水槽の掃除はおっくうなものですが、美しいアクアリウムを維持するためには避けて通れないですから、しっかりお掃除する必要があります。
そんな時、水槽の内側がぬるぬるする・場合によっては水面に薄い膜がはっているような…?という状況になったことがありますか?
このぬめり・膜は一体何なのか、どうして発生するのか、ぬめりを除去する方法、ぬめりを発生させないための対策について詳しくご紹介していきます。
目次
ぬめりの正体は
敵に勝つにはまず敵を知ることが必要ですね。水槽の内側やパイプにつく、このヌルヌルは何なのでしょうか?
バクテリアの集合体です
このヌルヌルは、水槽内のバクテリアが集まって出来たものです。バイオフィルムと呼ばれます。
水槽内のバクテリアの大切さはみなさんご存知かと思います。魚やエビの排泄物や、食べ残した餌、水草の枯れたものなどを分解してくれるのがバクテリアです。
そのバクテリアたちは1つ1つはとても小さな生物なので、出来れば寄り集まって生きていきたいんですね。そのために集まれる場所を作ろうとします。
バクテリアはEPS( extracellular polysaccharide 細胞外多糖のこと・ヌルヌルする物質)という成分を分泌し、その中に集合して生活しているのです。いわばバクテリアの住むアパートのようなものです。
ぬめりが発生するメカニズム
では、どういう時にこのぬめりが発生するのでしょうか。
ズバリ、水槽内が富栄養化したときです。
最近、下のような変化がありませんでしたか?
- 魚の数を増やした
- 栄養の高い餌に変えた
- 餌の量を増やした
- 水換えをサボっている
- フィルターの掃除をサボっている
いずれも水槽内を富栄養化させる原因になります。
原因がわかればそこをクリアにすればいいわけですから、何か変化があったかどうか考えてみてください。
水槽内の富栄養化はコケの発生や生体の病気を招く場合もありますので、富栄養化させないように心がけましょう。
また、富栄養化以外にも、水温の急上昇によるバクテリアの活性化、水槽立ち上げ直後のバクテリアの発生時にもバイオフィルムが発生する場合があります。
ぬめりは取り除くべき?
アクアリストであれば誰でも「水槽内のバクテリアは大事」ということはわかっていますので、えっ、バイオフィルムならそのままでいいんじゃないか、と思うかもしれません。
ぬめり(バイオフィルム)を取り除くかどうかは、水槽全体を見ることが大切です。
魚も元気・水も透き通っているのであれば、今すぐに取り除かなければならない!という緊急事態ではないかもしれません。
ただ、このぬめりはどんどん増える場合があり、そうなるとフィルターやパイプを目詰まりさせることがあります。目詰まりしたらろ過能力はダウン、ますますヌルヌルに……というマイナスのループに陥りかねません。そればかりかコケの発生や生体の病気を引き起こす可能性も高まってしまいます。
ですからそうなってしまう前に、バイオフィルムは取り除くのが無難です。とはいえ、大切なバクテリアが増えているしるしでもありますから、完全に除去しない程度がいいでしょう。
ぬめりを除去する方法
ではどのようにしてバイオフィルムを取り除くかについてご説明します。
拭き取る
基本的には、バイオフィルムをスポンジなどで拭き取ることになります。ただし、上で説明したとおり、完全に除去するよりは、まあまあヌルヌルしたの取れたな……というくらいでとどめておくのが良いでしょう。
水を綺麗にしてくれるバクテリアたちの居場所ですからね。
水換えをする
また、バイオフィルムの主な発生源は生体の排泄物ですから水換えをしましょう。
水を換えれば、たまりすぎた栄養分(硝酸塩)の濃度を低下させることができますのでバイオフィルムの発生を防ぐことができます。
ぬめりを発生させないようにするには
バイオフィルムを掃除で取り除いた後には、今後は出来るだけバイオフィルムが発生しないように心がけていきましょう。そのための対策をこちらでご紹介します。
魚・餌の量の見直し
水が出来るだけ綺麗な状態を保てるように、魚の数・餌の量の見直しをしましょう。
水槽に対して魚の数は適正ですか?一般に「魚の体表1平方センチメートルあたり1リットルの水が必要」と言われています。過密飼育は魚同士のケンカ・魚のストレス・魚の病気の元になりますので、ほどほどの数で飼育しましょう。
金魚は非常に水を汚すので、1匹につき水10リットルとも言われています。
餌の量は魚の種類や状況によっても異なりますが、餌を与えたあとはしばらく見守り、餌を食べきっているかどうか観察しましょう。残すようなら多すぎです。
水が出来るまで様子を見る
水槽を立ち上げたばかりであれば、まだ水の状態が整っていないということも考えられます。バランスが悪いためバクテリアが爆発的に増殖し、バイオフィルムが形成されるケースもあります。こういった場合は水のコンディションが落ち着くまで様子を見てください。
水換えの頻度をあげる
これまでの水換えのペースではバイオフィルムが発生してしまうわけですから、これまでよりも水換えの頻度をあげましょう。
また、水換えの頻度が適正か不安なときは水質検査をするのも1つの手です。
水槽内の水温を適正に保つ
夏場によく見られるのですが、水温が上がりすぎるとバクテリアが大繁殖し、バイオフィルムが形成されてしまいます。
飼育している魚の種類にもよりますが、一般的な熱帯魚に適正な水温は22~28℃と言われています。それを超えてしまうような場合は、ルームエアコンを稼動させるか、水槽の水温を下げるシステムを設けましょう。
ぬめりを除去して美しいアクアリウムを維持しよう
ぬめりの正体・原因・除去方法・発生防止方法についてご説明してきました。バクテリアの集合体とはいえ、フィルターやパイプの目詰まりの原因にもなるものですから、バイオフィルターの発生は防ぎたいものですね。
発生してしまったら除去し、今後は発生しないようにしっかり発生源を突き止めて改善していきましょう。

水槽のプロ トロピカライターの高井です。
遺伝子学が専門分野で、高校の理科教師として、日々、生徒たちに自然の偉大さを教えています。
アクアリウム全般が好きで、現在はアベニーパファーのトリコ。
ピンセットでアベニーにアカムシを食べさせるのが日々の癒しです。