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金魚の色や姿はどうやって決まるの?遺伝で模様は固定されるのかを考える!

近年、メダカの品種改良が非常に盛んに行なわれています。たくさんの新しい品種が世に出ていますが、金魚の品種改良も同じように行えるのでしょうか。

今回は、金魚の色や姿はどういった要因で決まるのか、遺伝で模様は固定されるか、有名な品種たちはどのように作出されてきたかなどをお話しします。

可愛い金魚たちのルーツを知ってみませんか?

金魚の色や姿は遺伝子で決まる!

金魚は品種の豊富な魚で、色、ヒレや体の形など、様々なものがショップで販売されていますね。

金魚の色やヒレは、どういう理由で決まるのか…それは遺伝子によって決まっています。

遺伝子という言葉は聞いたことがありますね。遺伝子というのは、親の特徴を子に伝えるための因子、物質です。遺伝子には「親はこういう特徴だった」という情報が書き込まれており、それが子どもに伝えられるのです。

単純に言ってしまえば、赤い体の親からは赤い体の子が生まれやすくなります。ですが遺伝は複雑で、そこがまた生命の面白さ、懐の深さでもあるのです。

現在の金魚は、色や姿の違いで品種に分けられていますが、先祖はすべてフナです。

美しい色、姿をしているフナをより分け、交配させることで金魚を作り出してきたのです。

例えば、黒い金魚がいますが、黒い金魚は赤い金魚からの突然変異です。突然変異というのは非常に低確率で起こる、遺伝子の変化です。黒一色に見える黒デメキンも、退色してくると赤やオレンジの地色がでてくることがあります。これは元となった赤い出目金の遺伝子が関係していると言えます。

(国産金魚)出目金 黒(1匹)

遺伝子というのは、その生物の体に同じものが2つ存在します。遺伝子のうち、1つは父親から、1つは母親からもらう仕組みになっているからです。

金魚の体色についての遺伝子は複雑なので簡単には言えませんが、どの遺伝子も同じものが2つあります。そして、遺伝子同士の間には「優性」「劣性」の2つのタイプがあります。

「優性」といっても「優れている性質」という意味ではなく、生物の見た目に出てきやすい性質という意味です。劣性は劣っている性質ではなく、出てきにくいという性質です。劣性の遺伝子は、金魚の体の中にあっても見た目には出てきません。ですが、劣性の遺伝子が二つ揃うと、見た目に出てきます。

こういった遺伝の仕組みから、黒いはずの黒デメキンなのに、ベースに赤い色素を持っていたり、その子供が先祖返りでまれに赤く生まれてくることは説明できます。

有名な品種の突然変異・交配

ではこちらの項で、現在販売されている有名な「突然変異によって作出された金魚」についてお話ししていきます。

フナからすべては始まった!

上でお話しした通り、フナのなかに時々現れる、色の赤いものを集め、掛け合わせたことで現在の金魚が生まれたとされています。赤いフナをヒブナと呼びます。

ヒブナ Hibuna Carassius auratus auratus

フナ → ヒブナ → 和金 となるまで、ヒブナの形質が定着するように、交配を繰り返したのでしょうね。

赤いフナの形質を固定して和金になった

上の動画でもわかっていただける通り、フナの形でありながら、かなり赤い色のものをヒブナと呼びます。ヒブナをさらに交配させることで、我々にとってなじみのある和金が作出されたのでしょう。

現在ではDNAを調べた結果、和金の祖先は中国に生息する「ギベリオブナ」というフナの仲間であることがわかっています。

(国産金魚)和金ミックス 色指定無し(5匹)

和金から琉金、デメキン、らんちゅうに変異!

(国産金魚)更紗琉金(1匹)

金魚の中でもヒレが非常に美しく、丸みを帯びた身体が愛らしい琉金は、和金を交配する中で突然変異を起こして生まれたと言われています。

上でお話しした、デメキンは、琉金がさらに突然変異を起こして誕生しました。ですからデメキンは「目が飛び出ている」という特徴はありますが、体形や尾の形は琉金と同じですね。

さらに、背びれのない和金からマルコに固定され、丸い体のランチュウが作出されました。

三色銀鱗マルコ
竹内 誠司 氏 ランチュウ飼育池 ☆金魚☆らんちゅう

ランチュウは背びれがないのが最大の特徴です。また頭が丸っこく、胴が筒型な、ころんとした形をしています。

琉金からオランダ獅子頭、土佐錦へ

頭部に肉腫がある個体もおり、その肉腫が発達しているものをオランダ獅子頭と呼び、固定された品種となっています。

(国産金魚)オランダ獅子頭(1匹)

さらに、琉金とシャープな顔立ちの大阪らんちゅうが交配され、土佐錦が生まれたと言われています(土佐錦の交配については諸説あります)。

土佐錦魚(トサキン) [庭先の金魚]

交配で作出された有名品種

では、突然変異ではなく、交配によって誕生した品種にはどんなものがいるでしょうか。

朱文金=フナ×三色デメキン

朱文金は、フナと三色デメキンの掛け合わせで誕生しました。
(国産金魚)朱文金(1匹)

キャリコ模様(黒、赤、白の3色の模様)を持ちつつ、体形は和金のようにすっきりとした品種です。フナの血が濃く出ており、顔、体形、ヒレがシャープに変化していますね。

東錦=オランダ獅子頭×三色デメキン

(国産金魚)飯田東錦(1匹)

東錦は、琉金から突然変異したオランダ獅子頭と、三色デメキンをかけあわせた結果生まれた品種です。オランダ獅子頭からは肉腫を、三色デメキンからはキャリコ柄を引き継いでいます。

面白いのが、一度赤が定着した琉金から赤デメキンが生まれ、そののちに黒い要素も併せ持ったキャリコ柄になるところです。赤の遺伝子が優性で、黒や白の遺伝子は劣性、なかなか表に出てこないのかもしれません。

金魚×フナで強健になる?

最近は、金魚とフナを交配させることで、強健性と味わい深い外見を両立させた品種「杭全鮒金(くいたふなきん)」の人気が高まっています。

(国産金魚)杭全鮒金/くいたふなきん(1匹)

金魚の原種であるフナの遺伝子を再度入れることで、フナの丈夫さを採り入れているのですね。

琉金のような丸っこい体の金魚は、消化不良や転覆病にかかりやすいですが、これは背骨が短いのが原因とされています。フナと交配に向いているのは同じ体系の和金系が多いと思いますが、そうした体型のデメリットを減らす効果もありますね。

金魚の改良は長い道のりです!

新しい金魚の品種作ってみたいな!とお考えの方もいらっしゃるでしょうか。

金魚の品種改良は、同じく作出が人気のメダカよりも難しいとされています。

その理由は

  1. たくさん飼育するのが難しい
  2. 繁殖率がメダカよりも低い
  3. 1世代にかかる時間が長い

となります。

品種改良を行うには、とにもかくにも、多くの子孫を増やしていくことが最も重要です。数と回数が勝負を分けるのです。でも金魚の場合、それがメダカに比べて困難です。

立派な体高や発色を出すためには、水流、水温、餌の種類、栄養、餌を与える回数など、きめ細やかな調整が必要です。厳密な管理のもと、より理想に近い金魚を交配していく必要があります。

このように金魚の品種改良は、とても奥が深いもの、達成できたなら偉業と言ってもいいくらいです!

まとめ:金魚の色や姿はどうやって決まるの?遺伝で模様は固定されるのかを考える!

私たちにとってとても身近な金魚ですが、たくさんの種類を作り出すのはとても大変で、手間暇がかかっていることがわかっていただけたかと思います。

可愛い金魚の長い歴史に思いをはせ、大切に飼育してあげてください!