熱帯魚水槽や海水魚水槽に発生するコケと言えば、「見た目が悪い」「臭いがする」「水質が悪い」などのマイナスイメージが先行しがちです。しかし、色々なコケの中には、実は良いコケも存在します。そのため、私たち水槽メンテナンスのプロは水槽に生えるコケを基準に、その時ベストなメンテナンス方法を選択します。
水槽のコケは、水槽の状態をはかるパロメーターになるのです。そこで今回は、「熱帯魚水槽や海水魚水槽に発生する良いコケと悪いコケについて」紹介して行きたいと思います。
熱帯魚水槽に発生する良いコケ/斑点状藻
斑点状藻とは淡水水槽に生える「スポット状のコケ」のことです。水質が安定した水槽に発生するコケで、綺麗に茂った水草水槽ではほとんどの確率で発生します。このコケが出ているときは、水槽ガラス面に茶ゴケはほとんど発生しません。水槽を鑑賞する時にも汚れがほとんど分からないくらいです。
この斑点状藻が発生する条件は「豊富な光量」「栄養過多」です。それは水草を育成する視点から考えると「照明の光量が十分か?」「栄養素は足りているか?」「光や栄養素が足りている場合でも多すぎないか?」ということを知る手掛かりになります。
つまり、斑点状藻は「光量の過不足」や「水草の育成に必要な栄養素の過不足」を知ることができるパラメータになってくれるのです。光量や栄養素が足りないと斑点状藻は生えてきませんし、光量や栄養素が多すぎると画像のように生えすぎてしまう状態になります。
しかし、この斑点状藻は放っておくとどんどん固くなり、画像のような状態になってしまうと掃除が大変になります。そのため、斑点状藻はプラスチックのスクレーパーなどで、見つけたら小まめに取り除くことが大切です。
海水魚水槽に発生する良いコケ/石灰藻
石灰藻とは、海水水槽で使用するライブロックと呼ばれる岩に付着している、ピンク色や紫色がかったコケのことです。この石灰藻は海水水槽でしか発生しませんが、水質が非常に安定していなければ発生しないので、ある意味で貴重なコケになります。
具体的には、サンゴ水槽では石灰藻の発生が水質を見極める非常に重要な要素です。この石灰藻が出ない水槽は、サンゴの維持や成長に必要な栄養素が足りていないため、サンゴの育成が困難になることが多いです。
例えば、炭酸塩硬度(以下KH)の安定はサンゴにとって必須であり、KHが安定していると自然に石灰藻が発生します。石灰藻はKHが常時、天然海水と同成分の濃度で維持されなければ水槽内に発生しないからです。つまり、石灰藻は「サンゴ水槽に欠かせない栄養素が足りていること」のパラメータになってくれるのです。
なお、サンゴ用の人工海水を使用して水槽を立ち上げると、天然海水より少し高くKHを作り出すことができます。しかし、水槽内のサンゴが成長する際にKHはあっという間に減少してしまいます。(サンゴにとって必要な濃度は、1日で規定値以下になります)
まとめると、「安定しているサンゴ水槽のライブロックや、水槽面に石灰藻が付いていることは、水質が良いことの証」なのです。ただし石灰藻は非常に硬いコケのため、ガラス面や配管などに付いて取れなくなる前に、小まめに掃除をしましょう。
熱帯魚水槽や海水魚水槽に発生する悪いコケ
ここからは、熱帯魚水槽や海水魚水槽に発生する悪いコケについて紹介していきます。悪いコケを除去したり予防する方法は、↓の過去記事でも触れていますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
悪いコケ①茶ゴケ
茶ゴケとは、水槽設置初期に発生しやすい茶色のコケです。海水でも淡水でも生えてきます。水槽内の水質が不安定な時によく発生します。茶ゴケの発生原因は、魚が残したエサや魚の排泄物を、バクテリアと呼ばれる微生物が分解しきれないことが原因です。コケの増殖に必要な栄養分が、水槽内で過剰に多くなってしまうのです。
つまり、茶ゴケは「水槽内のバクテリアが少ないため、水質が悪化しやすい(=魚を入れる環境がまだできていない)」ことを知れるパラメータになってくれます。茶ゴケが生えているうちは、中に入れる生体の数を少なめにして、水質の急変や悪化に注意してあげて下さい。小まめな水替えや活性炭の使用などもおススメできます。
茶ゴケの予防としては「水槽設置初期は水槽内に魚を入れず、空回しや水回しと呼ばれる作業を挟んで、お魚を徐々に入れていくこと(=バクテリアを育てる)」が一番簡単です。
ただし、茶ゴケは水槽面に付着しても簡単に拭き取れる&茶ゴケを食べてくれる生き物もいるので、発生しても怖くはありません。ガラス面の茶ゴケを拭き取る時には、コケや汚れが水槽内に舞わないように排水を同時進行でするようにしましょう。
悪いコケ②ラン藻・アオコ
淡水水槽では通称ラン藻、海水水槽ではシアノバクテリアと呼ばれるべったりとしたコケです。どれも藻類ではありますが、植物ではなく藍色細菌と呼ばれる細菌の仲間です。
このコケは、「水槽を1か月以上回して水槽が安定しない時」に発生しやすいです。原因は茶ゴケと同じく水質悪化です。エサの残りや排泄物の分解にバクテリアの処理能力が間に合わなくなった栄養過多の水槽で、照明時間が長過ぎたり強過ぎると発生しやすいです。
つまり、ラン藻やアオコ、シアノバクテリアが発生することは「照明時間が長すぎる」「バクテリアが少ないので、水質が悪化しやすい(=魚を入れる環境がまだできていない)」ことを知れるパラメータになります。これらのコケが生えているうちは、小まめな水替えや活性炭の使用がおススメです
ラン藻を除去する場合は、次のような対応をします。
・水換えをして水槽内の栄養分を減らす。
・ろ過器を洗浄する。
・活性炭で強制的に栄養源を取り除く。
・照明時間を減らす、弱光にする、または付けない。
・エサの量を減らす。
なお、これらの対応を取り入れる場合には水草に影響が出る可能性もあるので、日々小まめに水槽内を観察することが大切です。
ちなみにラン藻は茶ゴケ同様、簡単に拭き取れます。拭き取る際は、コケを取りつつ汚れが水槽内に舞わないように、排水を同時進行でしましょう。
悪いコケ③緑髭コケ(黒髭藻・ヒゲ状藻)
緑髭コケは、淡水の水槽内に生えるヒゲ状のコケです。とても硬く、水草や流木にがっちりとくっついて生えるので、個人的には水槽内で一番厄介だと感じるコケです。
このコケは水槽内の硝酸塩濃度が高くなる(極端に言うなら、水が古くなる)と生えやすいです。具体的には、長期間水替えをさぼっていたり、フィルターや底砂の掃除をしていないと発生しやすくなります。つまり、緑髭コケは「水槽の掃除が足りていない」「水替え不足」を知れるパラメータになっていると言えます。
一度生えてしまうと、根絶するのが難しいので生えないように予防することが大切です。「小まめな水替え、定期的なフィルターの掃除、定期的な底砂の掃除、ヤマトヌマエビなどのコケを食べてくれる生き物の導入」などで予防しましょう。
悪いコケ④アオミドロ
アオミドロは、淡水の水槽に生える緑色の糸状のふさふさした長いコケです。水草やガラス面、底砂などに生える見た目がとても悪いコケになります。このアオミドロが発生する原因は「照明時間が長い」「照明が強すぎる」「栄養過多(チッソ・リンが多い)」です。直射日光が水槽にあたっている時にも、発生しやすいコケになります。
つまり、アオミドロは「照明時間が長すぎる」「照明が強すぎる」「水替えが足りていない」ということが知れるパラメータになります。
アオミドロを除去する場合は、次のような対応をします。
・水槽用ライトの照射時間を減らしてみる
・歯ブラシやピンセットを使って、コケを絡めるようにして取り除く。
・エビの仲間やペンシルフィッシュ、ブラックモーリーなどに食べさせる。
なお、お店で購入した水草にくっついていることもあるので、水槽内に水草を入れる時には良く観察してから水槽に入れて下さいね。
まとめ・熱帯魚水槽や海水魚水槽に発生する、良いコケと悪いコケの見分け方のおわりに
ここまで、熱帯魚水槽に発生する良いコケと悪いコケの見分け方を紹介してきました。
良いコケが生えてくれるのはもちろんですが、悪いコケもその発生原因を考えると水槽の水質改善につなげることができます。ケースバイケースで日々のメンテナンスの参考にしてみて下さい。
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