水槽のメンテナンスをしていると、飼育水にとろみを感じることがあります。水面に上がった気泡がいつまでも消えずに残っていたり、水がねばついてたりといった状態です。
この現象は、餌の与えすぎや水換え不足などで水が汚れて、水槽のバランスがくずれているときに起こります。また金魚などの粘膜のぬめりが多い魚種では、ぬめりが水に溶けだしてとろみがつきやすいです。
これらのねばつきは長期化すると水質の悪化がすすみ、熱帯魚の体調不良につながることもあるため、とろみを感じたらすぐに対処しましょう。
そこで今回は、飼育水のとろみの原因と対処法5つをご紹介します。
飼育水のとろみはなぜ起こる?原因5つ
飼育水にとろみがついているかどうかは、水をすくったときの落ち方を水道水と比較することで判断できます。水道水と比べて「もたっ」としているようなときは、とろみがついている証拠です。
また、水面に浮いた気泡がいつまでも消えずに残っているのも、とろみが原因と考えられます。
飼育水にとろみが発生する主な原因は次の5つです。
- 餌を与えすぎている
- 粘膜保護剤などを使用している
- バクテリアによるとろみ・ぬめり
- 魚の分泌物
- 掃除が足りない
水槽のバランスがくずれていたり、水質が悪化していたりする場合がほとんどなので、原因を特定して早めに改善しましょう。
とろみの具体的な対処法は、後ほど具体的に解説します。
餌を与えすぎている
餌を与えすぎると、餌に含まれる脂質(油分)によって粘度が上がりやすくなります。
脂質は魚のエネルギー源や増体に必要なので、多くの餌に含まれる重要な成分です。しかし餌を与えすぎると、食べ残しが増えて水中の脂質が多くなり、とろみが発生します。
一般的な餌でも与えすぎればとろみが起こりますが、脂質が多く含まれる高カロリーな餌ほど注意が必要です。
粘膜保護剤などを使用している
粘膜保護剤の影響がとろみとして現れることがあります。
魚はぬめりのある粘膜によって擦り傷などの小さな怪我から体を守っていますが、この粘膜を増強する役割を持つのが粘膜保護剤です。ぬめりに近い成分が含まれているため、添加することで飼育水のとろみにつながる可能性があります。
また、カルキ抜きに粘膜保護成分が含まれていることがあり、これがとろみの原因になることもあります。
バクテリアによるとろみ・ぬめり
水質をきれいにしてくれるバクテリアですが、ダメージを受けて死骸になるととろみの原因になります。
バクテリアは高水温が得意ではないため、水温が高い状態が続くと大量に死滅してしまう可能性が高いです。バクテリアの減少は飼育水のとろみだけでなく、水質悪化に大きく影響するので早急な対処が必要です。
魚の分泌物
魚の分泌物(ぬめり)が多いと、飼育水にとろみが発生することがあります。
体表を保護するために多くの魚が分泌物を出していますが、金魚などの魚種は、フンや粘膜などのぬめりが特に多いため、水に溶けだしてとろみになりやすいです。
また、突然とろみが増えたと感じる場合は、擦り傷や寄生虫などが原因で、分泌物が多くなっているケースもあります。魚の体表を確認し、異常があったら早急に対処しましょう。
掃除が足りない
これまでご紹介してきた4つのとろみの原因は、どれも水換えをすることで改善します。とろみの原因の特定と並行して、掃除の回数が足りているかを確認してみましょう。
水槽の掃除の頻度は1~2週間に一度程度が一つの目安ですが、水槽の状態によって回数は異なります。水質に異常を感じたら掃除の回数を見直してみてください。
飼育水のとろみが一時的な物であれば、水を換えれば改善しますが、掃除してもすぐにとろみが発生する場合は、先述したとろみの原因を参考に根本的な原因を探ってみることをおすすめします。
とろみの対処法5選
ここからは、とろみの対処法を5つご紹介します。
- 水換えと掃除を行う
- 餌を控えめにする、餌を変える
- 添加剤の使用を控えてみる
- 水温を一定にする
- 水流やレイアウトを調整する
飼育水のとろみの原因を探りながら、一番可能性の高い対処法を実践してみましょう。また、一つの対処法ではあまり効果が得られないこともあります。その場合は、複数の対処法を併用してみてください。
水換えと掃除を行う
飼育水にとろみを感じたら、まずは水換えと掃除を行いましょう。原因が何であれ、水換えと掃除をすることでひとまず症状は改善します。
また、とろみがついた飼育水は水質が悪化していることも多いので、とても有効な方法です
ただ、バクテリアが大幅に減少することも良くないため、全換水は避けて水槽の1/3、多くとも1/2程度の水を換えるようにしましょう。
水換えと底砂掃除は同時に行っても問題ありませんが、バクテリアの減少を考えると、ろ過フィルターの掃除は1週間ほど時期をずらす方がより安全です。
餌を控えめにする、餌を変える
水槽の掃除をしてもとろみが復活する場合は、餌を見直してみましょう。
餌はほぼ毎日与えるものなので、頻度や1回の量を減らすことで餌の食べ残しやフンといったとろみの原因が大幅に抑えられます。
とはいえ、魚の栄養状態も考える必要があるので、1~2日に1回、3~5分で食べ終わる量を目安にしましょう。
また、脂質の多い餌ばかりを与えている場合は、餌の種類を変えてみるのもおすすめです。そもそも栄養価の高い餌ばかり与えていると、栄養過多になってしまう事も考えられますので、魚の健康を考慮して、いくつかの餌を併用しながら、バランスの良い餌やりを心がけましょう。
ただし、ランチュウや肉食魚などの脂質の多い餌で育てることが求められる魚種の場合は、水換えや掃除のペースを調整しながら水質と餌のバランスを見極めてみてください。
添加剤の使用を控えてみる
飼育水にとろみが発生している場合は、粘膜保護剤や凝集剤などの添加剤をあまり使わないで様子を見ましょう。
ただし、魚が怪我をしている場合は、飼育水のとろみ改善よりも、粘膜の保護を優先して添加剤を使用してください。
水質改善が目的で添加剤の使用を検討しているときは、複数の効果が期待できる『活性炭』の使用をおすすめします。
水温を一定にする
水温が高くなりすぎたり、不安定だったりすると、水質が悪化しやすいだけでなくバクテリアもダメージを受けやすくなります。
水温を一定にすることで水質のトラブルを減らせるので、水温計を確認しつつ、冷却ファンや水槽用クーラーを活用して水温を管理しましょう。
水流やレイアウトを調整する
水槽内に淀みやすい場所があると、そこを起点に水質が悪化してとろみにつながる可能性があるので、水流やレイアウトを調整して、飼育水をスムーズに循環させることも重要です。
また、淀みが改善して水流が生まれれば、水槽全体に酸素が行き渡りやすくなるため、バクテリアの活性化にもつながります。大きなレイアウト物がある場合は淀みが生まれないように、ろ過フィルターの吐出口やレイアウトの位置・高さ・角度などを調整してみましょう。
とろみを抑える水槽管理の考え方
水のとろみを発生させない水槽管理術では、とろみがある飼育水は水質が不安定になっている、ということをしっかり意識することが大切です。
水質を安定させるには、できるだけ変化を避けて良い状態を維持する必要があります。
例えば、
- 一日を通して水温が変化している場所がないか計測してみる
- 水の流れが滞っている場所はないか確認する
- 給餌の時に食いつきに異変が無いか観察する
など、見慣れていると何となく見逃してしまいがちな水槽の状態を、一つ一つ意識して確認してみるのは良い方法です。
水槽の安定は、とろみを防ぐだけでなく魚の健康にもつながります。特に日本の気候変化に合わせるのが苦手な熱帯魚や水草は、水温や水質が変化しない安定した環境の方が長生きです。
水槽の変化を確認しつつ、安定させることを意識してを飼育することで、美しいアクアリウムを維持することができます。
まとめ:飼育水のとろみ対策!とろみの原因と対処法5つをご紹介します!
今回は、飼育水のとろみの原因と対処法5つをご紹介しました。
飼育水のとろみは、水槽のバランスがくずれていたり、水質が悪化したりすることで起こり、
- 餌の与えすぎ
- 粘膜保護剤の使用
- バクテリアの死骸
- 魚の分泌物
- 掃除不足
といったことが主な原因です。水換えや掃除を行うことで改善しますが、とろみが再発するようであれば、餌や添加剤を見直してみましょう。
とろみは飼育水が不安定なことを表すバロメーターともいえるので、魚に影響する前に対処して、安定した水槽を維持するよう心がけることが大切です。
トロピカライターの高橋風帆です。
アクアリウム歴20年以上。飼育しているアーモンドスネークヘッドは10年来の相棒です。
魚類の生息環境調査をしておりまして、仕事で魚類調査、プライべートでアクアリウム&生き物探しと生き物中心の毎日を送っています。
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