春になると暖かくなり気温の面ではだいぶ過ごしやすくなります。この時期は野生の水生生物も活発に活動を始める時期で、河川や池の畔などでは新しく誕生した稚魚が群れている様子を観察できます。
ところで、そのような時期に水槽用ヒーターを使用する必要性について、疑問をお持ちの方はいませんか。暖かくなってきたのだから、ヒーターを使用せずとも水温を保てるのではないか、とお考えになる方もいると思いますが、ヒーターは通年での使用をおすすめします。
なぜなら、暖かいあるいは暑い時期でもヒーターを使用した方が、飼育環境の維持や機器の耐久面で有利だからです。ここでは、水槽用ヒーターを通年で使用する必要性やメリットなどについてご紹介します。
水槽用ヒーターを通年で使用する必要性
晩春から初秋にかけては気温が高い日が続くので、水槽用ヒーターを使用しなくても良いのでは、とお考えになる方もいるかもしれませんが、ヒーターは通年での使用を推奨します。その理由としては、以下に示す必要性があるからです。
空調の加減により水温が低下する恐れがある
夏季をはじめ気温が高い時にエアコンなどの空調を使用する際、水槽の配置場所次第では冷風の影響で水温が過度に低下してしまう恐れがあります。その場合でも、水槽用ヒーターを入れておけば自動で水温を調節してくれるので、熱帯魚などを低水温から守れます。
水換え時の水温調整
水換え時に新しい水と交換する際、カルキ抜きをした水道水を温度調節をせず水槽に入れてしまうと水温は低下します。そこで、水槽用ヒーターを使用しないと、生体にとって適した水温を下回った状態が長時間に渡って続いてしまいます。
その結果、生体が衰弱したり病気になる危険があるので、この点からも気温が高くなってもヒーターは使用し続けた方が良いのです。
水槽用ヒーターを使用し続けるメリット
水槽用ヒーターを通年で使用することには以下に示すメリットもあります。
水槽用クーラーが故障した時の保険
夏場に水槽用クーラーを使用し、それが故障して過度に冷却する方向に作動してしまった際に、水温低下を緩和することも可能です。
ただし、この場合はクーラー故障の発見が遅れる可能性が高いので、日常のメンテナンスでクーラーの状態を確認するのと同時に、ヒーターが盛んに動作していないかもチェックすることが重要です。
通電しておいた方が劣化が遅い
水槽用ヒーターも機械製品なので一度使用した物については、通電し続けた方が劣化を抑えられる部品が含まれています。そのため、数カ月間に渡って使用しない期間を設けるよりも、使用し続けた方が長持ちする傾向にあるので、通年での使用をおすすめします。
水槽用ヒーターの使用上の注意点
ここからは、水槽用ヒーターを安全に使用するための注意点をご紹介します。単純なヒューマンエラーで飼育している生体どころか、ご自身が危険に晒されてしまうことがあるので、ぜひチェックしてください。
空焚き
水槽用ヒーターの使用で最も注意が必要と言っても過言でないのが空焚きです。
空焚きは加熱状態のヒーターが空気中に出てしまうことですが、この状態になってしまうと異常加熱によりヒーターを覆う樹脂などが溶融し、可燃物に燃え移ることで大規模な火災にまで発展する危険があります。
実は、過去に水槽用ヒーターが原因の火災は何件も発生事例があったために、法の改正が行われた結果、現在では空焚き防止装置が標準的に組み込まれています。しかし、法改正以前の製品にはその安全装置がない場合があるので、空焚き状態にならないよう注意してください。
置き方
水槽用ヒーターは置き方にも注意が必要で、置き方が不適切だと温調がうまくいかなかったり故障の原因になってしまいます。
まず、ヒーターには横置き専用の物と、縦・横に対応している物があることを知っておいてください。横置き専用のヒーターを縦向きに置いてしまうと故障の原因になります。また、見栄えを気にして底床材に埋めることも故障の原因になるので避けてください。
次に、ヒーターは基本的には横向きに置きます。なぜなら、温められた水は水面に向かって移動するので、横向きに置いた方が効率よく温められるからです。そして、サーモスタットが独立している物はヒーター本体から離した場所に設置しないと、温調機能がうまく動作しないので注意してください。
故障・寿命
水槽用ヒーターは基本的に消耗品です。ヒーターの寿命は一般的に1~2年と言われているので、突然の故障や寿命により機能しなくなった時のために、予備は必ず用意しておきましょう。さもないと、熱帯魚にとって文字通り致命的な事態に陥ってしまいます。
温度調節機能がある物はズレに注意
水槽用ヒーターには温度調節機能が付いている物と温度固定式の物があります。温度調節機能付きの物の方が白点病の治療時など有用なケースが多いのですが、調節できるからこそ必要な注意点があり、それは設定温度のズレです。
水槽作業時などに、知らず知らずのうちにコントローラーに触れて設定温度が高温側にズレてしまい、大事な生体を茹で上げてしまった、という事例も見られます。そのため、ヒーターの設定温度がズレていないか日常的にチェックすることは重要で、特に水槽作業を行った後は注意してください。
まとめ・気温が高い時でも水槽用ヒーターを使用し続ける必要性とメリットについて
春以降、暖かくなっても水槽用ヒーターは通年での使用を推奨します。その方が、不意の水温低下が生じても加温できるので、熱帯魚などを低水温に晒し続けることを防げるからです。
また、ヒーターも機械製品なので数カ月もの間通電しない期間があるよりも、通電し続けた方が劣化を抑えられるメリットもあります。
ヒーターは一歩間違えれば火災に発展する恐れがあるので、取り扱いには十分に注意し、故障したり寿命を迎えた時のために必ず予備は用意しておきましょう。
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