美しいものを眺めて愛でる・楽しむという行いは、
生き物の行動としては特異で、それゆえに人らしさがあるのかもしれません。
鑑賞して楽しむものは様々ありますが、美術・芸術、
または広義として「アート」と呼ばれる分野は、
「見ること」の欲求を満たすために古くから人々の暮らしとともにあります。
アートアクアリウム2017が大人気を博していることもあり、
近頃アクアリウムが「アート」として認識される機会が増えてきています。
そこで今回は、「アート」と「アクアリウム」の接近について、
また、アクアリウムをアート(芸術)としてみることについて考えていきたいと思います。
アクアリウムはアート(芸術)か?!
美しいもの、高価なもの、わけのわからないもの、美術館に収容されているもの、などなど、
芸術と聞くと思い浮かぶイメージがありますよね。
まず、芸術という言葉は少々仰々しく、そしてそれを定義することは容易ではありません。
しかしここでは、芸術とは、
人の手によって表現されたものを他者が見る(接する)こと、
そのことで何かを感じたり考えたりするという行いの「相互作用」なのではないかと仮定して話を進めてみます。
その考えをもってアクアリウムに立ち返ると、
メンテナンスの行き届いたきれいな水槽やこだわりのつまったレイアウト水槽を見て人々が美しいと思ったり、驚きをおぼえたり、
心が癒されると感じるとき、それは「アート(芸術)」だといえます。
アートとしてのアクアリウムのあり方
ここでは「アート」×「アクアリウム」という言葉に代表される、
2つの方向性についてご紹介します。
自然より美しい?!自然を創り出すネイチャーアクアリウム
アクアリウム好きの皆さまはご存知の方も多いかと思いますが、
ネイチャーアクアリウム(Nature Aquarium)というジャンルがあります。
ネイチャーアクアリウムはその名の通り、自然の風景を楽しむアクアリウムです。
自然を楽しむといっても自然界を切り取ってそのままを水槽に入れるのではなく、
人の手によって”美しい自然の風景”を水槽内に表現する・作り出すというものです。
自然界こそ究極の美なのでは?と考えていましたが、
自然物に人の手を介入させることでその美しさを抽出し際立たせ、
誰にでも見ることが出来るように公開することは、
かなりチャレンジングでもあり、まさに人が作る=「アート」であるといえます。
煌びやかな世界を創り出すアートアクアリウム
一方で、自然環境とはかけ離れたイメージを
水中世界を用いて表現するのが「アートアクアリウム」として公開されている試みです。
こちらの記事で詳しくリポートしておりますが、
この企画「アートアクアリウム」では、誰もみたことのない世界を
私たちにとって身近なお魚や馴染み深いモチーフを用いて創り出しているので、
鑑賞者の驚きや印象深さはより一層強いのかもしれません。
ネイチャーアクアリウムとアートアクアリウム。
表現の方向は全く逆を向いていますが、水中世界というイメージを
人の手の介入によってより一層際立たせ、鑑賞者に驚きや感動を与えるという行為は「アート(芸術)」と言えるのではないでしょうか。
そもそもアート ART という言葉は ARTIFICIAL(人工的)という語から由来しています。
それは、人の手によって生み出されたものを介して、
人が何かを受け取る・感じる、という人の営みの根本なのかもしれません。
アクアリウムを楽しむ、アートを楽しむ
上記した2つの例はインパクトのあるものですが、
大きな舞台で「誰かを感動させること」がだけがアートではないと思います。
自分のお気に入りの水槽を持つこと、毎日眺めて安らぐこと、気がすむまで手を入れてみること、そのように生活の中で、例えば自分の部屋の中でもそれは起こることです。
好きだな、と思うイメージを、アクアリウムの中に見出して、心豊かに日々を暮らすことが良好なアクアリウムライフであり、アートライフなのではないでしょうか。
アート、そしてアクアリウムを追求する道は果てしないけれど、楽しみながら進んでいきましょう!
番外編 現代アートにみる水槽を使った作品
Image: Photographed by Prudence Cuming Associates Ltd © Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved, DACS 2015
イギリス人の大人気作家ダミアン・ハーストは水槽を使った作品をいくつも制作しています。水槽の中にはホルマリンが入っており、考えてみるとグロテスクな表現ではありますが、時間が静止した情景はとてつもない冷たさと不思議な平穏を描いているようにも感じます。
芸術の道も果てしないですね。
話は逸れてしまいましたが、人の手によって人を豊かにするという共通項で結ばれた
アクアリウムとアート。様々な可能性を秘めたその世界を楽しんでいきましょう!
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