アクアリウム入門の第一歩、入手方法から飼育まで、全般を通して手軽に飼えるイメージの強い金魚ですが、「金魚と熱帯魚って一緒に飼えるの? 」と考えたことのある人はどれぐらいいるでしょうか? 考えたことのある人!挙手!
って、聞いてみたいところですが現実は…。
「えー、金魚と熱帯魚の混泳なんて無理じゃない?」←これが普通の反応ではないかと。
普通だったら、思いついても実際に、金魚と熱帯魚を同じ水槽で飼育してみる人はそんなに多くないはずです。
果たして、金魚と熱帯魚を一緒に、同じ水槽で飼うことは可能なのでしょうか?
今日はそんな素朴な疑問に迫ってみました。
「金魚と熱帯魚は一緒に飼える?」という質問への一般的な回答例
とりあえず、金魚と熱帯魚を一緒の水槽で飼えるかどうか気になる方は、
ショップの店員さんに聞いてみてください。
「金魚と熱帯魚って、一緒に飼えるんですか?」って。
店員A:「金魚と熱帯魚を一緒に飼う? 無理でしょうね~」
店員B:「水温が高すぎると金魚ちゃんが可哀そうです!」
…十中八九、こんな答えが返ってくると思います。
(※ここだけの話ですが、私自身の実体験を基にした回答となっております)
ネットでも「やめておいた方がいい」というご意見の方が多いですよね。
むしろ、それしか見たことがないかも!?
金魚と熱帯魚の混泳は本当に可能なのか?
金魚と熱帯魚・それぞれの生息地
熱帯魚は主に熱帯から亜熱帯アジア、もしくはオーストラリア、ニューギニア、果てはアフリカから南米までと、温暖な気候の土地に幅広く生息する魚です。
かたや金魚は、はるか昔の中国で、フナの突然変異種である赤い個体を池に放して繁殖させたのが起源と言われています。室町時代に日本にやってきた金魚は、日本独自の改良を重ねられて現在の姿になりました。
さて、ここで問題発生です。
亜熱帯アジアと東アジアじゃ全然気候が違いますよね…。同じアジアなのに!
こと、熱帯地方と比べて、日本や中国では寒暖の差が大きすぎます。
「じゃあ、金魚と熱帯魚を一緒に飼うのは無理なのか」と思いきや。
実は可能です。
と言っても、相当飼育条件が絞られてしまいますので、万人向けな飼育方法とは言えないかもしれません。が、アクアリウム中級者から上級者の方であれば、そんなに難しくないかもしれません。
中には「人には言えなかったけど、もうやってみたことがある!」という方もいらっしゃるでしょう。(※この場合、【アロワナの餌として金魚を同じ水槽に放したことがある】という経験談は趣旨が違うため、大変申し訳ありませんが除外させていただきます。何卒ご了承くださいませ。)
金魚と熱帯魚を一緒に飼うことが可能な理由
アクアリウム用のヒーターの普及によって可能
最近ではすっかり定番になっていますが、「金魚用のヒーター」は、金魚を販売していないホームセンターでも購入できます。
金魚用のヒーターの水温設定温度は大抵の商品が最高26℃位です。
熱帯魚用のヒーターは、大体24℃~26℃で固定されているタイプのものが多いです。
金魚用のヒーターを設置するのは何故?
金魚は、冬季の低水温時に消化活動が低下し、消化不良を起こして病気になりやすくなります。また、水温が下がると金魚の動きが悪くなり、水槽の底の方に沈んでいることが多くなります。
そういう事態を防ぐために、最近ではご家庭でも通年ヒーターを置いている金魚水槽が増えてきています。
アクアリウムショップでは、金魚も熱帯魚も、水槽にヒーター付きが定番になっていますよね。むしろ最近では、ショップでヒーターを置いていない金魚水槽の方が珍しいくらいです。
熱帯魚はお察しの通り、22℃~28℃の水温でないと活動力が弱まるばかりか、15℃以下の低水温環境では熱帯魚の生死に関わる事態となりかねません。
ヒーターの使用で水温を一定にすると、金魚と熱帯魚の混泳が可能になる
このヒーターの使用による水温の重なりというものが、金魚と熱帯魚の混泳にとっては大事な部分になります。大雑把に説明すると、金魚と熱帯魚が互いに生活できる水温であれば、「金魚と熱帯魚の混泳」は可能になるという訳です。
☆金魚も熱帯魚も、活動限界の水温は28℃位だと言われています。ちなみに、金魚は水温が35℃以上になると確実にお星さまになりますので、高温すぎる温度設定だけは避けてくださいね。もちろん、水温の重なりだけではなく、水温合わせや水合わせも大事な作業です。
金魚と熱帯魚という全く別の種類の魚同士を仲良く泳がせる3つのポイント
- 水槽に投入する前に、必ず温度合わせを行う
- ゆっくりと水合わせを行う
- 水温を24~26℃に保つ
熱帯魚と金魚の混泳がうまくいっても、その後のメンテナンスはしっかり行うことが大切です。
金魚と熱帯魚を一緒に飼うことのメリットとデメリット
金魚と熱帯魚を一緒に飼育する方法を説明する前に、メリットとデメリットについて、それぞれお話したいと思います。
メリット
- 水槽が華やかになる。
- 金魚が苔を食べてくれる。
- 水槽を一つに纏められる。
メリットの面では、省スペース・省エネがあげられます。低コストで金魚と熱帯魚を一緒に飼えたらご家庭の経済的には少しばかり魅力的ではありませんか?
そして、ちょっとくらいの苔の発生には動じなくて済む水質環境が作れそうですよね。何しろ金魚は苔の豊富な青っぽい水が大好きですから。「金魚の為」と思えば気にならない?
(※気になる人は気になると思います)
我が家でも熱帯魚と金魚を一緒の水槽で飼ったことがあるんですが、和洋折衷な水槽になって大変目の保養になりました。そういう景観の観点からも、メリットはあるでしょう。
デメリット
- 一緒に飼える金魚と熱帯魚の種類や大きさが限られてしまう。
- 熱帯魚用の水草レイアウトに向かない環境になる。
- 水質が悪化する速度が速くなる。
アクアリウムのもう一つの魅力といえば、水草のレイアウトです。金魚と熱帯魚を一緒に飼う場合は、すぐにレイアウトが乱れたり、金魚に水草をかじられたりする場合があることを覚悟しておいてください。固すぎる葉は、金魚の体を傷つける可能性もあります。また、金魚はふんを大量にするので、水質の管理が重要になってきます。
金魚と熱帯魚の混泳に向いている魚の種類
熱帯魚との混泳におすすめな金魚の種類
- 和金
- 琉金
- コメット
全体的にでこぼこの少ない流線型の金魚が好ましいです。出目金やオランダなど、体から飛び出している部分がある金魚は、熱帯魚に突かれやすかったり、水草やレイアウトにぶつかって怪我をする恐れがある為、一緒に飼わない方が無難です。そして、なるべく安くて小さい金魚の方がいいです。あまりに大きい金魚だと、口に入るものは何でも食べてしまうため、小型の熱帯魚の数がいつのまにか少なくなってしまうことがあります。逆に金魚より大きすぎる熱帯魚と一緒に飼うと、金魚の方が食べられてしまうことにもなりかねません。
金魚との混泳におすすめな熱帯魚の種類
- ネオンテトラ
- ラスボラ
- プラティー
- コリドラス
※あくまで小さい金魚との混泳を前提に飼いやすいことで有名な熱帯魚を選んでみました。
コリドラスは、水槽の底の、食べ残しやふんを掃除してくれます。コリドラスに隠れ場所を作ってあげると疲れた時はそこで休むので、金魚との混泳にはおすすめの熱帯魚です。色鮮やかなテトラ(ネオンテトラなど)やプラティーは金魚と一緒に水槽の映えを良くします。ラスボラ(種類豊富なコイ科の熱帯魚)は、パイロットフィッシュと呼ばれるほど水質の変化に強い魚ですし、水槽の差し色としても重宝する存在です。(インテリアにも言えることですが、鮮やか一色で統一するよりも、暗めの差し色があった方が色調が落ち着いて見え、かつ強調したい色味が映えるという効果があったりします)
個人的には、ラスボラの、一見は地味に見えつつも、水質の変化に強い体質や、紫色に光る鱗などがお気に入りです。群れで飼うと、一緒に泳ぎ回る姿が可愛いんですよねー。
余談
金魚と熱帯魚を一緒に泳がせると、熱帯魚に金魚のひれや尻尾を突かれるという話を聞いたことがあるんですが、実際一緒に泳がせてみるとそんなことはなく、むしろ自分よりも小さい熱帯魚を蹴散らす勢いで元気に金魚が泳ぎ回るので、以前はばらけて泳いでいたネオンテトラなどが群れを作って泳ぎ(逃げ?)回るようになっていました。
もしも金魚と熱帯魚を一緒に飼うなら?おすすめの水草について
先に、『熱帯魚用の水草レイアウトは金魚との混泳には向かない』と書いたんですが、
「水槽に水草が無いなんてもったいない!」というか「耐えられない!」というか。
アクアリストの中には、そんな風に感じる方も多いかと思います。
そこでお勧めなのが、金魚用の水草をレイアウトすることです。
金魚と熱帯魚を一緒に飼う時におすすめの水草
- アナカリス
- カボンバ
- その他、柔らかめの水草
自分で使ってみて、一番向いているのはアナカリスだと思いました。熱帯魚用の水槽にも合いますし、金魚の餌にもなります。カボンバもおすすめなんですが、水槽内に葉が散りやすいので、掃除はちょっと大変かもしれません。その他、金魚が通過した時に引っかかって怪我をしないような柔らかめの小さい水草でしたら特にこだわる必要はないでしょう。(ただし、金魚に引っこ抜かれる可能性は大ですが…)
金魚と熱帯魚を一緒に飼う場合に必要なものや注意点
必要なもの
- ヒーター(熱帯魚用の方が熱帯魚の適温に合わせやすいです)
- 塩少々(必ずしも必要ではありませんが、病気の予防のために、水量に対して0.5%の量)
- 餌(金魚用でも熱帯魚用でもどちらでもよいです。バクテリアの活性化成分の入っているものがおすすめ)
注意点
- 金魚が大きくなってきたら別水槽に移してあげる。(金魚と熱帯魚がお互いにストレスなく過ごせる期間は限られています。小さい方の魚に被害が出ないうちに、片方を移動させる方がいいです)
- 水合わせと温度合わせはしっかり行う。
- 水草や流木で隠れ場所を作ってあげる。
- 水温は24℃~26℃位に固定する。
まとめ
結論といたしましては、工夫次第で金魚と熱帯魚を一緒に飼うことは可能だと言えます。
金魚と熱帯魚の混泳は、管理にひと手間かかることが多いため、安易にはお勧めできない方法ですが、金魚と熱帯魚それぞれの個性を一度に楽しむための手段の一つとしては有効な方法です。
ちなみに我が家では数年間、金魚と熱帯魚を一緒の水槽で飼っていましたが、特に問題なく、一緒に泳いでいました。金魚の方が熱帯魚よりも水質の変化に敏感なので、水替えの時は相当慎重に行っていた記憶があります。
金魚も熱帯魚も、どちらも繊細な生き物ですので、出来れば最初は別々の水槽で飼育し、慣れてきたころに「金魚と熱帯魚の混泳」に挑戦してみるのも一興ではないでしょうか?
水槽のプロが所属するサイト運営チームです。
淡水魚・海水魚・水槽設備やレイアウトのことまで、アクアリウムに関する情報を発信していきます!
大変勉強になりました。餌やりの頻度や餌の種類に気をつけることはありますか?
コメントありがとうございます。
大きく育てる場合はこまめに少ない量を1日2回以上与えますが、通常は1日に1回で十分に育ちます。
消化不良を防ぐため、お腹が膨れているときは与えず様子を見るのがおすすめです。
消化が良い餌についてはこちらのコラムもご参照ください。
・消化が良い熱帯魚・メダカ・金魚の餌10選!選び方と買い替えとは
https://t-aquagarden.com/column/good_digestion
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よろしくお願いいたします。