化学肥料を使わずに作られた食材のことを、オーガニックフードと呼びます。皆さんも一度は食べたり、手にしたことがあるのではないでしょうか?
実は近年、農薬や着色料を一切使用していないオーガニックな餌が、アクアリウム界にも登場するようになってきました。
自然下に生息する魚たちは本来、周囲をただようプランクトンや藻類、他の小魚などを餌にして生きています。
飼育している魚にオーガニックな餌を与えれば、より自然に近い形で魚の健康や成長をサポートできそうですよね。
今回は魚の健康を第一に考えたオーガニックフードや、魚の食物連鎖を農業に活用したアクアポニックスについてご紹介していきます。
アクアリウムでもオーガニック製品はある!
わたしたちが普段口にする食材の中で化学肥料を使わずに作られたものを「オーガニック」と呼んだりしますよね。
実はアクアリウムで使う魚の餌にも、オーガニックなものが存在するのです。
とはいえ、アクアリウムで使うオーガニックは、本来の「有機栽培」という意味とは若干異なります。
まずはオーガニックの考え方や、その特徴について確認していきましょう。
そもそもオーガニックって?
オーガニックとは化学農薬や遺伝子組み換えなど人工的な技術に頼らず、その土地の自然の恵み(水や土、陽の光など)をふんだんに生かした栽培方法のことを指します。
ただし、熱帯魚の餌に対して使うオーガニックという言葉には、「天然由来成分が高いもの」という意味も込められています。
もちろん人工的な防腐剤や着色料を添加していないことも、オーガニックの餌として重要な要素です。
後ほど詳しくご紹介しますが、魚の食物連鎖を生かして野菜を栽培するアクアポニックスや、植物性プランクトンが豊富なグリーンウォーターでメダカを育てる飼育方法なども、オーガニックなアクアリウムの楽しみ方と言えます。
天然由来成分が多い
先ほど軽く触れたように、天然由来成分が多く含まれる餌はオーガニックと呼ばれる傾向にあります。
しかし中にはゼンスイのNYOS Fish Foodシリーズなど、無農薬・遺伝子組み換えでない素材を使った、BIO規格を意識している商品も増えてきました。
BIO規格とはヨーロッパで厳しく定められた、有機農業規則のことです。
オーガニックな餌は小麦が含まれていることもあり、動物食性が強い魚にとってはやや消化しづらいという面はありますが、素材に安心感がありますよね。
オーガニックにアクアリウムを楽しむ
続いては、生体の飼育そのものをオーガニックに楽しむ方法をご紹介していきます。
- 天然由来の餌や調整剤
- アクアポニックスで無農薬野菜を育てる
- リフジウム水槽
- 青水飼育
- 生餌を自家培養
これら5つの項目に分けて解説していきますので、生体に優しいオーガニックな水槽を目指している方はしっかりと確認しておきましょう!
天然由来の餌・調整剤
天然由来の餌はもちろん、そうした成分をベースに作られたpH調整剤を使用することも、オーガニックな楽しみ方のひとつです。
ゼンスイのNYOS Fish FoodシリーズはBIO規格に合格した海水魚用のオーガニックフードです。海水魚は淡水魚に比べてワイルド(野生種)の割合が高いため、よりナチュラルな品質なら安心できますね。
BIOBIZZ(バイオビズ)のpH調整剤は、天然素材から収穫されたフミン酸や柑橘類に含まれるクエン酸をベースに作られています。
自然に近い方法でpHを調節することができるので、水槽の生体だけでなく植物にも影響が少ないというのが嬉しいですよね。
アクアポニックスで無農薬野菜を育てる
水槽内で有害とされるアンモニアや亜硝酸などは、植物にとって大切な肥料となります。
この関係性を利用して生まれたのが、野菜や植物の水耕栽培と水産養殖(アクアカルチャー)を組み合わせたアクアポニックスです。
魚の排泄物をバクテリアが分解し、それを植物が栄養として吸収。
植物によって浄化された水分が水槽内に戻るといったサイクルを繰り返すため、水換えがほとんど不要なのも注目したいポイントですね。
最近ではアクアポニックスをご家庭でも気軽に楽しめるキットが販売されていますが、これはまさに、オーガニックの基本を捉えたアクアリウムの楽しみ方と言えます。
アクアポニックスで使用する魚の餌には特に決まりはありませんが、せっかくならオーガニックフードを使って、完全にオーガニックなアクアリウムを楽しんでみるのはいかがですか?
リフジウム水槽
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=UqWvfwAKGG4&w=560&h=315]
配管やポンプで連結した2つの水槽のうち、1つは海藻やプランクトンの育成に当て、生体を飼育するメイン水槽の水質を自然に近いかたちで浄化する仕組み。
これを、リフジウム水槽と言います。
メイン水槽で発生した有害成分がサブ水槽のプランクトンによって分解・吸収されるため、薬剤を使わずに水質を維持できるのが特徴です。
リフジウム水槽を作るのに必要な機材やおすすめの海藻類については以下の記事で詳しく解説していますので、ご覧になってみてくださいね。
青水飼育
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=A1nFVpufXjQ&w=560&h=315]
植物性プランクトンをメダカや金魚の餌にして育てる青水(グリーンウォーター)飼育も、オーガニックと言って良いでしょう。
生体から出た有害物質はプランクトンが吸収しますので、水換え頻度が少なくて済みます。
メダカの針子など小さな生体にとって植物性プランクトンは最適な餌ですし、太陽光や水槽用ライトの光があれば、プランクトンの光合成によって酸素供給することも可能です。
青水の作り方やメリット・デメリットについては以下の記事でご紹介していますので、是非参考にしてください。
生餌を自家培養
先ほどの青水を利用して活餌を自家培養することも、オーガニックな育て方ですね。
アロワナやシクリッドなど肉食性の魚を飼育している方の中には、こうして生体の餌を確保している人も大勢いらっしゃいます。
ただし、必要な栄養素をしっかりとたくわえた病気のない生餌を確保しておくには、それなりの腕前が必要です。
生餌を繁殖させる環境や技術も必要なので、難易度は高いと言えます。
まとめ:アクアリウムとオーガニック!健康志向の餌からアクアポニックスまで解説
オーガニックという言葉を聞くと「有機栽培された食材や、化学物質を使用していない天然素材」というイメージをもつ方が多いと思います。
それももちろん間違いではありませんが、オーガニックな考え方の根底には「食物連鎖の流れに逆らわず、自然と共存する」という目的があるのです。
そしてこの考え方は、アクアリウムにも応用することができます。
オーガニックな餌やアクアポニックス、青水飼育など…
オーガニックなアクアリウムの楽しみ方は、数多く存在します。
皆さんもご自宅のアクアリウムに少しだけでもオーガニックな考え方を取り入れて、魚の健康をより自然な形でサポートしてみてくださいね。
トロピカライターの井上あゆみです。
金魚から熱帯魚・海水魚まで、全部で20種類程度のお魚を飼育してきました。
お気に入りはイエローヘッド・ジョーフィッシュ。怒ったような顔をしているのに、実はかなり臆病というなかなか憎めない海水魚です。アクアリウム初心者の方でも楽しく読めるような記事を書いていくので、よろしくお願い致します!