コケの生えにくい熱帯魚水槽を作ろう!~淡水編~

アクアリウムを運用するにあたり、避けては通れない問題があります。その1つがコケの発生で、水草を育成する際はもちろんのこと、熱帯魚のみを飼育する場合においても、多かれ少なかれコケは生えてきます。

コケの発生を抑制するための添加剤もたくさんの種類が市販されていますが、コケ対策を抑制剤に頼り切ってしまうことは危険です。特に、水草を育成したい場合は不向きで、最悪の場合は育てたい水草が枯れてしまいます。

ここでは、コケの発生に悩まされている方のために、抑制剤に頼らずともコケが生えにくい淡水水槽の作り方についてご紹介します。

コケが生えない水槽は魚にとっても良い?

コケ掃除は水槽を管理する上で絶対に避けて通れないことです。そして、このコケ掃除は水槽を維持管理するうえで、最も煩わしいと感じる作業でもあります。コケが全く生えてこない水槽は、アクアリストなら誰もが憧れる夢の水槽と言っても差し支えないでしょう。

そのため、当然ながらアクアリウム業界の各メーカーは、コケの成長を抑制する商品を競って発売しています。しかし、コケを抑制するために添加剤を用いることは、水槽で飼育される生体にとって本当に良いことなのでしょうか。

 コケ抑制剤について

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水槽にコケが生える主な原因は、水槽内のリン酸とケイ酸が多すぎることです。市販されているコケ抑制剤は、これらの原因物質を吸着する作用があるので、コケの発生を抑えられます。

抑制剤を使用すればコケが減少する可能性は極めて高いですが、抑制剤に頼る方法では効果を維持するためには定期的に水換えを行いつつ、抑制剤を投入し続けなければなりません

なぜなら、コケが生える根本的な原因を無視し続けることになるからです。リン酸とケイ酸が不適切なほどに飼育水中で増えてしまう原因を突き止め、解消しなければ延々とコケ抑制剤を投入する羽目に陥ってしまいます。

また、抑制剤の使用にはデメリットもあり、それは育成したい水草に対しても少なからず悪影響を及ぼしてしまうことです。特に、ウィローモスはミズゴケ科に分類されているコケの仲間なので、抑制剤を投入するとダメージを受けて枯れてしまう危険性が高いです。

さらに、抑制剤を恒常的に使用すると耐性を持ったコケが誕生する可能性があり、効果が薄くなる恐れもあります。そして、水草の栄養面での不都合も生じてしまいます。

水草を含む植物の生育にも必須となる養分があり、それは窒素・リン・カリウムです。これらの養分は「肥料の三要素」と呼ばれ、水草自身が光合成で作り出せないので、外部から供給してあげなければなりません。

つまり、リン酸をコケ抑制剤で吸着してしまうと水草の生育にも悪影響が生じてしまうのです。以上のことから、コケ抑制剤は頑強な黒髭ゴケが発生してしまった時など、あくまでも最終手段として利用するに留めてください。

硝酸塩がたまってもコケは生える

リン酸とケイ酸がコケ発生の原因と前述しましたが、アンモニアが分解されて生じる硝酸塩が蓄積することも、コケ発生の主原因になり得ます。なぜなら、硝酸塩は植物の窒素源として利用されているので、水草の養分になるのと同時にコケの栄養にもなるからです。

硝酸塩の濃度が高くなることで目立ってくるのが茶ゴケです。茶ゴケは水槽立ち上げ時によく見られるコケですが、立ち上げ後に水質が安定している水槽でも管理を怠ると生えてきます。

水槽立ち上げ時にはまず茶ゴケが見られ、次に緑藻などの普通のコケが生えるので、アクアリストにとっては水質を判断する一つの指標とされています。

通常では水質が安定するにつれて茶ゴケは少なくなるのですが、茶ゴケが残っていると他のコケが生えにくく、緑藻などと比較すると色のせいで水槽内で目立ってしまい、鑑賞性を著しく低下させます。

よって、茶ゴケの増殖を防ぐためには定期的に水換えを行い、硝酸塩濃度を管理することも重要です。

底砂掃除のしすぎもコケ退治には逆効果

水槽の掃除は熱帯魚の飼育において欠かせない作業で、コケ対策にも有効です。しかしながら、掃除の頻度が高すぎると、かえってコケの発生を促す結果を招いてしまいます。特に、底砂やフィルターのろ材は、水槽環境のバランスに対する寄与が大きいので注意してください。

掃除をして清潔な状態を保っているのに、コケの発生を促進させるのはどういうことかと言いますと、掃除のし過ぎはバクテリアの繁殖状態に悪影響を与えるということです。

水質を浄化するためのバクテリアは水槽内では底砂を主な住家とし、アンモニアを養分にして活動しています。そのため、アンモニアの発生源となる熱帯魚のフンや食べ残した餌が、頻繁な掃除により存在しない時間が長くなると、バクテリアが繁殖できなくなってしまうのです。

また、底砂の掃除はクリーナーを用いて、水換えと同時に行う方も多いと思いますが、水換えは飼育水の一部と、カルキ抜きをした水道水を交換するので、水質浄化に寄与するバクテリアが減ってしまいます。

つまり、ただでさえバクテリアが減ってしまう水換えと、バクテリアの栄養分を奪う底砂の掃除を並行するでバクテリアの過度な減少を招き、その結果として水槽内のバランスが崩れ、コケの発生が促されてしまうのです。

よって、底砂の掃除などのバクテリアに影響を及ぼすメンテナンスは、適度な頻度を見極めて行うことが重要です。

コケを抑制する生物兵器

すでに答えを書いてしまいましたが、プロはコケを抑制するために生物を使用します。水生生物の中にも植物を食べるものが存在し、中にはコケを主食としている生物もいます。

それらの生物の働きは絶大で、上手に管理できればコケの発生をかなり抑制することが可能です。さしずめ対コケ用の生物兵器といったところでしょうか。

ただし、水槽内に発生するコケにも種類があり、全てのコケを食べてくれる生物はいないので、発生するコケに合わせて入れる生物を選ぶ必要がある点には留意してください。

ここでは、熱帯魚水槽に入れるコケ取り用のおすすめの生物をご紹介します。

オトシンクルス

(熱帯魚)オトシンクルス(3匹) 北海道・九州航空便要保温

体長3~10cm程度の小型魚です。ナマズの仲間で、アマゾン川を中心に南米の河川に広く分布しています。性格は非常に温和なので混泳も可能です。吸盤状の口で水槽内壁や水草、流木や石に貼り付き、付着したコケ・藻類をこそぎ取るようにして食べてくれます。

食べるコケの種類は主に茶ゴケと緑髭コケ、斑点状藻で、水槽内壁や水草に生えるコケ類が無くなると餓死してしまいます。そのため、長期飼育する場合は人工飼料への餌付けをするか、水槽内に発生するコケ類の量がオトシンクルスの成育に不足しないように、個体数を調節すると良いでしょう。

サイアミーズ・フライングフォックス

(熱帯魚)サイアミーズ・フライングフォックス(2匹) 北海道・九州航空便要保温

同種はコイの仲間で、体長は5~15cm程度に成長する小~中型魚です。食べるコケの種類は黒髭ゴケ・茶ゴケ・糸状コケで、頑強な黒髭ゴケを食べる数少ない生体として重宝されています。

コケ取り能力が高いので60cm水槽でしたら1匹いれば十分です。若魚の頃は混泳も可能ですが、大きくなると縄張り意識が強くなって他の魚を追い回したり、コケをあまり食べなくなることもあります。そのため、10cmを超えたら若魚と交換する事をおすすめします。

ヤマトヌマエビ

(エビ)ヤマトヌマエビ(5匹) 北海道・九州航空便要保温

体長3~5cm程度の小型のヌマエビです。名前の通り日本にも分布しており、主に汽水域に生息しています。食べるコケの種類は、糸状コケ・アオミドロ・黒髭ゴケで、サイアミーズ・フライングフォックスと同様に、特に黒髭ゴケ対策として重宝されています。

混泳が可能でコケ類の他に、枯れた水草や魚の死骸など何でも食べます。また、夜行性のために昼は流木や岩陰などに身を隠していることも多いです。飼育は簡単ですがエアレーションのチューブや水槽角のシリコンを足場にして、水槽から脱走することが多いためフタは必須です。

石巻貝

(生体) 石巻貝 イシマキガイ 5匹+保障1匹 合計6匹

殻長2cm程度の巻貝の1種で、日本では本州中部以南の西太平洋沿岸部に分布しています。主に汽水域に生息していますが、適応力が高いので上流の完全淡水域でも見られます。

食べるコケの種類は、茶ゴケと糸状コケ、斑点状藻で、水槽内壁やレイアウト用の石、流木に付着したコケを取る能力はトップクラスに高いです。

ただし、デメリットとしては水槽内のあちこちに、卵を産み付けることが挙げられます。石巻貝の卵は海水でないとふ化しないため、ふ化しない卵は産み付けた場所に白化して残ってしまいます。そして、その白化して残った部分は非常に硬いため、取り除くのは一苦労です。

また、石巻貝はひっくり返ると自力で復帰できずにそのまま死んでしまうので、ひっくり返った個体を見つけたら起こしてあげる必要があります。さらに、夜行性で夜間に活発に活動し、水槽内壁を登って隙間から脱走することがあるので注意してください。

カバクチカノコ貝

(エビ・貝)カバクチカノコ貝(2匹) 北海道・九州航空便要保温

日本の南西諸島から東南アジアに分布している巻貝の1種で、殻長は最大で3.5cmほどに達します。主に汽水域に生息していますが、適応力が高いので完全な淡水下でも大丈夫です。食べるコケの種類としては、茶ゴケと糸状コケが挙げられます。

わたしの経験上、最も強力なコケ取り貝と感じるのがカバクチカノコ貝で、30cm水槽なら1匹いれば十分です。流通量が少ないので石巻貝より少し値は張りますが、貝殻の開口部が橙色に染まり、鑑賞性も高いことからおすすめできるコケ取り貝です。

石巻貝と同様に、ひっくり返ると自力で起き上がれない点と、水槽内壁を登っての脱走に注意してください。

まとめ・コケの生えにくい淡水性熱帯魚水槽の作り方について

コケ対策の基本は適切な水槽内環境を維持することで、コケ抑制剤の使用はあくまでも最終手段です。適切な環境を維持するためには、ご自身の飼育環境に適度なメンテナンスの頻度を見極めることが重要です。

メンテナンスの頻度が低すぎるとリン酸やケイ酸、硝酸塩の蓄積を許し、逆に頻度が高すぎれば、水質浄化に必要なバクテリアが過度に減少して環境のバランスが崩れてしまいます。いずれの場合も、コケの発生を促してしまうので注意してください。

 

2件のコメント

  1. k.aquarium より:

    ヤマトヌマエビがどんどん小さくなるのはなぜですか?

    1. 中島 より:

      流通しているヤマトヌマエビは成体なので、もしかしたら、加齢かもしれません。

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