プランクトンといえば、海や河川などの自然環境にいるイメージが強いですが、水槽や飼育容器にも発生することをご存知でしょうか?
微生物なので目に見えないことが多いものの、植物プランクトンや動物プランクトンは水槽の中にも自然に発生する生き物です。また、プランクトンの元を購入してきて水槽に入れることで人工的に増やすことも可能で、稚魚や、餌付けが難しい魚の餌として活用されています。
ただ、プランクトンによって良し悪しがあるので、活用する前にしっかり種類を見定めることが大切です。
ここでは、アクアリウムでよく見かける植物・動物プランクトンの種類とメリット、育て方をご紹介します。
水槽のプランクトンとは
プランクトンとは、水中を漂う浮遊生物の総称で、藻類などの植物プランクトンとミジンコのような動物プランクトンの2種類に分けることができます。
植物プランクトンは水と光、養分などの条件がそろうと増えていきます。陸上の植物や水草と同じように光合成して、水中に酸素を供給する点も特徴です。
動物プランクトンは、植物プランクトンが増えだすと自然と発生し増殖していきます。
自然界では、植物プランクトンが発生・増殖→植物プランクトンを餌に動物プランクトンが発生・増殖という流れがありますが、これは水槽でも同じです。
水槽は自然界の循環を再現する装置なので、照明時間や水中の栄養といった環境にもよりますが、基本的には運用を続けていれば自然とプランクトンは増えていきます。
植物プランクトン:アクアリウムでよく見かける種類
ここからは、アクアリウムでよく見かける植物プランクトンの種類をご紹介します。
植物プランクトンは魚の餌になると思われていますが、中には日照不足や酸欠を引き起こすような、水槽に悪影響を与えるものもあるため、種類を把握してから利用するようにしましょう。
グリーンウォーター
グリーンウォーターは、青水(あおみず)とも呼ばれる植物プランクトンが豊富に繁殖した水の総称です。
メダカや金魚を屋外で飼育していると、たまに水が緑色になることがありますが、これがまさにグリーンウォーターです。太陽光がよく当たる環境に水槽を置いておくことで、植物プランクトンが増殖して水がうっすらと緑色に染まります。
グリーンウォーターの元となる植物プランクトンは複数あり、
- 緑藻や珪藻
- クロレラ
- ミドリムシ
- ボルボックス
といった種類が有名です。どれも豊富な栄養が含まれていて、稚魚の良い餌になるため、金魚やメダカ、熱帯魚などの飼育に幅広く利用されます。
メダカや金魚の色揚げにも効果的です。
珪藻
珪藻(けいそう)は、淡水、海水関係なく様々な環境に生息する植物プランクトンです。
水中を漂っていたり、コケとして物に張り付いていたりすることもあります。グリーンウォーターの主成分なので、水中を漂うものはあえて除去せずに、メダカや金魚の稚魚の良い餌として利用することも可能です。
一方で、水槽面に付着したものは茶コケとして掃除の対象になります。オトシンクルスや石巻貝などは、コケとして成長した珪藻を食べてくれる嬉しい存在です。
アオコ
アオコは、シアノバクテリアが繁殖した状態を指します。
シアノバクテリアは藍藻(らんそう)とも呼ばれますが、細菌の仲間です。アオコは植物プランクトンのなかでも有害なもので、水面を覆うことで日照不足になったり、酸素を消費して酸欠を引き起こしたりなど魚に悪影響を与えます。
それだけはでなく毒素を産生するため、アクアリウムでは嫌われる存在です。
アオコが発生すると水が緑色になるため、グリーンウォーターと見間違えられることがありますが、まったくの別物。アオコは水がドロッとしていて不快な臭いがするので、特徴を知っていれば見分けることが可能です。
アオコは定期的に水換えを行ってきれいな水質を保つことで発生を防ぐことができます。もし発生してしまったときは、アオコ除去剤や『グリーンFゴールド顆粒』、『殺菌灯』で退治しましょう。
薬剤を使う場合は、生体に異変がないか十分に気を配ってください。また、薬剤はアオコだけでなく水草も枯らしてしまう可能性がありますので、水草を維持したいときには殺菌灯での除去をおすすめします。
動物プランクトン:アクアリウムでよく見かける種類
アクアリウムでは、植物プランクトンだけでなく動物プランクトンもよく利用されます。
動物プランクトンは少し大きくなった稚魚の餌に最適です。メダカや熱帯魚の繁殖をお考えの際は、ご紹介する動物プランクトンをぜひ活用してみてください。
インフゾリア、ゾウリムシ
インフゾリアは微生物の総称で、アクアリウムでは主に『ゾウリムシ』のことを指します。ミジンコよりも小さく0.1mmほどの大きさで、口の小さな稚魚の餌としておなじみの微生物です。
インフゾリアは特別なものではなく、水槽のいたるところに自然に存在しています。
熱帯魚を観察しているとたまに砂利などをつつく仕草を見せますが、これは水中に潜むこうした微生物を食べているケースが多いです。
ミジンコ
ミジンコは、田んぼなどの身近な水辺でもよく見かける動物プランクトンです。
甲殻類の仲間で、いくつかある種類のなかでも比較的殻が柔らかい『タマミジンコ』が稚魚の餌として利用されます。繁殖しやすいうえに栄養価が高いため、稚魚の餌だけでなく成魚の増体目的で与えられることも少なくありません。
ミジンコは自宅で飼育し増やすことも可能です。植物プランクトンを餌とするので、グリーンウォーターで飼育すると管理がしやすくなります。
コペポーダ
コペポーダは海水に生息する動物プランクトンで、ミジンコと同じ小さな甲殻類です。
- マンダリンフィッシュ
- チョウチョウウオ
- タツノオトシゴ
- サンゴ
など、餌付けが難しい海水魚の餌として人気があります。プランクトンですが、ミジンコなどとは違い、冷凍もしくは、乾燥状態のものがよく流通しており、どちらかといえばアカムシなどの生餌に近いイメージです。
一つ一つの大きさが小さいので、小型魚の稚魚の餌にもおすすめ。海の動物プランクトンですが栄養価と嗜好性が高いことから、メダカやベタの稚魚に与えられることもあります。
プランクトンのメリット
プランクトンをアクアリウムに活用するメリットは次の2つです。
- 稚魚の育成に最適
- 飼育が難しい魚種の餌になる
栄養が豊富なプランクトンは、魚の生存率が上がることもあるので、メリットを踏まえて積極的に与えていきたい餌といえます。
稚魚の育成に最適
最小の餌ともいえるプランクトンは、生まれたばかりの稚魚に最適です。人口飼料では大きく食べづらい場合でも、プランクトンであれば口にできることも少なくありません。
また、稚魚は成長にエネルギーを使うため、成魚に比べてこまめに餌を食べ続ける必要があります。水中にプランクトンがいれば、いつでも好きな時に餌を食べれる状態なので、稚魚の成長に一役買ってくれることでしょう。
餌を選り好みする稚魚でも、プランクトンであれば積極的に食べることが多いです。生き餌でもあるので、動くことで稚魚の興味を引くのも特徴です。
稚魚は餓死しやすいため、プランクトンを与えることで生存率が上がることもあります。
飼育が難しい魚種の餌になる
海水魚やサンゴのなかには、プランクトンを好んで食べる種類がいます。
コペポーダなどのプランクトンがなければ餌付けできなかったり、うまく育たなかったりするケースも多いです。
プランクトンを利用することで、飼育できる魚種がグッと増えるのは、プランクトンの大きなメリットといえるでしょう。
プランクトンを自宅で育てる方法
プランクトンは大掛かりな設備がなくても自宅で育てることが可能です。
魚の餌としてプランクトンを管理したい場合におすすめの方法をご紹介します。
ビオトープならグリーンウォーターからミジンコ飼育にステップアップが可能
屋外で魚を飼育するビオトープは、グリーンウォーターを作りやすい環境です。また、そこからミジンコ飼育にステップアップしていくことができます。
これは、日光が当たることで植物プランクトンが増えやすいのが大きな要因です。
まずはグリーンウォーター作りについて。植物プランクトンは自然に増えますが、確実に作りたいときは、市販のクロレラなどを入れると短時間でグリーンウォーターになります。
グリーンウォーターができたら、それを餌に動物プランクトンを育成します。
グリーンウォーターを別容器に取り分け、ミジンコなどの動物プランクトンを投入します。タマミジンコは田んぼなどでも入手できますが、手間がかかるので市販されているものを入手して増やす方が簡単です。
またこのとき、ビオトープに直接動物プランクトンを入れてしまうと、水中の植物プランクトンがあっという間に食べられて濃度が薄まってしまいますので注意してください。
動物プランクトン育成用の容器を用意し、そこに定期的にグリーンウォーターを追加しながら管理していく方法がおすすめです。
グリーンウォーターは濃度がとても大切で、濃すぎても薄すぎても良くありません。空のペットボトルにストックしておき、注ぎ足しながら管理していくと、理想の状態を保ちやすくなります。
海水水槽ならリフジウムを構築しよう
海水水槽の場合は、リフジウムにすることでプランクトンを育てられます。
リフジウムは、飼育水槽とは別に海藻を育てるリフジウム水槽を作って連結することで、自然環境に近い形でろ過する仕組みです。
海藻を安定して育成するために照明を24時間点灯する必要はありますが、自然に近い形でプランクトンを繁殖できます。
リフジウム水槽はオーダーメイドがおすすめ
リフジウムは、飼育水槽の上部にリフジウム水槽を設置するため、配管や仕様が特殊になります。
個人でリフジウム水槽の設置が難しい場合は、オーダーメイドでの制作がおすすめです。
まとめ:水槽のプランクトンとは?植物・動物プランクトンのメリットと育て方
今回は、アクアリウムでよく見かける植物・動物プランクトンの種類とメリット、育て方をご紹介しました。
プランクトンは、とても小さいので、メダカや金魚、熱帯魚など、魚全般の稚魚の餌として重宝します。また、プランクトンを好んで食べる海水魚やサンゴの飼育をサポートできるため、餌として利用することでアクアリウムの幅が広がるのも嬉しい点です。
淡水であればビオトープなどの屋外飼育、海水の場合はリフジウムにすることでプランクトンを育てられるので、飼育したい生体の育成にプランクトンが効果的な場合には役立ててみてください。
トロピカライターの高橋風帆です。
アクアリウム歴20年以上。飼育しているアーモンドスネークヘッドは10年来の相棒です。
魚類の生息環境調査をしておりまして、仕事で魚類調査、プライべートでアクアリウム&生き物探しと生き物中心の毎日を送っています。