アクアリウムを運営していく際に、単位や用語の意味がわからなくて戸惑うことはありますよね。同じように使われていることもあるけど…どう違うんだろう?比べたらどうなるんだろう?と思っている方のために、アクアリウム関係の科学用語、単位、測定方法などについて解説します。
安定したアクアリウム運営のために正しい知識とより深い見解を持っていただけたらと思います。ぜひご一読ください。
水質に関する単位とそれぞれの意味
まずは水質に関係する単位、用語、それぞれの意味について解説します。
pH(ペーハー、ピーエイチ)とは
pHという単位は、以前は「ペーハー」と発音されていましたが、現在では「ピーエイチ」と発音することが正式となっています。かつては科学の最先端がドイツだったのでドイツ語読みされていたのですが、今はそれが英語に変わったため、発音も変わったというだけで単位の意味は変わっていません。
pHとは水の「酸性度、アルカリ性度」を示す数値です。0~14までの数字で表現され、7よりも小さい数値だと酸性(数字が小さいほど酸性度が高まります)、7よりも大きい数値だとアルカリ性(数字が大きいほどアルカリ性度が高まります)、ぴったり7が中性という表現です。
アクアリウムで飼育される生体や水草は、それぞれ好みのpHがあります。弱酸性を好むものが多いですが、中には弱アルカリ性が好きという生体もいますので、各種類の特徴を知ってpHを調整してあげるのが一番良い飼育方法です。
アクアリウムのpHを調べたい時は、試験紙を使うと良いでしょう。
NH3(アンモニア)とは
NH3(アンモニア)は、生体の排泄物や生体の死骸、水草の枯れたものなどから発生する物質で、生体にとってはかなり強い毒ですので高濃度になりすぎないように注意してください。
生物が生きている限り排泄物などは生じますので、水槽内のNH3が高くなりすぎないように水換えなどを行ってください。
NH3(アンモニア)は水に溶け込むと水をアルカリ性に傾ける性質もあります。
下のような薬品を使うと、アンモニアだけでなく亜硝酸濃度、硝酸濃度も一度に調べることができますので、濃度が高すぎないかときどき測定すると安心です。亜硝酸、硝酸については下の項で述べます。
HNO2(亜硝酸)とは
NHO2(亜硝酸)はアンモニアが分解されて生じる化学物質です。アンモニアに比べれば毒性は低いですが、濃度が高くなりすぎるとやはり生体にとっては有害です。
アンモニアの項で述べた通り、生体を飼育している以上アンモニアは生じます。ですがアンモニアが永遠に増え続けるわけではありません。自然界には有毒なアンモニアを分解してくれるバクテリア(微生物、細菌)がいるからです。
水槽内にそういったバクテリアが多く棲みついてくれると、アンモニアを分解してくれます。
NO3-(硝酸塩)とは
NO3-(硝酸塩)とは、上の項で説明した「NHO2(亜硝酸)」がバクテリアによってさらに分解されたものです。
NO3-(硝酸塩)になるとかなり毒性は低くなりますが、濃度が高すぎると生体にとっては害がありますので、濃度が高まりすぎる前に水換えを行う必要があります。
KH(炭酸塩硬度)とは
カルシウム、マグネシウムと炭酸の結合度合いを示した数値です。
この数値も生体を飼育するのに望ましい範囲があり、5~10°dKHが良いとされています。この数値を大きく外れないようにしましょう。
下のような試験紙で数値を測定することが可能です。
GH(総硬度)とは
水の硬さを示す数値です。水にカルシウムやマグネシウムが多い場合、「硬水」と呼びます。日本の水道水のほとんどは「軟水」と呼ばれ、生体の飼育に向いていますが、中には硬水の地域もありますので一度調べると安心ですね。
理想値は4~6°dGHです。
TDS(総溶解固形分)とは
水の中に含まれているミネラルの量を示す数値です。
水道水のカルキを抜いて水槽に使う人が多いと思いますが、水道水と言っても住環境によってTDSの値が変わってきます。
水換えを怠ると蒸発によって水だけが失われ、TDSの数値が高まります。TDSは水換え時期を知るための数値の一つと言えるでしょう。
比重とは
比重とは「比べた重さ」という意味そのもので、純粋な水に比べてどのくらい重いかを示す数値です。
意識するのは海水水槽の海水を調整する時がほとんどではないでしょうか。海水水槽の海水の比重は1.024~1.025が理想とされています。
ここで注意したいのは、「水は温度によって体積(=かさ)が変わる」ということです。水は冷たい時は体積が小さく、温かい時は大きくなります。よって、水槽用の海水を調整する時は「飼育したい水温で」調整することが大切です。
塩分濃度とは
水の中に含まれる塩分の濃さを示す数値です。この数値は水温が変化しても変わりませんので、そこが比重と異なる点です。
「だったら比重じゃなくて塩分濃度を測定して海水を調整すればいいじゃないか」とお思いでしょうが、塩分濃度を正確に測定する機器は非常に高価なものです。それに比べて比重の測定は「重さを比べる」だけなので簡単に行えます。そういった事情で、家庭での海水調節は比重計を使うことがほとんどなのです。
照明・機材に関する単位とそれぞれの意味
W(ワット)とは
アクアリウム用品におけるW(ワット)は、消費電力を示しています。
W(ワット)=V(電圧:ボルト)× A(電流:アンペア)という式で求めることができます。
日本の家庭に送られてくる電気のほとんどは100Vで、W(ワット)を見ることで電流(A、アンペア)をどのくらい使用するかという目安に使うことのできる数値です。
W(ワット)が小さいほど、省エネルギーな機器であると判断できます。
A(アンペア)とは
電流の量を示す数値です。小さくて済むほど省エネルギーであるといえます。
Lm(ルーメン)とは
光源から出ている光の量を示す単位です。詳しくはLx(ルクス)の項で一緒に説明します。
nm(波長)とは
光の波長を示す長さの単位です。
光というのは実は波なんですね。その波が長いものが青い光、波が短いものが赤い光として私たち人間の目には見えています。
サンゴや水草は赤や青の光を好むので、青や赤の波長が少ない「LED照明」はサンゴや水草の育成に不向きと言われていました。ですが最近は改良されて「波長のバランスが良いLED照明」も販売されるようになりました。よって最近は「そんなに神経質になる必要はなく、ルクス(ルーメン)を基準に選べばよい」という意見が多数を占めています。
Lx(ルクス)とは
照らされた場所にどのくらいの量の光が当たるかを示す数値です。
ルーメンと区別するのがわかりづらい単位ですが、
- ルーメン:その照明器具からどのくらいの量の光が出るか
- ルクス:その照明器具からどのくらいの光が当たるか
と区別して考えます。
ルーメンは単純に「その機器がどのくらいの光を放つか」と言えるのですが、ルクスを正確に測定しようとすると「光源から〇〇cm離れたところで、水槽のフタはない状態で、水は入っていて」など条件が非常に複雑になってしまいます。離れたりフタがあれば光が弱くなるのは当然ですからね。
よって今は照明器具の強さを示す単位としてルーメンのほうが多く使われています。ただ、ルクスのほうがなじみが良いため、ルクスで示すこともあります。
Ra(演色性)とは
照明器具からの光に照らされたものが、自然光とどのくらい近いかを示す数値の単位です。
Ra=100だと完全に自然光と一致している、ということができますので、数値が100に近いほど、自然な色に見えるということです。
一般的な蛍光灯でRa=50程度とされています。最近ではRa=90というような高性能なLEDライトも販売されています。
たとえば下のライトはRaが93.2とかなり自然な光です。
K(ケルビン)とは
K(ケルビン)とは光の色を示す数値です。明るさを示すものではないので注意しましょう。
数値が大きいほど青っぽく、小さいほど黄色っぽい光といえます。太陽光は5000Kほどと言われています。水槽用ライトとしては7000Kを超えるとかなりクリアに見えますが、5000K以下だとやや黄色っぽく見えてしまうことがあります。
まとめ:アクアリウムの数値を測ろう!水質・照明などの単位と意味を解説!
アクアリウム用品に用いられる単位、使われる用語などについて解説しました。
「これはこういう意味がある、このくらいの数値だとこういう影響がある」ということを正しく理解し、ポイントをつかんでアクアリウムを管理すると、状態はぐっと安定します。
少し面倒ではありますが、美しいアクアリウム維持のために頭のすみに置いていただけたらと思います。
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