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許可なく特定外来生物を飼育すると、どんな罰則がある?

いよいよ今年の4月1日から、古代魚の「ガーの仲間」が特定外来生物に指定されます。画像のウシガエルは仕方ないのかも知れませんが、ガーの仲間はとても魅力的な魚ゆえに個人的にはとても残念に感じています。

なお、過去記事でも触れましたが、3月31日までの間に購入及び水槽への搬入を済まして、「環境省が定めた飼養の手続き」を行えば合法的に飼育し続けることができます。

(↓過去記事はこちらを参考にしてみて下さい。)

そこで今回の記事では、逆の視点で「許可なく特定外来生物を飼育すると、どんな罰則があるのか?」をテーマに考えていきたいと思います。

どのような罰則がある?

特定外来生物の飼育等については、「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」という法律で色々な制限がかけられています。その中に、違反行為の罰則についても規定されています。その内容を、見て行きましょう。

3年以下の懲役や300万円以下の罰金

個人の場合、「販売・頒布目的での飼養不正な飼養、許可のない輸入や販売、野外へ放つなどの行為」は3年以下の懲役や300万円以下の罰金が科されます。法人では、さらに重たい1億円以下の罰金が科されるので注意して下さい。

1年以下の懲役や100万円以下の罰金

個人の場合、「販売・頒布以外の目的での飼養、未判定外来生物について通知なしの輸入」は1年以下の懲役や100万円以下の罰金が科されます。法人では、さらに重たい5000万円以下の罰金が科されるので注意して下さい。

自然の中で偶然つかまえた時はどうしたら良い?

釣りやガサガサなどをしていると、河川や池などで特定外来生物を捕まえてしまうことがあると思います。有名どころではブルーギルやカダヤシなどは、しばしば私もフィールドで出会います。そんな時には、どうしたら良いのでしょうか?

答えとしては、「原則として、そのまま逃がす」という対処がベターだと私は思います。

ここで原則を入れたのは理由があります。一部の地域では、特定外来生物を捕まえた場合に殺さないといけない場所(再放流禁止が条例などで決められた場所)があります。そのような場所で釣りやガサガサをする場合には、「殺す覚悟」を持った上で行動しないといけなくなります。ちなみに、私はブルーギルやブラックバスのような魚なら、釣った場所で〆てから(生きたままの移動は厳禁)、から揚げにして食べちゃいます!

(特定外来生物をリリースすることの良し悪しについては議論の余地がありますが、様々な考え方がありますので、今回は割愛させていただきます)

他の刑罰と比較してみると?

さて、ここからは「外来生物法違反がどのくらい重たい罰則なのか?」を知るために、他の刑罰と比較してみたいと思います。

特定外来生物を個人が許可なく飼育した場合の罰則「1年以下の懲役や100万円以下の罰金」野外に放った場合の罰則「3年以下の懲役や300万円以下の罰金」は、他の刑罰と比較してみるとどのくらいの重さなのでしょうか? イメージしやすい犯罪行為を例に考えてみたいと思います。

【傷害罪】→15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
【飲酒運転】→5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
【酒気帯び運転】→3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
【自動車運転過失致死傷】→7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金
【危険運転致死傷】→15年以下の懲役
【殺人罪】→死刑または無期もしくは5年以上の懲役
【詐欺罪】→10年以下の懲役
【強盗罪】→5年以上の有期懲役

……こうやって並べてみると、ちょっと怖いですね。犯罪行為って絶対にしちゃいけないなと感じます。

比較してみて一番近いのは、「酒気帯び運転」もしくは「飲酒運転」や「傷害罪」でしょうか。これを軽い罪と考えるか重い罪と考えるかはその人次第ですが、割に合わない重い罰則だというのが普通の人の感覚だと思います。

懲役刑で刑務所に入るのは誰でも嫌ですし、罰金を何十万円~何百万円単位で払わないといけないのなら、美味しい料理を食べる旅行に行ったり、新車を買ったりしたいです。

――結論。「許可なく特定外来生物を飼育したり、野外に放ったりする行為は、軽い気持ちでして良いことではない!!」です。飼養の手続きが面倒だとか、殺すのは可哀そうだとか、飼いきれなくなったとか……色々な事情があったとしても、法律違反は割に合わないようにできています。

もちろん、「軽い気持ちじゃなければ良いのか?」と言っている訳ではありません。安易な気持ちで法律違反をするくらいなら、平成30年3月31日までに里親を探すとか、飼養の許可を取るとか、最後の見取りをするというのが、飼育者の責任だと言いたいのです。

ちなみに、ガーの仲間の飼養許可の手続きは「無料」で行えます。書類作成に少し手間取るかもしれませんが、見本を見ながら用意をすればそこまで難しいものでもありません。分からないところは、管轄の環境事務所に電話をして聞けば、良い方法を教えてもくれます。

(↓手続きについてはこちらから)

今後、どんなことに注意したらいい?

さて、罰則について考えてみた後には、今後の対策を考えていきたいと思います。

それは、「飼い続ける」or「飼い続けない」の2択です。

平成30年4月以降も飼い続けるなら

環境省の許可を得るのが必須です。ちなみに、平成30年4月までに許可を得る必要はなく、指定されてから6か月間の「猶予期間中」に書類をそろえて申請すれば大丈夫(環境事務所の担当の方に確認済み)です。

平成30年4月頃までに、環境省のホームページで「ガーの仲間の飼養許可の申請方法」が公開される予定となっていると担当者の方が言っていましたので、そこの記入例を見ながら書類を作成するのが一番良い方法だと思います。

(↓過去記事はこちらを参考にしてみて下さい。)

飼い続けるのが難しい場合

飼い続けるのが難しい場合には、平成30年4月までなら里親に出すのが一番良い方法だと思います。

残念ながら、水族館やペットショップなどで引き取ってくれることは殆どないと思いますので、ヤフーオークションを利用するのが私個人としてはおススメしたい方法です。タイトルに「〇〇県〇〇市/引き取り限定」と記載して安価で出品すれば、飼育したい人が入札をして、落札後に魚を引き取りに来てくれます。

(なお、引き渡し期間の事も考えると早めの出品をおススメします。3月中に移動まで済ませないと法律違反になりますので!)

平成30年4月以降は、どうしても飼い続けることができないのであれば――残念ですが殺処分をするしかありません。

他人への譲渡が法律で禁止されているため、無償(0円)でも他人へ譲り渡す行為は法律違反になります。ちなみに、くれぐれも「野外に放つ」のは止めて下さい。野外に放った場合の罰則は「3年以下の懲役や300万円以下の罰金」と、酒気帯び運転や飲酒運転並みの犯罪行為ですから。

おわりに/天然記念物の採集&種の保存法という法律にも気を付けよう!

ここまで、外来生物法の罰則について考えてきました。しかし、日本の法律は外来生物法だけではありません。

自然のフィールドの中で生物を採集する時には、天然記念物や希少生物への配慮を忘れてはいけません。また、うなぎや鮎などの魚には、禁漁区や禁漁期が定められている場合がほとんどです。後世にも豊かな自然を引き継ぐためにも、法律や条例は守ることが大切です。

なお、許可を得ずに保護されている生き物を捕獲や殺傷した場合には、一例ですが、次のような罰則が適用されます。

【天然記念物の捕獲】→5年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金
【種の保存法違反】→5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金
【ウナギの禁漁期違反(鹿児島県)】→1年以下の懲役又は50万円以下の罰金等の罰則

ちなみに、法律は「知らなかった」では済まされません。「知らなかったら、飲酒運転をしても良いのか? 他人の物を盗っても良いのか?」と考えるとイメージしやすいかと思います。

――とはいえ、天然記念物や種の保存法で保護されているような生き物が生息する場所は、「〇〇の生息地」というような形で保護されていることがほとんどなので、事前に情報収集をしていれば、確実に気付くことができます。

最後にまとめです。自然のフィールドでの採集も、特定外来生物の飼育に関しても、しっかりとルール&マナーを守っていれば過度に恐れることはありません。

一人のアクアリストとしての責任を守りながら、色々な法律も守って、最大限アクアリウムを楽しみましょう!