サンシャイン水族館 熱帯魚大量死の概略
池袋にあるサンシャイン水族館は8日、目玉になっている大型水槽で94%に当たる魚類1235匹が死んだと発表した。
死んでしまった魚は、トビエイ類、カタサゴ類など24種合わせて1235個体。
死んでしまった直接の原因は、ろ過装置(プロテインスキマー)を止めたことによる酸素欠乏症の可能性が高いという。
今回の事故の問題点・疑問点
今回の事故で、1235匹もの魚が死んでしまっています。いくら魚とはいえ、大切な命には変わりなく、私は、プロとして防いであげたかった事故だと思うわけです。
なぜ、こんなことが起こってしまったのか。
私が思う最大の疑問点は、ろ過装置である『プロテインスキマーを切る必要があったのか?』ということです。
検証を進めるうちに、切る必要はなかったかもしれないということが分かってきました。
結論を出す前に、もう少し事故に触れておきます。
メディアの情報から分かる時系列
様々なメディアに出ている記事を読み解くと、時系列はこんな流れのようです。
専門用語も出てくるので、あとで解説します。
11月7日以前 大型水槽内で白点病が発生し、多くの魚に感染した
11月7日 大型水槽内で白点病※の魚に薬浴※を実施
同時に、薬浴の効果を高めるためにプロテインスキマー※を切る
同時に、水槽内に別系統から空気供給※を行う
11月8日 早朝警備員が水槽の魚が大量に死んでいるのを発見
時系列に出てきた専門用語の解説
白点病(はくてんびょう)とは
魚がかかる病気のことで、体表に白いブツブツが現れるのが特徴です。
白点虫(ウオノカイセンチュウ)が寄生した状態です。
白点虫はしつこい寄生虫で、症状が進むと呼吸が早くなったり、餌が食べられなくなったりします。
この病気が現れたら通常、薬浴をして治療します。
薬浴(やくよく)とは
その名の通り、病気になった魚の水槽に治療薬を入れて、その中で泳がせることを言います。
一般的には、病気になった魚だけを取り出して、別の水槽で薬浴します。
しかし、今回のような大型水槽では、病気になった魚を取り出すことが困難なため、そのまま大型水槽内で薬浴したものと思われます。
プロテインスキマーとは
プロテインスキマーとは、主に海水魚を飼育する際のろ過装置のことです。
ろ過装置とは、魚の糞尿などで汚れた海水をきれいにする装置です。汚れた水は、ろ過装置内に取り込まれて、装置内で汚れを取り除きます。
きれいになった海水は、ポンプで水槽内に再度送り込まれます。
ろ過装置は、様々なタイプのものがありますが、特にプロテインスキマーは微細な泡を装置内で発生させるので、水中に酸素を取り込む役割も担っています。
↓これは、サンシャイン水族館に入っているプロテインスキマーの小型版です。
↑海水内の汚水がたまるカップが写っています。二重になっている外側に海水内の汚れ(汚水)が溜まっていきます。
カップの下には微細な泡を発生させる装置があります。(写っていませんが、装置はもっと下に続いていて細長い格好です。)
白く写っている部分は全て細かな泡です。
この泡に、海水中のタンパク質などの汚れが押し出されてカップの外側に溢れ出して溜まっていきます。
今回の事故は、この装置を止めてしまったことに原因があるのです。
別系統からの空気供給
プロテインスキマーからも空気供給がなされますが、これだけ大きな水槽なので、これだけで空気供給を賄っていたとは考えにくいです。
別の空気を供給するだけの装置も持ち合わしていたものと推測できます。
エアーチューブの先に丸いストーンがついていて、そこからエアーがブクブクでる装置は、みなさん見たことがあると思います。
その大型のものが、恐らくあったのでしょう。
プロテインスキマーを切る必要はあったのか
今回の事故は、ろ過装置であるプロテインスキマーを切ったために酸欠になり、魚が死んだということです。
サンシャイン水族館の大型水槽には、これまた大型のプロテインスキマーが何機も設置されています。
では、なぜプロテインスキマーを切ってしまったのか。
本当に切る必要があったのか、検証しました。
メーカーに聞いてみた(プロテインスキマー)
僭越ながら、私はこの業界に長いので取引先でプロテインスキマーのメーカーを知っています。
担当者に、『薬浴の際にプロテインスキマーを切る必要あるのか』を訪ねてみました。
回答としては、『切る必要は無いが、慣習として切ることはある』そうです。
なぜ切るのかというと、薬品が汚れと一緒にカップ内に溜まってしまうことがあるからだそうです。
つまり、入れた薬品がカップに溜まって捨てられてしまうことにより、薬浴の効果が薄れることがあるというのです。
メーカーに聞いてみた(薬浴・薬品メーカー)
同様に、今回の事故を例に出して、薬品メーカーにも聞いてみました。
『切る必要はないし、おそらく効果も変わらない』そうです。。
私が聞いたメーカーの薬品を、サンシャイン水族館が投入していたかは、分かりません。薬品メーカーも沢山ありますので。
しかし、参考にはなりました。
プロテインスキマーを切る必要があったのか
上のことから分かるように、白点病の薬品効果が薄れることを懸念してプロテインスキマーを切ったのでしょう。
もっと言えば、薬品の量を節約するためにプロテインスキマーを切ったとも考えられます。
見方によれば薬の効果を高める(節約する)ために魚の命が犠牲になったとも言えるわけです。
実際には、装置を止めなくても効果が薄れることはなかったのかもしれません。
私は、メーカーなどからのヒアリングをもとに考えると、今回は切る必要がなかったように思えてなりません。
少なくとも、プロテインスキマーは数台~数十台入っていると思うので、半数は動かしておくとかすれば、結果は違ったかもしれませんね。
今回のサンシャイン水槽事故を検証した結果
もちろん、故意に事故を引き起こしたとは考えられません。ご関係者も大変悔しい思いをしていることでしょう。
仕方がなかったこととはいえ、もう少し工夫をしたプロテインスキマーの動かし方をしていれば、救えた命だったのかと思います。
我々も、経験がありますが、少しの不注意や思い違いで、沢山の魚が犠牲になります。
今回の事故は、私も生き物に携わる者として、心に刻んでいきたいと改めて思いました。
知る人ぞ知る、東京アクガーデンのトップ代表CEO。
魚の知識は少ないけれど、熱帯魚業界は熱く語ります。
20キロ痩せたことが一番の自慢、ダイエットも仕事も同じだー!!