淡水魚水槽と海水魚水槽に抱くイメージは大きく異なります。
緑豊かな水草に囲まれ、少し落ち着いた色合いの魚が泳ぐ淡水魚水槽とサンゴの周辺をカラフルな魚が群れる海水魚水槽。一見、水槽内の生体が異なるだけに見えますが、実はあらゆる点が違います。
今回は淡水魚水槽と海水魚水槽の違いとそれぞれの特徴や魅力を解説します。「アクアリウムを始めけたいけれど、どちらが向いているかわからない」という方は参考にしてみてください。
淡水魚水槽と海水魚水槽の違い
淡水魚水槽と海水魚水槽では水質と飼育できる生体が大きく異なります。
そうなると当然ながら、水の作り方や魚の性質も変わってくるので、その特徴を把握しておくと飼育の役に立ちます。
水質が違う
“水質”は淡水魚水槽と海水魚水槽のもっとも大きな違いといっても過言ではありません。
淡水魚水槽の場合は水道水のカルキを抜けばそのまま使うことができます。特に難しいことはなく、カルキ抜きがなくても水道水を数日汲み置きしておくだけでも問題ありません。
一方で海水魚水槽では文字通り“海水”が必要です。海水と聞いて普通の食塩を溶かした塩水と勘違いする人も少なくありませんが、実際のところ海水にはさまざまなミネラルが含まれています。
海水魚を健康的に育てるために必要な成分なので、海水を作る場合は市販されている「海水の素」を使います。カルキを抜いた水道水に溶かして使用しますが、もちろん、海水と同じ濃度に合わせなければならないため、淡水魚水槽より一手間も二手間もかかります。
水換えの度に海水を作る必要があるので、淡水魚水槽と比べると難易度はやや高めです。
飼育できる生体が違う
淡水魚水槽と海水魚水槽では飼育できる生体(魚種)が違います。
淡水魚であればネオンテトラや金魚・メダカなど川や池の生き物、海水魚の場合はカクレクマノミやチョウチョウウオなど海の生き物です。
勘違いされることもありますが、淡水魚と海水魚は混泳できません。それは、淡水魚と海水魚では浸透圧を調整する機能が異なるためです。
淡水魚は生息している水よりも体の濃度が濃いので、水分が体内に入ってきます。人でも水に手をつけているとふやけますよね。それと同じですが、淡水魚の場合は水から出るわけにはいかないため、大量の尿として体外に排出することで調節しています。
一方で、海水魚の場合は海水のほうが濃いので、体の水分を保つために多くの水を取り込み、少量を排出しなければなりません。
そのため、淡水魚を海水に入れると体の水分が抜けてしまい、海水魚を淡水に入れるとふやけて死んでしまいます。間違っても混泳させないようにしましょう。
淡水と海水、それぞれの魅力!
淡水魚水槽と海水魚水槽の特徴を解説しましたが、ここからはそれぞれの魅力をご紹介します。
魚種だけでなく水草やサンゴ、レイアウトについても触れますので、新たな分野に挑戦してみたい方も参考にしてみてください。
淡水:飼育できる魚種が多い!
淡水魚水槽は流通している熱帯魚の種類が非常に多いので、お好みの品種を見つけ飼育することができます。
飼いやすい魚種も多く、初心者の方や設備をそろえられない人でも選択肢が多いのは嬉しい点ではないでしょうか。
一方でレアな魚種の幅も広いため、突き詰めて楽しめるのも大きな魅力といえます。ベタやメダカなど、品種改良も盛んでマニア心をくすぐる奇抜な品種もたくさん作出されています。
また、飼育器具が多く発売されているのもアクアリストにとっては有難いです。
淡水:水草を楽しめる
水草を楽しめることは淡水魚水槽の大きな魅力です。
水草は手を加えれば加えるほど、水槽を美しく彩ることができます。青々としげる水草の間を行き来する熱帯魚はきれいでとても癒されます。
水草水槽に魅了される人は多く、水草レイアウトの美しさを競うコンテストも開催されるほどです。水草は淡水魚水槽の醍醐味と言っても過言ではありません。
海水では海藻を育てることもできますが、維持が大変ですし、飼育できる種類が水草のように多いわけではありません。
海水:生体が色鮮やか!
海水魚水槽では、色鮮やかな海水魚を楽しめます。
海水魚は淡水魚よりもカラフルで際立った色をしている生体が多いです。カクレクマノミやナンヨウハギを始め、黄色と黒の体色が美しいチョウチョウウオ、奇抜なカラーリングのヤッコやニシキテグリなど、カラーバリエーションの豊富さは海水魚ならでは。
それぞれが上手くなじむと非常に華やかな満足度の高い水槽になります。
海水:サンゴでラグジュアリーなレイアウト
サンゴの飼育・観賞は、敷居が高く感じられますが、ゆらめき光る様子は他では味わえない美しさです。
ライブロックと合わせることで、南国の海を切り取ったような幻想的な光景を自宅で楽しむことができます。サンゴは種類が豊富で、難易度もさまざま。専門性が高く、のめり込んでしまう人も少なくありません。
淡水魚水槽の水草に負けずとも劣らない魅力があります。
汽水魚水槽はどちらに分類されるの?
自然下では河川の淡水と海の海水が混じり合う場所があり、このような水域を“汽水域”と呼びます。
そこに生息する汽水魚はアクアリウム業界としては、淡水魚と海水魚の中間のような位置づけです。代表的な魚種はミドリフグやヒメツバメウオ、トビハゼなどで、浸透圧を調節することによって淡水・海水どちらにも順応できます。環境変化の大きい環境に暮らしていることもあって、飼育自体は難しくありません。
また、一般的に淡水よりも海水のほうが長生きする傾向があるので、海水の素で薄めの海水を作ってあげると良いでしょう。濃度調整が難しい場合は海水の素ならぬ汽水の素も販売されているので、試してみてください。
ちなみに、汽水は濃度の調整など、均一な水質を維持するのが難しいです。最終的には淡水か海水のどちらかに振り切ったほうが、飼育しやすく健康に育てやすいです。
まとめ:淡水魚水槽と海水魚水槽の違いとは?特徴とそれぞれの魅力を解説します!
淡水魚水槽と海水魚水槽では、特徴も違えば魅力も異なります。
どちらが優れている、というわけではなく挑戦してみたい水槽を選んでみてください。魚種で選んでも良いですし、水草やサンゴを飼育してみたいという理由でもかまいません。
熱意を持って取り組める水槽を選ぶのが末永く楽しむ秘訣です。
トロピカライターの高橋風帆です。
アクアリウム歴20年以上。飼育しているアーモンドスネークヘッドは10年来の相棒です。
魚類の生息環境調査をしておりまして、仕事で魚類調査、プライべートでアクアリウム&生き物探しと生き物中心の毎日を送っています。