カエルは童謡や童話に登場したり、国と地域によっては食用になったりと、古くから私たちにとって身近な生物です。万人受けするペットではないものの、人によっては仕草に可愛らしさ感じたり、色鮮やかな体色や模様に観賞価値を見出す人もいます。
一口にカエルと言っても、数多くの種類が存在し、その生態も多岐に渡ります。ここでは、ニホンアマガエルをはじめとする「ツリーフロッグ」と呼ばれる種類に焦点を当て、その飼育法などをご紹介します。
カエルとはどのような生物か?
特徴
カエルは両生網無尾目に属する生物の総称です。2019年現在、同グループに分類されている種類は約7000種にも上り、両生類全体の約88%を占めています。その生息域も多岐に渡り、水中から樹上まで様々な場所で生活しています。
生活圏によって身体的特徴は微妙に異なりますが、共通するのは頭部が三角形で、丸みを帯びた胴部を持ち、尾は持たないことです。それから、前足の指の数は4本なのに対して、後ろ足には5本の指があります。
生活圏による身体的特徴が最も現れるのが両足です。
樹上で生活する種類は上り下りしやすいよう吸盤が、陸上で生活する種類は土を掘りやすいように爪が、水中で生活する種類は泳ぎやすいように水かきが付いている傾向にあります。
周囲の気温に連動して体温が変化する変温動物なので、極端な暑さ・寒さには弱いです。
呼吸は皮膚呼吸と肺呼吸で行っており、皮膚呼吸が占める割合は3~5割程度です。また、体表が湿っていないと皮膚呼吸ができないので、乾燥を嫌います。繁殖形態は卵生で、「オタマジャクシ」と呼ばれる幼生を経て、カエルへと変態します。
種類
ここでは、ツリーフロッグと呼ばれる樹上生活をしているカエルの主な種類をご紹介します。
ニホンアマガエル
日本全国に生息している国内では代表的なカエルで、体長は3~4cm程度です。周囲の環境に応じて体色を変化させることができ、緑色から褐色をしています。鼻から目の後ろ側にかけて黒色の線がはっきりと入ることが特徴です。樹上での生活に適応しており、指先には吸盤が付いています。
イエアメガエル
オーストラリアやニュージーランドに生息しているアマガエルの仲間で、体長10cm前後に達する大型のカエルです。体色は緑色から褐色で周囲の環境により変化させられます。人馴れしやすいカエルなので、ペットとして人気がある種類です。
アカメアマガエル
パナマやメキシコなど中米に生息しているアマガエルの仲間です。体色は緑色が基調ですが、わき腹に黄色と青色の模様が入り、足の裏側は橙色をしています。また、名前の通り目は真っ赤で、非常に派手な色合いが特徴です。体長は5~8cmほどで、欧米を中心にペットとして人気がある種類です。
クツワアメガエル
オーストラリア北東部からニューギニア島、ビスマルク諸島にかけて分布しているカエルで、体長は14cmほどに達します。体色は緑色から灰褐色で、周囲の環境により変化します。口の周りが白色に縁どられていることが特徴で、イエアメガエルと並ぶ人気の種類です。
モリアオガエル
本州と佐渡島に生息している日本固有種で、体長は7~8cm前後です。体色は個体差が大きく、緑一色のものもいれば背中側に褐色の斑点が入る個体もいます。そして、虹彩と呼ばれる目の周囲が赤みを帯びるのが特徴です。
モリアオガエルは普通に販売されていますが、都道府県によっては絶滅が危惧されています。入手した際は大事に飼育しましょう。
カエル飼育に必要な器具
カエルの飼育には、主に以下の器具が必要です。
- 水槽
- フタ・網
- 床材
- 水入れ
- 霧吹き
- 流木、観葉植物
- ヒーター
- 餌(コオロギなど)
これらの器具類について、以下で詳しく説明します。
カエルの飼育についてはコチラの記事も参考にしてください。
水槽・フタ
カエルを飼育するための容器はプラケースなどでも代用できますが、後述する湿度管理の面から爬虫類の飼育ケージの使用をおすすめします。カエルの中でもツリーフロッグの飼育では水槽の高さが重要になります。
高さの目安としては、ニホンアマガエルなどの体長3~4cmほどの種類で30cm、イエアメガエルなど体長が10cm前後に達する種類で45cm程度です。また、ツリーフロッグは手足に吸盤を持ち、垂直な内壁も軽々と登ってしまうので、脱走防止のためにフタは必須です。
フタは軽く乗せただけではこじ開けられてしまうので、重しをするなりしてしっかりと固定してください。
爬虫類と水槽についてはコチラの記事も参考にしてください。
床材
ツリーフロッグの床材は「パームマット」がおすすめです。パームマットを水槽に入れて湿らせておけば、湿度の管理が容易になるからです。
ツリーフロッグの飼育において床材を導入する理由は、湿度管理のためなので、小まめに霧吹きなどで水分を供給できるのであれば、何も敷かなくても飼育は可能です。
水入れ
水入れはカエルの飲み水を入れたり、体の乾燥を防ぐために導入します。しかし、主に樹上で生活しているツリーフロッグは泳ぎが下手な種類が多いので、深い容器を使用すると溺れてしまう危険があります。
そのため、水入れはカエルが水に浸かれる程度の浅い容器を使用してください。また、使用する水は塩素が入ったままの水道水だと、カエルに悪影響を与える可能性があるので、1晩以上汲み置きをしたり煮沸するなどして、カルキ抜きを行ってから使用してください。
カルキ抜きについてはコチラの記事も参考にしてください。
ヒーター
カエルは変温動物なので、気温が下がってくると活動が鈍り、やがて冬眠してしまいます。飼育下での冬眠は管理が難しいので、年間を通してカエルが活動しやすい温度に保つことをおすすめします。
温度の管理はヒーターで行うことが一般的ですが、小動物や爬虫類用の局所的に温めるタイプのヒーターは暖が取れる場所が乾燥しやすいので、カエルの飼育には向きません。ヒーターはパネル式などの水槽全体を温められるものを用意してください。
ヒーターについてはコチラの記事も参考にしてください。
カエルの飼育法
温度
カエルの飼育に理想的な温度は、種類によって若干異なりますが20~25℃前後です。低温では冬眠してしまうので、冬場はヒーターを用いて加温した方が良いでしょう。日本の冬は乾燥しやすく、ヒーターを用いるとさらに顕著になるので、湿度の管理には注意してください。
湿度
カエルの飼育では、湿度の管理は重要であると同時に難しい点であると言えます。カエルにとって理想的な環境は湿度70%前後と言われていますが、野生下では日光浴をすることもあるので、常に多湿状態でも問題です。
こればかりはカエルの様子を見ながら調節する必要があります。水入れの水に浸かっている時間が長い時や、湿った床材の近くでじっとしているような時は乾燥しすぎなので、霧吹きで水分を供給してあげましょう。
餌
種類
カエルは基本的には動いているものしか餌として認識しない肉食性の生物なので、餌は活餌を用意する必要があります。
餌の種類としては、ハエやガ、ワラジムシやカなどの昆虫類が挙げられますが、採取したり繁殖させて用意するのは気が引ける方もいると思います。
餌を最も簡単に用意する方法は、熱帯魚用に販売されているコオロギなどを購入することです。体長3~4cm程度のカエルには「ヨーロッパイエコオロギ」、体長10cm前後に達するカエルには「フタホシコオロギ」がおすすめです。
与え方
ツリーフロッグはそれほど多くのエサを必要とはしないため、ニホンアマガエルの場合であれば、ヨーロッパイエコオロギを1日に1匹与えれば十分です。また、間隔が大きく開かなければ毎日給餌する必要もなく、2~3日おきに2~3匹を与えるような方法でも問題ありません。
レイアウトについて
ツリーフロッグは樹上で生活しているので、水槽内には流木などを縦に配置して、上り下りができるようにしてあげましょう。また、生きた植物があるとストレスの少ない環境にできます。
湿度管理の観点から直射日光を当てることは避けたいので、導入する植物は陰性の観葉植物がおすすめです。例としては、「ポトス」や「スパティフィラム」などが挙げられます。水槽内に土を入れて直接植えてしまうとメンテナンス性が悪化するので、小鉢などに植えた状態で導入すると良いでしょう。
陰性の植物についてはコチラの記事も参考にしてください。
メンテナンスについて
メンテナンスの内容は掃除と、水やり、床材を使用している場合は床材の交換です。流木や観葉植物などはカエルの排せつ物で日々汚れていきます。特に、観葉植物は排せつ物で汚れると枯れてしまうので、週に1回は表面の汚れを落としてあげましょう。
また、床材のパームマットなども排せつ物や食べカスなどで汚れていくので、月に1回前後の頻度で交換してください。その際、水槽も洗浄しておくと良いでしょう。
それから、水入れの水はカエルの飲み水にもなるので、毎日交換してあげてください。
流木・観葉植物についてはコチラの記事も参考にしてください。
カエル飼育における注意点
カエルの毒に注意
ツリーフロッグの多くは、表皮から毒を出しています。ほとんどの種類の毒は、人が触れたくらいでは影響がないほど弱いものですが、目や傷口に入ると危険です。カエルに触れた後には、必ず手を洗って毒を落としてください。
夏場の温度管理について
カエルは高温には比較的強いのですが、30℃を超えるような気温が続くと危険です。夏場に気温が30℃を超えるようであれば、水槽を日の当たらない冷暗所に移動させたり、エアコンが効いた屋内に設置するなどの対策を行ってください。
夏場の温度管理についてはコチラの記事も参考にしてください。
まとめ・カエルの飼育方法について
カエルはモチーフとしたキャラクターも存在するなど、私たちにとって身近な生物です。実物は万人受けするわけではありませんが、ペットショップなどでカエルの需要が絶えないということは、それだけ魅力的な生物であることの証しと言えます。
維持費もあまりかからない生物なので、何かペットを飼いたいとお考えの方は、カエルの飼育にチャレンジしてはいかがでしょうか。
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