熱帯魚と金魚は混泳できる、と考える方のなかでは金魚水槽のコケ掃除役として、「プレコ」の名前を上げることがあります。
プレコはコケを食べることで有名ですし温和な性格の種類もいるので、金魚の混泳相手として向いているように思える、というのが理由です。
しかし、プレコの種類によっては金魚を攻撃してしまうことがあるため、混泳は慎重に行う必要があると言えるでしょう。また、金魚と熱帯魚であるプレコを混泳させるためには、水槽用ヒーターを入れるなどして飼育環境を整えることも欠かせません。
金魚とプレコの混泳にはいくつもの条件があるので、意外とハードルが高いものです。
今回は実際に起こったトラブル例をふまえて、金魚とプレコの混泳について解説します。
金魚の飼い方や金魚水槽のレイアウトについては、こちらの解説ページもご覧ください。(弊社運営外部サイトを開きます)
金魚とプレコの混泳条件
金魚とプレコを一緒に飼育するのは不可能というわけではありませんが、様々な条件をクリアすることで混泳が成り立ちます。
ここでは、金魚とプレコを一緒に飼育するときに知っておきたい「混泳条件」をご紹介します。
まったく性質の違う魚なので、お互いの特徴や飼育環境をよく理解してから混泳できるかどうか判断しましょう。
金魚とプレコの混泳相性
まずは混泳を考える上で必須となる生活圏について。これについては金魚とプレコの生活圏が異なるため、問題は起きにくいといえます。
金魚は泳ぎ回るのに対して、プレコは水槽内のものに張り付いて頻繁に動くこともありません。
次に体格差や気性についてですが、こちらはそれぞれの種類によって大きく状況が異なります。
例えばセルフィンプレコのように大きく成長したり、気性が荒かったりする種類は金魚をつついてしまうこともあるため混泳には不向きです。また、プレコの隠れ家がないと金魚がちょっかいを出してしまうことも少なくありません。
- 体格差がない
- 隠れ家が十分にある
金魚とプレコの混泳ではこの2つの条件をクリアすることが必須と言えるでしょう。
そして、これらの条件を考慮したうえで金魚の混泳相手として挙げられるのは、ブッシープレコやタイガープレコなど小型で温和な性格の種類に限られます。
金魚もプレコも雑食性!餌は十分か
金魚とプレコはどちらも雑食性なので、餌が不足しがちです。
「プレコはコケを食べるから大丈夫」と思われがちですが増えたり、減ったりするコケだけで餌を管理することはできません。
片方に餌の量が偏ると争いにつながりやすいので、金魚とプレコの専用の餌を用意したうえで行き渡っていることを確認する必要があります。
水槽用ヒーターは必須
プレコは熱帯魚なので、水温を26度以上に調節できる水槽用ヒーターが必須です。
金魚は幅広い水温で飼育できることから、プレコに合わせてあげれば問題ありません。
ただし、水槽用ヒーター自体を用意しなければなりませんし、年中加温をするには電気代がかかります。また水槽用ヒーターは消耗品で一定期間使用したら買い替えが必要となるため、プレコを「水槽の掃除役」としてだけで見るなら費用の面では考えものです。
コケ取り生体として期待しすぎない
プレコはコケを食べることで有名ですが、実はコケ取り生体としての能力は低めです。
食べ方には個体差がありますし、成長するにつれてコケを食べなくなることも珍しい話ではありません。
「プレコを入れたら金魚水槽のコケ問題が解決する」といったことはないので、コケ取り役として混泳させる場合は過度に期待しないようにしましょう。
金魚とプレコのトラブル例
ここでは、実際に起こった金魚とプレコのトラブル例をご紹介します。
金魚の種類にかかわらず起こりえることなので、混泳を検討中の方は目を通してみてください。
10cm以上の金魚とプレコの混泳トラブル
オランダ系の10cmの金魚とプレコの間で起こったトラブルです。
プレコが金魚を舐めてしまった結果、一緒に飼っていた他の熱帯魚にもつつかれて翌朝には弱り切っていました。金魚が10cm以上に成長するには時間もかかりますし愛着も沸くので、悲しいものがあります。
プレコのサイズによっては舐められる
よくプレコが「舐める」という表現をしますが、これは文字通りの可愛らしい意味ではありません。「かじられる」「襲われる」と同義と考えてよいものです。
プレコはコケをこそぎ取るように食べますが、他の魚の粘膜や表皮で行ってしまうことがあります。流木を食べるほど力が強いため、舐められた魚が傷付いてしまうのも無理はありません。
金魚はもちろん、
- ディスカス
- ポリプテルス
- 淡水エイ
といった動きが緩慢な魚種は舐められやすいです。プレコの種類によっては、ガーを舐めてしまうことさえあります。
金魚は単独飼育がおすすめ
そもそも、金魚には次のような特徴があるため、基本的に単独飼育がおすすめです。
- 泳ぎが遅くヒレが長い
- 雑食性
- 病気にかかりやすい
- 無加温飼育が向いている
ゆっくり泳ぎヒレも長い魚なので、ちょっかいを出されたり、攻撃されたりしやすいです。金魚自体も雑食性なことから、混泳相手の小さな魚やエビを食べてしまうことも珍しくありません。
また、熱帯魚との混泳では水槽用ヒーターの電気代がかかるうえに、金魚はもともと無加温飼育向きの魚です。
水温の低下を経験させると丈夫に育ったり、色が良くなったりするメリットもあるので、熱帯魚との混泳は金銭面でも金魚の成長を考えてもデメリットが目立ちます。
金魚水槽のコケ取り方法
金魚は単独飼育がおすすすめ、ということはコケ取り生体を入れることも難しいです。
金魚の性格にもよるので不可能とはいえませんが、金魚が食べてしまったり、つつかれたりするリスクは付きまといます。
金魚水槽でコケに困った場合は手間ではありますが、
- ヘラやスポンジで擦る
- 底砂掃除をしてコケを抑制する
といった方法でコケ対策しましょう。
ヘラやスポンジで擦ろう
水槽のガラス面に生えたコケは、ヘラやスポンジを使って擦る方法が単純ですが効果的です。
ヘラは「ジラコヘラ」がおすすめです。ポリアセタールという水槽を傷つけにくい素材でできていますし、白色なので水槽に当てたときにコケが目立ちます。
水槽と底砂の境目に生えた取りにくいコケも、ヘラを底砂に挿すようにして使うことで楽に掃除できます。
スポンジは「メラミンスポンジ」がコケ取りに最適です。水槽を傷めることなく、力を入れなくてもコケを取ることができます。
底砂掃除を徹底してコケを抑制しよう
生えたコケを掃除することも重要ですが「コケが生えにくい環境」にするためには、底砂掃除が欠かせません。
餌をよく食べフンも多い金魚は、水だけでなく底砂も汚れがちです。底砂が汚れていると水換えしたとしても水質が悪化するペースが早まりますし、底砂付近に茶ゴケが生えやすくなります。
「プロホース」や「砂利クリーナー」を使えば水換えと同時に底砂掃除ができるので、有効活用してみてください。
まとめ:金魚とプレコは混泳できるのか!混泳条件とトラブル例から相性を考える
今回は金魚とプレコの混泳について解説しました。
プレコは金魚を舐めてしまう可能性がありますし、サイズによっては金魚もプレコをつついてしまうことがあるので混泳のハードルは高いです。
また、プレコ自体のコケ取り能力も高いわけではないため、コケ取り生体として期待しすぎないようにしましょう。
金魚とプレコの混泳を検討中の方のなかには、「コケ掃除が面倒」という意見が少なくありません。たしかに手間はかかりますが、効率的にコケが落ちるヘラやスポンジなどの掃除アイテムを使うと負担が減ります。
金魚水槽のコケ掃除にぜひ、役立ててみてください。
トロピカライターの高橋風帆です。
アクアリウム歴20年以上。飼育しているアーモンドスネークヘッドは10年来の相棒です。
魚類の生息環境調査をしておりまして、仕事で魚類調査、プライべートでアクアリウム&生き物探しと生き物中心の毎日を送っています。