【プロが教える】海水魚水槽を立ち上げるための基礎知識と設備の価格

海水魚は淡水魚に比べて管理が難しく、飼育してみたくてもなかなか手が出せないと感じている方も多いのではないでしょうか。

事実、海水魚水槽は淡水魚水槽よりも維持管理に手間がかかり、淡水魚水槽よりも必要になる器具類や消耗品が多いので、価格も高額になることが普通です。

しかし、海水魚は淡水魚よりも色鮮やかな魚種が多く、それらが遊泳する海水魚水槽は魅力に溢れており、同水槽を運用しているアクアリストもたくさんいます。

ここでは、海水魚水槽に興味をお持ちの方のために、海水魚水槽の立ち上げに関する基礎的な知識と必要になる設備の価格についてご紹介します。

なぜ海水魚水槽にあこがれるのか

アクアリウムに興味がある方なら、一度はあこがれるのが海水魚水槽ではないでしょうか。海水魚は淡水魚に比べて水質や水温の管理が難しく、様々な機器と経験が必要です。

また、海水魚などの生体も淡水魚よりも一般的に高額なため、海水魚水槽に挑戦することに勇気と予算が出せないという方も多いでしょう。

淡水魚は河川や湖などに生息しているため、カルキ抜きした水道水で飼育が可能ですが、海水生の生物を飼育するためには塩(えん)が入っている水が必要です。

そんな維持管理の難易度が高く、コストも高額になりがちな海水魚水槽を奇麗な状態で管理できれば、同じアクアリストからも一目置かれます。

また、サンゴやイソギンチャクなどの無脊椎動物と、クマノミなどのカラフルな海水魚が同居している海水魚水槽が自宅にあれば、見ているだけで疲れも癒されることでしょう。さらに、その水槽を見ながら晩酌をしたり、インスタグラムなどのSNSに掲載するなど副次的な楽しみ方も満載です。

海水魚水槽の飼育水について

人工海水を使う

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海水生の生物の飼育には塩水(えんすい)が必要ですが、食塩を入れた水では海水とは成分がまったく異なるため、海水魚やサンゴを飼育することはできません。とは言え、海から天然の海水を大量かつ頻繁に汲んでこれる環境にある方は少ないことでしょう。

そこで人工海水を使います。人工海水とは天然の海水を模して、同じような成分比率になるように塩分を配合した液体のことを言い、多くの場合は「人工海水の素」として粉末の状態で販売されています。

現在では様々なメーカーから発売されており、種類も豊富でサンゴに必要な栄養素を強化したものや、コストパフォーマンスを重視したものもあり、必要に応じて使い分けることが可能です。

水族館などの施設は海に面した場所に施設があるため、海から奇麗な海水を汲み上げていますが、最近では人工海水を使用している水族館や施設も増えているようです。

塩分濃度

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人工海水は水道水に塩(人工海水の素)を溶かして作成しますが、海水とほぼ同じ塩分濃度で作らなければ海水魚やサンゴなどは死んでしまいます。そこで、「比重計」を使用して人工海水の塩分濃度を測定することが重要です。

海生生物にとって適した比重は1.023~1.024です。人工海水の素は商品によって、適切な比重になるように水に溶かす量が異なるので、パッケージに表記されている分量をよく確認したうえで作成してください。

水の蒸発について

飼育水は蓋をしていても蒸発し、海水は真水が蒸発しても塩分は失われないので、そのままにしておくと、塩分濃度を表す比重が上昇します。前述のように、比重が上がりすぎて適正範囲を外れると海生生物は死んでしまうので、日頃のメンテナンスが必要です。

水の蒸発による比重の上昇を防ぐためには、最初にセッティングした時の水位をチェックしておくと良いでしょう。水位の低下(真水の蒸発)が見られたら、カルキ抜きをした水道水を継ぎ足す「足し水」を行ってください。

塩分は蒸発によって失われないので、水位をチェックして真水を供給すれば、いちいち比重を測定しなくても適正範囲を維持できます

水換え

淡水魚の場合は頻度の少ないもので月に1~2回の水換えで飼育できますが、海水魚の場合は水質の悪化などの環境の変化に対する適応力が低いため、月に最低でも2回の水換えが必要です。

水槽にたくさんの海水魚やサンゴを入れる場合には、月に4回以上の水換えが必要になる場合もあります。水換えをする際には、必ず比重を測定するのと同時に、水温にも気をつけながら行いましょう。

海水魚水槽の器具類について

海水魚やサンゴを飼育するうえで必要な器具類を以下に示します。

オーバーフロー水槽と呼ばれるろ過システムは能力が高いため、海水魚を飼育するにあたり一番望ましい形式ですが費用がかかります。今回は自宅でも簡単にできる外部フィルターを使った水槽機器の選定例をご紹介します。

機材

  • 水槽
  • 水槽台
  • 外部フィルター(サンゴろ材)
  • 油膜取り
  • ヒーター
  • クーラー
  • プロテインスキマー(外掛け式)
  • 水流ポンプ

海水魚水槽の場合、水温調節が非常に重要です。淡水魚の場合、30℃近くの水温でも飼育できる場合もありますが、海水魚は多くの種類で26℃以下に保つ必要があります。

サンゴを入れる場合には25℃以下に保たなくては飼育ができません。水質悪化を防ぐためプロテインスキマーの設置や油膜取りを外部フィルターに付けると管理が楽になります。

レイアウト用など

  • サンゴ砂
  • ライブロック
  • 人工海水の素(塩)

ライブロックは「キュアリング」と呼ばれる作業が必要です。キュアリングとは、ライブロックを海から店舗に輸送するまでの間に、付着していたバクテリアや微生物の一部が死んでしまうので、それらの死骸を取り除く作業です。

キュアリング済みのライブロックも販売されているので、販売店で確認してみると良いでしょう。キュアリングがされていないライブロックを使うと、バクテリアや微生物の死骸によって水質の悪化が加速してしまうので注意が必要です。

海水魚水槽の設置方法

機器の設置

機器の設置

基本的には淡水魚水槽と同じように機器をセッティングします。フィルターなどの周辺機器の中には海水には適合していないものあるので、必ず海水でも使用できるものかどうか確認したうえでセッティングしてください。

また、セッティング時はアクアリウムとして運用することを考えて、水道や電源の位置、水平に置けるかなども確認しておきましょう。さもないと、メンテナンス性の悪化や器具類の寿命を短くする結果を招くので注意してください。

レイアウト

機器の設置

海水魚水槽の場合、淡水魚水槽よりも水流を意識することが重要です。なぜなら、止水域ができてしまうと水質の悪化が加速して、海生生物が衰弱したり死亡する危険があるからです。そのため、海水魚水槽のレイアウトはあまり入り組んだ形状にしない方が良いでしょう。

ライブロックなどで石組みレイアウトを設置する場合も、アーチ状にして隙間を開けて組むなど、水の流れを妨げないように意識することが重要です。

ライブサンドは必要?

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結論から申し上げますと、ライブサンドは必ずしも必要なものではありません。ライブサンドとは、生物ろ過のためのバクテリアが付着しているサンゴ砂のことです。そのため、水槽立ち上げ時に早期に水質を安定させる、バクテリア剤と同様の効果が期待できます。

しかし、バクテリア剤を添加しても、含まれるバクテリアが必ずしも定着するわけではありません。それ故に、バクテリア剤の評価はアクアリストによって分かれます。ライブサンドに関しても、同様のことが言える点は留意しておいてください。

ライブサンドを導入する最大の利点は、サンゴ砂を洗う手間が省けることでしょう。サンゴ砂は販売されている状態だと、大部分の商品でかなりの量のゴミが混入しています。

これらのゴミは製造過程で混入するものがほとんどで、よく洗って除去しておかなければ生体に悪影響を与える恐れがあり、洗浄作業はかなりの手間です。

その点ライブサンドは、バクテリアを生きたままの状態で流通させなければならないので、管理が行き届いており、洗浄せずに水槽に導入してもゴミが浮いてくるようなことはありません。

ただし、ライブサンドはその分だけサンゴ砂と比較すると高価である点に注意してください。そもそも、底砂を入れない方がメンテナンスが楽な生体もたくさんいるので、底砂の必要性からよく検討したうえで導入してください。

ちなみに、ライブサンドとライブロックは別物で、後者は一般的な海水魚水槽では必需品です。

海水魚の投入

お魚投入

水槽や周辺機器の設置が完了したら、動作確認が取れたタイミングでライブロックを導入します。その後は1~2週間、空回しを行って生物ろ過に必要なバクテリアが、ある程度増殖するのを待ちます。

時間がかかると思われるかもしれませんが、淡水と海水に生息しているろ過バクテリアは種類が異なります。海水生のバクテリアの方が繁殖速度が遅いので、淡水魚水槽の立ち上げよりも時間がかかるのが普通です。

ライブロックを投入してから1~2週間経過したら、検査キットを用いて飼育水中のアンモニア濃度や亜硝酸塩濃度を測定しましょう。水質に問題がなければ生体を入れていきますが、この時に入れる予定の生体を一度に全て導入してはいけません

なぜなら、ろ過バクテリアの数がまだまだ少ない状態なので、生体の数が多くなると発生するアンモニアなどの有害物質の分解が追い付かなくなり、水質の急速な悪化を招くからです。

そのため、完全に新規の立ち上げの場合は、当初は海水魚の数を1~2匹に抑えて水質の検査をしながら経過を観察し、徐々に増やしていくようにしましょう。

海水魚水槽の価格について

海水魚水槽一式の価格とは

海水魚の飼育に必要な器具類を一式そろえた時の価格は、水槽の大きさやろ過の形式によって大きく異なります。例えば、前述した外部フィルターで飼育環境を管理する設備を、60cm水槽を基準にそろえると必要な初期費用は5~6万円前後です。

ちなみに、この額は淡水魚水槽を始める時とあまり変わりません。しかし、最高のろ過能力を持つオーバーフロー水槽を導入しようとすると価格は跳ね上がります

同じ60cmクラスの設備でも、配管加工を施した水槽だけでも5万円程度かかります。それに加え、専用の水槽台の導入、水を循環させる十分なパワーがあるポンプの用意などで、一式そろえると30万円を超えることも珍しくありません。

高価でもオーバーフロー水槽が推奨される理由

オーバーフロー水槽は高価ながらも、海水魚の飼育においては一般的に採用されている形式です。なぜなら、海水魚を飼育するうえで、メリットとなる点がたくさんあるからです。その具体例を以下に示します。

  • 水質の維持が容易
  • 水位を保ちやすい
  • バクテリアの活動に必要な酸素を供給しやすい
  • ろ過槽に周辺機器を収納できる

オーバーフロー水槽は飼育水槽とろ過槽が分離しているので、ろ過槽に大量のろ材を入れることが可能で、ろ材の交換も海水魚がいないろ過槽内で行えます。そのため、ろ過能力が高く掃除も楽なので、数あるフィルターよりも水質の維持が容易です。

また、飼育水槽から溢れた水がろ過槽に落ちる仕組みになっているので、水位の保持がしやすく、小まめに足し水を行わなくても水槽内壁に塩が析出しないので、見栄えが良い状態を保てます。

水の蒸発自体は生じているので、ろ過槽に足し水を行う必要はありますが、蓋をすることで緩和が可能です。足し水といった日常的なメンテナンスがろ過槽で完結でき、海水魚にストレスを与えないこともメリットの1つと言えるでしょう。

それから、海水は淡水と比較すると酸素が溶け込みにくいので、上手く溶存酸素量を確保しなければ、ろ過バクテリアの活動が低下する恐れがあります。

オーバーフロー水槽のろ過槽は通常は開放されており、そこに飼育水を落とすので空気と接触する機会が多く、ろ過バクテリアに酸素を供給しやすい点もメリットです。

さらに、ろ過槽にはプロテインスキマーやヒーターなどの温調機器といった、周辺機器を収納できるので、見た目にもすっきりとしたアクアリウムを演出することが可能です。

これらのことから、海水魚水槽にはオーバーフロー水槽が採用されやすいのですが、いかんせん高価なのでご自身がどこまでアクアリウムを続けられるか、予算を捻出できるかなどをよく考慮してから導入してください。

まとめ・海水魚水槽立ち上げの基礎知識と設備の価格について

海水魚水槽は淡水魚水槽よりも維持管理が難しく、初期費用ならびに維持費用も高額になるため、予備知識を十分に得てから開始する必要があります。また、サンゴの飼育は海水魚よりも難しいので、海水魚の飼育に慣れてから挑戦することを推奨します。

淡水魚よりも一般的に飼育の難しい海水魚ですが、慣れることでコツを掴めばさほど気にはならなくなります。見た目も鮮やかで美しい海水魚をぜひ飼育してみてください。

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