絵本には魚を題材にした作品も多く、自分で読んだり、親に読み聞かせしてもらったりした経験がある人も多いのではないでしょうか。
幼い頃はただ楽しく読んでいた魚の絵本ですが、実は魚の生態や習性をもとに書かれている作品も少なくありません。群れで泳いで大きな魚から食べられづらくしたり、他の魚のために行動したりなど、絵本世界と現実世界の魚で共通していることがあります。
そこで今回は、アクアリウムの視点を交えて、魚の絵本3選をご紹介します。
魚の絵本!子供と読みたい名作とアクアリウムの視点ポイント
魚の絵本は物語としてとても面白いものですが、アクアリウムの視点から見ると意外な発見があります。
お話としての表現の中に、現実の魚が河川や海で実際に行っている生態・習性がしっかりと盛り込まれており、それが長きにわたって愛される絵本の魅力となっていることも多いです。
ここでは、世代をまたいで愛され続ける3つの絵本について、アクアリウムの視点を交えながらご紹介します。
- スイミー
- にじいろのさかな
- きんぎょがにげた
絵本は、お話を通じて子供の生き物への関心や興味を養うことにもつながります。ぜひ、お子さんと一緒に絵本を手に取ってみてください。
スイミー
まずは、魚の絵本の代表格『スイミー』をご紹介します。
『スイミー』は小学校の国語の教科書にも載っている全国的に有名な絵本ですが、小型魚の実際の習性が話の根幹に多分に含まれているので、アクアリウムの視点から読んでみるととても興味深いお話です。
群泳して強敵を撃退!工夫の力
『スイミー』は、小さな魚のスイミーが仲間と一緒に泳ぐことで、大きな魚に食べられないよう工夫する物語ですが、これは自然界でも実際にあります。
テレビの水中映像や水族館で、小魚の大群が泳ぐ光景を目にしたことがあるのではないでしょうか。小魚が単体ではなく、群れで泳ぐことには意味があります。
小型魚が群泳する意味とメリット
小魚が群泳する一番の理由は、身を守るためです。
アクアリウムの視点では、鑑賞性の向上にもつながります。
身を守るために集合する
小魚は群れになって泳ぐことで、大型魚に狙われづらくして身を守っています。
大群になることで大きな生き物のように見せて、標的にされることを防いでいます。また、群れると単体に狙いが定めづらくなることも理由の1つです。
自然界では傷付いたり、弱ったりして群れから離れた瞬間に食べられてしまうことは珍しい話ではありません。
群泳のメリットと鑑賞性
アクアリウムにおける群泳のメリットは、鑑賞性の向上です。
淡水魚水槽ではネオンテトラ、海水魚水槽ではデバスズメダイなど、群泳させることで一段ときれいに見える魚がいます。また、群れを作ることで魚自身も落ち着きやすくなるので、堂々と泳ぐようになります。
このような魚は自然界でも群泳しているため、水槽に同じ状態を作ることで本来の姿や泳ぎに近付けることが可能です。
実は群れのなかにも力関係があり、ぶつからないよう動いたり、後を追ったりなど、魚たちの関係性を観察できるのも群泳だからこそです。
にじいろのさかな
『にじいろのさかな』は虹色の鱗を持つ魚、にじうおを主人公とした絵本です。
全8作あるシリーズの1作目で、たくさんの子供から愛される人気の物語です。
鱗を分け与えるのは、幸せをわけること
自分の大切な虹色の鱗をあげることで、他の魚を喜ばせる場面があります。
現実では鱗を分け与えることはありませんが、他の魚のために行動する魚は存在しています。そして、その姿はアクアリウムの水槽でも観察することができます。
他の魚のために頑張る熱帯魚
他の魚のために頑張る熱帯魚の行動として有名なのは、以下の2つです。
- 稚魚を守るマウスブルーダー
- 共生ハゼとエビ
これらの生き物には、身をかえりみず稚魚を守ったり、共生相手に餌を供給したりなど、少し変わった生態があります。
マウスブルーダーは稚魚を守る
マウスブルーダーは、口の中で卵や孵化したばかりの稚魚を守る魚を指します。
アクアリウムでは、
- チョコレートグラミー
- アロワナ
- アフリカンシクリッド
といった種類が有名です。これらの魚たちは、産卵した卵を親魚が口の中で孵化させ、ある程度大きくなるまで口の中で稚魚を育てます。泳ぎが遅く逃げることが難しい卵や稚魚の生存率を高めるために編み出されたと考えられる子育て方法です。
もちろん、親は攻撃されることもあるため、身を挺して子供を守っているといえます。
共生ハゼとエビ
共生ハゼは、エビの作った巣穴で生活するハゼの総称です。
- ギンガハゼとニシキテッポウエビ
- ネジリンボウとランドールズピストルシュリンプ
といった組み合わせが有名ですが、ハゼが一方的に利用しているわけではありません。エビが巣穴作りや補修を担当する代わりに、ハゼは見張りをしたり、フンをすることでエビに餌を供給したりします。フンをすることでエビに餌を供給したりします。
この共生関係は自然界だけではなく、水槽内で観察することもできます。
共生ハゼについては、こちらの記事をご覧ください。
きんぎょがにげた
『きんぎょがにげた』では、絵本の各所に隠れている金魚を探していくのが特徴です。
物語ではないので、お子さんの年齢を問わず直感的に楽しむことができます。
金魚もいろいろな場所へ行ってみたい?
絵本では、金魚鉢から飛び出した金魚が赤い花やアメなどに姿を似せながら場面を変えつつ移動していきます。
では、実際に水槽で飼われている金魚も「いろいろな場所に行きたい」と思っているのでしょうか。これには諸説ありますが、環境が変わることで金魚が活発になることはあります。
たとえば、金魚は春先に水換えすると、水質の変化に刺激を受けて産卵を始めるのは有名な話です。
金魚の生活にメリハリをつけるには
実際に飼育している金魚に刺激を与えてあげようと思っても、絵本のように金魚をいろいろな場所に移動させるのは大変です。そのようなときは、水槽に工夫をして環境にメリハリをつけてあげてみてはいかがでしょうか。
具体的には、
- 隠れ家を増やす
- 照明で昼夜を感じさせる
といった方法です。
丸みのある隠れ家を複数設置する
水槽内に隠れ家を複数設置することで、メリハリをつけることができます。
丸みのある素焼きや岩であれば、金魚がヒレをひっかけて傷付くこともありません。
とはいえ、数が多過ぎると金魚の泳ぐスペースが狭くなってしまうため、水槽サイズに見合った個数や大きさの隠れ家を設置しましょう。
照明で昼夜を感じさせる
照明の光で昼夜を感じさせることによって、金魚のバイオリズムにメリハリが生まれます。
金魚は昼行性の魚なので、昼に活動して夜休みます。光が当たらない環境では餌を食べたり、繁殖したりといったリズムがくずれてしまうこともあるため、照明で管理して活動と休息のメリハリをつけてあげましょう。
居間などの夜間に水槽照明を消しても、周りから光が入ってしまう環境に水槽を置いている場合は暗幕を設置して光をさえぎってあげると、メリハリをつけやすくなります。
また、金魚水槽に設置する照明は、赤や白の照明やゼンスイの『ビューティールクス』のような金魚の赤を際立たせるタイプがおすすめです。
金魚をきれいに見せる照明は、こちらの記事で詳しく解説しています。
絵本を通じて生き物への興味を養う
魚の絵本は物語や絵探しを楽しむだけではなく、生き物への興味を養うことにもつながります。
絵本からつながって、
- 実際に見てみたい
- 飼育してみたい
といった現実の生き物に関心を抱くお子さんも珍しくありません。さらに実際に触れ合うことで、成長する過程を知ったり、生命のサイクルを感じたりなど、言葉では教えにくいことを伝えることもできます。
魚の絵本は、その第一歩になることもあります。
まとめ:魚の絵本3選とアクアリウムの視点・ポイント!子供と読みたい名作
今回はアクアリウムの視点を交えて、魚の絵本3選をご紹介しました。
小魚が群れになることで大きな魚から身を守ったり、他の魚のために行動したりなど絵本だけと思われがちな物語のなかには、現実の魚との共通点が潜んでいます。絵本の内容だけでも十分魅力的ですが、アクアリウムの視点をふまえて解説することで、生き物への関心につながることもあるでしょう。
お子さんに絵本を読であげる際には、ぜひ一緒に本物のお魚のお話も伝えてあげてみてください。
トロピカライターの高橋風帆です。
アクアリウム歴20年以上。飼育しているアーモンドスネークヘッドは10年来の相棒です。
魚類の生息環境調査をしておりまして、仕事で魚類調査、プライべートでアクアリウム&生き物探しと生き物中心の毎日を送っています。