スズメダイはマリンアクアリウムにおいて、最もポピュラーな海水魚の1つです。安価かつ丈夫で飼育しやすく、小型で色鮮やな種類が多ので鑑賞性も高く、マリンアクアリウムの入門種としても最適です。
しかしながら、一般的に縄張り意識が強いので、混泳については注意が必要な魚種でもあります。ここでは、スズメダイについて混泳しやすい種類や、飼育方法などをご紹介します。
アクアリウムにおけるスズメダイについて
スズメダイはスズキ目スズメダイ科に分類される海水魚を指し、2019年2月現在で約400もの種類が知られています。
実は、アクアリウムで人気があるクマノミ類もクマノミ亜科としてスズメダイ科に分類されていますが、本稿で紹介するのはその他の「スズメダイ」として扱われている種類です。
スズメダイは世界中の温帯から熱帯の比較的浅い海に生息しており、日本の近海では約100種類が確認されています。アクアリウムでよく飼育されるスズメダイとしては、「デバスズメダイ」や「ルリスズメダイ」などの色鮮やかで鑑賞性が高い種類が多く、体長10cmに満たない小型種が中心です。
食性は雑食性のものが多く、自然環境下では藻類や動物プランクトンなどを捕食しています。スズメダイは小型ながらも縄張り意識が強い種類が多いので、混泳には注意が必要です。
混泳させやすいおすすめの種類
前述しましたがスズメダイは縄張り意識が強く、種類によっては他の魚と激しく争います。ここでは、混泳させやすいスズメダイの種類についてご紹介します。
デバスズメダイ
本種はマリンアクアリウムにおいては、定番中の定番と言っても過言でないほどポピュラーな種類で、スズメダイの飼育だけでなくマリンアクアリウムの入門種としても最適です。
丈夫で安価なことからパイロットフィッシュとしても適しており、性格も温厚なので混泳相性も良いです。むしろ自然環境下では群れを作ることで身を守っているので、複数で飼育してあげた方が落ち着きます。
体長は8cmほどで、体色は緑色を帯びたライトブルーが美しく鑑賞性も高いので、デバスズメダイを群永させるだけでも見応えのあるアクアリウムに仕上がります。
スプリンガーズダムセル
体長5cmほどとスズメダイの仲間では最小クラスで、濃青色の体色を基調に不規則な黒色の模様が入る奇麗な種類です。
この種もスズメダイの中では珍しく温和な性格で、混泳相性は良い方です。しかし、ライブロックを中心に縄張りを主張することがあり、同じような生態を持つ「ロイヤル・グランマ」などとは小競り合いをすることがあるので注意してください。
逆に言うと自身のテリトリーに干渉しない生物には無関心なので、そのような魚種とは問題なく混泳できます。
コバルトスズメダイ
コバルトスズメダイはルリスズメダイの別名です。ルリスズメダイはオスとメスで尾ビレの色などに違いがあり、過去に別種として考えられていた名残で、現在でもコバルトスズメダイの名で販売されていることがあります。
コバルトスズメダイは雌性先熟の繁殖形態を持っており、小さい頃は全てメスで大きく成長するとオスに性転換します。小さいメスの間は比較的おとなしく、小型魚と混泳もしやすいです。
しかし、成長すると大型魚に気後れしないほどに気性が荒くなり、自身の縄張りに近づく小型魚は排除しようと攻撃します。そのため、成長したら小型魚との混泳は避け、大型ヤッコやニザダイなどのタンクメイトにすると良いでしょう。
体長は8cm程度で、体色は鮮やかなコバルトブルーをしています。丈夫かつ安価なので、成長による性格の変化を除けば飼育自体は容易です。
オヤビッチャ
同種は最大で20cmほどに達する大型のスズメダイで、白色から灰色の体色を基調に黒色の横縞が5本入り、背中側が黄色を帯びることが特徴です。
同種も安価かつ丈夫なので飼育自体は容易ですが、大型でやや気性が荒いので小型魚ではなく温和な大型魚と混泳させやすい種類です。特に、同種や近縁種とは喧嘩しやすいので注意してください。
スズメダイの飼育に必要な器具
スズメダイを飼育するための主要な器具類を以下に示します。
- 水槽
- フィルター
- 照明
- エアレーション
- ヒーター、クーラー
- プロテインスキマー
- 比重計
- 水温計
- 人工海水
- ライブロック
- 餌
これらの中で特に注意が必要なものを以下で説明します。
水槽
スズメダイは小型魚なので30cm水槽から飼育が可能です。しかし、水量が少ないと環境の維持が難しいので、60cm以上の水槽での飼育を推奨します。30cm水槽で安全に飼育できる個体数の目安としては1~2匹です。
縄張り意識が強い種類の場合、小型水槽で混泳させると殺し合いの喧嘩になる恐れがあるので単独飼育が基本です。60cmクラスの水槽では設備にもよりますが、10匹くらいまでは飼育が可能で、気性が荒い種類もレイアウト次第で混泳できます。
フィルター・プロテインスキマー
スズメダイのみを少数飼育するのであれば、上部式や外部式のみでも長期の維持が可能です。しかし、他の魚種と混泳させたい時や群永させたい時など、個体数が多くなる場合は両者を併用したり、オーバーフロー水槽を導入した方が良いでしょう。
また、マリンアクアリウムの場合、プロテインスキマーがあると水質の維持がずっと楽になるので、小型水槽においても導入することをおすすめします。現在では、小型水槽でも使用しやすい外掛け式なども普通に市販されています。
人工海水
スズメダイは海水魚なので、当然ながら淡水である水道水では飼育ができません。そこで人工海水の素を購入し、適した塩分濃度になるように水道水に溶かして使用します。現在では人工海水も様々な商品が発売されており、中にはカルキ抜き剤が含まれているものもあります。
そのような人工海水では水道水をそのまま使用しても良いですが、カルキ抜き剤が含まれていないものはカルキ抜きをした水道水を使用してください。
スズメダイの飼育方法
水温
スズメダイの飼育に適した水温は24℃前後です。夏と冬はそれぞれ温調機器を用意して保温してください。特に、小型水槽は外気温の影響を受けやすいので水温計は常設しておき、必要に応じて空調なども用いて水温を管理してください。
餌について
スズメダイは基本的に雑食性なので、餌は雑食性の海水魚用に配合された人工飼料で問題ありません。それに加えて、冷凍イサザアミや乾燥クリルなどの生餌をたまに与えると喜びます。
餌は1日に1回か2回に分け、食べ残しが生じないだけの分量を与えます。食べ残しが出ると水質の悪化が早くなるので、できるだけ取り除いてください。
レイアウトについて
熱帯魚ショップなどで多数の気性の荒いスズメダイが、同一の水槽でキープされている様子をご覧になったことがある方も多いと思いますが、秘密は水槽レイアウトにあります。
スズメダイはライブロックを中心に縄張りを作るので、水槽にライブロックを入れずかつ過密気味にすることで、縄張りを作らせないことが可能なのです。
しかしながら、ライブロックは水質の維持に多大な寄与をしているので、それを入れずに過密状態にすると環境の管理が煩雑化します。特に、小型水槽ではほぼ不可能と言える飼育方法なので注意してください。
基本的にはライブロックを入れ、気性が荒い種類を混泳させたい場合は、十分に大きな水槽で縄張りが重ならないように管理します。小競り合いが見られるようでしたら、ライブロックを追加したり間隔をあけることで、解消するケースもあるので覚えておくと良いでしょう。
底床材にはサンゴ砂を敷くとpHの低下を緩和する効果がありますが、あまり厚く敷いてしまうと掃除が煩雑になるので注意してください。
メンテナンスについて
メンテナンスの内容は水換えと足し水、水槽ならびに周辺機器の掃除です。水換えの頻度は飼育環境に大きく依存するので一概には言えませんが、小型水槽ほど小まめな水換えが必要です。
目安としては1~2週間に1回ですが、飼育水の硝酸塩濃度が1つの指標になるので、水質検査キットを用意することをおすすめします。
足し水は塩分濃度を一定に保つために必要なことで、蒸発した分の真水を補う作業です。いちいち比重計で測定しなくても済むように、最初にセッティングした水位を確認しておき、減った分の真水をカルキ抜きした水道水で補填すると良いでしょう。
水槽の掃除はスズメダイのストレス軽減のために、基本的には水換えのタイミングで行います。内壁の汚れを落としたり、クリーナーを用いて底砂の掃除を行ってください。
そして、数カ月に1度はフィルターの確認もしておき、汚れていたら内部の掃除やろ材の洗浄・交換を行う必要があります。
まとめ・スズメダイの飼育方法と混泳しやすいおすすめの種類について
スズメダイは非常に種類が多い海水魚で、小型かつ丈夫で色鮮やかな種類が多いため、マリンアクアリウムにおいて古くから親しまれている人気の魚種です。アクアリウムにおいて好まれる性質をほぼ網羅しているのですが、気性が荒い種類が一般的なので混泳には注意が必要です。
例外的なのが群れを作る性質があるデバスズメダイで、同種を攻撃してこない魚種とはほぼ問題なく混泳できます。初心者の方やマリンアクアリウムでの混泳に挑戦したい方は、まずはデバスズメダイの飼育にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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