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ファンヒーターでpHが低下!?ファンヒーター使用で水槽のpHを保つには

日本の冬は大変に冷え込むので、暖房器具は欠かせない存在です。暖を取るための用具類は色々なものがありますが、部屋を暖めるためにファンヒーターを使用しているご家庭も多いと思います。

ところで、アクアリウムを設置している部屋でファンヒーターを使用すると、飼育水のpHが酸性側に傾いてしまう可能性があることをご存知でしょうか。

特に石油ならびにガスファンヒーターには注意が必要で、灯油やガスを燃焼させる際に発生する二酸化炭素(CO2)の濃度が高くなると、飼育水に溶け込んでしまってpHが低下する恐れがあるのです。

ここでは、ファンヒーターの使用で水槽水のpHが低下する理由と、pHを低下させないファンヒーターの使用法などについてご紹介します。

ファンヒーターで水槽水のpHが低下する理由

冒頭でも述べましたが、ファンヒーターの使用で水槽水のpHが低下する理由は、空気中のCO2濃度が上昇するためです。まずは、ファンヒーターの使用によるCO2の上昇と、CO2が水槽水に与える影響について把握しておきましょう。

ファンヒーター使用によるCO2濃度の上昇について

ここで、独立行政法人国民生活センターや大学などが実施した、ファンヒーターを使用した際の室内におけるCO2濃度の上昇実験の結果をご紹介します。実験の条件としては、6畳の広さの部屋で9畳用の石油ファンヒーターを使用しています。

その結果、点火直後から急激にCO2の濃度が上昇し、10分後には建築物衛生法で定められているCO2濃度の基準である、1000ppm(0.1%)を超えることが分かりました。

その後も濃度は上昇し続け、30分後には5000~8000ppm(0.5~0.8%)に達し、180分後には7000~14000ppm(0.7~1.4%)にまで上昇しました。

ちなみに、地表近くの大気の構成比でCO2が占める割合は300~400ppm(0.03~0.04%)で、CO2による健康被害が出始める濃度が3~4%と言われているので、CO2中毒になる心配はそれ程大きくありません。

しかし、CO2の濃度が1000ppmを超えると集中力の低下などの症状が出始めるとの報告もあるため、ファンヒーターを使用する際は小まめな換気が促されているのです。

また、灯油やガスなどの化石燃料を燃焼させると、総揮発性有機化合物(TVOC)も発生し、TVOCはCO2よりも低い濃度で頭痛や咳などの健康被害が出始めるので、そういった面でも換気が重要なのです。

高いCO2濃度が水槽水に与える影響

CO2は比較的水に溶けやすい気体なので、水槽水が高いCO2濃度下に晒されていると、空気中のCO2が水槽水に溶け込んでしまいます。水に溶け込んだCO2は炭酸(H2CO3)へと変化するので、水槽水のpHを低下させてしまうのです。

ちなみに、CO2が水に溶け込みやすく、比較的人体に対して無害である性質を利用したものが種々の炭酸飲料です。

炭酸飲料はCO2を無理矢理溶かし込んでいるために、溶けきれなくなったCO2が発泡という形で出てきています。pHは商品にもよりますがpH2.3~3.0程度を示し、かなり酸性に傾いています。

それから、一昔前から酸性雨が問題視されていますが、雨は通常でもCO2が溶け込む影響でpH5.6を示すので、それ未満のpHを示す雨を酸性雨と位置付けています。

このように、CO2は水に溶け込みやすい性質を持っているので、元々アルカリ性側で管理する海水水槽はもちろんのこと、淡水水槽でも中性から弱アルカリ性を好む生体を飼育している場合は注意が必要です。

ファンヒーターを使用しつつpHを保つためには

ファンヒーターの影響でpHを低下させないためには、水槽が設置させれている部屋のCO2濃度を上昇させなければ良いのです。そのためには、石油またはガスファンヒーターの連続使用を控えたり、連続で使用する場合には小まめに換気を行うことが効果的です。

あるいは、石油/ガスファンヒーターの他に、電気ファンヒーターや電気ストーブ、エアコンなどの化石燃料を使用しない暖房器具を併用することでも、CO2の濃度上昇を抑制することが可能です。

暖房器具を併用する場合でも、化石燃料を燃焼させている限りCO2は発生するので、数時間に一度は換気を行うことを忘れないでください。

ファンヒーターを消した後も注意!

石油/ガスファンヒーターによるpHの低下が生じるタイミングは運転中に限りません。むしろファンヒーターを消した後で、人が離れるタイミングの方が危険なくらいです。

どういうことかと言いますと、例えば夜寝る前や外出する前にファンヒーターを消して、施錠するなどして部屋を閉め切ったとします。すると、人の出入りがなくなる分、CO2の濃度が高い状態が継続し、水槽水が長時間に渡って高CO2濃度下に晒されることになってしまうのです。

そのため、石油/ガスファンヒーターを消して部屋を閉める時は、必ず換気をして空気の入れ替えを行った後に閉めるようにしましょう。

まとめ・ファンヒーターの使用で水槽のpHが低下する理由とpHを保持する方法について

日本の冬において暖房器具は欠かせない存在です。特にファンヒーターは比較的安価で、早期に部屋中を暖められるので重宝している方も多いことでしょう。

しかし、アクアリウムを運用している部屋で石油/ガスファンヒーターを使用すると、CO2濃度の上昇によって水槽水のpHを低下させてしまう危険があることは知っておいてください。

pHの低下を防ぐ方法はいくつかありますが、一番簡単かつお金がかからない方法は小まめな換気です。ぜひ、小まめな換気を心がけて、人間にも飼育している生体にも優しい住環境を保てるようにしましょう。