あなたの飼育しているペットは特定外来生物かも?
魚釣りや昆虫採集など、自然の中で出会える様々な生き物達。魅力的な彼らを自宅でも飼育してみたいと感じるのは、生き物好きなら誰しも共感できる気持ちだと思います。でも、少しだけ待ってください。その生き物、自宅で飼っても大丈夫ですか? 天然記念物、鳥獣保護法、種の保存法、そして「外来生物法」などの法律で飼育が制限されている生き物ではないですよね。
ちなみに、過去記事でも熱帯魚を切り口にして、何度か特定外来生物について触れてきました。
しかし、魚類以外の種類にはざっくりとしか触れていなかったので、今回は魚類以外の特定外来生物にも対象を広げて、「特定外来生物を間違って飼育しないために注意したいポイント」をテーマにして考えていきたいと思います。
はじめに/特定外来生物とは?
特定外来生物とはどんな生き物なのでしょうか? 簡単に説明をするなら「繁殖力や捕食能力などが高く、既存の環境に壊滅的な変化を起こしてしまう(あるいは起こすと思われる)外来種であり、その中でも“法律で規制されている”動植物」が該当すると言えます。
ポイントは「法律で規制されている」ということです。
ミシシッピアカミミガメは繁殖力や捕食能力などが高く、既存の環境に壊滅的な変化を起こしてしまう外来種に当てはまると言えるくらい、日本の水辺を荒らしている(イシガメやクサガメを駆逐している)生き物です。
しかし、ペットとして飼育されている数が多すぎて「外来生物法で規制すると遺棄が増えてしまう(=法律で規制することで、さらに生態系が乱れる)かもしれない」という理由から、法律で規制はされていません。
要点をシンプルにまとめると、「法律で規制されている生き物は、無許可で飼育してはいけない!」ということになります。例えば、特定外来生物法に違反すると、個人では最大で3年以下の懲役や300万円以下の罰金などの罰則がありますし、法人では最大で1億円以下の罰金が科せられます。
(↓法律に関する記事は、こちらからどうぞ!)
外来生物法で規制されている動植物
それでは、特定外来生物法で規制されている生き物について、実際に紹介して行きます。
ちなみに、「外来生物の一覧と写真」については、環境省のHP『特定外来生物等一覧』のページに充実した内容が掲載されています。
そのため今回の記事では、冒頭でも触れたとおり「間違って飼育しないためのポイント」に焦点を当ててみたいと思います。
(↓環境省の『特定外来生物等一覧』ページ。特定外来生物の写真を見ることも出来ます)
植物の採集で気を付けたいポイント
「オオフサモ」というミリオフィラム・マトグロッセンセに似た水草や「オオキンケイギク」というコスモスに似た花をご存知ですか? どちらも綺麗な植物なので、河原などで見かけると、自宅に少しだけ持って帰りたくなる植物なのですが……外来生物法で移動や栽培が規制されている植物になります。
特に、オオキンケイギク、ミズヒマワリ、オオフサモ、ブラジルチドメグサ、ボタンウキクサは身近にある植物なので注意したいです。
名前が分からない野草を持ち帰る前には、スマホで「植物の特徴」をWEB検索してみると名前を調べることができます。特定外来生物ではなくても、県の天然記念物だったりすると大問題になりますので。
調べ方は簡単です。「花の色、葉っぱの形、葉脈の入り方、生えている場所、草なのか木なのか、根っこの形など」を入力して、画像検索するだけです。とはいえ、最初は難しいと思いますので、まずは「植物の見分け方」でWEB検索をしてみると、詳しい植物の検索方法が出てきますから、参考にしてみて下さい。
もちろん、山や畑や公園など、他人の土地の動植物を勝手に持って帰ると怒られます。雑草に見えても、持ち主に一言断るなどの配慮は大切です。
余談なのですが、河川や河原の水草を採集したい場合、問い合わせ先は「各県の河川課」が窓口になります。
私の県では、問い合わせたところ「個人の趣味範囲での採集では、(在来種の場合は)原則として特別な許可は不要です」との回答を頂けました。しかし「場所によっては法律の規制がありますので、こうして一度確認して頂けると助かります」とも言われました。トラブル防止のためにも、採集前には一度自治体の方へ問い合わせることをおススメします。
虫類&軟体動物等の採集で気を付けたいポイント
一時期ニュースなどで話題になったおかげで、黒いお腹に赤い模様が入る「セアカゴケグモ」というクモをご存知の方も多いと思います。
残念ながら、今では全国各地の港湾施設や海沿いの公園などで普通に見かけることができてしまう虫なのですが、セアカゴケグモ以外にも飼育してはいけない虫類が日本にはいます。ヒアリや外国産クワガタの一部がそれに当てはまります。
屋外で見つけた虫を「飼育して良いのか?」確認するためには、やっぱりWEB検索が最適です。虫類の場合には「生息場所、昆虫か否か、体色、模様、バッタor甲殻類orチョウなどのざっくりとした分類など」を入力して画像検索してみて下さい。
爬虫類&両棲類の採集で気を付けたいポイント
某テレビ番組の企画で「沖縄で殖えた外来種のグリーンイグアナ(最大サイズ1.8m)を美味しく食べよう!」というものがありましたが、南西諸島で殖えているのはイグアナだけではありません。グリーンアノールなどの外国産のトカゲも増えています。
また、日本各地では耐寒性を持つアフリカツメガエルが野外で繁殖している場所もあります。幸い、アフリカツメガエルは特定外来生物に指定されていませんが、このままの状況が放置されてしまうと……何かしらの規制が入る可能性があるかもしれません。
爬虫類&両棲類の採集では、「カミツキガメやウシガエル、シロアゴガエル」は、知らないとついつい持って帰ってしまいたくなるくらい魅力のある生き物なので気を付けて下さい。カミツキガメやウシガエルは多摩川にも生息しています。採集前に一度、画像をWEB検索で調べて見ておくことをおススメします。
特に、5㎝くらいある巨大なオタマジャクシはウシガエルの子どもなので、間違っても家に持って帰らないようにしましょう!
魚類の採集で気を付けたいポイント
魚類の特定外来生物については、これまでも何度か記事で触れたことがあります。特に野外で採集してしまいがちな魚類を上げると「オオタナゴ、オオクチバス、コクチバス、カダヤシ、ブルーギル」は身近に生息しているので注意が必要です。
特に、カダヤシはメダカと間違えてしまいやすいので、見分けられるようになっておいた方が良いです。カダヤシは、「オスは、ゴノポディウムという交接器(尻びれ)を持っている」「メスは、おしりの部分に黒い半月状の模様がある」ことですぐに見分けられます。
メダカ採集の前には、一度、比較画像を見て確認してみて下さい。
哺乳類&鳥類の捕獲で気を付けたいポイント
タイワンリスやヌートリア、アライグマやマングースなど哺乳類や鳥類にも特定外来生物はいます。しかし、それら野生の動物を捕獲したり飼育したりする行為は、「外来生物法」以前に「鳥獣保護法」で制限されています。
狩猟免許を持たない人は、野生の哺乳類や鳥類の捕獲や飼育には手を出さない方が賢明です。野生動物には、餌付けをしてはいけないので、そちらも合わせて注意して下さい。
終わりに/あなたの飼育しているペットは大丈夫?
ここまで、色々な特定外来生物について見てきました。
こうして考えてみると、「スマホを使ってWEB検索すること」は、生き物の採集に欠かせないと改めて感じます。知的好奇心を満たすだけではなく、自分の身を守ったり、トラブルを防いだりするためにも重要ですから。
なお、原則として、(条例などで制限されていなければ)特定外来生物は「採集した場所でリリースすること」は法律違反ではありません。場所を移動してしまうとダメですが、移動する前なら大丈夫なのです。少しでも不安な場合には、家に持ち帰る前に現地で種類を特定するor家に持ち帰らない勇気が大切です。
ちなみに、2018年4月からは古代魚の「ガーの仲間」が特定外来生物に指定されます。耐寒性を持つことと大型になることから指定されたのですが、一番大きな原因は「見た目がワニに似ていること」ではないかと個人的には感じています。
ガーは人を襲うような魚ではないのですが、「熱帯魚を知らない人にとっては、ピラニアと同じくらい怖い生き物に見えてしまう」のだと、ニュースの報道などを見て思いました。
正直、魅力的な古代魚の飼育が規制されることが個人的には残念でなりません。
しかし、こうなる原因を作ったのは、無責任に野外にペットを捨てた心無い飼育者です。日本の環境を守るためにも、次の特定外来生物を増やさないためにも、生物を飼育する私達がしっかりと責任を持って生き物を飼育したいものです。
ひとり一人の行動が、生き物の飼育という趣味の豊かさを支えているのですから。
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飼育可能な外来魚が知りたい
いわゆる飼育可能な熱帯魚は、すべて飼育が認められている外来魚と言えます。
おすすめの熱帯魚はこちらのコラムでご紹介しておりますので、ご参考までにご覧ください。
・初心者におすすめ!人気の熱帯魚ベスト20!値段が安くて飼いやすい種類
https://t-aquagarden.com/column/beginner_tropicalfish
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よろしくお願いいたします。