熱帯魚の餌には人工飼料と生き餌・冷凍餌などがあります。生き餌は読んで字のごとく、生きたままの小動物を餌とするもので、冷凍餌は殺菌・消毒をした小動物などを冷凍して流通させている餌を指します。
いずれも自然環境下での捕食対象ほぼそのままなので、食いつきが良いうえに動物性タンパク質が豊富で栄養価に優れる特徴があります。ここでは、生き餌と冷凍餌の特徴を比較して、両者の種類や選ぶ際の考え方などをご紹介します。
生き餌・冷凍餌の利点と欠点
生き餌は読んで字のごとく、生きている状態の小動物をそのまま熱帯魚に与える餌のことです。対して、冷凍餌は商品にもよりますが、殺菌・消毒などの工程を経て、ビタミン類などの栄養分を添加して冷凍された状態で流通している餌です。まずは、これらの餌の利点と欠点を比較してみましょう。
生き餌・冷凍餌の利点
これらの餌の利点で共通する部分としては、どちらも人工飼料と比較すると、より自然環境下での捕食活動に即した形態の餌なので食いつきが良く、動物性タンパク質が豊富で栄養価が高いことが挙げられます。
そして、熱帯魚全般が好んで食べる傾向にあり、人工飼料には見向きもしない個体でも喜んで食べるので、特に肉食魚の飼育には重宝されています。
それに加えて、生き餌は種類にもよりますが繁殖が可能で、餌代の節約ができる点が魅力です。冷凍餌の方は生き餌よりも保存がきく点が魅力で、餌の管理が容易な利点があります。
生き餌・冷凍餌の欠点
逆にこれらの餌に共通する欠点としては水を汚しやすいことと、人工飼料と比較すると高価で、冷凍餌でさえも保存がきかない点にあります。
特に生き餌の長期保存は難しく、種類によってはごく短期間で使い切らないと小動物が死んでしまい、餌として利用できなくなってしまいます。
冷凍餌の場合は、生き餌よりかは保存がききますが冷凍庫が必須であり、あまり長い期間保存していると冷凍焼けなどを起こして、やはり鮮度が低下して食いつきが悪くなるなどの弊害が生じてしまいます。
生き餌と冷凍餌の種類
主な生き餌の種類
- イトミミズ
- アカムシ
- ミジンコ
- ゾウリムシ
- インフゾリア
- ブラインシュリンプ
- スジエビ
- コオロギ
- ミルワーム
- レッドローチ
- デュビア
- 金魚、メダカ
イトミミズやアカムシは代表的な生き餌で、小型魚には最適な種類です。ミジンコ~ブラインシュリンプはいわゆるプランクトンで、メダカなど小型魚の稚魚を育てる際に真価を発揮します。スジエビは淡水性のエビの1種で、エビなどの甲殻類は自然環境下で魚類が良く食べている生物です。
コオロギ~デュビアは昆虫の成虫と幼虫で、中型から大型肉食魚の飼育によく利用されています。金魚やメダカなどの小魚も大型肉食魚の飼育では餌として与えられており、餌用の金魚は小赤という名称で販売されています。
主な冷凍餌の種類
- 冷凍アカムシ
- 冷凍イトミミズ
- 冷凍ブラインシュリンプ
- 冷凍コペポーダ
- 冷凍ディスカスハンバーグ
冷凍餌も基本的には生き餌と同様で、冷凍アカムシや冷凍イトミミズは小型魚に、冷凍ブラインシュリンプや冷凍コペポーダは稚魚用の餌に利用されています。
冷凍ディスカスハンバーグはその名の通り、ディスカスの飼育によく用いられていますが、嗜好性・栄養価ともに高くて食いつきが良いため、エンゼルフィッシュやポリプテルスなどの肉食魚に与えることも一般的です。
生き餌と冷凍餌のどちらを与えるべきか?
生き餌と冷凍餌は飼育スタイルと目的によって使い分けることが一番です。例えば、アロワナなどの大型肉食魚をなるべく大きく育てたい場合は、大量の生き餌を与える必要が出てきます。そのため、大型肉食魚の愛好家の中には、デュビアなどを飼育・繁殖させて餌として与えている方もいます。
また、メダカやネオンテトラなどの小型魚を繁殖させて稚魚から育てたい場合は、ゾウリムシやインフゾリア、ブラインシュリンプなどの生き餌が欠かせません。
一方、人工飼料を与え続けることで熱帯魚が飽きてしまい、食いつかなくなることを防止する目的や、栄養バランスを考えてたまに動物質のものを与えたい時などは冷凍餌が扱いやすいです。
昨今の冷凍餌は、一回に使用するであろう分量が小分けにされた状態で冷凍されている商品も普通なので、解凍時に使わない分の餌の鮮度が落ちる心配もありません。飼育スタイルと餌を与えたい状況などを考慮して、適した方を利用すると良いでしょう。
生き餌や冷凍餌の使用上の注意点
水の汚れ
冷凍餌は言うまでもありませんが、生き餌に関しても食べ残してしまうと、小動物の死骸が水槽内に残ることになるので、人工飼料よりもはるかに水質の悪化を加速させてしまいます。そのため、生き餌や冷凍餌を与える際は、適量を見極めて与えなければなりません。
熱帯魚のコンディションを良くするために生き餌や冷凍餌を与えたのに、水質が悪化したためにコンディションが低下してしまっては本末転倒です。万一、食べ残しが生じてしまった時は、可能な限り取り除いておくと良いでしょう。
病気の持ち込み
これは、特に金魚などの生き餌を与える時に注意が必要なことですが、餌となる小魚が病気にかかっていることに気が付かずに与えてしまうと、飼育している熱帯魚に病気が伝染する危険があるのです。
餌用の小魚は飼育用のものよりも管理がおざなりになることが多く、中には弱ってしまって寄生虫に寄生されたり、病原菌に感染するなどして病気にかかってしまうこともあります。
そのため、生き餌を購入する際は餌用の生体に対しても管理が行き届いている、信頼できるショップかどうか調べることが重要です。
その他にも、生き餌を購入した後の管理が不十分だと雑菌が繁殖して鮮度が下がり、生き餌を食べた熱帯魚が調子を崩してしまう恐れもあります。生き餌を利用する際はしっかりと管理して、雑菌の繁殖や鮮度の低下を防いでください。
まとめ・熱帯魚の生き餌・冷凍餌の比較について
熱帯魚の餌には色々な種類がありますが、生き餌や冷凍餌に分類されるものは、総じて嗜好性と栄養価が高い特徴があります。そのため、熱帯魚の食いつきが良く、人工飼料に興味を示さない個体でも食べてくれる傾向にあるので、特に肉食魚の飼育において重宝されています。
しかしながら、いずれも水を汚しやすく、保存状態が悪くて鮮度が落ちると、熱帯魚の健康を害する恐れがある点には注意してください。保存のしやすさは生き餌と冷凍餌で大きく異なるので、ご自身の飼育スタイルに適した方を利用すると良いでしょう。
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