人々を魅了する、色鮮やかな熱帯魚たち。
世界各地の川や海に生息する熱帯魚の多くは、とても色彩豊かな体色をしています。
それではなぜ南国に生息する海水魚や熱帯魚は、日本の川に生息する魚たちとは異なり、こんなにもカラフルな見た目をしているのでしょうか?
熱帯魚がカラフルな理由を紐解いていくと、魚の飼育環境と体色の関係性が見えてきました。これは、自宅で飼育している魚の色揚げのヒントにもなるでしょう。
今回は、熱帯魚が色彩豊かな体色をしている理由や、飼育している魚を色揚げさせるための条件などについて解説していきます。
色とりどりの熱帯魚や海水魚を飼育されている方は、ぜひ今回の記事をお役立てください。
熱帯魚がカラフルな理由として考えられる5つの説
熱帯魚や海水魚がカラフルな体色をしている理由は、実は今でも正確には解明されていません。
しかし、「こういう理由なのではないか?」と確信に迫るような説がいくつか提唱されています。
ここではまず、熱帯魚がカラフルな理由として
- 説1:生息地で隠れやすい
- 説2:メスにアピールできる
- 説3:警戒色として相手に伝えている
- 説4:日照条件と紫外線で体色が変わる
- 説5:水温も鮮やかさに影響する
以上5つの説をご紹介していこうと思います。
説1:生息地で隠れやすい
まずは生息地で隠れやすいという説について。
熱帯魚の住んでいる水域はとても温かく、川であれば赤や黄色味を帯びた水草や、海であればカラフルなサンゴが豊富に生息しています。
その中でうまく身を隠すには、周囲の景色と同じくらいに鮮やかな模様・体色にしたほうが生存確率が上がるため、都合が良いということなんですね。
説2:メスにアピールできる
続いてはメスにアピールできるという説について。
オスの熱帯魚は、より多くのメスに選ばれて子孫を残していくことを、本能的に大切にしています。
このためには、体色やヒレをより鮮やかに、そして体つきも立派に見えるよう発達させて、メスにアピールする必要があるのです。
メスに自分の遺伝子の優勢さを主張する手段として、体色を利用しているというわけですね。
説3:警戒色として相手に伝えている
続いては警戒色として相手に伝えているという説について。
魚に限った話ではありませんが、毒をもつ生き物の場合、警戒色として目立つ体色をしていることが多いです。
「私は毒をもっていますよ」と周囲に警告し、捕食される危険から身を守っているんですね。
魚類の中にも、ヒフキアイゴやミノカサゴなど、毒をもっていてなおかつ目立つ体色をした魚は多く存在します。
また、この発想を逆手に取り、毒をもっていないのにわざと体色を目立たせて、あたかも毒をもっているかのように振る舞う生き物もいます。
説4:日照条件と紫外線で体色が変わる
続いては日照条件と紫外線で体色が変わるという説について。
熱帯魚が多く生息する暖かい地域は、紫外線がとても強いです。
そして紫外線の浴びすぎは、私たち人間にはもちろん、魚にとっても害をもたらします。
魚たちは紫外線を必要以上に体内へ取り込まないように、吸収効率の良い暗い色ではなく、鮮やかな体色や模様で体を守っているのです。
サンゴが光る理由
この説を裏付ける根拠として、サンゴの反応が挙げられます。
サンゴが水槽に取り付けた照明や太陽の紫外線によって光るのは、蛍光色素を発することで紫外線を反射し、自身の体や共生する褐虫藻を守るためだと言われているのです。
説5:水温も鮮やかさに影響する
続いては水温が鮮やかさに影響しているという説について。
魚はある程度水温が高くなると代謝が活性化するため、鮮やかな体色になりやすいと言われています。
これも魚に限った話ではなく、寒い地域に生息する生き物は全体的にモノトーンの体色をしているのに対し、南国の生き物は赤や黄色などカラフルで、模様も多様性がありますよね。
色揚げと保護色
ここまで熱帯魚がカラフルな理由について、5つの説を用いてご紹介してきました。
そしてこの説は、飼育している熱帯魚を鮮やかに色揚げしたい時の手段として応用することができます。
ここからは魚の色揚げと保護色について、
- 飼育容器で体色の濃さが変わる!
- 海水の比重で海水魚は色揚げする!
これら2つの視点から解説をしていきます。
飼育環境の色で体色の濃さが変わる!
色揚げ用の餌を魚に与え続けると、徐々に体色が鮮やかになるという考え方があります。
実際にその通りなのですが、実は魚の体色は、水槽の底砂やバックスクリーンの濃さなどでも変化を促すことができるのです。
底砂やバックスクリーンの色を濃くすると、周囲の色に溶け込むために体色を濃くする作用が働くことが知られています。
飼育している魚の体色が薄くなってきたなと感じたら、ぜひ濃い目の底砂やバックスクリーンを取り入れてみてください!
海水の比重で海水魚は色揚げする!
海水魚に関しては、海水の比重で体色が変化していくことが知られています。
比重が低いと体色は薄くなり、比重が高いと濃く鮮やかな色味に変化していくのです。
通常の飼育では海水比重1.023ほどが推奨されていますが、濃い体色の海水魚が多く生息する南洋の比重は、1.024~1.030と結構高めです。
比重の高い水は海水魚にとって重たい水で、常に一定の負荷を掛けられているということ、運動量が増え餌食いが良くなった結果、体色がアップするのではないかと言われています。
もし飼育している海水魚を色揚げしたい場合は、比重を1.024~1.026程度に設定しておくのがおすすめです。
体色が急に薄くなったら体調を確認しよう
もし魚の体色が急に褪せてきたように感じたら、体調不良を起こしていないかどうか確認しましょう。
体色が薄く、泳ぎ方に弱々しさを感じたら、なにか病気を発症しているのかもしれません。
魚の病気は早期発見・早期治療が回復の鍵を握りますので、日頃の観察がとても大切です。
飼育している魚たちの体色や泳ぎ方に異常がないかどうか、毎日しっかりと観察しましょう。
まとめ:熱帯魚はなぜカラフルなのか!生息地や生態で体色が派手になる?
今回は、熱帯魚が色彩豊かな体色をしている理由や、飼育している魚を色揚げさせるための方法などについて解説をしてきました。
熱帯魚がカラフルな理由は正確には解明されてないのですが、生息地で隠れるためや、紫外線から身を守るためなど、様々な説が提唱されています。
飼育環境下の熱帯魚の色揚げで、底砂やバックスクリーンを濃くすることが推奨されているのは、この自然の摂理に基づいた結果といえるでしょう。
熱帯魚の色を濃くしたいと考えている方はぜひ、この記事を参考に色揚げを実践してみてください。
トロピカライターの井上あゆみです。
金魚から熱帯魚・海水魚まで、全部で20種類程度のお魚を飼育してきました。
お気に入りはイエローヘッド・ジョーフィッシュ。怒ったような顔をしているのに、実はかなり臆病というなかなか憎めない海水魚です。アクアリウム初心者の方でも楽しく読めるような記事を書いていくので、よろしくお願い致します!