陰性水草とは、その名の通り生育に強い光が要らない種類の水草を指します。水草用のLEDといった強力な照明器具がなくても育てられるうえに、CO2の添加も必要がない種類が多いので、本格的な設備がなくても育成できることが魅力の1つです。
「アヌビアス・ナナ」に代表されるように、環境適応力が高くて丈夫な種類が多いので、水草育成の入門としても適しています。しかし、全体的に成長が遅くてコケに覆われやすいため、コケ対策はしっかりと行わなければなりません。
ここでは、陰性水草の特徴と種類に加え、上手に育成するための方法などを解説していきます。
陰性水草とは?
陰性水草とは「陰性」の言葉が示す通り、強い光が当たる環境になくても十分に生育する水草のことを指します。対になる存在として「陽性水草」があり、こちらは生育のためには潤沢な光量を確保する必要があります。
そのため、陽性水草を育成するにあたっては、水草の育成を目的とした専用のLEDなどの照明器具が必要ですが、陰性水草の場合はそのような器具がなくても、十分に育成できる点が魅力の1つです。
さらに、陰性水草はCO2の添加をせずとも育つ種類が多いことも特徴で、本格的な設備がなくても育成がしやすい水草と言えます。また、石や流木などに活着させられる種類が多いため、自然の雰囲気を演出しやすく、水槽内の様々なレイアウトで活躍してくれます。
環境への適応力が高くて丈夫な傾向にあることも手伝って、初心者から上級者まで幅広い層に支持されている水草です。
コケ対策にお掃除生体を入れよう!
丈夫で初心者にも育成しやすい陰性水草ですが、共通する弱点があります。その弱点とはコケが付着しやすいことです。というのは、成長が遅い陰性水草は放っておくと、成長が早いコケとの生存競争に負けてしまって水中の養分をコケに取られ、コケに覆われてしまうのです。
水草の表面にコケが生えてしまうと、そのコケが光合成を阻害するなどの悪影響を及ぼし、最悪の場合は水草を枯らせてしまうので注意が必要です。
そこで必要になるのが、コケを除去してくれる「お掃除生体」の存在です。特に、成長が遅いために、トリミングでのコケ除去に限界がある陰性水草の育成においては、コケを食べることで取ってくれるお掃除生体の存在が欠かせません。
コケ取り用のお掃除生体としては、「オトシンクルス」や「ヤマトヌマエビ」、「ヒメタニシ」などの魚介類が挙げられ、これらの生物を水草水槽に入れておくと、コケの抑制に大いに役立ってくれます。
ただし、コケにも種類があり、生物によって食べてくれるものが異なってくる点には注意してください。また、コケも植物の1種なので、そのコケを食べるということは、餌となるコケが不足すると水草を食害してしまうことがあります。
そのため、ご自身の育成環境において、どの種類のコケが発生しやすいのか、また発生量はどの程度なのかを把握したうえで、入れるお掃除生体の種類と個体数をコントロールすることが重要です。
陰性水草の価格について
実は、陰性水草の価格は陽性水草と比較すると少し高価な傾向にあります。理由としては、やはり成長が遅いことが挙げられ、株分けなどで増殖できるまでに時間がかかることから、需要に対して供給量を簡単には増やせないことが影響しています。
高級水草として知られている種類に、「ボルビティス」や「ブセファランドラ」などがありますが、それらはやはり陰性水草に分類されており、1株で5000円以上の値が付くこともあります。
しかし、水草の代表格として知られている「アヌビアス」などは陰性水草に該当しますが、1株1000円未満と手頃な価格で手に入るので、同じ陰性水草でも種類間で値幅が大きいことも事実です。
また、1度根付くと長持ちすることも陰性水草の特徴なので、大事に育てれば愛着が持てることでしょう。
育てやすくおすすめの陰性水草5種!
ミクロソリウム
ウラボシ科に分類される水生シダの仲間です。流木や石などに活着させやすいことから、手軽にレイアウトのバリエーションを増やせます。丈夫な水草ではあるのですが、高水温には弱く、28℃以上になると病気にかかりやすくなってしまうので、特に夏場は注意が必要です。
アヌビアス・ナナ
陰性水草だけでなく水草全体の代表格とも言える種類で、アフリカに自生しているサトイモ科の水草です。その育成のしやすさが魅力で、水草育成の入門種としても最適です。日陰でも十分に育成が可能で、CO2だけでなく肥料の添加すらなくても育ちます。
ただし、その分だけ成長が非常にゆっくりなので、大変コケが付きやすくコケ対策が必須です。葉などは硬くて丈夫なため、表面を擦ればコケを落とせますが、お掃除生体に食べてもらった方が健康的に成長します。
ボルビティス
ツルキシノオ科に分類される水生シダの仲間です。成長速度は他の陰性水草と同様に遅いので、コケ対策はしっかりと行ってください。ミクロソリウムと同じく活着させやすい性質を持つので、様々な水槽レイアウトで活躍します。
CO2の添加はなくても問題ありませんが、添加をすると元気になり幾分かは成長が早くなります。成長すると茂るので、たまのトリミングが必要です。水生シダなのでミクロソリウムと同様、高水温には注意してください。
アヌビアス・ナナ プチ
アヌビアス・ナナの改良品種で「プチ」の名が示す通り、通常のアヌビアス・ナナよりも一回り小さくまとまる水草です。
育成法などはアヌビアス・ナナに準拠していますが、原種よりも葉や茎の間隔が狭く、そこにコケが発生しやすい印象を受けたので注意してください。成長速度も遅いため、コケに覆われて枯らせてしまわないようにしましょう。
クリプトコリネ
東南アジアに分布しているサトイモ科の水草です。本種は適応力が高い水草で、環境が変わると古い葉を溶かして、その環境に合った新しい葉を展開します。
強い光を当ててしまうと葉が茶色っぽく変色する傾向にあるので、陰になる場所に配置してあげると奇麗な緑色を維持できます。CO2はあまり必要ありませんが、水草用の液肥などは添加してあげましょう。
まとめ:強い光が不要な陰性水草は初心者にもおすすめ!
陰性水草は育成に強い光が必要なく、CO2の添加も要らない丈夫な種類が多いです。水草用の強力な照明器具など、本格的な設備がなくても十分に育てられるため、初心者の方にもおすすめできる水草です。
ただし、総じて成長が遅い傾向にあり、油断しているとコケに覆われて枯れたり溶けてしまうので、コケ対策はしっかりと行ってください。
陰性水草は活着できる種類が多くて日陰でも生育できるため、手軽にレイアウトの幅を広げられます。理想の水槽レイアウトを実現するために、ぜひ陰性水草を取り入れてみてください。
水槽のプロが所属するサイト運営チームです。
淡水魚・海水魚・水槽設備やレイアウトのことまで、アクアリウムに関する情報を発信していきます!
※返信にお時間をいただいております。
弊社公式サイトのお悩み相談フォームですと早めに返信できますので、よろしければそちらもご利用ください。