁殖に共通していることが多いです。アカヒレを繁殖させることが出来たら、他の熱帯魚の繁殖にもぜひチャレンジしてみて下さい。
その時には、↓こちらの関連記事も、参考に♪
卵を見つけたら!稚魚を育てるなら隔離しよう
熱帯魚をつがいで飼育していて、ある日お腹の大きくなったメスの熱帯魚を見つけたら…あなたならどうしますか?
ここで対応を間違えてしまうと、せっかく訪れた繁殖のチャンスを逃してしまうことになるかもしれません。
無事繁殖が成功できるよう、事前に正しい対応策を確認し覚えておきましょう!
対応1:繁殖に必要なものを準備しよう
隔離箱
隔離箱は、稚魚や卵が大人の熱帯魚に食べられてしまうのを防ぐために隔離する、稚魚の棲家となる場所です。
産まれてから準備していたのでは遅いので、繁殖を考えているならば事前に準備しておきましょう。
サテライト
サテライトは、水槽の外側に取り付けるタイプの隔離箱のことです。
エアーポンプとホースを使って、水槽内の水をサテライトに循環させて使用します。
そのため、水質が安定しやすく、稚魚を適切な環境で安心して育てることができます。
産卵箱
産卵箱は、水槽の中に吸盤などを使用して設置します。
ボックスに隙間が空いており、そこから水槽内の水が入り込むことで水が循環する仕組みになっています。
ホースなどが無くても簡単に設置できるので、設置の手間が無く初心者でも扱いやすいのがメリットです。
しかし、サテライトと比べてしまうと水の循環がしにくく、水が汚れやすくなっています。
また、循環用の隙間からまれに稚魚が逃げ出してしまうこともあるようなので注意が必要です。
稚魚用の餌
熱帯魚の稚魚は人間などの哺乳類とは違い、産まれたての頃から大人の熱帯魚と同じようなプランクトンなどを食べて成長していきます。
飼育している環境でも同じで、稚魚にも餌が必要となりますが、稚魚はとても小さく大人の熱帯魚と同じ餌を食べることはできません。
大人の餌をすりつぶして与える方法もありますが、何かと手間がかかります。
そこで、稚魚用の小さな餌を準備しておくとよいでしょう。
ひかりパピィ
稚魚に必要な栄養豊富な微粉末状の専用餌です。
微粉末なので、小さな稚魚でもしっかり餌を食べることができます。
テトラミン ベビー
水を汚しにくい、粉末フレークタイプの餌です。
消化吸収がよく、稚魚にも安心して与えられます。
対応2:お腹の膨らんだメスを見つけたら隔離箱に隔離しよう
お腹の膨らんだメスを見つけたら、それは妊娠しているメスかもしれません。
しかし、妊娠しているメスと、たくさん食べてお腹が膨らんだだけのメスは、意外と見分けがつかない場合が多いです。
妊娠しているかどうかは、以下の特徴に照らし合わせて確認することができます。
- 破裂しそうなくらい、お腹が異常に膨らんでいる
- お腹のうしろのほう(お尻の近く)が尖って膨らんでいる
- 卵胎生メダカの場合は、お腹に稚魚の目が透けて、黒い点々が見えることがある
この特徴に当てはまる熱帯魚を見つけたら、隔離箱に隔離し、産まれる準備をしましょう。
対応3:産まれた後の対応と、育てるときの注意点
卵や稚魚が産まれたら、お母さん熱帯魚は隔離箱から出し、元の水槽に戻します。
一緒にしておくと、せっかく産まれた卵や稚魚を食べてしまうことがあるからです。
稚魚には用意しておいた稚魚用の餌をあげながら、ある程度の大きさになるまで成長を見守りましょう。
産まれた後で注意していきたいのが、稚魚の病気です。
稚魚は、大人に食べられないくらい大きくなるまでは隔離箱の中で隔離して育てることになります。
しかし隔離箱は狭く、水の流れが悪いので、どうしても病気が発生しやすくなってしまうのです。
病気を防ぐためには、以下の2点に気を配りましょう。
隔離箱の中も水換えをしよう
水槽の水換えのタイミングなどに、隔離箱の中の水も交換します。
といっても普通の水換えは稚魚には危険ですので、スポイトで古い水をすくって新しい水に交換するようにするとスムーズです。
隔離箱内の過密飼育に注意する
隔離箱の中は狭く、過密飼育になりやすいです。
稚魚の数が多いとそれだけ隔離箱内の水は汚れやすくなり、病気になる確率も必然的に上がってしまいます。
隔離箱内が狭いと感じたら、隔離箱を増やして稚魚を分散するか、いっそのこと稚魚専用の水槽を立ち上げてしまうのも手です。
繁殖しやすい熱帯魚に最適な水槽サイズ
繁殖すると当然ながら熱帯魚の数が増えますので、水槽のサイズは大き目のものを用意しておきましょう。
例えば、通常ならば小型の水槽で飼育することの多いグッピーの場合でも、繁殖を視野に入れているならば45cm~60cm程度の水槽は用意しておきたいです。
いざ繁殖に成功した時に慌てて水槽を買い替えるということが無いように、最初から大きな水槽を用意しておくと安心ですね。
熱帯魚が繁殖しやすい環境づくりについて
熱帯魚が繁殖しやすくなるようにするには、水槽の環境を整えてあげるとよいです。
まず、水槽の設置場所ですが、直射日光の当たらない静かな場所に水槽を置いておくとよいでしょう。
水温は通常よりも2度程度高めに設定してあげると、繁殖の確立が上がるといわれていますので、参考にしてみてください。
また、水槽の中に水草などの隠れられるようなアクセサリーを多く配置してあげるのも、繁殖の確立をあげるのに効果的です。
水槽の中にはあまりものを入れない、という方もいると思いますが、繁殖を視野に入れているならば、水草を多めに植えてあげるなど、熱帯魚が安心できるような環境を整えてあげることが大切です。
まとめ:繁殖しやすい熱帯魚ベスト3!卵や稚魚をうまく隔離飼育する方法
今回の記事では、繁殖しやすい熱帯魚として「プラティー」、「グッピー」、「ゴールデン・アカヒレ」について紹介しました。これらの熱帯魚は正直なところ、水草を多めに入れた水槽で飼育していれば、何もしなくても自然に増えていることがあるくらい繁殖力の高い魚になります。
時には、↓のような問題も……。
しかし、これらの殖やしやすい熱帯魚でも、計画的に繁殖させるのにはコツが必要です。
繁殖用の水槽から親魚を取り出すタイミングだったり、稚魚に与える餌の種類だったり、水質の管理だったり――仔稚魚の管理を、自分がイメージする通りに出来るようになるまでは、正直なところ何度も失敗を経験してしまうと思います。
ですが、その失敗を1つ1つ乗り越えていくことで、自分の経験値を積み重ねることが出来るのも事実です。そして経験を積んだら、自分の好きな熱帯魚を増やすことにチャレンジしてみましょう。エンゼルフィッシュ、アピストグラマ、プレコetc…好きという気持ちこそが、熱帯魚を理解する原動力になると私は思いますので。
熱帯魚の繁殖には、正直、手間や時間や多少のお金がかかります。
普通に考えたら、ある程度の価格以上でなければ、ペットショップで購入した方が安上がりな魚達も多いです。
しかし、自分が好きな魚が殖えることは、何物にも代えられない嬉しさを感じられる経験になります。それは、例えるならば「自転車の乗り方」と一緒です。一度、体験したら新しい世界が広がっていくのです。
というわけで。
あなたも、自分の手で熱帯魚を殖やしてみませんか?
(↓過去の記事も参考にしてみて下さい)
トロピカライターの長嶋です。
金魚すくいで連れて帰った、和金の『よしえ(名前)』を飼育してました。
可愛らしい魚とワニが大好きです。
生物を飼う楽しさを伝えていけたらな、と思います!