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【夏の特別編】あの観賞魚は妖怪だった?魚にまつわる世界の伝説・怪談!

日本をはじめ世界各地には、魚の幽霊やクジラやサメといった生き物にまつわる民話・伝承が伝えられているのをご存知でしょうか?

日本なら金魚の幽霊・らんちゅうや、地震の神様といわれている大鯰(おおなまず)、世界に目を向ければゲームおなじみのクラーケンやバハムートといった存在が語り継がれています。

今回はいつもの飼育や機材ネタからちょっと離れて、日本だけでなく世界各地から水にまつわる怪談や伝承を集めてみました。

ちょっとした話の話題や、夏の怪談話向きの話もあるので最後までお付き合いください

観賞魚・水生生物にまつわる怪談・伝説

世界各地でさまざまな神話や伝承が伝えられていますが、そのもとになっているのは人間や犬などの動物だけではありません。

金魚やサメ、ダイオウイカなどさまざまな水生生物もモデルになっているものが多いです。

今回取り扱う伝承に関してはさまざまな言い伝えがあるので、現在伝わっているパターンのうちのひとつをご紹介します

もしも興味がわいたのなら、自分で神話や民間伝承などを調べてみのも楽しいですよ!

日本編

まずは私たちの住んでいる日本で神話や伝承で伝えられている、魚にまつわる幽霊や神様などをご紹介していきましょう。

この話を聞いたら該当する魚に対する考えが変わるかもしれませんよ。

金魚の幽霊:らんちゅう

金魚の幽霊」という名前は、実は妖怪漫画で有名な故・水木しげる先生が名付けたもの

初登場は江戸時代の戯作(げさく:小説のような読み物)を作成していた、山東京伝という人物が書いた「梅花氷裂」という作品に登場します。

物語は今の長野県にあたる信濃国が舞台

藻之花という名前の女性が、とある家に妾として迎え入れられたのですが、なぜか隣人がその家の正妻をそそのかして、藻之花を殺してしまったのです。

しかも亡くなったとき、藻之花は自分の飼っていた金魚の鉢に頭を突っ込んでいたという状態。

そして飼っていた金魚に藻之花の怨念が乗り移って恨みを晴らすのですが、藻之花の怨念がすさまじかったのか正妻は金魚に似た姿になってしまったそうです。

藻之花の怨念が乗り移った金魚は、普通の物とは異なる恐ろしい姿で描かれていて、これがのちのらんちゅうのモデルになったとも伝えられています。

龍魚:チョウザメ

現代ではアロワナのことを「龍魚(りゅうぎょ)」といいますが明治時代のころまでは、吉兆を表す正体不明の海の生物と考えられていました。

しかしその後の調査で、今では「チョウザメ」がその正体だったのではないかと考えられています。

実際に目撃談も伝えられていて1873年(明治6年)3月7日には、今の北茨城市にあたる茨城県にある多賀郡・大津浜で目撃されています。

このときの姿は以下のとおりです。

  • 頭には五三桐・背中には葵の紋といった模様
  • 体の左右には蝶のような形の鱗
  • 体長は約8尺(約2.4m)の魚 

この時目撃された龍魚は、体の模様から「吉祥(めでたい)魚」と考えられて、当時の新聞にも掲載されていますが、このほかにも類似した魚の目撃例が伝えられています。

大鯰:日本の地震を司る神様

「大鯰(おおなまず)」は文字どおり、巨大なナマズの姿をしている生物で、水中ではなく地下に住んでいて体を揺らすことで地震が起きると信じられていました。

大鯰が地震を起こしていると考えられたのは江戸時代から。それ以前は日本の地下に眠る龍や、日本を囲んでいる地震虫が原因という説が一般的だったんです。

今でも野性の鯰が地震の前に群れているのを目撃されたり、飼育している鯰の動きがおかしいという話もよく聞きます

1932年(昭和7)年に行われた鯰と地震を調べる実験では、地震が起きる6~8時間前にいつもと違う動きを見せることがわかっています。昔の人も鯰が地震に敏感なことに気づいていたのでしょうね。 

神社でも大鯰にまつわる話は多い

鹿島神宮の御祭神・武甕槌大神(たけみかづちおおかみ)と、香取神宮の御祭神・経津主神(ふつぬしのかみ)が、大鯰の頭と尾を要石で上から押さえつけることで地震を鎮めると伝えられています。

鯰を神様にしている神社もある

地震を引き起こすという厄介な大鯰ですが、佐賀県にある「淀姫神社」では、鯰を神様とする「鯰信仰」が古くから根付いています。

阿蘇にある「国造神社」では、大鯰の霊が祀られ、福岡県の那珂川では川の守り神にもなっているほどです

コサメ小女郎:コサメ

「コサメ小女郎(コサメこじょろう)」は今の和歌山県日高郡田辺市にあたる、紀州日高郡龍神村に伝わっている妖怪で、龍神村に伝わる小又川の2不思議のひとつ。

南方熊楠という人物の著書「南方閑話」という書物に記載されています。

コサメ小女郎は人を食う妖怪

龍神村には「オエガウラ淵」という名称の淵があり、そこにはコサメという魚が数百年以上も生きて妖怪となり、美女に化けて近づいてくる人間を誘惑しては水中に誘い込んで食べていたそうです。

ある日、小四郎という男性とコサメが出合いました。

このときコサメがふと「7年飼っている鵜(う)にはかなわない」と、小四郎にぼそりと漏らしてしまったそうです。

それを聞き逃さなかった小四郎は、7年飼っている鵜に淵を調べさせたのです。

そうして様子を見ていると、目玉をえぐられてしまった1匹の大きなコサメの死体が浮かんできたので腹を裂いてみました。

すると腹の中から木こりが使っている鉈が7本でてきたことで、コサメ小女郎が食べた7人の木こりは全員溶けてしまったことが分かったそうです。

昔は歳をとると化けると考えられていた

近年だと長い歳月を生き巨大化した魚は「池や川の主」だったり、正体不明の未確認生物(UMA)として伝えられることがほとんどです

しかし江戸時代あたりまでは、長い歳月を生きた動物や魚などは妖怪や、神様に近い存在になると信じられていました。

コサメ小女郎がなぜ人を食べるのかについては不明ですが、もしかしたら当時はこの淵で亡くなる方が多く、その死因を妖怪となったコサメ子女郎のせいにしていたのかもしれませんね。

また子どもたちに危険だから近づかないようにというメッセージを込めて、このような話を作ったのかもしれません

巴:人に恋した鯉の悲運

この話は1685年(貞享2年)に創刊された『西鶴諸国話』という書物に、「鯉の散らし紋」というタイトルで記載されています

今の大阪府にあった河内国には「内助が淵」という水が1度も干上がったことがないと伝えられている淵があります。

その昔この池の提に、漁師の内介(ないすけ)という男が、結婚もせず独身で一軒家を建ててくらしていました。

内介は普段は川などで鯉を捕まえては売りさばいてくらしていたのですが、あるときとても凛々しいメスで、独特の模様を持つ鯉を1匹捕まえてきます 

なんとなくその鯉を売らずに飼っていると鱗に一つ巴の紋が現れ、内介にとても懐くようになったので「巴」という名を付けあげました。

巴は呼ばれればすぐに寄ってくるだけでなく、水辺を離れ内介の家で眠ったり餌を食べるようになったのです。

かれこれ生けすで18年も飼育していると、巴の大きさは人間の15歳くらいの女の子くらに大きくなっていました。

内介が結婚することに…

特にこれといった出会いもなく長いこと独身だった内介も、縁談話を持ってこられてついに結婚することに。

いつもと同じように内介が夜に漁に出ると、水色地の立浪模様の着物を着た、美しい女性が家の裏口から駆け込み妻に言います。

「自分は内介殿と長い付き合いで、お腹に子どもがいる。なのにあなたを妻にしたことを恨めしく思います。急いで親里に戻らないと、3日以内に大波を起こしてこの家を池に沈める」と。

帰宅した内介に女性の話をするも、全く身に覚えのない内介は奥さんは幻覚を見たのだと言い聞かせ、また夕暮れになると舟に乗り漁にでてしまうのでした。

大鯉が現れ巴は行方不明に

内介が漁のために舟を出すと、池が波立って水面に浮いている浮草を割り1匹の大きな鯉が舟に飛び乗ったかと思うと、何と口から人間の子どものような形のものを吐き出し、水中に消えてしまいます。

何とか帰宅した内介が、生けすをのぞいてみると巴の姿はどこにもありませんでした。

それからというもの内介が住んでいた里の人達は、「生き物を飼いならしたり、深く手なづけるものではない」と言っていたそうです。

巴と吐き出した子どものその後は謎

大鯉は巴だったのでしょうが、口から吐き出した子どもらしきもののその後は不明です。

人として内介と接する機会もなかったのに、どうやって子どもができたのか不思議ですね! 

世界編

世界にも魚を元にした生き物の言い伝えはたくさんあります。

今回は有名なものを3つご紹介しますね!

レモラ:コバンザメ

「レモラ」は、古代ギリシャ・ローマなどの近海にひそんでいたと考えられていた怪魚。

ラテン語の「遅延・障害」と関連づけて、この名前になったそうですが、今ではコバンザメを指す単語となっています。

レモラの特徴は以下のとおりです

  • 岩礁などで群れている
  • 体が小さく青白い色をしている
  • 頭の吸盤で船にくっついて、船の進行を妨げる

古代ローマの軍事であり政治家、そして博物学者でもあるガイウス・プリニウス・セクンドゥス(大プリニウス)は、たった1匹でこぎ手400のいるガレー船すら動かなかったと記述しています。

1匹で船の動きを止めるのは大げさな表現ですが、伝えられている特徴からコバンザメのことを指していると断言できますね。

クラーケン:ダイオウイカ

オカルトやファンタジー好きな方やゲーム好きな方だと、「クラーケン」と聞けばすぐに「ダイオウイカ」を連想する方が多いです。

しかし絵画に描かれているクラーケンは巨大なイカだけでなく、タコのこともあります。

北欧に伝わる怪物ですが、19世紀にはアフリカ南部のアンゴラ沖に現れているとも。

外見に関しては諸説いろいろ

クラーケンの大きさや姿に関しては、目撃情報や憶測などが入交さまざまな説がありますが、8割近くは巨大なタコやイカの姿です。残りの2割はドラゴンのようなシーサーペントや、カニやエビといった甲殻類、果てはヒトデやクラゲといった姿のこともあるんです。

しかし大きさに関しては「島と思ってしまうほど大きい」というような記述が多く、伝承などでも船を真っ二つに割ってしまうほどの巨大さで伝えられていることがほとんど。

古代から漁師や船乗りたちは「海の魔物」といって恐れられています

オカルトで有名なメアリーセレスト号も被害にあった?

1872年に「メアリー・セレスト号」という船が発見されたのですが、発見時になぜか乗務員全員の姿がなかったという事件が起こっています。

この行方不明事件もさまざまな説があるのですが、理由のひとつにクラーケンに襲われたというものがあるんです。

ただし確実にクラーケンに襲われたという物的証拠も見つからないため、憶測の域を出ていません。

実は温厚説もある?

古代~近世まで、出向して戻らない船が全てクラーケンに襲われたと考える人達も多かったのですが、一部では温厚な性格で人に無害だという描かれ方もしています。

温厚説ではクラーケンの排泄物は、魚にとって魅力的な香りを発するので、魚が寄ってくるとも伝えられているんですよ

バハムート:クジラ

ゲーム好きやファンタジー好きな方なら、「バハムートといえば、ドラゴンだろう!」という声が聞こえてきそうですが、一時期はカバ説もあったの知ってましたか?

実はバハムートの正体、最近は「クジラ説」が浮上しているんですよ

諸説いろいろありますが、もともとは中世イスラムで考えられていた、世界の構造を作る概念上で考えられていた鯨なんです。

宇宙文献には書かれている世界概念

イスラムの宇宙誌に描かれている世界は、大地がとてもあらぶっていたそうです。そのため神様が天使に荒ぶる大地を背負わせようとしたのですが、天使だけでは安定させることができませんでした。

そのため天使の足元を固定するために岩盤、そして岩盤を支えるための「世界牛」を置き、さらに牛を乗せるための「大魚」を配置することで、世界が安定したと伝えられています。この「大魚」がバハムートだといっているんですね。

しかしこの説は基本となっているもので、派生した宇宙誌や翻訳の違いなどによりさまざまな説があります。

まとめ:あの観賞魚は妖怪だった?魚にまつわる世界の伝説・怪談!

いかがだったでしょうか。

今回は日本や世界で伝わっている、魚にまつわるお話をご紹介しました。

クラーケンやバハムートなど諸説さまざまなものがある伝承もあります。もしもこの記事を読んで、少しでも民間伝承や神話などに興味を持ったなら、自分でも調べてみると意外なことがわかるかもしれません。

今は図書館に行かなくても、ネットで調べることも簡単にできるので、休日などにマッタリとした時間の中でじっくりと調べてみるのも意外に楽しいですよ!