飼育している観賞魚には良い餌を与えて、健康的に育ってもらいたいものです。しかし、その「良い餌」は魚種によって異なってきます。現在では様々な観賞魚が飼育されており、動物食性が強いものや雑食性のもの、植物食性が強いものと、その食性は多岐に渡るからです。
それぞれの食性に合った餌を与えなければ、不足する栄養素が出てしまったり、逆に特定の栄養素を過剰摂取するなどして、健康的な成育が望めなくなってしまいます。
ここでは、観賞魚の食性別に「良い餌」をご紹介すると共に、小麦粉と観賞魚の関係などについて解説していきます。
良い餌は魚の種類によって違う
観賞魚と一口に言っても、現在では多種多様な魚たちが飼育されており、食性も植物食性が強いものや雑食性のもの、動物食性が強いものと様々です。したがって、「良い餌」も魚種によって異なってきます。
例えば、植物食性が強い魚種や雑食性のものにとっては、水草も他と併用すれば良い餌になり得ますが、動物食性が強い魚種にとって水草は餌としては機能しません。
それぞれの魚種が持つ生態によって、嗜好や要求される栄養バランスなどが異なるため、それらを考慮したうえで与える餌を選択しなければならないのです。
○○用として販売されている餌は、その生体が持つ嗜好性や必要な栄養バランスを研究し、適切な配合を行った物です。しかし、生体によっては他の生体用の餌を食べることがあります。
例としては、熱帯魚用の餌を金魚が食べたり、コリドラス用のタブレットをエビ類が、アロワナ用のクリルをカメ類が食べるなどです。これらのケースは短期的に見れば、健康上の問題は発生せず飼育も可能です。
しかしながら、長期的に見ると不足する栄養素が出たり、逆に特定の栄養素を過剰摂取するなどして、発育不良や体形が崩れるなどの弊害が生じる恐れがあります。
栄養バランスが崩れた状態が続くと健康的な成育が望めないので、他の生体用の餌は主食ではなく、おやつやサブフードとしての位置づけにしておく方が無難です。
種類別!餌の特徴
熱帯魚用
代表的な商品としては、「テトラミン」や「カーニバル」が挙げられ、魚種によって色々な形状が用意されており、フレークタイプやタブレットタイプなどがあります。
粗タンパク質は47%前後、粗脂肪は10%ほどの配合になっており、金魚用などよりも栄養価が高い特徴があります。これは、熱帯魚のほとんどは金魚よりも小食なので、少量でも十分な栄養を摂取できるようにするためです。
そのため、熱帯魚用の餌を金魚に与え続けると、肥満体型になる傾向にあるので注意してください。
金魚・鯉用
カロチノイドやアスタキサンチンなどの色素成分を含有するものが多く、金魚や鯉を色揚げする効果が期待できます。しかし、それらの色素成分が多く含まれた色揚げ用飼料は、同時に高タンパク質であることが多く、消化に悪い傾向にあるので与える量には注意が必要です。
この欠点を解消するために乳酸菌に代表される、腸内環境を整える働きがある微生物を配合している飼料も数多く見受けられます。栄養価としては粗タンパク質が40%前後、粗脂肪は5%程度の物が多いです。
金魚や鯉は大食漢なので、肥満防止のために熱帯魚用よりは栄養価が抑えられている特徴があります。
草食魚用
プレコやオトシンクルスなどは植物食性が強いため、やはり専用の飼料が販売されています。これらの魚種は底棲魚なので、沈下性のタブレットタイプの餌が多いです。
クリーナー生体として導入されることも多い魚種ですが、水槽内に自然発生するコケだけでは生存に不足することが多いため、専用飼料を与えた方が長生きする傾向にあります。
海藻やクロレラ、スピルリナなどが配合されている物が一般的で、粗タンパク質は総じて30%強と、他の魚種用の物と比較すると抑えられています。
生餌・活餌
生餌の中でも、生きたままの状態で与えるものを活餌ということがあります。生餌としては「冷凍アカムシ」や「冷凍ブラインシュリンプ」、活餌は「ミルワーム」や小型の金魚である「小赤」などが代表的です。
生餌はディスカスやコリドラスに、活餌はアロワナやナマズ類など、いずれも動物食性が強い魚種にとって格好の餌となります。その他の食性を持つ魚種にとっても嗜好性・栄養価ともに高く、食い付きも良いのですが栄養が偏りやすい点がデメリットです。
そのため、栄養バランスに優れた人工飼料と、併用するようにした方が良いでしょう。
魚の餌にまつわる疑問について
人工餌と生餌、どちらが良いの?
この疑問に対する答えはケースバイケースです。それぞれの餌の特徴を簡単にまとめると、生餌は食い付いが良いうえに、生物そのものを与えるので特にカルシウムや動物性タンパク質といった栄養が豊富です。
一方、人工飼料は栄養バランスと保存性に優れるため、圧倒的に生体の健康状態と餌の維持管理がしやすい特徴があります。
生餌については、栄養バランスの欠点を補うためにビタミンなどが添加されている物もありますが、それでも同じ量で比較すると人工飼料の方に優位性があります。
よって、生餌は稚魚期や病み上がり時、飼い始めの頃に人工飼料を食べてくれない時など、栄養を付けさせたいタイミングや餌付けの手段として利用し、それ以外の時は人工飼料をメインに与えることをおすすめします。
魚に小麦粉が消化できないわけではない?
魚には小麦粉が消化できないから小麦粉が使用されている餌は避けた方が良い、といった情報が散見されますが、これは誤りです。
確かに、動物食性が強い魚種は、植物である小麦粉の消化吸収効率が悪いです。しかし、雑食性や植物食性が強い魚種は、問題なく消化吸収できるため、小麦粉を消化できるか否かは魚種によります。
多くの人工飼料で小麦粉が使用されいる理由は、餌が溶け出すことを遅らせて水を汚さないよう形を保持するという、重要な役割があるからです。小麦粉の配合比も魚種によって変更してあるので、動物食性が強い魚種にも安心して与えてください。
乳酸菌でフンが多くなる?!本当の効果とは
人工飼料の中には「生菌剤」が使用されている物があります。生菌剤とはプロバイオティクスとも呼ばれ、これは宿主の腸内環境を整える有益な微生物のことを指し、乳酸菌が代表的なものとして知られています。
魚の腸内にも常在菌が存在しており、その中には「エロモナス菌」といった病原性を示すものも居ます。ストレスなどで免疫力が低下すると、それらの病原菌が増殖・発病に至ります。
ただ、魚の腸内においても細菌類は無限に存在できるわけではないので、魚にとって有益な働きをする乳酸菌などの種類の比率を上げておくことで、病気のリスクを減少できるのです。
なお、生菌剤と一口に言っても、実際に使用されている微生物の種類は様々で、金魚の場合は商品によってフン量が増える例もあるようです。健康上の問題はありませんが、気になるようでしたら観賞魚にもそれぞれ体質があるため、その個体に合った餌を見つけてあげてください。
まとめ:観賞魚の餌で消化・栄養が本当に良いものとは!小麦粉は悪い?疑問も解説
良い餌は観賞魚の種類によって異なります。動物食性が強い魚種に植物質が多く含まれた餌を与えても、消化吸収の効率は悪いですし、その逆もまた然りです。それぞれの魚種が持つ食性を理解したうえで、適切な餌を選んで与えることが重要です。
専用の人工飼料は、その魚種に必要な栄養素がすべて含まれている総合栄養食であることが普通で、基本的にはその餌だけで飼育できるようになっています。そのため、観賞魚を飼育する時は、その魚種専用の人工飼料をメインに与えると良いでしょう。
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