気温が上がり道端の草木が花をつけ始めると、いよいよ春が来たと実感できます。春季は水生生物も新しい命が誕生したり、冬眠から目覚めるなどして活発に活動を開始する時期です。そこで、水辺に出かけて水生生物を採取・飼育してみてはいかがでしょうか。
ご自宅で飼育することでより間近で観察できますし、育てる喜びも味わえます。日本の淡水生生物は、一般的に飼育が容易な点も見逃せないポイントです。ここでは、水辺で出会える生物の種類と、それらの採取・飼育法についてご紹介します。
暖かくなってきたので水辺へ行こう!
道端の草木が花をつけ、桜の開花宣言が発表されると、いよいよ春が来たと実感できる方もいるのではないでしょうか。この季節は、水生生物たちも新しい命が誕生したり、冬眠から目覚めるなどして活発に活動を始める時期です。
川や池、湖の岸辺を覗いてみると、たくさんの稚魚やオタマジャクシなどの生物が、群れを成している様子を観察できます。それらの生物を自然下で発見し、観察することはもちろん楽しいのですが、思い切って採取・飼育してみてはいかがでしょうか。
ご自宅で飼育することで、より間近で観察できるうえに育てる喜びも味わえます。日本の淡水生生物の飼育は、熱帯魚などと比較すると一般的に容易な点も魅力です。採取についても容易ですが、飼育のために持ち帰る際は無駄に死なせてしまわないように、管理ができるだけの個体数に留めましょう。
水辺で採取できる生き物たち
暖かくなってくると様々な水生生物が水辺に顔を覗かせます。ここで紹介する生物は容易に採取できるものばかりですが、採取の際はその場所が野生生物の捕獲を禁止していないかどうか、事前に調べておいてください。
ザリガニ
※販売目的ではない飼育や譲渡は認められます。
2020年11月2日より、アメリカザリガニを除く外来ザリガニ全種が特定外来生物に指定され、規制が開始されましたが、規制が強まります。
放流は絶対に行わないようにして、最後まで育てましょう。
日本には4種類のザリガニが生息していますが、採取・飼育ともに容易なのは「アメリカザリガニ」です。今やアメリカザリガニは全国の湖沼や河川、用水路などで見られ、止水域や流れが緩やかな泥底を好んで生息しています。
採取する際はザリガニ釣りをしたり、中に餌を入れて沈めるカゴ状の網(カゴ網)を使用すると良いでしょう。
ドジョウ
柳川鍋など食材としても古くから利用されている身近な魚で、細長い円筒状の体に口ひげを持つことが特徴です。ドジョウにも複数の種類が存在し、飼育しやすいのは中~下流域に生息している「マドジョウ」や「シマドジョウ」といった種類です。
全国的に分布しており、河川の流れが穏やかな場所や、そこにつながる水田・用水路・湿地などに生息しています。ドジョウは浅い泥底を生活の場にしているので、採取の際はそのような場所を丈夫なたも網などを使って掬い上げると良いでしょう。
オタマジャクシ
オタマジャクシは言わずと知れたカエルの幼生です。オタマジャクシも全国的に見られ、水田や池沼などで見付けられます。春季に現れるのはニホンアマガエルなどの、晩冬から春にかけてが繁殖期のオタマジャクシで、浅場で群永している様子を観察できます。
オタマジャクシの皮膚はデリケートなので、採取する時に傷つけないよう長靴などを履いて入水したうえで、プラケースなどで周囲の水ごと掬うと良いでしょう。
小型魚(モツゴ・タナゴ類・モロコ類など)
いずれも成長しても体長10cm程度かそれ未満の小型の魚種で、全国的に分布しているものもいれば地域的なものもいます。
これらの魚種は繁殖期に婚姻色を呈し、特にタナゴ類のオスは色鮮やかに変化するので、純粋な観賞魚としても人気があり通販もされています。採集するのであれば、釣り上げたりカゴ網を使用すると良いでしょう。
タニシ
タニシは淡水に生息する巻貝の1種で、全国の水田や用水路、池沼や小川などに広く生息しています。基本的には流れがないような泥底を好んで生息していますが、流れがある場所でも砂利などに貼り付いて生活している個体も見られます。
よく見かける種類としては、「ヒメタニシ」や「マルタニシ」などが挙げられます。
スジエビ
スジエビは体長5cmほどの淡水エビの1種で、全国の河川や池・湖・沼などで見られます。体は透明で黒色から褐色の細い模様が入ることが特徴です。流れが穏やかな水草帯にいることが多いので、採取する時はそのような場所にカゴ網を仕掛けると良いでしょう。
水辺の生き物の飼い方のコツ
自宅に持ち帰るまでの注意点
採取した生物を自宅に持ち帰るまでの注意点として、第一に挙げられるのが水温と溶存酸素量です。気温が高い日に、車などで長距離を移動する場合は、帰途中の水温上昇に注意してください。
ここで紹介した生物たちは高水温にも強いものばかりですが、限度がありますし急に水温が高くなると衰弱死する恐れがります。また、溶存酸素量が低下すると酸欠を起こして死亡する危険があるので、水中の酸素を消費し尽くさないように持ち帰る個体数にも注意が必要です。
これらを解決するためには、クーラーボックスや発泡スチロール製の箱などの断熱容器に加えて、乾電池式のエアポンプといった携行できるエアレーション用品を持って採取に出かけると良いでしょう。
次に、河川などの水から細菌や寄生虫などの病原体を持ち込まないように、生物が死んでしまわない最小限の水量だけを持ち帰ってください。
それから、ドジョウについては生息地の泥や土も水槽に入れると良い、とされることもありますが、水ゲジ(ミズムシ)やヒドラ、スネールなどの有害生物まで持ち込んでしまう恐れがあるので避けた方が無難です。
そして、オタマジャクシは当然ながら成長するとカエルに変態します。両者は飼育法ががらりと変わり、大量のカエルは管理が難しいので、持ち帰るオタマジャクシの数には注意してください。
飼育に必要な器具
飼育に必要な道具は一般的な観賞魚と同様です。すなわち、水槽やフィルター、照明とエアレーション、底床材やカルキ抜き剤などです。ザリガニやオタマジャクシはプラケースでも代用できます。
フィルターに関しては、上部フィルターがろ過能力やメンテナンス性、価格の面でおすすめです。また、採取してきた生物は極度のストレスを感じているため、隠れ家となるシェルターも用意してください。シェルターは水質への影響が少ない素焼きのものが良いでしょう。
ドジョウなどの底棲動物を飼育する場合は底床材が必要で、「田砂」や「ボトムサンド」などが使いやすいです。
主な飼育方法
水槽の立ち上げについて
まずは、飼育容器のセッティングを行います。水槽やプラケースのレイアウト用品には、前述のようにシェルターや底床材を入れておきましょう。セッティングが完了したら生物を入れていくのですが、この時に採取してきた生物をいきなり水道水に入れてはいけません。
まずは、もともと住んでいた環境の水から水道水に慣れてもらうために、カルキ抜きをした水道水を徐々に採取してきた水に加えて「水合わせ」を行ってください。これを怠ると水質の急変により死亡する危険があります。
生物を導入した直後は、水質の浄化に寄与するバクテリア(硝化菌)の数が少なく、すぐに飼育水が濁るなど水質が安定しないので、小まめに水換えを行ってください。ある程度バクテリアの増殖が進み、水質が安定してきたら頻度を落としても大丈夫です。
水換えの際は一度に全部を換水することは避け、全量の1/3程度の交換に留めてください。また、水草をレイアウトしたい場合は、水槽が完全に立ち上がってから入れてください。
餌について
餌は川魚用やザリガニ用の人工飼料が市販されているので、それをメインに与えます。オタマジャクシに関しては植物食性が強い雑食性なので、プレコ用の人工飼料や茹でたほうれん草などに加え、たまにはカツオ節やニボシなど動物質のものも与えてください。
採取してきた生物は最初の頃は人工飼料を餌と認識せずに食べないことがありますが、その場合は餌抜きを行ったり、目の前で餌を動かすなりして餌付けを行いましょう。人工飼料を食べてくれるか否かで、その後の維持管理のしやすさに雲泥の差が出ます。
まとめ・水辺で出会える生き物と採取・飼育方法について
春は水生生物も活発に活動を開始する季節で、この時期の水辺は生き物たちで賑わいを見せます。水辺で採取できる生物は一般的に環境への適応力が高く、丈夫で飼育しやすいため初心者の方でも十分に長期維持が可能です。
飼育することで間近で生物を観察できますし、育てる喜びも感じられます。日本に自然分布している淡水生生物にも魅力的な生体はたくさんいるので、ぜひ飼育に挑戦してみてください。
ただし、採取の際はその地区や場所が野生生物の捕獲を禁止していないか、事前によく調べておきましょう。それと同時に、無駄に死なせてしまわないように管理できるだけの個体数を持ち帰り、取り過ぎてしまった時はきちんと本来生息していた場所に放してあげてください。
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