水槽の「pH」を安定させることは、魚や水草の健康を維持するためにはとても重要です。
pHは水質が「酸性」か「アルカリ性」かどうか判断する値で、大きく傾いたり頻繁に変動したりすると、小さなストレスやダメージとなって蓄積して、ひどい場合には病気につながってしまうことさえあります。
今回は、pHを変化させる要因とメリット、注意点をふまえて、水槽のpHを安定させるアイテムを5つご紹介します。
pHを管理できると生体の飼育がグッと楽になるので、初心者の方はもちろん、水質に敏感な魚に挑戦する方にもおすすめです。
飼育水のpHが大切なのはナゼ?メリットとは
アクアリウムでは淡水・海水問わず「pHが大切」と、よく言われます。
それもそのはず、pHの値によっては、
- 生体が元気になる
- 水草の育成やコケの生え方に影響する
など、水槽の環境を大きく左右します。
生体が健康でないと、水槽を眺める度に不安になりますし、水草が育たないのにコケが頻繁に生えれば、見た目も良くありません。
ここからは、飼育水のpHが大切な理由とメリットを具体的に解説していきます。
生体が元気になる!
pHが安定すると、生体に与える負担も少なく元気になります。
一方で、pHが安定しない水槽では急激でなくとも、少しずつストレスになったりダメージを受けたりすることも。「目立った症状がないのに、どこか体調が悪そう」といった場合に、調べてみるとpHの値がおかしかった、というケースも珍しくありません。
また、生体によって適したpHは異なります。たとえば、ディスカスは弱酸性(pHが低め)の水質を好みますが、一方でアフリカンシクリッドには弱アルカリ性(pHが高め)が向いています。
そのため、生体に合わせたpHに調整できれば健康な状態を維持しやすいです。
水草の育成やコケの生え方に影響する
pHは水草の育ち具合や、コケの生え方にも影響します。
たいていの水草は弱酸性の水質だと良く育つので、そのような環境ではコケが必要とする養分を水草が先取りして成長します。一方で、弱アルカリ性の水質では、生体が出す二酸化炭素がコケの好む炭酸系(HCO3)になりやすいです。
水草の育成とコケの抑制を考えると、弱酸性の水質が向いています。
pHを変化させる要因
水槽のpH を安定させるためには、変化させる要因を知っておく必要があります。
pHに影響を与える主な要因は、水の硬度を上げる成分(カルシウムなど)と下げる酸性の成分(硝酸塩、リン酸など)があげられます。
これらの成分を増減させることで、pHを目的の値に近付けられるので、どのようなものを水槽に入れるとpHが上下するのか把握しておきましょう。
水の硬度
水の硬度は、水中に溶け込んでいるカルシウムやマグネシウムといったミネラル成分の量を表していて、
これらが多いと硬度が上がり、pHも上昇します。そのため、水槽にサンゴ砂や石を入れるとミネラル成分が溶け出してpHが上がり、水質は弱アルカリ性に傾きます。
pHが上がってしまい、なかなか安定しない場合は、水槽内の底砂やレイアウト素材にも着目しましょう。
硝酸塩・リン酸の吸着
硝酸塩・リン酸などの成分が多いと、pHが下がり水質は弱酸性に傾きます。
硝酸塩は魚の排泄物や食べ残しが主な原因なので、水換えの頻度が低いと弱酸性の水質になるのはこのためです。
pHを中性や弱アルカリ性で安定させたいのであれば、硝酸塩・リン酸の吸着効果が期待できるろ材も検討してみましょう。
水槽のpHを安定させるアイテム5選
水質を目的のpHで安定させるためには、
- ろ材
- 調整剤
- カキガラやサンゴ砂
などを活用すると効果的です。
ここでは、水槽のpHを安定させるアイテム5つご紹介しますので、pHでお悩みの方は参考にしてみてください。
ただし、どのアイテムも基本的には一時的にpHを上げたり下げたりするだけで、効果を維持するには定期的な交換が必要です。
パワーハウス シリーズ
幅広い層から支持されるろ材「パワーハウス」には、pHを安定させる働きがあります。
pHを下げる効果的が期待できる「ソフトタイプ」と上げる「ハードタイプ」があるので、水槽の生体に合わせて使い分けましょう。どちらも、急激にpHを上下させることはないため、生体に負荷をかけることもありません。
リバースグレイン シリーズ
「リバースグレイン フレッシュ」は、pHを中性に保つ効果が高いろ材です。
pHに影響を与えるアルカリ性・酸性の成分を除去することによって、中性で安定させる効果が期待できます。水質をどちらかに傾けるタイプではないため、扱いやすく、さまざまな生体と相性が良いんですよ。
テトラ イージーバランス
液状タイプの水質調整剤「イージーバランス」。
淡水専用ですが、すぐに溶けてpHを安定させます。コケ抑制効果もありますが、魚や水草には無害なので、安心して使用できるのも嬉しい点です。
カキガラ
水質を安定させるアイテムとして、「カキガラ」も有名です。
カルシウムが溶けだすことでpHを上昇させ、中性程度に近づける効果がありますが、中性を超えて上がりきったりはしないのも特徴です。熱帯魚はもちろん、金魚の飼育でもよく用いられます。
しかし、「カキガラは水を酸性に傾ける物質を吸収するわけではない」ですので、pHが適正なのに病気などが発生する場合は、大幅な水換えで水質を改善してやるのがおすすめです。
熱帯魚水槽なら、養分を吸着しやすい水草(アマゾンチドメグサ、ハイグロフィラなど)を導入するのも良いです。
サンゴ砂
カキガラと同様に「サンゴ砂」もpHを上昇させる働きがあります。
ただし、サンゴ砂はもっと強めに作用してしまうので、弱酸性~中性付近で維持したい場合は要注意です。ネットに入れてろ材として使用すると、水質に合わせて簡単に出し入れできます。
底砂として使用する場合は、アフリカンシクリッドや海水魚など、pHを高めに維持したい水槽におすすめです。
まとめ:水槽のpHを安定させるアイテム5選!変化させる要因・メリット・注意点
水槽のpHを安定させるためには、
- pHを上げる成分(カルシウムやマグネシウムなど)
- pHを下げる成分(硝酸塩やリン酸など)
この2つの要因を把握したうえで、目的の水質に調整することが重要です。
また、pHを日々のメンテナンスだけで安定させるのは、簡単ではありません。その際は、ここでご紹介したアイテムを状況に合わせて導入してみてください。
pHが管理できれば水槽の安定につながります。健康な魚や水草を眺めるためにも、pHの安定に努めましょう。
トロピカライターの高橋風帆です。
アクアリウム歴20年以上。飼育しているアーモンドスネークヘッドは10年来の相棒です。
魚類の生息環境調査をしておりまして、仕事で魚類調査、プライべートでアクアリウム&生き物探しと生き物中心の毎日を送っています。
パワーハウスシリーズの記事に
pHを下げる効果的が期待できる「ハードタイプ」と上げる「ソフトタイプ」があるので、
とありますが本当でしょうか?
ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。
誤表記を見落としておりました。
こんにちは。
いつも記事を参考にさせていただいています。
記事中にあります弱酸性および弱アルカリ性とは具体的に数値ではいくつからいくつまでを指しますか?
弱酸性はpH6.0~6.5、弱アルカリ性はpH7.5~8以内としています。
熱帯魚水槽としてはそのぐらいの数値を指しますね。
よろしくお願いいたします!