「酸素が出る石」とはエアレーション用品の一種で、その名の通り飼育水に入れると酸素を放出する固形物です。
主成分は「過酸化カルシウム」で、水を加えると水酸化カルシウムと酸素が得られる化学反応を利用しています。
一見すると便利に思えますが、持続時間が有限であるうえに水質を変化させることがあるため、使用すべきかどうはよく検討する必要があります。
特に、コストパフォーマンスが悪い点には注意が必要で、長期的に見るとエアレーション器具を揃えた方が、維持費は安価に抑えられます。
ここでは、酸素が出る石について主成分や効果、コストパフォーマンスなどの注意点を解説していきます。
目次
酸素が出る石、酸素を出す石とは
この記事では「酸素が出る石」という通称で統一しますが、実際はメーカーごとに「さんそを出す石」「O2ストーン」など様々な名前で販売されています。
過酸化カルシウム(CaO2)が水に触れると酸素と水酸化カルシウム (Ca(OH)2) に分解されるという性質を利用して、ぶくぶくと空気の泡を出します。
これを水槽の中に入れることで、水槽の酸素濃度を調整することが出来ます。
エアレーションを使えない時の代替品として、また小型水槽の使用機器削減、釣った魚を持ち帰るまでの簡易的な酸素供給など、様々な用途で使われています。
酸素が出る石のメリット
このアイテムが人気な理由は、次のようなメリットにあります。
- 電源がいらない:
化学反応を利用して酸素を出すため、電源や電池は不要です - 細かい操作や設定が不要:
入れれば勝手に酸素が出るので、機械を使うときのような設定や操作はいりません - 静音&省スペース:
音はほとんどありません。機械を使う場合は本体の設置場所や電源確保などでスペースを考える必要がありますが、これは商品パッケージ(箱)だけなのでコンパクト。 - 持ち運びしやすい:
電池式エアレーション、酸素注入ボンベを持ち運ぶことに比べたら、圧倒的に楽です。
ダイソーなどの100円ショップでも売られているくらい手軽に扱えるアイテムなので、お子さん主体の小型魚飼育などでも利用されています。
酸素ブクブク君
2個入
こんな時に役に立つ 停電時の酸素補給に! 水槽掃除の時の酸欠防止に! エアーポンプを使用していない金魚鉢やプラケースの酸素補給に!観賞魚用…
酸素が出る石の使い方
基本的には飼育水に投入するだけです。
使用する数については水量や飼育している個体数に依存するため、パッケージや取扱説明書をよく読み、適切な数量を入れてください。電源がなくとも酸素の供給を行えるので、輸送や停電時に使用することも可能です。
酸素が出る石を使えない魚・生体
酸素が出る石は、次のような生体には使うのを避けた方がいいでしょう。
- 中~大型魚
- 口が大きな肉食魚(アロワナ、ナマズなど)
- エビやカニといった甲殻類など、水質変化に敏感な生体
中型~大型魚、そして口が大きな肉食魚は、酸素が出る石をエサだと勘違いして飲み込んでしまう可能性があります。
そもそも中型以上の魚や生体を飼育している水槽で使うには効果が弱いので、エアレーション推奨です。
エビやカニといった甲殻類、水質変化に敏感な魚・生体に関しては、後述する『酸素が出る石のコスパと注意点について』でも触れていますが、これを使いすぎると水質が変化する可能性があるため、向いていません。
販売されている酸素が出る石の一覧
商品としては「ニチドウ」や「GEX」から販売されている、「さんそを出す石」や「おさかなぶくぶくブロック」が代表的です。また、100均でも同様の商品があり、「酸素ブクブク君」などの名で販売されています。
いずれも錠剤やタブレット状に成形してあり、取り扱いは容易です。持続時間などは商品のタイプによって異なり、半日程度しか効果が得られない物から、1カ月ほど持続するタイプもあります。
メーカー | ニッソー | ニチドウ | ニチドウ | ニチドウ | ニチドウ | ニチドウ | ニチドウ | GEX |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
商品名 | 金魚・メダカ酸素ぷくぷく | さんそを出す石 飼育用 | さんそを出す石 採取用 | さんそを出す石 飼育用 バクテリア入り |
金魚のための さんそを出す石 |
メダカのための さんそを出す石 |
O2ストーン 小型水槽用 | おさかなブクブク ブロック |
画像 | ||||||||
水槽 | 小型水槽 淡水・海水 |
小型水槽 淡水 |
採集・輸送容器 淡水 |
小型水槽 淡水 |
小型水槽 淡水 |
小型水槽 淡水 |
小型水槽 淡水 |
小型水槽 淡水・海水 |
持続時間 | 1.5か月 | 約1か月 | 約12時間 | 約1か月 | 約1か月 | 約1か月 | 約30日 | 約1か月 |
使用量 | 10L毎に1錠 | 3L:2~3個 (夏期は1L:2個目安) |
2L:4~6個 | 3L:2~3個 | 5~10L:Lサイズ1個 (カルキ石1個付) |
1L:1~2個(メダカ1~2尾) +カルキ石1個・バクテリア適量 |
1Lあたり1~2粒 (1箱で最大15Lまで) |
5L以下:1錠 10L以下:1~2錠 20L以下:2~3錠 35L:3~4錠 |
ニチドウ(日本動物薬品)はバリエーション豊かですね。
金魚やメダカ用は、ビオトープなどの屋外飼育で、エアレーション等の機械を使えない状況で愛用されているようです。
酸素が出る石のコスパと注意点について
このアイテムは、冒頭でも述べた通り、主成分の過酸化カルシウムが化学反応を起こすこと、それに従い水質が変化してしまうというデメリットがあります。
その点も含めて、酸素が出る石のデメリットや注意点を詳しく解説します。
コスパは良くない?!
残念ながらこのアイテムのコストパフォーマンスはいいとは言えません。
例として小型水槽向けのエアレーション『GEX e~AIR 1000SB』と『ニチドウ さんそを出す石 飼育用』比べてみましょう。
商品 | GEX e~AIR | ニチドウ さんそを出す石飼育用 | 30日使用 の費用 |
電気代約21円 希望小売価格1,200円+税 |
11~12粒 約570円※ ひと箱738円~ |
---|
※2025年現在の参考販売価格を基に計算、水量3L毎に2~3個使用で、45cm規格水槽(35L)を想定
初期費用で言えばエアレーションを購入する方がかかりますが、酸素を出す石は消耗品です。
長い目で見ればエアレーションの方が圧倒的にお得だと考えられます。
100円ショップで販売されているアイテムは30日持続型で1箱2個入り、3~4cm程度の魚2~3匹に対して2粒なので、上記と同じ条件で考えれば比較的安めですが、長期飼育ならやはりエアレーションの方がトータルの維持費用を抑えられると思います。
pHの変化に注意!
前述のように、飼育環境によってはpHを変化させてしまいます。
水酸化カルシウム【Ca(OH)2】は消石灰とも呼ばれている物質で、強塩基性です。
そのため、使用量と水量にもよりますが、pHを上昇させてしまう可能性があります。
水量が少ないとそれだけ影響が出やすく、特に夏場は水温の上昇に伴う溶存酸素量の低下から、使用量が嵩みやすいため注意してください。
また、カルシウムが供給されることにより水の硬度も高くなるため、使用前後は水質をチェックした方が良さそうですね。
以上の理由から、水質の変化に敏感なエビ類が居る場合や、コリドラスなど底部を住処にしているナマズ類も影響を受けやすいため、これらの生体を飼育している場合は基本的に使用を避けた方が無難です。
また、こういった商品は小型魚への酸素供給を目的としており、酸素消費量が多い中型以上の魚種には供給が間に合いません。
よって、中型から大型魚を飼育したりキープする時は、素直にエアレーションを用意してください。
魚の輸送には使えない?
輸送時に酸素が出る石を使用したい場合は、採集用などの持続時間は短くても速やかに酸素が放出されるタイプを使用すると良いでしょう。
ただ、使用せずとも溶存酸素が豊富に含まれた新水を混ぜたり、酸素ボンベで酸素を吹き込んでからパッキングすれば、約24時間は酸欠を防止できるため問題ないことも多いです。
さらには、酸素が出る石は淡水専用なので海水魚の輸送には利用できません。
海で魚を釣って持ち帰る場合、結局は酸素ボンベを使用するか、電池式のエアレーションを使うことをおすすめします。
飼育水の量と生体の数が多いとき
飼育水の量が多い時も基本的には使用しません。なぜなら、前述の通り水3Lあたり2~3個が要求されるので、水量が多くなるとその分だけ使用量も多くなり、費用が掛かるうえに水質に対する影響も大きくなるからです。
また、飼育している生体の数が多い時も使用できません。生体の数が多いと、それだけ酸素の消費量も多くなり、酸素が出る石のみで酸素供給を行うとなると、やはり使用数が嵩み水質への影響が無視できなくなるためです。
よって、水量を確保できる大きな水槽で多数の生体を飼育したい場合は、最初からエアレーション器具を揃えておきましょう。
酸素が出る石でメダカは育てられるのか
小型の飼育容器で、ごく少数を飼育する場合であれば可能です。メダカは小型容器でも飼育可能で、小型魚ゆえに酸素の消費量も多くないからです。しかし、長期飼育したい場合は、前述の通り酸素が出る石はコストパフォーマンスが悪いため、エアレーション器具を購入した方が良いです。
まとめ:酸素が出る石って良いの?効果と主成分、コスパと寿命など解説します!
酸素が出る石は安価で電源なしに酸素供給を行えますが、その効果は限定的で長期的に見ると、どうしてもエアポンプなどによるエアレーションよりも維持費が高くつきます。水質を変化させてしまうことも欠点で、エビ類やナマズ類が居る場合は使用を避けた方が無難です。
これらのことから、通常の飼育時に使用することはあまりおすすめできません。ただ、電源なしに酸素供給を行える点はメリットなので、停電時の備えや採集した魚などを輸送する際の酸欠防止には効果的と言えるでしょう。

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メダカ初心者です。
知人からメダカさんを譲っていただき、PH値の変動までは全く認識しておらず、グリーンウォーターになるまで→水草投入までと、一応は有期で使用するつもりでした……
水流ができるとメダカさんが疲れるという話も聞きまして、このままコストに目をつぶって酸素石+水草かな~?と思っていたのですが、大きな水槽に引っ越した時のメダカさんの様子で、ぶくぶくも考えてみます。
情報ありがとうございましたm(__)m
酸素石は便利なアイテムですが、意外にコスパがかかり、ぶくぶく(エアーポンプ)のほうが長い目で見るとお得であったりします。
是非ご検討ください。よろしくお願いします。