水槽に水草の絨毯を作ろうと思ったとき、水草の育て方の一つとして候補に挙がるのが『ミスト式』です。
ミスト式とは水中で水草を植栽するのではなく、湿度を高くした水槽の中で水上葉を植え付け、ある程度繁茂させてから注水するという手法のことを指します。
水中に比べて植栽しやすく管理がしやすい反面、カビや注水のタイミングに注意が必要です。
今回は、ミスト式に始めて挑戦した筆者がボトル水槽をミスト式で立ち上げた様子を交えつつ、ミスト式のメリットや必要な道具、管理のポイントなどについて解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
水草水槽のミスト式とは
まずは、そもそもミスト式とは何なのか?という点について。
ミスト式のメリットや必要な道具、育成の仕方をご紹介していきます。
湿度を保ち水草を育てる方法
ミスト式とは湿度を高くした水槽の中で水上葉(または水草の種)を植え付け、ある程度繁茂させてから注水するという手法のことを指します。
本来水草は水中で育てますが、ミスト式ではあえて満水にはせず、その代わり霧吹きをかけて密閉し、高い湿度で保湿しながら育成するのがポイントです。
植え付け~注水し水槽の立ち上げが完了するまでの期間は、平均して2か月程度かかりますが、水中で育てるよりも手間がかからず、根付く前に水草が浮いてきてしまうこともないため、初めてでも失敗しづらい水草の育成方法といえます。
ミスト式にはパールグラス系やショートヘアーグラス、グロッソスティグマといった前景草や、水上葉の水草、組織培養された水草が向いています。
これらの水草を育てる際は、ぜひミスト式にチャレンジしてみてください。
ミスト式のメリット
続いてはミスト式のメリットについて。
水草をミスト式で育てる場合、以下のようなメリットがあります。
- 注水するまで水換え不要
- コケが生えにくい
- 水草を活着させやすい
- CO2の添加が不要
- 水中で育てるよりも簡単に絨毯状のレイアウトが作れる
ミスト式は定期的な換気が必要なものの、そもそも水を張らずに管理する手法なため、注水するまでは水換えが不要となります。
水を張らないので、コケが生えづらいのもメリットのひとつです。
また、水を張らないメリットは根張りにも表れます。ミスト式で育てた水草は、水中よりも根張りが良くなり活着させやすいです。水草が浮いてくることもないため、簡単に水草絨毯を育成することができます。
さらに、ミスト式であれば空気中から二酸化炭素を吸収することができるため、CO2の添加をしなくても育てることが可能です。
ミスト式での育成が向いている水槽や状況
ミスト式は水草を植え付けた後、注水せずに霧吹きで湿度を高めて育成するという特性上、一つの水槽を丸々育成水槽として使用する必要があります。
そのため、新規に水槽を立ち上げるときや、ミスト式用に別水槽を用意できる状況でのみ実践できる育成方法と言えるでしょう。
特にボトルアクアリウムや小型水槽に水草絨毯を作りたい時には、管理がしやすく失敗しづらいミスト式での育成がおすすめです。
逆に「メイン水槽が別にあってストック用の水草を育成したい」、「管理している水槽がすでに複数ある」というような場合は、別水槽を用意するのは手間がかかりますし、水槽を置く場所も必要となるため、あえてミスト式で育成するメリットはあまりありません。大型水槽だと、ラップを敷いて多湿環境を維持するのが大変という点も頭に入れておきましょう。
また、ミスト式で育成すると根はりが良くなる半面、増えた水草が想定外のところから生えてくることがあります。いろいろな種類の水草をきっちりと区分けしてレイアウトしたい、というような場合には、通常通り水中で植栽した方が思い描いた水槽になりやすいです。
水草の育成方法はミスト式以外にもありますので、ご自分の水槽の状況や目指すレイアウトに合わせて、育成方法を選んでみてください。
ミスト式に必要な道具
続いてはミスト式に必要な道具について。
ミスト式をはじめるには、水槽や水草、水槽用ライトの他に、霧吹き・水草用ピンセット・ラップ・ソイルなどのアイテムが必要となります。
霧吹き
まずは霧吹きを用意しましょう。
あまりにも勢いの強いスプレーはソイルや水草がえぐれてしまう場合がありますので、柔らかく細かいミストのものがおすすめです。
水草用ピンセット
水草を種から育てるのであれば不要ですが、植え付ける場合には水草用ピンセットが必要となります。
根を傷つけないように先端が細く、微妙な力加減を伝えやすいものを選びましょう。
ラップ
水槽を密閉するためにラップを使います。
貼り付きや厚みの面でほどよいサランラップがおすすめですが、普段ご家庭で使用しているラップでも問題ありません。
底砂はソイル一択
水草を植え付けるための底砂は、ソイル一択です。
ソイルであればお好みのもので構いませんが、前景草をメインで植え付けることを考えると、パウダー~スーパーパウダー、大きくてもノーマルまでのサイズのものを選ぶのがおすすめです。
ミスト式の育成方法
ミスト式での立ち上げ・育成方法を簡単に解説すると、
- 水槽にろ過装置などをセット
- ソイルを敷き、岩などのレイアウトを決める
- ソイルの表面ギリギリまで注水し、水草を植える
- 水草全体に霧吹きをして、ラップで密封
- 水槽用ライトで育成を促す
- 毎日5分程度ラップを外して換気し、適宜霧吹き
- ソイル全体に水草が繁茂したら注水し、完成
という流れになります。
レイアウトや水草の植え付けが済んでしまえば、あとは毎日の換気と適度な霧吹きを行なうだけなので、育成自体はとっても簡単です!
以下からは筆者がミスト式でニューラージパールグラスを育成した実例をご紹介していきますので、参考にしていただけたら嬉しいです。
ミスト式でニューラージパールグラスを育成した実例!
ここからは筆者がミスト式でニューラージパールグラスを育成したときの様子を、写真付きで解説していきます。
初めてのミスト式でしたが、特に目立ったトラブルもなく無事注水することができました。
今後ミスト式で水草の育成を考えているかたは、ぜひお役立てください。
用意したもの
ボトル水槽
ソイル2種類
水草(ニューラージパールグラス)
石(気孔石)
水槽用ライト
初日~翌日:ソイルを敷き、水草を植え付けます
まずは水槽に、パウダータイプのソイルを敷いていきます。
奥行き感が出るように、手前から奥に向かって傾斜がつくように敷いてみました。
次にスーパーパウダーのソイルを敷いていきます。
ソイルは粒の大きなものを下に敷くと、後々崩れにくくすることができます。
全体でおよそ5cm程度の厚さになるように敷きました。
続いて石の配置を決めていきます。
円柱水槽は水を入れる前後で見え方ががらりと変わるため、一旦注水をして、配置を決めました。
石の配置を決めたら、ソイルの表面ギリギリまで水を抜きます。
この時点で、水草を植える範囲を決めておくと実際に植え付けたときにイメージがつけやすくおすすめです。
続いて水草を細かくバラしていきます。
できれば2~3本を一株として植えるのが見栄え良く仕上がるのですが、画像のようにざっくりと分けて植えても特に問題ありませんでした。
水草の植え付け直後の様子です。
このくらい隙間が空いていても問題ありません。
最後に水草全体に霧吹きをして、ラップをかけます。
ちなみに霧吹きで使用する水は、カルキを抜いてない普通の水道水で問題ありません。
植え付け当日の作業は、これで終了です。
植え付け翌日の様子です。
見えづらいですが、このように水槽全体が霧で曇っていれば、うまくいっている証拠です。
この日からライトを10時間照射し、毎日5分間ラップを外して換気しました。
水草の表面が乾いていれば、その都度霧吹きを吹きかけます。
2週間後:やや隙間が埋まってきました
2週間後の様子です。
植え付け直後と比較すると、ソイルの隙間がやや埋まってきました。
4週間後:さらに隙間が埋まってきました
2週間前と比較すると、さらに隙間が埋まってきました。
このあたりから、ソイルが露出している部分を中心にライトを当てて、水草の成長を全体的に均一にしていきます。
7週間後:どんどん成長
どんどん成長していきます。
ソイルの露出もあまり目立たなくなってきました。
9週間後~注水:優しく注水
さて、ミスト式の育成を初めて9週間が経過しました。
ニューラージパールグラスがソイル一面に広がりこんもりしてきたので、カルキを抜いた水を注水をしていきます。
勢いよく注水するとせっかくの水草やソイルがえぐれてしまうので、給水チューブを壁面に当てて優しく注ぎましょう。
注水後:神秘的な気泡に感動!
注水直後の様子です。
ミスト式で育てた水草は、注水するとこのように気泡を付けた神秘的な姿を見せてくれます!
今後CO2を添加するのであれば、気泡はまた見ることができます。
しかし、この水槽はろ過装置を取り付けず、CO2も添加しないため、この瞬間しか見ることができません。
しっかりと観察しておきましょう。
水槽を水で満たしたら、浮いてきたゴミやソイルなどを取り除き、生体を導入しましょう。
目安としては水量1Lにつき、メダカサイズの生体を1~2匹導入します。
筆者はメダカを3匹入れました。
以上で、ミスト式での育成が完了です。
約2ヶ月間と、平均的な期間で完成させることができました。
注水後2週間は毎日1/3量の水換えを行ない、水質を安定させていきます。
2週間後からは週1回のペースで、1/3量の水換えを行ないましょう。
ミスト式の管理ポイント
続いてはミスト式の管理ポイントについて解説をしていきます。
大切なのは、
- 毎日空気の入れ替えを行なう
- 水草に適した温度に保つ
この2点です。
毎日空気の入れ替えを行なう!
ミスト式でうまく管理するには、多湿状態を保ちつつ、カビを生やさないように換気をすることがポイントとなります。
毎日5分程度ラップを外し、風を送ったり息を吹きかけるなどして空気の入れ替えを行ないましょう。
換気の際は水草の様子もよく観察し、乾いている部分があればその都度霧吹きを行ないます。
レイアウトの高い部分に植えた水草は乾燥しやすいので、見落とさないようにしましょう。
水草に適した温度に保つ
水草に適した温度に保つのも、重要なポイントです。
水槽内の温度を計測し、25℃前後に保ちましょう。
夏場は熱がこもりやすいので、水槽をなるべく涼しい場所に置いたり、空調を管理するなどして工夫をすると良いです。
冬季はパネルヒーターを使おう
冬季にミスト式を始める場合は、水槽の下にパネルヒーターを敷いて保温するのがおすすめです。
ソイルの表面が25~26℃になるように、パネルヒーターの設定温度を調節しましょう。
温かい環境を用意してやると、水草の成長が早くなります。
ミスト式から注水するタイミング
最後に、ミスト式から注水をするタイミングについて。
条件としては、
- 側面から見て根が深く張っている
- 底面をほぼ覆っている
- 草体が一層被覆している
これらを満たしていれば、注水しても問題ありません。
水草を厚く繁茂させてしまうと、水中葉へ生え変わる際に根を張る場所が無くなってしまい、その後の成長が悪くなる場合があります。
あまり厚く繁茂させないよう注意しつつ、根の具合をよく観察し、注水していきましょう。
まとめ:ミスト式で水草の絨毯を作ろう!メリットと道具、育成例を解説します
今回はミスト式に始めて挑戦した筆者の実際の体験を交えながら、ミスト式のメリットや必要な道具、管理のポイントなどをご紹介してきました。
ミスト式は換気と温度調節が何よりも大切で、そこさえきちんと管理できれば、失敗することはほぼありません。
筆者も実際に育ててみたところ、きれいな水草の絨毯を作ることができたので大変満足しています。
今後前景草を使った水草水槽を制作予定の方や、絨毯状に広がる水草を観察してみたいと考えている方は、ぜひミスト式での育成にチャレンジしてみてください。
トロピカライターの井上あゆみです。
金魚から熱帯魚・海水魚まで、全部で20種類程度のお魚を飼育してきました。
お気に入りはイエローヘッド・ジョーフィッシュ。怒ったような顔をしているのに、実はかなり臆病というなかなか憎めない海水魚です。アクアリウム初心者の方でも楽しく読めるような記事を書いていくので、よろしくお願い致します!