オス・メスのペアで水槽に入れておいたらいつの間にか魚が増えていた…なんていう話をたまに聞きますが、熱帯魚の繁殖は案外そううまくいくものではありません。
繁殖しやすいとされている熱帯魚でも、水槽内の環境や魚の性格などに左右されてなかなか繁殖に繋がらないことも多いです。
繁殖を目指すならば、「繁殖水槽」を作って繁殖しやすい環境を整えてあげましょう。
繁殖用水槽は、ペアができやすい環境を作ったり、卵や稚魚の保護したりといった繁殖に繋がりやすい環境を整えた水槽のことです。
今回は繁殖水槽のメリットや、繁殖水槽におすすめな水槽や保護ネットなどの紹介、そして繁殖水槽の基本的な管理方法についてお話ししていきます。
繁殖水槽とは
繁殖水槽は文字どおり、「飼育している魚やエビなどの生き物を繁殖させること」を目的とした水槽です。
飼育水槽内で勝手に増えることもありますが、基本的に繁殖はとてもデリケートなものです。
多種類の魚が泳いでいるような混泳水槽だったり、同種間でも相性が悪かったりといったようなストレスのある環境ではなかなか繁殖は成功しません。
また、繁殖するには卵を産みつけやすい水草を用意したり繁殖用専用の餌を与えるなど、水槽の中の環境そのものを準備してあげる必要があります。
普段管理している飼育水槽とは気の使い方が異なるため、他の魚の世話をしながら繁殖の準備を進めるのが難しいと感じたら、繁殖水槽を作ってしまったほうが良いでしょう。
繁殖水槽ならば、繁殖しやすい環境を存分に整えてあげることができます。
また、無事に卵・稚魚が生まれたとしても、成魚と一緒にしておくと食べられてしまうことがありますので、卵・稚魚を隔離して守るという意味でも繁殖水槽を用意しておくと安心です。
繁殖については、コチラの記事も参考にしてください。
繁殖水槽を使うメリット
繁殖用水槽を作るメリットには、以下のようなものがあります。
- ペアを作りやすい環境を作る
- メスが安心して産卵・出産できる環境ができる
- お腹が大きいメスを飼育水槽から隔離し、卵や稚魚を食べられないようにする
- 稚魚が親と混泳できるサイズまで、そのまま飼育することができるので、生存率を上げやすい
- 卵・稚魚のみなので、体調管理や餌を食べているかの確認がしやすい
ペア作り~稚魚の成育までを一つの水槽でできるのが、繁殖水槽最大の魅力です。
繁殖に適したオスメスを繁殖水槽に入れておき、妊娠した兆候が見られたらオスを取り出します。その後、出産・産卵が終わったらメスも飼育水槽に戻しましょう。繁殖水槽には卵や稚魚だけが繁殖水槽に残るので、食べられてしまう心配はありません。
稚魚は生後(孵化)2週間くらいは、栄養失調で死んでしまいやすい傾向にあるので、親や他種とは別の水槽で育てたほうが、体調や餌の管理をしやすくなります。
稚魚だけなら、ゆったりとした環境で育てられるのもメリットのひとつでしょう。
繁殖水槽の種類
繁殖水槽には、「水槽を別に用意し、繁殖水槽とする」方法と「飼育水槽に隔離ケースなどを取り付けて、繁殖用のスペースを作る」2つの方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、繁殖したい魚にあった方法を検討していきましょう。
隔離水槽については、コチラの記事も参考にしてください。
水槽を用意する
飼育水槽とは別に水槽を用意して繁殖水槽を作る方法は、しっかりと繁殖用の環境を整えてあげたいときにおすすめです。
複数の種類の魚を混泳していてなかなか繁殖に集中できないようなときや、繁殖に特殊な環境(水草など)を準備しなければならないときには、別に水槽を用意して繁殖水槽を作ってしまうと問題を解決させやすいです。繁殖専用の環境として存分に準備をすることができます。
また、水槽を一つ準備するので稚魚が生まれた後もしばらくはそのまま育成することができますし、稚魚の管理がしやすいのもメリットです。
しかし、水槽を一つ別に管理する手間がかかり、場所も取ってしまうので、設置場所や時間に余裕がないと用意するのが難しいというデメリットもあります。
また、水槽を立ち上げなければならないので準備に時間がかかります。飼育魚の繁殖の兆しに気づいた後から準備したのでは間に合わない可能性もありますので、繁殖をしよう!と思ったときから用意をしておかなければならないのも難点といえるでしょう。
隔離ケースを飼育水槽に設置する
隔離ケースは飼育水槽に設置して隔離スペースを作るものです。産卵以外にもケガをした魚やいじめにあっている魚の隔離にも使用します。
飼育水槽に引っ掛けるだけなど設置が簡単で手間やスペースもいりませんし、飼育水槽の水がそのまま産卵ネットの中を循環しますので、管理の手間が少ないのもメリットです。
急に産卵場所を用意しなければならなくなった!という時にも、とりあえずスペースを確保できるので安心ですね。
ただし、隔離ケースはそれほど大きなものではないため、水草を大量に入れて産卵床を準備しておく、というような環境を整えることは難しいです。
すぐそこに他の魚も泳いでいる状態なので、隔離しているメスや稚魚にストレスが掛かることも考えられます。
また、稚魚のサイズによっては生まれた後に手狭になってしまい、結局稚魚用の水槽を準備する必要が出てくることがあります。
小さな魚の稚魚ならば、隔離ケースの中で大きくなるまでそのまま育てていくことができますので、グッピーなどの小型の卵胎生の魚の繁殖には隔離ケースがおすすめです。
隔離ケースの種類と注意点
隔離ケースにはプラスチック製と、ネットタイプがあります。
通水性はネットタイプの方が良いですが、中の様子がやや見づらく稚魚の様子を観察しづらいです。
一方、プラスチック製のものは通水性を補うためにフィルターを付属しているものもあり、バリエーションが多いのが特徴です。
しかし、水を循環させるためにスリットが開いているものが多く、稚魚が隙間に挟まったり飛び出してしまうことがあります。プラスチック製の隔離ケースは、隙間に薄いメッシュを貼るなどの対策をしてから使用すると、稚魚の事故を防止することができて安心ですね。
プラスチック、ネットどちらの隔離ケースでも共通して言えるのが、構造上汚れがたまりやすく、こまめな掃除が必要になるということです。
また、水草を長く入れておくことができないので、水草に産卵する魚の繁殖にはあまり向いていません。メダカのように回収しやすい丈夫な水草(マツモなど)に卵を産み付ける魚種ならば隔離ケースの中でも産卵できますが、それ以外の魚やエビの産卵場所には専用の水槽を用意することをおすすめします。
おすすめの繁殖水槽5選
ここからは、トロピカが繁殖水槽におすすめする水槽を5つご紹介していきます。魚の種類や設置場所などにあったものを選んでみてください!
テトラ メダカの繁殖を楽しもう
きちんとペアができているか確認して繁殖させたい、落ち着きがあってゆったりとした状況で卵や稚魚を育てたいと考えるなら、繁殖用の水槽を一つ用意した方が繁殖が成功しやすくなります。
そこでおすすめなのが「テトラ メダカの繁殖を楽しもう」です。水槽やフィルターの他に、魚の繁殖に必要な餌、カルキ抜き、産卵ネットなどが付いているので、アクアリウム初心者でも扱いやすいセットになっています。
メダカとなっていますが、他魚でも使うことができるので、グッピーやベタなど小型~中型サイズの繁殖にもおすすめです。高さが少し低いと思うかもしれませんが、水深が浅めなほうが卵や稚魚を育てやすいですよ。
テトラ メダカを育てよう
こちらの商品もメダカ専用として販売されているセット水槽ですが、他魚でも使用できます
狭い場所にも設置しやすいコンパクトサイズなので、たくさんの水槽を置く場所がない!とお困りの方にはこのような小さな水槽がおすすめです。
フィルターの吸水部分には、稚魚や卵の吸い込み事故防止のためのスポンジフィルターがついているなど繁殖がしやすいよう工夫がされています。エアーポンプつきなので、卵の酸欠対策もしやすいですよ。
リーズナブルで購入しやすい点もおすすめポイントですね。
スドー 新・産卵飼育ネット
「スドー 新・産卵飼育ネット」は、飼育水槽の内側に引っ掛けて繁殖用の隔離スペースを作ることのできる産卵ネットです。
繁殖用の水槽を別で設置する場所がないときにはもちろん、繁殖水槽を別に立ち上げている時間がない!といったときにも、簡単に設置できるのでおすすめです。
特に、卵胎生の魚の場合は卵ではなく稚魚の状態で生まれてくため、産卵ネットでも対応がしやすいです。
妊娠に気づいたら、妊娠しているメスだけを繁殖ネットに入れて隔離し、出産後すぐに親をとりだせば、稚魚だけがこのネット内に残ります。水槽内に設置するので水もしっかり循環しますし、稚魚が酸欠になるのを防ぐこともできます。
メッシュタイプなので稚魚がすり抜ける心配もありません。
ただし数が多いときは、過密ぎみになって稚魚にストレスがたまるので、数日で稚魚専用の水槽に移してあげたほうが良いですよ。
スドー サテライト
「スドー サテライト」は、水槽の外側に取り付けて使うタイプの隔離ケースで、特にプラティやグッピーなどの卵胎生の魚の出産におすすめです。ケースが透明なので中が見やすく、稚魚の状態が把握しやすいのが嬉しいですね。
外付けの隔離ケースでは、水のよどみが気になるところですが、こちらの商品は水槽の水を空気の力でくみ上げてボックス内に供給する仕組みで、しっかり水が循環します。飼育水を使用するので個別の水温管理なども必要ありません。
水槽の外側に取り付けられるので成魚の泳ぐスペースを圧迫しないのも魅力です。
ただ一点注意したいのが、まれに水の排出口にある堰に稚魚が挟まってしまうことがあるようです。稚魚のサイズが小さくて心配ならば、オプションの網目フィルターを取り付けるなどして、対策をするとよいでしょう。
ニチドウ ベビーボックス・プラス
「ニチドウ ベビーボックス・プラス」は水槽の内側に設置する隔離ケースです。
この商品にはケース自体にフィルターがついており、水槽内の水をさらにろ過したきれいな水をボックス内に供給することができます。
水質の変化や酸欠に弱い稚魚もこれならば安心して育成することができますね。
ただ、ボックス側面などに空いているスリット状の溝がやや大き目で、稚魚が抜けだしてしまうことがあります。
稚魚がすり抜けられないよう、網などを貼って対策をしてから使用するのがおすすめです。
繁殖水槽の管理方法
繁殖水槽内で無事に産卵・出産してくれると、ほっとしますよね。気が抜けてしまいそうですが、稚魚の育成はここからが本番です。
稚魚はとてもデリケートなので、成魚以上に水質や水温、水流の加減などに気を配らなければなりません。この辺りをうまく管理できるかが、稚魚を死なせずに育てていく鍵となります。
ここからは繁殖水槽の管理方法のポイントを2つほどお話ししていきます。
稚魚の育て方については、コチラの記事も参考にしてください。
清潔に保とう!
これは通常の飼育にも言えることですが、まず第一に「水槽内を清潔に保つ」のが重要なポイントです。
稚魚は抵抗力や体力が低いため、成魚と比べると環境変化に弱いです。小さいながらも、餌を食べれば当然フンをしますし、食べ残しがあれば水質が悪くなります。
稚魚が弱ったり、病気になるのを防ぐためにも、成魚以上に水槽内の環境には気を配りましょう。
水流の強すぎる場所には設置しない
酸欠や水の循環が心配で、産卵ネットや隔離ケースをろ過フィルターの吐出口付近などに設置する方がいますが、これはNG!
排出口付近などの水流が強い場所は、稚魚に余計な負担をかけてしまいます。
生まれて間もない稚魚は、泳ぐ力がとても弱いのでちょっとした水流でも流されてしまいます。水流が強いと、流れに逆らうおうと稚魚は懸命に泳ぎます。その結果、必要以上に体力を使ってしまい弱って死んでしまうこともあるのです。
ケース内の水を循環させるため、適度な水流は必要ですが、実は飼育している魚の種類によっては水流はあまり必要ないものもいます。例えばメダカは、水深が浅めなら水流がなくても問題なく育成することができます。しかし、熱帯魚の場合は微弱な水流が水槽内にあったほうが元気に育ちやすいです。
繁殖させる生き物の特徴や、産卵・稚魚飼育方法を事前に調べ、生き物にあった水流に調整するとよいですね。
まとめ:繁殖水槽で観賞魚を殖やそう!熱帯魚やメダカの繁殖セット商品を紹介
卵の孵化率を上げたい、生まれてくる稚魚を1匹でも多く成魚にしっかりと育てたいと思うのであれば、繁殖用水槽を用意しましょう。
もちろん、環境によってはそのまま親と同じ水槽内で孵化させ、成長させることもできます。
しかし親や他種と混泳している水槽だと、気付かないうちに食べられたり、いじめられていることがあります。また病気が発生したときなど、体力のない稚魚が真っ先に落ちてしまうことも。
稚魚の健康管理のためにも、卵・稚魚専用の水槽やサテライトなどをうまく活用し、稚魚にとって快適な環境を作ってあげてください。そして丈夫な成魚に育てあげて、長期飼育を目指しましょう!
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