熱帯魚の飼育を始めるとき、考えなければならないのが飼育する魚の数です。
単独飼育か複数飼育かを決めるには、飼育予定の魚の大きさや気性の荒さ、食性といった”魚の性質”を考慮する必要があります。
例えば、小型魚は元々群れで暮らす習性があることから、複数飼育の方が落ち着きやすいですし、大型の肉食魚は他の魚を傷つけて心配があるため、単独飼育が推奨されます。
しかし、魚の性質を考えながら適切な飼育数を判断するには、それなりの知識と経験が必要で、初めて熱帯魚飼育に挑戦する方だと、飼育数を見誤ってしまうことも少なくありません
そこで今回は適切な飼育数の考え方ということで、単独・複数飼育のメリットと、おすすめの魚種を解説します。
魚を飼うなら何匹がいい?
単独飼育か複数飼育かを決めるときにポイントとなるのが、次の2点です。
- 性格や食性などの魚の性質
- 魚の大きさ
魚の飼育数が適切でないと、過密飼育になったり、ケンカや食べられてしまったりなどの混泳トラブルにつながることがあります。淡水魚、海水魚のどちらも考え方は同じですので、基準を確認しておきましょう。
また、単独か複数かを決めたら次は、魚の数や大きさに合わせた水槽を選ぶ必要があります。水槽の選び方や、複数飼育での魚の数の考え方については以下の記事を参考にしてください。
魚の性質で推奨数は変わる!
単独か複数かを決めるときには、まず飼育予定の魚種の性質を知るところから始めます。
魚の性質とは、大きさや性格、得意な環境などのことで、
- 最大体長
- 気性の荒さ
- 食性
- 水質への適応力
は特に飼育数の決定に大きく関係します。
例えば、大きく成長する魚を複数匹同じ水槽で飼育していると、成長するにつれて窮屈になってしまいますし、最大体長に差がある魚種を混泳させてしまうと、いじめにつながることもあるため、飼育前によく確認して飼育数を決めると良いでしょう。
気性が荒い魚種や肉食性のある魚は、混泳相手を傷つけてしまう可能性があるため単独飼育の方が安全です。
大きな水槽であれば数匹一緒に飼える可能性はありますが、魚同士の相性やパワーバランスをよく見極めなければなりません。
また、複数の品種を混泳する飼育数が多い環境は、フンや餌の量が増えやすく水が汚れやすいため、水質に敏感な魚種には不向きです。温和で複数飼育に向いていても、水質にうるさい魚種の場合は、飼育数を抑えるか、同種のみで飼育して水質を管理するのがおすすめです。
大型魚は単独、小型魚は複数飼育が向いている
魚の最大体長は、単独飼育か複数飼育かを判断する上で重要なポイントです。
大型魚をゆったりと飼育するならば、広いスペースが確保できる単独飼育が向いています。
大きな水槽ならば混泳も可能ですが、大型魚は肉食性の魚が多く水を汚しやすいため、単独の方がその魚に合わせた管理がしやすくなります。
一方で小型魚は、臆病な面があり群れで暮らす習性があるため、複数飼育がおすすめです。
単独でも飼育できないことはないですが、不安から落ち着かずに体調を崩してしまうこともありますので、数匹でも仲間がいる環境を用意してあげましょう。
1匹で飼うメリットと単独飼育がおすすめな魚種
ここからは、単独飼育・複数飼育のそれぞれのメリットやおすすめの魚種をご紹介します。
まずは単独飼育についてです。
前述した通り、単独飼育は気性が荒い魚種や大型魚、肉食魚の飼育で推奨されます。
一匹でも見応えがある魚種ばかりなので、迫力のある豪快な水槽がお好みの場合に特におすすめです。
1匹で飼うメリット
魚を一匹で飼育する最大のメリットは、その魚の管理に注力できることです。
そもそも単独飼育が推奨される魚種は、肉食性で水を汚しやすかったり、気性が荒くて傷つきやすかったりなど、少し手のかかる魚が多い傾向にあります。
複数飼育だと、なかなか一匹だけに合わせた環境づくりをすることは難しいですが、単独飼育ならばその魚に合わせた最適な環境を用意してあげることができるのです。
- 広い遊泳スペースを確保できる
- 餌を取り合う心配がない
- 魚種に最適な水質(pH)に調節できる
- 水が汚れにくい
- 他の魚から病気をうつされない
といった飼育環境は単独飼育だからこそ整えられます。
また、魚種同士のいざこざや細かな環境の調整が必要ないため、単独飼育は飼っている魚だけでなく飼育者にも優しい飼育方法といえるでしょう。
単独飼育におすすめの魚種
単独飼育におすすめの魚種は次の5種類です。
- アロワナ
- ベタ
- プレコ
- フラワーホーン
- フグの仲間
魚の特徴をふまえて、単独飼育のほうが飼いやすい理由を解説していきます。
アロワナ
堂々とした泳ぎが特徴のアロワナは、小型種でも70cm前後、大型種では1m近い大きさになる大型魚です。
食性が肉食で水を汚しやすい上に、比較的体が硬く、ゆったりと育てるならば大きな水槽と広い遊泳スペースが必須で、単独飼育が向いています。
アロワナが好む、28~30度ほどの高水温環境も単独飼育ならば管理がしやすいです。
また、アロワナは下層~底層に混泳魚がいると、眼球が下方を向いて治らなくなる目だれを起こすことがあります。
目だれの予防には視線を一定にするのが最適ですので、こちらの観点からも単独飼育がおすすめです。
ベタ
ベタは5~7cm程度の小型観賞魚です。ひらひらとした大きなヒレが優雅な印象ですが、実は闘魚と呼ばれるほどに縄張り意識が強く、気性が荒いので基本的には単独での飼育が推奨されています。
特に同種のオス同士では強い攻撃性を示すため、混泳することができません。
また、他の魚種との混泳では、特徴のヒレをかじられてしまったり、引っ掛けてけがをしてしまったりすることがあります。水流に弱い傾向もあるため、小型の水槽に専用の飼育環境を整えてあげるのがおすすめです。
プレコ
水槽のコケ取り役として導入されることが多いプレコは、混泳できる魚と思われがちですが、種類によっては単独飼育がおすすめです。
他種と混泳できるのはタイガープレコやブッシープレコのような小型種で、大きく成長するセルフィンプレコやスカーレットトリムプレコなどは単独飼育の方が向いています。
た、大型種は縄張り意識があり他の魚の体表を舐める(かじる)ことがあるため、混泳水槽に入れる際は品種をよく確認するようにしましょう。
フラワーホーン
頭部の大きなコブと鮮やかな体色が印象的なフラワーホーンは、シグリット系の交配品種です。
体長は30cm程度と見応え十分、丈夫で飼育がしやすい人気の熱帯魚なのですが、気性が荒く縄張り意識が強いため、混泳には不向きです。特に同種やシグリット系の熱帯魚とは相性が悪く、攻撃性が増す傾向にあります。
フンが多く底砂を汚しやすいことや、体に傷がついてしまうのを防ぐなどの理由から、底砂を敷かないベアタンクでの単独飼育がおすすめです。
フグの仲間
アベニーパファーやハリセンボンなどのフグ類は、淡水海水に関わらずどの品種も縄張り意識が強く混泳魚をかじってしまうことがあるため、単独飼育が基本です。
また、ハコフグなどストレスを感じると皮膚から神経毒を出す種類もいるため、飼育の際にはご注意ください。
複数飼育のメリットとおすすめの魚種
続いては、魚を複数で飼育するメリットと、おすすめの魚種をご紹介します。
複数飼育は、小型~中型魚に多く取り入れられる飼育方法で、色とりどりの熱帯魚を飼育できるのが魅力です。
可愛らしい水槽や賑やかで楽しい水槽では複数飼育が取り入れられています。
複数飼育のメリット
複数飼育のメリットは次の3つ。
- 複数の魚種を1つの水槽で楽しめる
- 鑑賞性が高い
- 魚種によっては落ち着いて泳ぐようになる
一つの水槽で色々な種類の熱帯魚を飼育できたり、小型魚の群泳が楽しめたりするのが、複数飼育最大の魅力です。
一般的に想像する”色とりどりの熱帯魚が泳ぐ癒しのアクアリウム”は、やはり複数飼育が基本となりますし、魚同士の相乗効果で、より鑑賞性の高いアクアリウムを作ることができます。
また、ネオンテトラなどの小型魚は、温和で飼育しやすい反面、臆病なところがあり単独飼育だとストレスを感じやすいです。
このような魚種の場合、仲間の存在が安心材料となりますので、複数で飼育してあげると物陰に隠れることなく自然な姿を見せてくれるようになります。
複数飼育におすすめの魚種
複数飼育におすすめの魚を5種類ご紹介します。
- テトラ(カラシン)の仲間
- ラスボラの仲間
- メダカ
- コリドラス
- デバスズメダイ
どの種も温和で飼育がしやすい品種です。小型水槽でも楽しめるため、アクアリウムの入門種としてもおすすめします。
テトラ(カラシン)の仲間
ネオンテトラやレッドファントムテトラなどのテトラの仲間たちは、群れで暮らす習性があるため、複数飼育が基本です。
1匹では不安から落ち着かないような様子を見せますが、仲間がいれば安定します。10匹程度入れれば、豪華な群泳を見せてくれることもあるでしょう。
丈夫で飼育もしやすいため、熱帯魚の入門種としてもおすすめです。
ラスボラの仲間
ヘテロモルファやエスペイといったラスボラの仲間は、同種はもちろん、他魚種との混泳も楽しめる魚です。
テトラの仲間と比較すると落ち着いた色合いの種類が多いものの、群泳させると腹部から尾にかけて入る黒いラインが目立ち見応えがあります。控えめな体色は水草水槽とも相性が良いです。
メダカ
日本の河川にも生息するメダカも、自然界では群れる習性があるため、少なくとも3~5匹程度は入れてあげたほうがストレスを感じにくいです。
繁殖しやすい魚なので、オス・メスをそろえて複数で飼育すれば、産卵や稚魚の育成を楽しむことができます。
ただ品種改良に挑戦する場合は、飼育数が多いと繁殖するメダカがランダムになってしまうため飼育数を控えることが多いです。体色や模様などの特徴が際立つオスとメスを厳選して繁殖すると、理想のメダカを作出しやすくなります。
コリドラス
水槽の掃除役として有名なコリドラスは臆病な面があるため、単独飼育ではストレスを感じがちです。1匹では物陰に隠れてしまうことも多いので、同種を2~3匹程度飼育してあげると良いでしょう。
遊泳層が底砂付近なので、ネオンテトラなどの上層~中層を泳ぐ魚と干渉することがありませんし、温和で大人しい性格なので他種との混泳にも向いています。
ただ、混泳魚が多いと底にゴミが溜まりやすいので、定期的に底砂を掃除して清潔な環境を維持するよう心がけましょう。
デバスズメダイ
海水魚は淡水魚に比べて縄張り意識が強い種が多く、特に近縁種を攻撃してしまいがちなのですが、デバスズメダイは温和で同種、他種問わず混泳を楽しめる海水魚として人気です。
8cm前後と小さいので、45cm程度の水槽から飼育できます。
群れる習性があることから、5匹以上で飼育すると落ち着きやすく、美しい群泳を見せてくれることもあります。
まとめ:魚は何匹で飼うのが良いのか!単独・複数飼育のメリットとおすすめの魚種
今回は魚の適切な飼育数の考え方と、単独・複数飼育のメリット、おすすめの魚種を解説しました。
大型魚や肉食魚など、一匹をじっくり飼いこむ必要のある品種は単独飼育がおすすめです。
単独飼育では餌やりや飼育環境などをその魚に合わせて調整できるため、管理がしやすいのが大きなメリットとなります。
一方で複数飼育は小型魚や中型魚に向いています。複数種の混泳や小型魚の群泳などアクアリウムの醍醐味を堪能できますし、群れる習性のある小型魚は複数飼育の方がストレスを感じづらく安定しやすいです。
魚種に合わせて飼育数を決めれば、体調不良や、いじめやケンカなどのトラブルを未然に防ぐことができます。
魚の飼育数は、飼育予定の魚種の性質も考慮しながら検討することが大切です。
トロピカライターの高橋風帆です。
アクアリウム歴20年以上。飼育しているアーモンドスネークヘッドは10年来の相棒です。
魚類の生息環境調査をしておりまして、仕事で魚類調査、プライべートでアクアリウム&生き物探しと生き物中心の毎日を送っています。