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魚類最大の敵! 抗酸菌症 について

水温が高いと、水槽内で菌が繁殖しやすくなります。

菌の繁殖最適温度は20~28度のことが多く、夏場は魚にとって特に厳しい環境と言えます。

その中でも最も恐ろしい病気『抗酸菌症』について考えていきます。

不治の病・抗酸菌症の恐ろしさ

病気・寄生虫は、たいてい市販の薬で治せるものばかりです。

しかし、強力な魚病薬のエルバージュや観パラDを使用しても治療できない病気があります。

それが『抗酸菌症』です。

抗酸菌(マイコバクテリウム)とは

非結核性抗酸菌の一種です。自然界の土などに存在します。

魚が罹病するのは抗酸菌の中でも水を媒介とする『マイコバクテリウム・マリヌム』という種類です。(※写真はイメージです。)

最適水温は20~33度で、それ以下だと休眠状態になります。

病気の進行は非常に遅く、感染から約3ヶ月~半年で死に至ります。

なので、冬に感染しても症状が出るのは春から夏であったりと、発病に気づけないことが多いです。

その名の通り酸に耐性があるため、オキソリン酸(観パラD)などでは効き目がありません。手に入る魚病薬では処置できず、不治の病と呼ばれています。

抗酸菌症の症状

・体内に白~オレンジの粒、または卵型のような病巣(膿)ができる。

・体色、または体の一部が白くなる。

・ヒレが尾腐れ病でないのにボロボロになっていく。

・背骨が曲がる、痩せる。

・エルバージュやグリーンF、観パラDなどの薬が効かない。

・松かさ状態、ポップアイになる。(末期症状※)

※これらは、体力・免疫力低下による併発病かもしれません。

これら全部または一部症状を経た後に、衰弱か内臓の機能不全で死んでしまいます。

グルゲア病や真菌性肉芽腫症と似ていますが、こちらは病巣が2~3mm程度で球体ではなく、卵または栗のような形です。

病巣(膿)はある程度大きくなると破裂し、体外へニキビのように放出されます。

しかも体内(主に内臓まわり)にできるため、透明鱗の魚でなければ早期発見は難しいです。

この病巣の破裂により、他の魚がいる場合、飼育水を介して感染すると考えられます。

同じ水槽内に他の魚がいても、破裂前なら感染しないこともあり得ますが、感染率がわからないところが怖いです。

発症・感染原因は水質の悪化であることが多いそうですが、既に感染している病魚からの感染が圧倒的であると思います。

松かさ状態・ポップアイは頻繁な水換えで改善・抑えられますが、根本の病巣をたたけないため、一時的な抑制にすぎません。

抗酸菌は人にも感染する?!

健康ならば免疫力があるので大丈夫ですが、抗酸菌は人にも感染します!

皮膚炎のような形で感染します。

なので、抗酸菌症を発症した病魚がいた場合、手はしっかりと殺菌しましょう。

また、50度の高温に弱いので、ホッカイロをあてる処置もあります。

飼育器具などはイソジンや熱湯で完全消毒するか(継続使用するのはお勧めできませんが…)、捨てるしかありません。

希望の光…紫外線!

薬が効かないなんて、抗酸菌に感染したら、完全にお手上げなのか…?

かわいい魚の死を待つしかないのか…?

しかし、抗酸菌も『菌類』です。

地球にはどんな菌でも殺菌する、最強のエネルギーがあるではないですか!

そう、太陽からの光『紫外線』です!

さすがの抗酸菌も菌であるから、紫外線の力には勝てません。

水槽の深さに応じてパワーは上げなければなりませんが、260nm以上の紫外線を18 mJ/cm²あてれば抗酸菌は99%殺菌できることになります。(あくまで推論です)

太陽光でも良いのですが、ムラがあり、水槽は高さや奥行きがあるので、安定して照射するには紫外線灯・殺菌灯・低圧水銀灯が良いと考えています。

260nm以上の紫外線といえば、メタハラや爬虫類用のUVライトなどがあります。

しかし、これはあくまで理論上のお話です。

問題もあります。

強力すぎる紫外線は、金魚などの魚には使えないということです。

そうなるとすでに感染してしまった魚の治療に行き詰ります。

もう一つの希望・イソジン

流通しているものの中で、最強の殺菌力を誇る薬があります。

先ほど少し触れましたが、それは『イソジン』です。

イソジンはあらゆる菌を殺します。

抗酸菌にも効果があります。

ただ、抗酸菌症の魚の体内の病巣は、筋肉や内臓に融着しているため、どれほどの効果があるかはわかりません。

イソジン浴のやり方

  1. カルキ抜きした水1Lに1~2滴、イソジンを溶かします。
  2. 5~7分、魚を薬浴させます(時間厳守!!)
  3. 12時間おきに繰り返します!(合計2回)

イソジン浴は本当に最後の手段です。

魚にも負担が大きくお勧めできません。

しかし、万が一、発症してしまったら…やってみる価値はあると思っています。

また、魚には使用できませんが、抗酸菌には、一説には酸性ながらも『酢』が効くとも言われています。

アクアリウム用の殺菌灯を使う

水中の菌を殺す装置にアクアリウム用の『殺菌灯』があります。

水が通るホースに接続し、通過した水を殺菌していく仕組みです。

このタイプは外部フィルターなどでしか使用できないのが難点です。

水中に沈めるタイプもありますので、上部フィルターなどを使用している場合はそちらが良いでしょう。

アクアリウム用の殺菌灯は、抗酸菌(マイコバクテリウム)も殺菌できます。

しかしアクアリウム用の殺菌灯は通過した水の殺菌しかできません。

砂利やろ材についた菌への効果は薄いです。

しかし、水槽内の菌の絶対数を減らすことができまるため、補助的に使用できます。

バイオフィルムに気を付けよう!

抗酸菌はバイオフィルム(水槽内のぬめり)を拠り所にしています。

(※写真はイメージです)

抗酸菌のバイオフィルムは脂質が多い(普通よりちょっとぬめりが強い)と言われています。

膜が強靭なため、高温処理でも生き残る可能性があります。

以前、抗酸菌は24時間風呂で問題になりましたが、そのためです。

バイオフィルムを徹底的にこすり、洗い流し、50度のお湯を入れ、イソジンで洗い、紫外線に当て良く乾かす…これだけやっても、死滅がはっきりしないのが恐ろしいところです。

まとめ

現在、魚類の抗酸菌症に対する薬は販売されていません。

先日、自宅の金魚が抗酸菌症で亡くなりました。購入時から感染していたようです…。

それでも1年間、闘病しました。頑張ってくれました。

抗酸菌症という病名にたどり着いた翌日に亡くなりました。

この病気は飼育書にも載っていないので、あまり知られていません。

しかし、抗酸菌症に似た症状で悩んでいる方がたくさんいます。

養殖魚などでも問題になってきているそうです。

これまで書いた対策や方法は、あくまで理論にすぎません。

本当に殺菌できるのかは未知数です。

しかし、やれることはやる、諦めないことこそが治療の第一歩です!

魚たちに長生きしてもらいたい、その心で頑張りましょう!

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コメント

  1. しんちゃん より:

    こんにちは。
    我が家の金魚1号(雑種?)の病状を調べる中でこちらのサイトにたどり着きました。
    中島さんのおかげで、病名が分かりました。
    我が家の金魚も抗酸菌症にかかってしまったようです。

    1週間前、ニキビのようなできものを胸ビレの近くに見つけたのが最初でした。
    病巣が左胸ビレ近くと、左目の下にできてしまったようで、時折膿が出てきます。
    すぐに隔離し0.5%の塩水浴をし始めましたが・・・
    治らない病気なんですね(涙)

    実は、約1月前に同じ水槽の金魚2号(オランダ獅子頭)が軽度尾ぐされ病になり、
    すぐに隔離しグリーンFゴールド+塩水浴。
    1週間くらいして完治が確認できたので、徐々に真水に戻したら、今度は松かさ病を発症。
    再びグリーンFゴールド+塩水に戻したらその後再び尾ぐされ病と罹患し、
    その間ずっと隔離して治療していたのですが薬浴が長期にわたったせいか、
    だんだん元気がなくなりふらふらと水中を漂うようになったので、
    薬浴・塩浴はあきらめ、現在エプソムソルト浴中です。
    ヒレの先が黒ずんでいますが、少し元気が良くなり、漂う時間が少なくなりました。
    エサも一生懸命食べています。(少ししかやっていませんが)
    今思えば当初は軽度尾ぐされ病だったので、塩浴だけで回復を待てばよかった…

    さて、話が長くなってすみません。
    金魚ちゃんたちがこのような悲惨な状況になったのは自分の責任と重く受け止めつつ、
    少しでも楽にしてあげたいと思っています。

    金魚1号は0.5%塩水浴を行い約1週間経ちましたが、
    病状が良くなるわけでもなく、
    かと言って急激に悪化しているわけでもなく、
    このまま塩水浴を続けて良いものか迷っています。

    もし全く何も効果がないのであれば、
    2週間続けた後、
    エプソムソルト浴に変更しようかと思っています。
    (2号がそれで少し元気になったので)

    長々とすみません。
    貴重なご経験に基づく情報をありがとうございました。
    おかげで、金魚の病気には知らないものもまだまだあり、
    単純に薬を入れておけばよいというわけでもない、という事が分かりました。

    もし、また結果が出るようでしたら、ご報告させてください。

    • 中島 より:

      コメントありがとうございます。
      アクアリウムの抗酸菌症とは、薬に耐性を持ってしまった耐性菌といえます。
      似た症状で、エロモナスの体内感染もあります。この場合、体内(主に腸)から感染し、内臓・筋肉を壊死させ、結果、膿として出てきます。
      やがて松かさ病・ポップアイへと発展します。当然、体表を殺菌する通常の薬浴では効果がありません。
      薬の経口投与(薬餌・パラキソリンF)である程度症状は治まりますが、内臓の損傷がすすんでいると軽快しても、何度でも再発します。
      松かさは治らない・予後が悪いと言われているのはそのためです。消化器がやられていた場合、栄養失調で衰弱死することがあります。
      しかし、体内のエロモナスをたたければ、症状を和らげることができます。
      ご参考までに!

      エプソムソルトは体液を調整してくれるので(そのため松かさに効果があるといわれています)、金魚が楽になったのだと思います。
      病気治療は金魚の体力消耗を避けることで治療率が上がります。頑張ってくださいね!

  2. しんちゃん より:

    早速の返信ありがとうございます
    m(__)m
    お返事が頂けると思っていなかったので、
    とてもうれしいです。

    エロモナスで膿も出るんですね。
    思いもよりませんでした。
    思い込みはダメですね。

    残念ながら金魚2匹はその後病状が悪化し、
    1号は松かさ&ポップアイ&膿、
    2号は底でじっとして動かなくなってしまいました(涙)

    同じ水槽にいたポルカドットローチやエビは元気な様子で、
    魚の種類によっても病気に対する強さが異なるんですね。
    (水槽はリセットし、底砂や水草も廃棄しました)
    奥が深いです・・・

    重ね重ね、返信ありがとうございました。
    治療はとても難しいので、
    これからは何とか予防ができないか、
    模索していきたいと思います。

    • 中島 より:

      ご返信ありがとうございます。
      エロモナスは本当に厄介な菌です。松かさ病はほとんど、エロモナスの腸内感染から始まると考えています。
      金魚は特に、大食漢でなのに腸が弱いですから、エロモナスの体内感染をおこしやすいのだと思います。
      金魚は奥深いです。予防は、たまに薬餌(パラキソリンFなど)を与えると予防(腸内殺菌)になりますよ。

  3. マリング より:

    今年の夏に我が家の熱帯魚が次々と体が白くなり★になりましたが、まさにこの病気かもしれませんね。

    • アクアガーデン編集部 より:

      抗酸菌は、薬剤耐性を持ってしまった菌ですので、どんな水槽でも発生する可能性があると言えます。
      薬の多用は避け、日々のメンテナンスで維持することの大切さを痛感する事象です。