水草水槽は水草の育成期間を踏まえると、完成まで数カ月はかかるものです。
水草が育ってきたら何度もトリミングを繰り返すことで、より美しい水草レイアウト水槽が出来上がりますが、設置当初から迫力ある水草水槽を見たい方も多いのではないでしょうか。
自宅に来客が多い場合は、すぐにでも水草の生い茂った美しい状態にいたいと思うこともあるでしょう。実は1日で迫力ある水草レイアウト水槽を作ることはできます!
しかしそれには水草の選び方からレイアウト技術が大変重要になってきます。
今回は1日で迫力ある水草レイアウト術についてお話していきたいと思います。
1日で完成する水草水槽に必要な道具
まずは1日で迫力のある水草水槽を作るために必要な道具について、お話していきます。どれも基本的なことなので、しっかりとポイントを抑えましょう。
水槽
今回は、横幅450mm×奥行き450mm×高さ500mmのアクリルオーバーフロー水槽を使用しました。
CO2(二酸化炭素)を添加するシステムでないため、オーバーフロー水槽でも問題ありません。
「水草水槽なのになぜCO2を添加しないの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか?
通常は外部フィルターを使用することが多いですが、オーバーフロー水槽では水中のCO2が外に逃げにくいため、水草水槽に適しているろ過方法だからです。
また外部フィルターの場合は、ろ過方法が「生物ろ過」中心ですが、オーバーフロー水槽は外部フィルターよりもろ過槽が広いため、ろ過能力が高くより自然な状態の水を作ることができるという点でも水草水槽に向いているんです。
底砂
ここでは、淡水水槽でおなじみな大磯砂を15キロ程使用しました。
大磯砂はもともとは神奈川県にある「大磯海岸」で採取された砂だったのですが、2019年現在は大磯海岸での砂の採取が禁止されているため、現在は海外の海岸や砂浜で採取されたものが使用されています。
本来の大磯砂と外国産の大磯砂、どちらも成分的には大差ありませんが、現在販売されている外国産の方がやや明るい色をしているという人もいます。
大磯砂は「砂利」なので、汚れたら洗えば何度でも使用することが可能で、メンテナンスが非常に楽なので、アクアリウム初心者にもおすすめできます。
購入直後の大磯砂は細かいかけらや粉末が混ざっているので、使用する前に、必ずよく洗いましょう。
大磯砂や底砂についてはこちらの記事で詳しく解説していますよ。
流木
ここで使用する流木は、「枝流木」というものを使用しました。デザイン性に優れているので水槽だけでなく、部屋のインテリアとして使われることもあるほどです。
枝流木の特徴は、単純に枝ぶりが格好良くそれだけでレイアウトが素敵に見えてきます。
また流木を使用することで、自然な河川や湖の底をイメージする水槽レイアウトが作りやすいです。
流木はホームセンターやアクアショップで購入可能ですし、自分で付近の河川や湖などから拾ってきたものを使用することもできます。
流木は採取直後や購入直後の状態のまま使用すると、水中にアクが出てしまって「ブラックウォーター」になってしまうことが多いです。また病原菌が付着していたり、流木の隙間に寄生虫がいることもあるので、使用前にしっかりとアク抜きをしておきます。
流木のアク抜きについては、こちらの記事で詳しく解説しているので一度目を通しておくことをおすすめします。
自然石
ここでは、自然石を使用しました。
自然石の特徴は、色にあります。
白・青白・灰色などと高級感ある涼しげな色合いをしているものが多いです。
流木と色合いが異なるため、どちらも水槽内ではっきり見えるためおすすめです。
水草
水草は6種類を用意しました。
経験上、丈夫で美しい水草を選抜しました。
- ミクロソリウム
- アヌビアスナナ
- ゴールデンナナ
- テンプルプラント
- バリスネリア・スピラリス
- クリプトコリネ
今回使用した水草はどれも二酸化炭素を必要としない種類なので、アクアリウム初心者でも育てやすいものばかりです。
水草について詳しく知りたい人は、こちらの記事がおすすめです。
ビニールタイ
ビニールタイは園芸用のものなどさまざまなものが販売されていて、収納を作るために使用する人もいます。今ではAmazonなどでネット通販もできますし、普通にホームセンターや100円ショップでも販売しています。
おすすめの色は黒色か茶色いものです。
理由として、流木に巻きつける際に目立ちにくいからです。
1日で完成する水草水槽の基礎づくり
それではここからは、実際に1日で迫力のある水草水槽を作るための、基礎となる部分を作っていく様子を画像を交えながら説明していきましょう。
底砂をならします。
水槽を所定の場所へ設置したら、はじめに砂を敷きます。砂は手前から背面に向かって傾斜をつける様にしましょう。
傾斜を付けることで、奥行き感がグッと強調されレイアウトに深みがでます。
流木・石を配置します
砂を敷き終えたら、流木や石を配置していきます。
配置する上でそれぞれポイントがあります。
流木の置き方
流木は、美しく見せるためのポイントが2つあります。
- 切り口を見せない。
- 観賞面に付けない。
以上2点に気を配りながら、メインとなる一番大きな流木を配置していきます。
流木を置いたら次は石を置いていきます。
石の置き方
流木の傍に石を配置します。
石の役目は、流木が倒れない様支えるための石です。
流木をしっかり固定するよう流木のすぐ脇に添えるように配置していきましょう。
水草活着流木の置き方
今度は、あらかじめ水草を活着させていた水草活着流木を配置します。
はじめに置いた流木と組み合わせることで、組み合わせた複数の流木が一つに見える様配置すると自然に近いレイアウトができます。
添え石の配置
最後に添え石を配置していきます。
石は流木のすぐわきに添えるように配置していくと美しいレイアウトとなるため、流木を置いた後は必要に応じて添え石を配置していくと良いでしょう。
大きい石は後方、小さい石は手間に置くのが良いです。
以上で、基礎づくりは完成です。
次は、この基礎へ水草をレイアウトしていきます。
ソイルを使用したい場合
水草を育てるということから、底砂にソイルを選択する人は多いです。しかし1日で迫力のある水草水槽をレイアウトするには、ソイルは不向きなんです。
ソイルは土を固めたものなので、使用前に洗うことができないため、水槽内に水を入れると濁ってしまいます。また魚やエビ類などの生物によくない成分が流れ出ることもあるんです。
アクアリウム初心者の方は知らないという人が多いのですが、「栄養系ソイルは毒素が強い」傾向にあります。吸着系のソイルの毒素はそれほど強くはないのですが、ソイルを入れてから一ヵ月くらい水を空回しして水槽を作ってから生き物を入れる必要があります。
水草だけならソイルを入れてすぐに植え込むことができますが、やはり水の濁りが1日で収まらないことが多いため、1日で綺麗な水草水槽レイアウトを作るには適さないと言えるでしょう。
1日で完成する水草水槽へ活着水草を配置する
今回の水草は、アヌビアスナナとミクロソリウムという水草を主体とします。
最大の選定理由は、完成直後からボリュームあるレイアウトとなるからです。
水草の他にビニタイとハサミ、小石も用意します。
ビニタイは水中に入れても安定性が高いため、今回使用しています。
もちろんテグスでもよいのですが、ビニタイなら縛る必要がなくひと巻きするだけで固定できるので、手間を省き時短するためにビニタイを選択しました。
綿糸を使用する人もいますが、漂白剤などの薬品がしみ込んでいる場合があります。長時間水中に薬品のしみこんでいる綿糸を入れていると、水中に有害な成分がにじみ出してしまうため、綿糸は使用ないようにしましょう。
はじめにアヌビアスナナの根と葉の隙間にビニタイを通します。
通したら小石を持ち水草と固定しビニタイで結びます。
これを流木の傍へ落としていきます。
流木への活着方法はこちらの記事で詳しく解説していますよ。
石に固定していますので、砂の上でなく流木の隙間など自由にレイアウト可能です。
流木上部へに配置すると簡単にボリュームを出すことができます。
次に、アヌビアスナナより明るいアヌビアスナナ・ゴールデン、最後にミクロソリウムを配置します。
植栽水草を配置する
活着流木を配置したら、最後に水草を植栽していきます。
植栽する水草は、バリスネリア・スピラリスとツーテンプル、クリプトコリネを選定しました。
植栽する水草は、それぞれの特徴や草丈を意識して「前景・中景・後景」を意識していくと完成度が上がりやすいです。
今回のように明るい印象の水草水槽を作りたいのであれば、色の明るい水草を手前に配置するのがポイントとなります。
水草はカラーが豊富でグリーンだけでなく、赤系や茶系などさまざまな色合いのものがあります。色別で選んでも楽しいですが、CO2が必要な種類には気を付けましょう。
隙間をなくすように植栽し、少し水から離れて確認しましょう。
ボリュームが出ていれば水草レイアウトは完成です。
カッコイイ水槽レイアウトを作りたいという人や、水槽レイアウトが初めてという人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
水草にコケが生えた場合の対処法
水槽立ち上げ直後はとても綺麗な状態でも、日にちが経ってくるとどうしてもコケが生えてきてしまいます。水草に生えたコケは人の手で取るのは難しいので、なるべく生き物に処理してもらう方法がおすすめです。
コケを食べてくれる生き物には次のようなものがいます。
- エビ類
- フライングフォックス
- カノコ貝など
ショップではアクアリウム用のコケ抑制剤やコケ除去剤などが市販されていますが、薬品を使用するのは、生物でも処理できないほどコケが成長してしまったときにとどめておきましょう。
何故ならコケ対策用とある薬品でも、水草にも悪い影響が出てしまい、最悪の場合せっかく育てた水草が枯れてしまう可能性があるからです。
コケ対策の生物に関してはこちらの記事で詳しく説明していますよ。
コケの撃退方法としてはコケ抑制剤のほかにも、キッチンハイター、木酢液、また熱帯魚の病気治療薬であるグリーンFゴールドを使用する方法があります。
しかしどの方法も強力なものなので、使用方法に注意する必要があります。
コケの撃退方法についてはこちらの記事をご覧ください。
まとめ:1日で完成する水草水槽レイアウト
1日で迫力ある水草水槽を作る手順について解説しましたが、いかがでしたか?
水草水槽はガーデニングと同じで、本来は植物の成長を待つため完成までに数か月かかることも珍しくありません。
しかしその間放置しているわけでなく、トリミングをしたり、コケ対策などを行っていきます。しかし完成までの数か月間は、どんなハプニングがあるかわかりませんし、水草を上手に管理して理想とする形にすることはアクアリウム初心者には難しいことです。
トリミングで水草が弱って枯れてしまう、水草がコケまみれになって水草水槽をあきらめてしまう人が多いのも事実です。
今回は明日大事な人が家に来ても大丈夫なように、また一時しのぎではなく長期的に管理しやすく美しい水槽を維持できる水草を選定してレイアウトしています。
東京アクアガーデンでは、テレビ撮影やイベントなど多数手がけており、即興レイアウトを作らなければならない場面で編み出した技法です。
今回ご紹介したプロの1日で迫力ある水草水槽が、皆さんのお役に立てること祈っています!
熱帯魚業界歴もうすぐ20年!
海水やアクアテラリウムなど、さまざまな水槽を担当してるアクアリストです。
アクアリウム専門のYouTubeチャンネル『アクアリウム大学』も配信中!
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