特定外来生物法により、2018年4月1日からアリゲーターガーが飼育できないの?

※はじめに※
今回の記事を書くにあたっては、環境省の「某地方環境事務所の担当の方」に、電話で重要な部分の確認をしてもらいました。罰則規定のある法律が関係するので私自身も慎重に執筆していますが、担当の方によると2018年4月1日までに「ガーの飼育許可申請に関する専用のページ」を環境省のホームページで公開予定とのことです。ガーの飼育継続を検討している方は、今後そちらの方にも目を通してみて下さい。

なお、1枚目の画像の「ガー」は、後ほど記事に出てくる「スポッテッドガー」なので、あしからず。
※※※※※※

 

――さて、前置きが長くなってしまいましたが、あなたは「アリゲーターガー」という観賞魚をご存知でしょうか? 水面に浮かぶ姿がワニに似ていることや、名古屋城のお堀にいたことで話題になった古代魚です。

 

本来はミシシッピ川やメキシコなどに分布している北アメリカ最大の淡水魚で、全長が2m以上になります。体の表面は「ガノイン鱗」と呼ばれる硬い鱗で覆われていて、口の先がとがっており、見た目がワニっぽいと言われても否定はできません。

 

アリゲーターガー以外にも、北米には小型の「スポッテッドガー」や「ショートノーズガー」、「ロングノーズガー」などの種類が生息しています。なお、小型といっても彼らは、水槽飼育ですら全長45~60センチ程に成長します。

 

これらのガーの仲間は、日本では観賞用として人気があり、幼魚は1匹2000~3000円程度から購入できます。最終的には120センチの大型水槽が必要な観賞魚なのですが、幼魚の見た目の可愛さと価格の安さにほだされて「無計画に購入してしまう人」も少なくありません。

 

しかし、それが「ガーの仲間が自由に飼育できなくなる」という悲劇の始まりでした。

はじめに・なぜアリゲーターガーが飼えなくなるのか?

結論から先に言うと、2018年4月1日に「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」という法律でガーの飼育や譲渡が制限されるからです。(※1)

特定外来生物に指定されると、アリゲーターガーを継続して飼育する場合にも、アリゲーターガーを新規に飼育する場合にも、環境省の環境大臣の許可(※2)が必要になります。そのため、もし許可を得ずに飼育し続けたら罰則の対象になってしまうことも含めて、熱帯魚業界で騒がれています。

今飼育している個体(アリゲーターガー)はどうすればいい?

今、ガーを飼育している人やこれから飼育したい人が一番知りたいのは、「今後どうしたら良いのか?」という情報だと思います。

考えられる有効な選択肢は、「①指定後も飼育し続ける」「②指定前に誰かに譲る」「③指定前~指定後の猶予期間中に(かわいそうですが)飼育者が責任を持って殺す」の3つです。

それぞれの選択肢について簡単に説明すると――
指定前に入手した個体は、飼育許可の手続きさえしっかりすれば、飼い続けることができる。
②他人にガーを譲渡するなら指定前(4月1日より前)じゃないと絶対ダメ。指定後は違法行為のため罰則の対象になる。
③殺す場合は、なるべく苦しまない方法で。飼育しきれないからと言って、屋外に遺棄するのは絶対にダメ。
――というものになります。

ここでそれぞれの選択肢の詳細を紹介しても良いのですが……そのためには、外来生物法のことを少しだけ頭に入れておく必要があります。簡単に説明しますので、順番に見て行きましょう。

(↓譲渡する場合は、過去記事も参考にしてみて下さい)

いつから、アリゲーターガーの仲間が新規で飼えなくなるの?

ガーの仲間が特定外来生物に指定される(購入できなくなる)のは2018年4月1日です。これは2017年11月21日(火)の定例閣議案件で決定されました。

しかし「4月1日までに飼育許可を取得しないと罰則があるのか?」というと、そうではありません。規制開始から6か月間、飼育許可の申請をするための猶予期間があります。

簡単にまとめると
3月中に譲渡や購入や移動は、絶対に済ませておくこと
・4月1日以降は、譲渡や購入は完全に違法(罰則の対象)になる
・4月1日以降に、猶予期間(6か月)の間に飼育に必要な許可を取る手続きが必要
ということになります。

そもそも、特定外来生物法とは何?

特定外来生物とはどんな生き物なのでしょうか?

法律の原文を簡単な言葉に置き換えると「海外から日本に入ってくることで、日本の生態系に被害を及ぼすか、その可能性が高い存在として、法律で決められた動植物」のことを特定外来生物と定義しています。

なお、平成29年10月1日時点では――
・哺乳類25種類
・鳥類5種類
・爬虫類21種類
・両生類15種類
魚類24種類
・クモ&サソリ類7種類
・甲殻類5種類
・昆虫類9種類
・軟体動物等5種類
植物16種類
――が指定されています。(※3)

有名な生き物では、オオクチバスやブルーギル、ウチダザリガニなどが該当します。なお、特定外来生物に該当すると、許可のない飼育や移動、販売などが大きく制限されます。

野外で捕まえて何気なく飼育している生き物も、もしかしたら…ということがあるかもしれません↓

無許可でアリゲーターガーを飼育or譲渡した場合の罰則は?

特定外来生物法では、違反した場合の罰則についても定められています。

例えば、「販売・頒布目的での飼養、不正な飼養、許可のない輸入や販売、野外へ放つなどの行為」に対しては、個人では3年以下の懲役や300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科されます。

また、「特定外来生物について販売・頒布以外の目的での飼養、未判定外来生物について通知なしの輸入」に対しては、個人には1年以下の懲役や100万円以下の罰金、法人には5000万円以下の罰金が科されます。

かなり重たい罰則だとおもいますし、知らなかったでは済まされませんので注意して下さい。ガーの仲間を飼育し続ける場合には、確実に飼育許可を申請しましょう。

2018年4月の規制開始後にアリゲーターガーを新規で飼育するには?

規制開始後にアリゲーターガーを新規で飼育するには、必ず手続きが必要です。

ですが、ブラックバスやブルーギルの前例があるように、規制開始後は「個人」が許可を得るのは事実上不可能だと思われます。前例がありませんし、前例がないことを役所が許可するように話を持って行くのは……「かなり大変」だと想像ができますよね?

そのため、ガーの飼育をしたい人は、規制開始前に購入しておくしかありません。

(↓当然、大きな水槽も必須です!)

まとめ・特定外来生物に指定されたら、アリゲーターガーは購入や飼育ができないの?

特定外来生物に指定された後は、アリゲーターガーを含めて、ガーの仲間は新規の購入や飼育ができないと考えておいた方が良いです。

そのため、私は1月中にガーを購入する予定です。

アリゲーターガーはとても飼育しきれないので選択肢に入れませんが、スポッテッドガーは120センチ水槽でも飼育できるので、気に入った模様の幼魚を3匹だけ購入したいと考えています。

しかし、大型魚は安易な気持ちで購入すると確実に持て余してしまう存在です。古代魚でもあるので寿命は10~15年以上と言われていますし、環境省の担当の方にも「真剣に考えてから購入を決めて下さい」ということを言われました。

(そうなって欲しくはありませんが)最悪、自分の手で殺すことも必要という覚悟を持ちながら、たくさんの愛情を注ぎたいと思っています。

そういう訳で、私は2018年4月1日以降に「ガーの飼育を継続するために必要な手続き」を取ろうと考えています。具体的な申請方法については、来週の私の記事で紹介したいと思っていますので、興味を持った方は楽しみにしていて下さい♪(※4)

 

最後に、まとめです。

魚好きとしては、アリゲーターガーを含めた観賞魚を悪く言われるのは、気持ちの良いモノではありません。名古屋城のアリゲーターガーがちょっとした社会問題になった時には、正直、過剰に反応している報道や魚を知らない一般の方に、何だかモヤモヤした感情も持っていました。

しかし、日本で越冬できる生物が、屋外に遺棄されたら恐怖を感じる人がいるのも事実です。水産業にダメージを与えたり、貴重な水辺の生態系を崩したり……。

今回のガーの問題は、アクアリストの大きな戒めとして、忘れてはいけないできごとだと思います。第二のガーを生み出さないように、一人ひとりが飼育している生き物に対して愛情と責任を持つ――当たり前ですが、とても大切なことです。

※注意点※
ガーの仲間の飼育許可申請は、4月1日から6か月以内に確実に出してください。猶予期間を過ぎると、許可申請が出せないどころか法律違反として最悪の場合、罰則の対象になります。「6か月以内に申請すれば、許可が下りるのは10月以降でも大丈夫(担当の方に確認済み)」ですが――書類不備や修正などに備えて、早めの手続きをおすすめします。
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=備考=

※1 2017年11月21日の定例閣議で、ガーの仲間を特定外来生物に指定する日が2018年4月1日と決まりました。内閣府のホームページを「特定外来生物」で検索したら出てきます。

※2 余談ですが、オオクチバスやブルーギルといった「水産物にも大きな影響を及ぼす魚」の飼育には、環境大臣に加えて「農林水産省の農林水産大臣の許可」を得る必要があります。こういう所が、行政手続きの少し難しいところです。

※3 参考ページ:環境省の『日本の外来種対策>特定外来生物等一覧』より:https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html

※4 2017年12月1日現在、ガーの仲間の飼養基準が決まっていない状態なので、今後、具体的な基準がホームページで公開されると環境省の担当の方は言っていました。下記の記事は「他の魚類を参考にした練習用の申請書類の書き方」になります。

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